バースディー・フェスティバル〜第3話−こんな『お祭り』って、あり…?〜REIM[HP]
ぱちん…
しぃ〜んと…静まりかえったコロシアムに…駒を打つ音が響く…。
…最初のプログラムは…。
「将棋〜〜〜っ!!? なんでっ、将棋なのぉーーっ!!?」…絶叫するマリアちゃん…。
「…これ…どーやって盛り上げればいいんだよぉ〜〜〜っ!?」…途方にくれるトリーシャちゃん…。
「……思いっきり…盛り下げたみたいですね……」…ぽつりと呟く瑞穂ちゃん…。
一方…。
「……なに考えてんだ…?」「…オレに聞くな…頼むから…」と会話するフィムとナッツ…。
更に…。
「……チェスだったら…解説してやったんだが…」と観客席で呟くエル…。
こんな会話を交えている事も知らずに…。
「王手、角取り」「………うそ……」とティア−意外にも将棋が得意−がヨーコを追い詰めていた…間の悪い事に勝負開始前に
ティアに向かって『「待った」はしない』と豪語したもんだから、にっちもさっちもいかなくなっていたりする…。
その隣では…。
「いやぁぁぁぁっ!?」と劣勢になった金色の瞳と長い黒髪を持つ女性の『導き手』がコブシを将棋盤にぶち込んでいた…。
結果は…。
試合(?)開始前、大穴であったティアが1位で、自分で自分の首を絞めたヨーコが2位である…。
なお、将棋盤を叩き割った『導き手』−名を林麗芳(りん れいほう)という−は当然、『失格』であった…。
「で、次はなに…?」…気を取り直して瑞穂に尋ねるトリーシャだが…。
「…………ポーカー…」「……うぅ…」…半ベソをかくトリーシャちゃん…。
…勝敗は…土壇場にロイヤル・ストレート・フラッシュで上がったナッツがエイル−前回1位−を押さえて優勝した…。
「次は…『お料理対決』でぇす〜」とヤケクソぎみに言う瑞穂。
「はあ〜、やぁっと、まともなプログラムになったね…」これはトリーシャ…そして。
「それじゃあ、瑞穂がエントリーされた方を紹介します」と続ける。
「それでは紹介します…」と前置きし、続けて、
「ウェンディさん、ヨーコさん、ヒルダさん、さくらさん、淑芳(しゅくほう)さん、最後は……アリサおばさんっ!?」
と拡声器を通して素っ頓狂な声をあげる…。
「あ、あの、一体…?」と問いかけるシーラ…。
「これ、一般の参加が許されてるプログラムなんだってさ」とナッツ。
「まあ、それだけじゃないんだけどね」「どーいうコトだよ?」エイルに問うフィム。
「一般参加者が作った料理を基準に審査する為だよ」と答えるエイル。
「あの、フィムくん…私、思ったんだけど…アリサおばさまじゃあ、レベルが高すぎて…」
「ああ、他の連中にはかわいそーだが…」とひそひそ話をするシーラとフィム…。
そんな会話が交わされている事の知らないトリーシャ達は…。
「なおっ、審査員は自警団団長直属部隊隊長のロビンさんでぇす〜」と紹介するトリーシャ。
「…なぜ…俺が…?」とぼやくロビン…理由は…クジで負けたから…。
一方…。
(…アリサさんの手料理も捨てがたいが…魔法使いどもの料理を食って、もしもコトがあったら…)とアルベルト…。
(…魔法使いの作るモンだからなぁ…味は最悪だろうなぁ…)これはティルト…。
(…あの人達に料理なんて…出来るのかしら…?)と失礼なことを思う美穂…。
そういう彼らの思いを無視するかのように…。
「それでは……はじめっ!」というトリーシャのかけ声を合図に一斉に料理に取りかかる6人である…。
それから、ほぼ70分後…。
「それでは、やめて下さいっ!」という瑞穂の声で一斉に手を止める…。
そして、
「では、ロビンさん、試食をお願いしますっ」これはトリーシャ。
「…はいはい…」と投げやりな声で返事するロビン…。
で、ヒルダが作った料理を口にする…。
「…………」…口にした途端、脂汗が流れる…その味は…優しく言うと『個性的な味』となり、情け容赦ない言葉では。
「…マズイ…」を口にするロビン…。
その側では…。
「離しなさいよぉ〜っ!!」「ヒルダ、落ち着いてってばっ!」とジュリオを中心とする『導き手』達の人海戦術によって
控室へと引きずられているヒルダ…彼女の手には…のし棒が握られていた…。
「………そ、それでは気を取り直してっ、次、お願いしますっ」…半瞬の間、ぼーぜんとしていたトリーシャがこう口を開く…。
「…そ、それじゃあ…」と恐る恐るさくら−年の頃、15、6歳の少女−の料理に手をつける…。
(…あれ? 結構、おいしい…)と一口食べた瞬間、こう思う…。
…という感じでロビンの審査が進んだ…ちなみに…『個性的な味』の料理はヒルダの作ったものだけだったという…。
そして、一通りの試食が終わり、
「それでは、ロビンさん、誰が一番ですか?」と問いかける瑞穂。
「それは、もちろん…………アリサさんですっ!」と答えるロビン。それと同時に。
わぁぁぁぁぁっ!!!
観客から歓声があがる…が…。
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「………え〜…ただ今の『お料理対決』ですが…ウェンディさんやヨーコさん、淑芳さんの審査員への『暴力行為』により…」
とここで言葉を切る瑞穂……その後を引き取って、
「…規定に照らし合わせた結果……ノーコンテストとなっちゃいました…」とジト汗をたらしながら続けるトリーシャ…。
「…あらら…今回もノーコンテスト?」「ちょっと待て。『今回も』って?」と麗芳のこの台詞を聞きとがめたフィムが尋ねる…。
「ん、毎回ね、一般参加者が一番になんのよね、何故か」「それでヨーコ達が怒っちゃってね」と答える麗芳とエイル…。
「……これ、やめるコトを勧めるぞ…俺としては…」「…うん…私もそう思うわ…」…呟くフィムとシーラ…。
一方、会場のすみっこでは…ボコボコにされたロビンがトーヤの手当てを受けていたという…。
「…次は…カルタ取り…でぇす〜…」とトリーシャ…ん? マリアちゃんはって?
え〜とぉ…。
「……いじいじ……」…と床に『の』の字を書いてイジけていた…。
そりゃあ…『魔法』が全然なかったからねぇ…。
ちなみに…これは札の代わりに…魔法−≪ルーン・バレット≫限定−で岩を砕くのだけど…。
結果は…お手つき連発で『札』が全てなくなり…ノーコンテストと相成った…。
中には…。
「え〜と…『出る杭は打たれる』…」と読み上げる瑞穂…その瞬間。
「せ〜の…」と合図する淑芳−彼女は麗芳の双子の妹である。
と同時に『そこだっ!!』と一斉に魔法を放つ面々。
「きゃあっ、どうして私だけっ!?」と10発近い≪ルーン・バレット≫を食らうウェンディ…トーゼン、お手つきであるが…。
「どーしてって…この札、どうみたって、あんたよ」と言い放つヨーコちゃんである…。
確かに…ウェンディの魔法技量は…24人いる導師長の中ではダントツだからねぇ…。