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バースディー・フェスティバル〜第5話−ファイナル・ゲーム−決勝戦〜
REIM[HP]


 「いたた…」「コレくらいガマンしなさいっ」とヒルダに薬を塗ってもらっているジュリオがうめき声を上げる…。
 「そんなこと言ったってさ、グスタフさんから≪レイ・ブラスト≫、くらったんだよっ!?」とジュリオ…。
 早々とベスト3が出揃ったBグループとは違い、Aグループはそこそこに試合が行われていた。
 その際、Aグループ・シード戦でジュリオとグスタフがぶつかり、≪レイ・ブラスト≫でジュリオが吹っ飛ばされたのだ。
 「…ジュリオくんの放った≪クリムゾン・ナパーム≫も…結構痛かったのだが…?」とジュリオの『最後っ屁』というべき
 ≪クリムゾン・ナパーム≫で吹っ飛ばされたグスタフが呟く…。
 「だからって、ブーストした≪レイ・ブラスト≫をぶつけることはないじゃないかぁーっ!!」と抗議する。
 「それはジュリオが弱いからでしょっ!」情け容赦のない言葉を浴びせるヒルダ…彼女は既にベスト6入りしている…。
 「うぅ…」…幼馴染−ヒルダのこと−のキツイ一言に言い返せないジュリオ…。
 「はいはい、夫婦ゲンカの練習はいいから静かにしてよ」と注意するヨーコ。
 「夫婦ゲンカって、どーゆうイミよーっ!!?」「ぎゃーっ!!!」…いきなり傷口を包帯で力一杯締めつけられて、悲鳴を
 上げるジュリオくんである…。

 一方、試合場では…。
 「それではっ、エイル導師長とさくら導師長の試合を開始するっ!」と宣言するリカルド…。
 だが…。
 「あ、審判、ちょっといい?」「なにかね?」「僕、ここで棄権するから」…のほはんとリカルドに宣言するエイル…。
 「………………この試合、エイル導師長の試合放棄により、さくら導師長の……不戦勝とする…」
 …このリカルドの判定を聞くや否や…。
 「なんでぇぇぇぇぇぇっ!!?」という麗芳ちゃんの悲鳴が控室から聞こえ、
 「ほ、ほぇ〜…た、助かったよぉ〜」というさくらちゃんの安堵の声が聞こえていた…。
   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 「…どういうことですか…?」と控室に戻って来たエイルに問いかけるウェンディ…。
 「僕の仕事は終わったからね」「仕事…?」「うん、ティアの魔法技量の確認」とことなげに答えるエイル。
 「あれで確認できたと言うつもり…?」と横目で睨むヒルダ…。
 「短期間で≪ライトニング・ジャベリン≫まで使いこなせるようになったんだよ? これ以上、僕が試合する必要がないよ」
 「確かに正論ですけど…」と渋々と同意するウェンディ…。
 「まあ、ティアがあそこまで修得してたのは…ちょっとびっくりだけどね」これはヨーコ。
 「そ、そうでしょうか…?」とおずおずと口をはさむティア…。
 「なにか問題でもあるの?」「え? ええ…」消え入りそうな声でティア…続けて…。
 「…魔力の配分がうまく出来てないから…」と答える…。
 「エイルさんが相手じゃあ、しかたがないよ」「あたしさぁ、『仕方がない』って言葉、キライなんだけど…?」とジュリオを
 半眼で睨むヨーコ…。
 「それはそれで仕方がないさ…今、ティアの持ってる魔力じゃあ、≪クリムゾン・ナパーム≫1発放つのが精一杯だしな」と
 ティアの頭を撫でながらフォローするナッツ。
 「だぁかぁらぁ、あたしは『仕方がない』って言葉……へ? ≪クリムゾン・ナパーム≫???」と怪訝な顔をするヨーコ…。
 「ああ、オレがティアに教えた魔法は≪クリムゾン・ナパーム≫までで、それも遅発発動が出来る程度までだよ」とナッツ。
 「………なぁんってもん、教えるのよ…?」とうめくヒルダ…。
 「…あの、ウェンディさん…『遅発発動』って…?」とフィムやシーラの代わりにドリンク係に駆り出されたシェリルが尋ねる。
 「読んで字のごとく、術者の好きなタイミングで魔法を発動できるんですよ」と答えるウェンディ。
 「それって、そんなに嫌なものなのですか…?」と尋ねずにはいられないシェリル…
 「そうですね…それが使えるの私達の中でも…今のところ、ナッツさんとティアさんだけですから…」と答えるウェンディ…。
 それに続けて、ヨーコがこう付け加える…。
 「まず、後先考えずに突進することしかできない麗芳はものすごぉくイヤがるでしょうね」
 …試合開始と同時に…『魔法は来ない』と思って突進したら…目の前に魔法が………だもんね…。

 「えと、これよりAグループ準決勝戦を行いますっ」とアナウンスするシーラ。
 そのアナウンスを受けて、フィールド・インするさくらとヒルダ…。
 「それではっ、はじめっ!」と審判役のティルトが右手を振り下ろす!
 「えと…”偉大なる…”」「先手必勝っ! ”Crimson=Napalm!”」ともたもたと≪ファイア・ボール≫の呪文を
 唱えているさくら目掛けて、速攻で≪クリムゾン・ナパーム≫を放つヒルダ。
 「”…マナよ…” え? ほ、ほぇぇぇぇぇぇっ!!?」と手にしていた『導きの杖』を横に振るう。
 (いったぁ〜いっ!!)と『樹の導師』ヴァーモント−『導きの杖』の一人−の『声』がその場にいる者達の頭の中に響き、
 「きゃぁぁぁぁぁっ!!?」というヒルダの悲鳴が聞こえた…。
   どっかぁ〜ん!
 「………≪クリムゾン・ナパーム≫の逆送によるヒルデガルド導師長の自滅により…さくら導師長の勝ちとする…」
 ………あまりにも……あっけなく…情けない試合であった……。

 「…あの…ナッツさん…さっきの≪クリムゾン・ナパーム≫ですけど…?」と尋ねるティア…。
 「ん? ああ、あれか…多分、さくらが杖で打ち返した時に…唱えていた魔力が注ぎ込まれたみたいだね…」と解説する…。
 その横では…。
 「…情けないわね…」「…うっさいわね…」と麗芳に力なく言い返すヒルダ…。
 その頃…。
 「…それでは引き続き、Bグループ準決勝戦を行います…」と微かに呆れた声でアナウンスするパティ…。
 「ん? 次はウェンディさんとヨーコの試合か…」「ええ。この試合の勝者とナッツさんとで…Bグループ決勝戦になります」
 試合場に視線を移したナッツの呟きにこう答えるティア…。
 「そう言えば、あの二人、一気にカタをつけると言っていたけど…?」と口を開くエイル。
 「なぜ?」「そりゃあ、ナッツと試合したいんじゃないの?」「そうかもな。あの二人以上の対人魔法を持っているのだからな」
 順にナッツ、エイル、グスタフである…。
 「はじめっ!!」と審判−今回はアルベルト−の合図とともに!
 『”Ray=Blast!”』とほぼ同時に魔力全開の≪レイ・ブラスト≫を放つ二人…。
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 「……えと…ウェンディ導師長ならびにヨーコ導師長の≪レイ・ブラスト≫による……」とシーラ…それを引き取って、
 「…ギャグみたいなダブルKOにより、Bグループ決勝戦はナッツ導師長の不戦勝とします…」と続けるパティちゃん…。
 ……アナウンスする二人の口調は…只々呆れていた…。
 一方、試合場のすみでは…巻き込まれて黒焦げになったアルベルトが…美穂の魔法治療を受けていた…。

 「…いたたた…」と自分で傷口に薬を塗るウェンディ…。
 「なぁんで、あそこで≪レイ・ブラスト≫なんか使うのよ…?」と同じく薬を塗っているヨーコ…。
 「それは、私の台詞ですっ!」と言い返すウェンディ。
 「まあ、一気に勝敗を決するとすれば、≪レイ・ブラスト≫しかないからね」と口をはさむエイル。
 「そだね、特にウェンディさんは≪メテオロイド・ストライク≫の使用を禁止されてるし」これはジュリオ。
 「あ、あの…≪メテオロイド・ストライク≫って…?」と周りの人間に尋ねるシェリル…。
 「ん、≪メテオロイド・ストライク≫っていうのはね…攻城戦または都市戦用に開発された攻撃呪文よ」と答えるヨーコ。
 「でも、結構使い勝手がいいもんだから、敵部隊を吹っ飛ばすとか、敵船を沈めることにも使われることがあるけどね」
 と補足するナッツ。
 「そ、そうなんですか…?」とちょっと身を引く−もちろん、ウェンディから…−シェリルちゃんである…。

 その頃…。
 「”大いなる力を秘めしマナよ、全てを…”」とさくら目掛けて、≪レイ・ブラスト≫の呪文を詠唱するグスタフ…だが…。
 「”Vortex!”」とさくらがグスタフの足元に放った≪ヴォーテックス≫によってバランスをくずし…転倒すると同時に
 「”Ray=Blast!”」と『力ある言葉』をつむいでしまうグスタフ…。
 …その結果…。
 「……魔法の暴発によるグスタフ導師長の自爆により、Aグループ決勝戦はさくら導師長の勝ちとする…」とぷすぷすと煙りを
 上げているグスタフを横目に見ながら…さくらちゃんの勝ちを宣言するティルトくんであった…。

 「っつ〜…」とうめき声を出すグスタフ…。
 「しっかし…あそこでさくらが≪ヴォーテックス≫を出すとはねぇ」と感心するヨーコ。
 「うん、エイルさんが『相手の足元に≪ヴォーテックス≫を放てば、おもしろいよ』って言ってたから…」答えるさくら。
 その瞬間、
 「貴様の仕業かぁぁぁぁっ!!?」とエイルの首にチョークスリーパーをかけるグスタフ…。
 「でもさ、次、たいへんだね…」「ほえ?」「次の相手、ナッツさんですよ」順にジュリオ、さくら、ウェンディである…。
 「なんで?」「な、なんでって…あんたさぁ、ナッツと淑芳の試合見てなかったの…?」呆れた口調で問うヒルダ…。
 「そーいや、そん時、パニクってたでしょ?」とヨーコ。
 「あのさ、なんで淑芳ちゃんがミイラ女してるか知ってる?」「ううん。なんで?」と麗芳の質問に答える…。
 「ナッツさまの≪スカーレット≫で吹っ飛ばされたんですっ!」とわめく様に答える淑芳。
 「……今…≪スカーレット≫って……言った…?」…恐る恐る聞き返すさくら…。
 「うん、言ったよ。ね、淑芳ちゃん?」「ええ、言いましたわ」…と聞きたくもない答えを返す双子−麗芳と淑芳のこと−達…。
 その直後、さくらの口から…。
 「ほ、ほぇぇぇぇっ!!? そんなの当たったらっ、さくら、死んじゃうぅぅぅぅぅっ!!!」という悲鳴がほと走った…。

 それから、しばらくして…。
 「これより、ナッツ導師長とさくら導師長により、決勝戦を行うっ!」と宣言するリカルド。
 「うぅ…やっぱり、やだよぉ〜」とこの期に及んでも泣き言を言ってるさくら…。
 一方…。
 「やれやれ…弱い者イジメは好きじゃないんだけどなぁ…」と呟くナッツ…。
 「はじめっ!!」そんな二人を無視するかの様に審判の声があがる。
 「う〜ん…どうしたものか…?」と『導き杖』を手に思案するナッツ…。
 「ウェンディさんやエイルが相手なら…≪スカーレット≫でケリを着けたんだけど…」と呟く…。
 そんなナッツをよそに…。
 「ど、どうしよぉ…?」こちらも杖を握り締めながら呟くさくら…。
 「≪ファイア・ボール≫、効きそうにないし…」思案気な顔になる…。
 考えぬいた末…。
 「”Rune=Barret!”」と≪ルーン・バレット≫を放つさくら。
 「おっとっ、”Needle=Scream!”」≪ニードル・スクリーム≫で≪ルーン・バレット≫を粉砕するナッツ。
 「……ほえ〜…」と感心するさくら…。
 「それじゃあ…”Heat=Shower!”」お返しとばかり、≪ヒート・シャワー≫を放つナッツ。
 「ひ、ひぇ〜っ!? ”Fire=Ball!”」≪ファイア・ボール≫の爆風で≪ヒート・シャワー≫を防ぐ。
 それだけでなく。
 「なっ!?」口述なしで飛んで来た2発目の≪ファイア・ボール≫を杖で横なぎに振って誘爆させるナッツ。
 (痛いじゃないですかっ!?)抗議する『理の導師』エイザード…。
 「まいったなぁ…≪ファイア・ボール≫の連射発動かぁ…」と呟くナッツ…。
 ナッツの『遅発発動』に対して、さくらは『連射発動』を得意としていた…。
 「う〜ん……しょーがないなぁ…」と呟くと「…ちゃんと受身とってね…」「ほえ?」怪訝な顔をするさくら…。
 「”Ray=Blast!”」と≪レイ・ブラスト≫を放つナッツ。
 「ほ、ほぇぇぇぇっ!? ”Fire=Ball!”」連射発動する余裕もなく大慌ててで≪ファイア・ボール≫を投げつける。
   どっごぉぉんっ!!
 試合場中央で爆発がおこる…。
 「けほけほ…た、助かったの……かな…?」と目を凝らしてナッツを方を見るさくら…まさにその時!
 「”Vanishing=Nova!”」と魔法を放つナッツ。
 「い、いやぁぁぁっ!!」杖を横に振って、≪ヴァニシング・ノヴァ≫を防ごうとするさくら。
 (だ、だめぇーーっ!!)慌てて止める『樹の導師』ヴァーモント…でも手遅れだった…。
   どっかーんっ!
 「きゃあーーーっ!?」爆風で後ろに飛ばされるさくら…。
 (自分で≪ヴァニシング・ノヴァ≫を爆発させてどーするのぉぉぉっ!?)と念話で絶叫(?)するヴァーモントである…。
 …≪ヴァニシング・ノヴァ≫を防ぐのは簡単である…横に跳んで逃げればいいのだから…。
 最も…さくらもタダで吹っ飛ばされたワケではない。
 「こ、このぉっ! ”Carmine=Spread!”」吹っ飛ばされながらも反射的に魔法を放つさくら。
 そして…。
   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 「…双方、相打ちにより…この試合、引き分けとする…」と判定するリカルドの姿があったという…。
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