新年も近い12月のある日の孤児院では…。
「ふっふ〜ん♪」とはちきれそうな笑みを浮かべて、庭で洗濯物を乾しているセリーヌ…。
「ふわぁ〜」「あらぁ〜、ローラさん、お昼寝はもういいのですかぁ?」とアクビしながら−さっきまでお昼寝をしていた−庭に
やって来たローラに話しかける。
「うんっ、それよりもセリーヌさん。なんか嬉しそうだけど、なんなの?」と尋ねる。
「あらぁ〜、わかりますぅ?」「まあね、で、なんなの?」とわくわくして答えを待ってるローラ。
「はぁい、あと1週間もしたら私のお誕生日なんですぅ〜」と嬉しそうに答えるセリーヌ。
「あは、そうだったね♪」とローラ…すると何かを思い出したかのように…。
「あ、でも今年はセリーヌさんも入れて3人連続だから…瑞穂ちゃんのお誕生日にまとめてパーティするって言ってたっけ」
こう続ける…。
「………」「…セリーヌ…さん…?」…急に黙ってしまったセリーヌにおずおずと声をかける…。
「…しくしくぅ…アリサさん達とお知り合いになってから、自前のお誕生日会してもらったことがありません…」
「ああん! 泣かないでよ、セリーヌさぁん」としくしくと泣き出したセリーヌを慌ててなだめるローラちゃんであった…。
それから…正午すぎの『さくら亭』でのこと…。
「はあ? セリーヌが?」聞き返すような声を出すパティ。
「そーなのよ」と頷くローラ。
「ふぅん、セリーヌが、ね…」「よっぽどショックだったんだな」と口々にいうパティとティルト…。
「おい、オマエだってセリーヌの誕生日、勘違いしてたんだろーが」とティルトに突っ込むアルベルト。
「…痛いトコ、突くな…お前は…」…ぐさっと来たらしい…。
「ま、仕方がないんじゃないかい。3年前からアレフの誕生日にまとめてやってたしね」これはリサ。
補足すると…12月は4日のフィムを別にして…瑞穂(24日)、アレフ(25日)、セリーヌ(26日)と3日連続、誕生日が
続いているのだ…パーティを開く準備だけでも飛び石だったクレア、ミュン、ローラ、クリスの比ではない…。
「そりゃそーだけどぉ…でもやっぱ、セリーヌさん、かわいそうだしぃ…」とすがるようにローラ…。
「はいはい、わかったわかった。パーティを26日にずらせばいいんでしょ?」とローラの真意を察してか、こう答えるパティ。
「ま、妥当な線だな」「ああ…瑞穂の方は大丈夫だろうさ」「あと、アレフもね」これらはアルベルト、ティルト、リサである。
すると…。
「安受けあいしていいのか?」と厨房から父親の声が聞こえてくる…。
「え? 父さん、それ、どーゆう意味?」「確か…美穂隊長、25日から出張じゃなかったのか?」という答えが返ってくる…。
これを聞くや否や。
「あーーーっ!!?」「やべっ!? すっかり忘れてたぜっ!」「だったら瑞穂のヤツが納得しねーぞっ!」「まいったね…」
順にパティ、アルベルト、ティルト、リサである…。
「そ、そこをなんとかぁ〜」情けない声でお願いするローラ…。
「そうは言ってもなぁ…」「ああ、今度は瑞穂に泣きつかれるな…あー見えて姉思いだしなぁ」と答える自警団員達…。
「確かにね…美穂が仕事にしてるのに自分だけ楽しむようなコじゃないしね」とリサ…。
「じゃあっ、セリーヌさんのことはどーでもいいって言うのっ!!?」とティルトにくってかかるローラ。
「そ、そこまでは…言ってないけど…ただね…俺達にも都合ってもんが…」「おにいちゃんやパティちゃんのバカぁーっ!!!」
と怒って『さくら亭』を飛び出すローラ。
ばぁんっ!!
「きゃっ!?」「だ、大丈夫ですかっ、シーラさんっ!?」「…いったぁ…」と涙目で鼻を押さえてるシーラと心配そうな顔した
ミュンが店内に入ってくる…。
「大丈夫なの、シーラ?」「ええ…ところでパティちゃん。ローラちゃん、怒ってたようだけど…どうしたの?」と尋ねる…。
「うん、実はね…」と今まであったことを話すパティである…。
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「…そうだったんですか…」「…それで…ローラちゃんを怒らせちゃったわけなんだ…」と話を聞き終えて、こう口を開く…。
「そうよ…あちらを立てれば…こちらが立たず…よ…まったく…」溜息まじりに呟くパティ…。
「で、なんか、いい手はないかい?」とシーラやミュンに尋ねるリサ。
「き、急にそんなこと言われても…」口篭もるシーラ…。
「あの…」これはミュン。
「あ? なんだ?」「何も誰かのお誕生日にまとめる必要はないんですよね? だったら…」「『だったら』?」と先を促す。
「瑞穂さんとセリーヌさんとで別々に祝ってあげれば…?」「………盲点だったね…」と納得するリサ…。
「でもさぁ、場所は? 流石にうちは2日も貸切に出来ないわよ?」とパティ。
「セリーヌさんのはジョートショップでいいと思いますよ」「あ? しかし、アリサさんがいいと言うかな?」とアルベルト。
「それは問題ないんじゃないかしら? 多分、二つ返事で賛成すると思うし…」これはシーラ。
「ま、場所の件は置いとくとして…ローラには誰が話すんだい? こっちの方が重大だよ?」と問題を提起するリサ…。
「あ、それなら私が」「そうね、ローラちゃん、ミュンさんの言うことなら素直に聞くしね」「じゃあ、任せたわよ」順にミュン、
シーラ、パティである。
…話はまとまったみたいだけど…アレフはどーするんだ…………って、アイツなら問題なしか…どーせ、話したら話したところで
一つ返事で『OK』だろうし……(←薄情な台詞…)。
時は過ぎて…26日の昼前のこと…。
既に…24日に『さくら亭』にてバースディーパーティが開かれていた…最も瑞穂と由羅がクリスの取り合いで暴れたけど…。
「…はあ…」と『心ここにあらず』かのように溜息をつくセリーヌ…。
「セリーヌさん、ちょっといい…って、なにやってんのっ!?」とセリーヌの手元を見て驚くローラ。
「…あらぁ…ローラさん…? 何って…お昼ごはんを…」「だ、だからって、まな板まで切らないでよっ!?」「あらぁ?」
…見事に…まな板が…細切れになっていた…。
「『あらぁ』ってねぇ…それよりもさ、夕方にジョートショップに来てくれる?」とローラ…。
「はあ…夕方…ですか…?」「そ、必ず来てよね」「はあ…何があるのですか?」「それは…来てからのお楽しみ♪」とローラ。
「はあ…わかりましたぁ…」と気のない返事を返すセリーヌである…。
夕刻、ジョートショップの前では…。
「…なんでしょうか…ジョートショップに来て下さい…なんて…?」と道に珍しく迷わず目的地に来たセリーヌがこう呟く…。
からんからん♪
と扉を開けるや否や。
『お誕生日おめでとうっ! セリーヌ(さん)っ!!』と声をかけられる。
「…あのぉ…私の……ですかぁっ!?」最初はきょとんと…次にびっくりした顔で尋ねるセリーヌ。
「うんっ、もっちろん!」と本人以上に弾んだ声で答えるローラ。
「でもぉ〜、お誕生日会は一昨日に…」というセリーヌの台詞をさえぎるかのように、
「ローラちゃんがね、お誕生日会してもらえないセリーヌさんが、なんか可哀相だって言っててね」と事情を口にするミュン。
「だからさ、みんなに協力してもらったってワケ」とパティ。
「嬉しいですぅ〜」と言って、ローラを思いっきり抱きしめるセリーヌ…。
しかし…。
ぎゅうっ!
「わっ!? 痛いっ! いたたたたっ!!」と彼女に最大腕力で抱きしめられ、手足をばたばたさせるローラ…。
「ローラさん、ありがとうございますぅ〜」嬉しさのあまり、ローラがすごく痛がっているにもかかわらず、更に力を込めて
抱きしめるセリーヌ…。
「セリーヌさん、お願いだから力を…………きゅう……」…セリーヌちゃんの腕の中で…気を失ったローラちゃんであった…。
≪Fin≫
[あとがき]
ローラ「…あたし、お花畑が見えちゃった…」
REIM「まあ、セリーヌさんの腕力で抱きしめられたらねぇ…」
セリーヌ「ごめんなさい、ローラさん」
ローラ「ううん、あたしはヘーキだよ」
パティ「それでさ、この話って確か…」
REIM「ええ、後でキャラ設定を見直したら、3人連続で誕生日が続いていたのに気づいてね」
ローラ「ふぅん、そーだったんだ…」
REIM「でもまあ、誕生日ネタは、これで最後にしたいですけどね…(苦笑)」
セリーヌ「そうですねぇ〜、このお話も含めて4話もありますしねぇ〜」
ローラ「それで、次はどーいうお話なの?」
REIM「そうですね……次はマリアさんが活躍するお話になりそうですね」
ローラ「…また、マリアちゃんの…自爆ネタ…?」
づぎゃっ!
ローラ「いったぁいっ!」
マリア「それっ、どーゆうイミよっ!? ローラっ!!」
セリーヌ「まあまあ、マリアさん。自爆ネタでもお話に出ているだけでもいいではありませんか」
マリア「フォローになってなぁいっ!!」
セリーヌさんにフォローを期待すること自体、無謀だと思うぞ…。