バースディー・フェスティバル〜第2話−フェスティバル前夜…〜REIM[HP]
「それで、ご用件は?」と尋ねるナッツ。
「ええ、みんなの泊まれるところを確認しに来たんです」と答えるウェンディ。
「それは…ルミナ導師が手配しているはずでは…?」「そうですね、ただ…」「ただ?」と問い返す…。
「もう一箇所、泊まれる場所が必要なの」「なぜですか?」「常任会の為ですよ」と答える…。
「そうですか…でも『さくら亭』以外泊まれる場所はないですよ?」とナッツ…。
魔法使い二人が話をしてるのを黙って聞いていたアリサが、
「何人泊まれればいいのかしら?」と口をはさんで来る…。
「あ、はい。9人…ですね」と反射的に答えるウェンディ…。
「でしたら、うちを泊まればいいわ」「えっ!? よろしいのですか?」この申し出に驚く…。
「一応、10人くらいなら泊められますからね」これはフィム。
「まあ、それはそっちに任せて…7人の間違いじゃないですか?」と指摘するナッツ…。
「いえ、間違いなく9人です」「そりゃあ、オレとティアを合わせれば9人ですけど…?」とナッツ…。
「え? 常任会というものに私も出るのですかっ!?」驚くティア。
「ええ、そうなります」「で、でも、私なんか出てても…」「あなたが出てくれないと困るんですけど?」とウェンディ。
「それはそうと…オレ達は泊まるつもりは…」とナッツが言いかけるが…。
「あなたの誕生日会が終わった後、深夜に常任会を行います」「それとどう関係するのですか?」問いかけるナッツ。
「まさか、真夜中に奥さんを叩き起こすつもりですか? もしかしたら、終わるのが明け方近くになるかもしれないのに?」
「………」ここまで言われると反論すら出来ないナッツ…しかもミュンは今、身重に近い状態だから…尚更であろう…。
「判りました」とすんなり納得するティア…。
「…というコトになっちゃったけど…大丈夫? なんならルミナ導師に泊まってもらうよう、お願いしようか?」
「私は大丈夫ですよ。気になさらないで…」「…ありがと…」と回りを考えずに見詰め合う二人…。
「…おほん…」とワザと咳払いをするフィム…。
『あ…?』…途端に現実へと引き戻される…。
「…仲がいいのはわかったからさぁ、見せ付けないでくれないかなぁ…」「そうね、少しは場所を考えた方がいいわよ…?」
と半分呆れながら冷やかすフィムとシーラ…でも…。
「でも…フィムさんもシーラさんも…絶対、人の事言えないと思う…」「ういっス」『………』ティアとテディのするどぉ〜い
指摘で言葉に詰まる…。
「あらあら、フィムクンもシーラちゃんも一本取られたわね」と微笑むアリサ。
「それよりもね、アリサ。そう簡単に安請け合いしないで欲しいのだけど?」と小声で話しかけるセーラ。
「あら、どうしてかしら?」「ど、どうしてって…」言葉が途切れるセーラ…それでも気を取り直して…。
「…ウェンディさんみたいな美人が泊まるのよ? 少しはね、うちの娘の気持ちも…」
「大丈夫よ、ママ。私、フィムくんのこと信じてるから」と横から言われてしまい…再び言葉が途切れる…。
「はは、ありがと、シーラ…でも、なんか照れるなぁ…」「うふふ…」………勝手にやってろ…。
「……いつもこうなの…?」…急に居心地の悪さを感じるウェンディ…。
「ういっス。4人とも『人のふり見て、我が身を直せ』ってコトワザ知らないみたいっス」…この直後…ほぼ同時に4発の拳骨が
テディの頭に炸裂していたりする…(汗)。
しかも…動物好きなミュンを怒らせた上にグーでぶたれたのだから…テディの『失言癖』も筋金入りである…。
「…テディさんも…その失言癖、早く直した方がいいと思う…」「…ういっス…ティアさんの言う通りっス…」
半泣きしながら答えるテディである…。
その日の深夜のジョートショップでは…。
1階にナッツ、ティア、ウェンディの他に6人の男女が思い思いの場所に座っていた談笑していた…。
ちなみにアリサは…彼らにお茶を淹れた後、自室で休んでいるし、フィムも彼女同様に自室で休んでいる…。
また、シーラは…ナッツに頼まれ−ルミナと連絡がつかなかった…−ミュンと一緒にいる…。
なお、『常任会』は…ティアの紹介と最も『重要』な事を一つ決めただけで終わったそうな…。
「…『魔宝』…ですか…?」とウェンディ…。
「ええ、なにか知ってますか?」これはナッツ…もうこの世にはないとはいえ、考古学が趣味な彼としてはやっぱり興味が
あるらしい…。
「そうですね…『閉鎖遺跡』を知ってますか?」「…イルム・ザーン遺跡ですね…ええ、本で読んだことがあります」
「『魔宝』は、そこに張られた魔法障壁を解呪する為のものなんですよ」と説明するウェンディ…。
「……なるほどね…」…イルム・ザーンに関する文献が意外に少ない理由がわかった気がする…。
一方…。
「…はあ…考古学が趣味の旦那を持った奥さんも大変だね…」と呟くショート・ボブの女性−彼女は『風の賢者』である…。
「でも、ヨーコさん、ナッツさんとミュンさん、街の人達が羨ましがるくらい仲がいいんですよ」と先ほどの女性に答えるティア。
「…単なる新婚特有の『のろけ』でしょ…?」…当たらずとも遠からず…である…。
「それはそれでいいじゃないの?」と蒼い髪の男性−『闇の賢者』である−が口をさしはさむ。
「…あんたね…」「…何の努力もしないで女性にもてるヤツに言われたくないと思うぞ…」と『時の導師』…。
…今、ここにいる面々はナッツ、ティア、ウェンディを除くと次の通りである…。
1.エイル・アーガイド(『闇の賢者』セレニウス)
2.ヨーコ・ドロレス・アサミ・ヤマモト(『風の賢者』シルフィウム)
3.白崎さくら(しらさき さくら)(『樹の導師』ヴァーモント)
4.ヒルデガルド・ラムディウス(愛称ヒルダ)(『炎の賢者』フェニアード)
5.ジュリオ・フォルティアーナ(『地の賢者』ティティニス)
6.グスタフ・オルフェル(『時の導師』グリーニクス)
ちなみに…ナッツは『理の導師』エイザード、ティアは『光の王者』レイアース、ウェンディは『水の賢者』アクエリエスに
それぞれ導かれている…。
そして…彼は総勢24人いる『導かれし者』(=導師長)の中では…指導的立場にいるのだ…。
最もその魔法技量には…かなりのバラツキがあるが…。
「あれ? それって、僕がナンパ師みたいに聞こえるじゃないかい…?」とのたまうエイル…。
「あのねっ、少しは自覚しなさいよっ!」と『炎の賢者』のヒルダ…。
「なにを自覚しろと言うんだい…?」「………疲れた……」…微かに目眩がするヒルダ…。
「…あの…もうそろそろ…休みせんか…?」と控え目に提案するジュリオ−彼は『地の賢者』−である…。
翌日、グラシオコロシアムでは…。
「悪いね、二人とも。急に駆り出してしまって…」と二人−フィムとシーラである−にあやまるナッツ…。
今、彼らはコロシアム内の控え室−他の導師長達も一緒である−にいた…。
「いや、かまわないけどね…でもさ、何で俺達に頼むんだ?」「そうね…コロシアムの人でもよかったと思うんだけど…?」
と尋ねる二人…頼まれた仕事は『参加者へのドリンクの配布』である…。
「まあ、過去にいろいろとあったらしくてね…」と苦笑するナッツ…。
「いろいろとね…たとえば、シビレ薬とか下剤とかが仕込まれたとか?」「まあ、そんなところかな…」
と口をはさんで来るエイル…続けて…。
「なぜか知らないけど、僕のドリンクだけにヒ素とかトリカブトとかボツリヌス菌とかが仕込まれていたことがあったけどね」
『………よく生きてますね……』…口をそろえる二人…。
ちなみに…昨夜の『常任会』の決定事項は…フィムとシーラに『依頼』するという事だったりする…間違って他の人が飲んだ
日には…どうなるか事か…(大汗)。
「…そろそろ行きましょうか…?」とエイルに声をかけるナッツくんである…。
一方…観客席では…。
「…眠いよぉ…」とアクビをかみ殺しながら、目元をこするルミナ…。
なにしろ…一晩中、メロディにくっつかれてしまい、ほとんど寝ていなかったりする…。
「…仕方ないんじゃいないの…? あんた、メロディと同じに見えるんだからね」とからかうパティ…。
確かに彼女の言う通り、ルミナはハーフキャット族−外見はメロディを想像してほしい−だから…。
「ま、あんたもメロディも外見は『猫』に見えるからね」と笑いながらリサ。
「ネコじゃないもんっ、ハーフキャットだもんっ! ぷんっ!!」と子供みたいな口調で怒るルミナ…あんた、実年齢217歳の
−外見年齢は16歳頃−大人でしょ…?
「あ、そろそろ始まりますよ…」と彼らに声をかけるシェリルである…。
「レディ〜スっ、アンドっ、ジェントルメンっ!!」とトリーシャの声が拡声器を通してコロシアム内に響き渡る。
「それではっ、大陸魔導師協会恒例、ナッツ・ティアンズ導師長の誕生日会を行いまぁ〜すっ!!」と開会を宣言する。
わぁぁぁぁぁっ!!!
観客から歓声があがる…。
「では、実況を担当するボク達の紹介でぇす〜」「はいはいっ、実況担当のとぉってもキュートなマリアちゃんでぇす〜」
すると…。
しぃ〜ん…
と観客席からの無言の『否定』と
「どっこがっ、キュートだって言うんだっ!!」というエルフの女性の抗議が返って来ただけだった…(笑)。
「ぶーっ!!」とぶーたれるマリアちゃん…。
「次はっ、エンフィールド一番のアイドル、トリーシャ・フォスターでぇす〜」
「ウソをつくなっ!!」という第三部隊長の野次で大爆笑の渦に放り込まれる観客達…。
「なんだよぉ〜っ、それはぁっ!!?」と怒るトリーシャちゃん…。
「トリーシャさんとマリアさんと一緒に実況を担当する、とてもエレガントな広瀬瑞穂ですっ」と締めくくった…が…。
『大ウソつきぃぃぃぃぃっ!!』とトリーシャとマリアだけでなく…学園の学生達と自警団員達の突っ込みが一斉に入る…。
「ふぇ〜んっ!!」と泣きマネをする瑞穂ちゃんであった…。
「それではっ、気を取り直して…栄えあるファースト・プログラムっ!!」「わくわくっ、わくわくっ」と最初のプログラムを
読み上げようとするトリーシャと期待する−当然、魔法をだ−擬音を口にするマリア。
その直後。
「…え〜とぉ〜…………ねえっ、瑞穂っ! コレ、なんて読むんだよぉーっ!!?」とトリーシャの絶叫が拡声器を通して
コロシアム内に響き渡った…。