エンフィールドの街に冬のとばりが落ちはじめた、ある晴れた日の昼下がり…。
「…今から2500年ほど前、約1200年間続いた『千年帝国(ミレニアム)』は、集積した魔力の大規模な暴走によって…」
と『さくら亭』で歴史書を片手にリオに歴史を教えているナッツ…。
そんな二人の様子を見てか、
「さすがね、考古学者を目指していただけのことはあるわね」と茶々を入れるパティ。
「まあね、趣味だけじゃなく正規の魔法授業でもやってたしね」とパティに答えるナッツ。
「へぇ〜、魔法の勉強の中でも歴史、教えてくれるんだ?」「そだよ、魔法技術だけじゃなく、歴史も必須だからね」
と答えるナッツ。
その一方…。
「だってさ、マリア」「ぶ〜☆ どーして、そこでマリアを見るわけっ!?」とフィムのからかいに拗ねるマリア…。
「あははは、あんたってば、魔法ばっかで歴史の講義、エスケープしてるって聞いたわよ」これはパティ。
「それ、誰から聞いたのよっ!?」「ん、トリーシャからよ」「あと、瑞穂も言ってたな」順にマリア、パティ、フィムである。
……『いつか、トリーシャと瑞穂の二人、魔法でふっ飛ばすっ!』…コブシを握り締めて固く心に誓うマリアちゃんである…。
………でも、結局は…『自爆』が関の山だと思うけど…。
今、『さくら亭』には…フィム、ナッツ、パティ、マリア、リオの5人が勉強してるか、くつろいでいた…。
「あ、あのぉ…?」「…ほっとけ、リオ…でだ…」と勉強を続けるナッツ…。
「しかしまあ…ハタから見てると…『仲のいい兄弟』にしか見えないな…」と二人を見て、こう口を開くフィム…。
「あははは、そうね」これはパティ。
「そうか?」「そ、そうかな…?」と首を傾げるナッツとリオ…。
「それにしても…いろんな歴史書持ってるな…お前は…」ナッツに問いかけるフィム。
「うん、ボク、ナッツさんのお家にいったことがあるんだけど…歴史書や魔法書がたくさんあったよ…」と代わって答えるリオ。
「え? 魔術書っ!?」聞いた瞬間、碧色の瞳をキラキラさせるマリア…。
「…こーゆう時は…耳ざといわね…」呆れるパティ…。
「見せてやってもいーけど、ちゃんと返せよ」これはナッツ。
「あのねっ、マリアが盗みなんかするワケない…」と口を開くマリアだったが…。
「…タナトス…」ぽそ。
「ぎっくぅぅぅっ!!!」…このフィムの何気ない『呟き』で心臓が思いっきり跳ね上がるマリア…。
それを見て、面食らうナッツ、パティ、リオの3人…。
「どーしたのよ?」「ななななんでもないないっ!!」…パティの問いにどもるマリア…。
「なあ?」「さあ、なんでだろうね」と涼しい顔でハーブティーを口にするフィム…でも、心の中では舌を出していたりする…。
「……覚えてなさいよ……」…ジト目でフィムを睨むマリアちゃんである…。
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「あの、ナッツお兄ちゃん、タナトスって…確か…?」と尋ねるリオ…。
「ん? ああ、『魔法王』タナトスか…オレも彼が書いた魔導書を読んだコトはあるけどね…って、言うか、1冊持ってるよ」
と事なげに言うナッツ。
「ば、バカっ!?」「ちょ、ちょっとっ!?」それを聞いてアセるフィムとパティ…。
そして、フライパンを振り上げる−目標は金髪娘−が、
「それ、譲って☆」……コレ、誰の台詞なのか…言うまでもないだろう……。
「…遅かった…」…急に肩の力が抜けてくパティ…。
「いいけど…一つの呪文が50ページにわたって書かれているだけだぞ…?」と答えるナッツ。
「…あのな…そんな物騒なもん、マリアに譲るなよな…」と小声で抗議するフィム…。
「心配するなって…呪文トチっても反動は頭にヤシの実が落ちるだけだしね」「…なによ、それ…?」呆れるパティ…。
「あ、あの、マリアちゃん…やっぱり、やめた方が…」「ぶ〜☆ マリア、ぜーったい、覚えてやるもんっ!」リオの一言で
かえってムキになったりする…。
「そうだな…そしたらモーリスさんが喜ぶかもな」とナッツ…。
「へ? なんでパパが喜ぶの???」「ああ、その呪文ね、肩こりを治す呪文なんだよ」とマリアに答える…。
「………やっぱり…いらない………素直に肩もんであげたほーが早いもん……」…確かに正論であるが…って言うか、そんなんで
50ページも使うなと言いたい…。
一方…。
「ま、マリアちゃん、お熱ないよねっ!?」「マリアっ!? あんた、もしかして悪いモンでも食べたのっ!?」
「マリアが魔術書をいらないって言うなんて…この世の終わりかっ!?」と口々にこう言うリオ、パティ、フィムの3人…。
「ぶーっ!! なによっ、そのリアクションはっ!? マリアが『魔術書いらない』って言うのがヘンだって言うのっ!?」
この抗議に…一斉に頭を縦に振る3人…。
「ぶーっ!!!」…あ? 拗ねちゃった…。
同時刻、ジョートショップでは…。
「…はあ…」とテーブルに頬杖をついて、元気なさそうに溜息をもらすシーラ…。
彼女の首には誕生日にもらった−当然、フィムから−ペンダントをかけられている…。
「…シーラさん、元気ないね…どうしたんだろ…?」と彼女の様子を見て、こう呟くトリーシャ…。
今、ジョートショップには、シーラ、シェリル、トリーシャ、ローラの4人が留守番をしていた…。
「…はあ……フィムくん、早く帰って来てくれないかなぁ…」と溜息混じりに呟くシーラ…。
その瞬間、
「てへ☆ あたしの勝ちぃ。みんな、払って払って♪」とシェリルやトリーシャに向かって手を出すローラ。
その直後、白くて繊細な細腕が……彼女の首に…回されていたりする…。
「…ねえ、ローラちゃん…私やフィムくんをネタに賭け、しないでくれないかな…?」…除々に腕に力がこめられる…。
「…あは…あははは……………きゅう……」……ジャスト30秒で…締め落とされたローラちゃんであった…。
≪Fin≫
[あとがき]
ナッツ「20話に達したようだね…」
REIM「ええまあ…本当は15話くらいで終わりかな、と思っていましたけど」
フィム「しかし、第20話目が…久々のヒマつぶし話とはね…(呆)」
シーラ「…そうだったの…?(呆)」
REIM「それは…言わないで欲しいなあ…(苦笑)」
ミュン「…出番なかった…(ジト目)」
REIM「それは……(言葉に詰まる…)」
トリーシャ「まあまあ、それくらいで許してあげたら…(小声で)結局は『制裁』されるんだし」
フィム&シーラ&ナッツ&ミュン「……はあ……」
REIM「???」
ずごっ!(×2)
ローラ「よっくもっ、あたしをトンでもない目にあわせてくれたわねっ!!」
マリア「それとっ、マリアのこと、散々バカにしてっ!!」
REIM「………(気絶中…)」
トリーシャ「というワケでぇ、ボクの勝ちだよ。4人ともちゃんと払ってね♪(手を出す)」
マリア&ローラ「賭けるなぁーーっ!!!」
づぎゃっ!!(×2)
トリーシャ「はうっ!!(瞬時に気絶…)」
フィム&シーラ&ナッツ&ミュン「(絶対に…トリーシャ(ちゃん)の自業自得だね…)」