中央改札 交響曲 感想 説明

Secret Inquiry ≪前編≫
REIM


 1月の暮れ、自警団第二部隊長室では…。

 「…ふう…今日はこんなもんかな…?」と溜まった書類を整理し終えた美穂が軽く背伸びした…。
 そして、ついさっき届いた書類をチェックしようとして手を伸ばすと、
   ぱさ…
 と古ぼけた冊子が床に落ちた…。
 「? あ、これって…そっかぁ、もう3年も過ぎたんだ…」床に落ちた冊子のタイトルを見て、こう呟く美穂…。
 …その冊子には美穂の筆跡で…『美術品盗難事件調査報告書』と書かれていた…。

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 時は変わり…4年前の6月末のこと…。

 「コーレインさんっ!! 昨日、フィム様の邪魔をしたそうですわねっ!!」当時、第三部隊のチーフの一人であったカリンが
 路上で第一部隊のアルベルトにこう問い詰めていた。
 「犯罪者のジャマをして、何が悪いっ!!?」と言い放つアルベルト。
 「んまあっ!! フィム様を侮辱なさるとはっ!!?」「ふんっ、何度でも言ってやるっ!! アイツは犯罪者だっ!!」
 そう言われ、怒りに身体が震えるカリン…そして、負け惜しみなのか、
 「……ま、あっさりとフィム様に叩き潰されたのでしょうけどっ」と嫌味たっぷりに言う…。
 こうなると…売り言葉に買い言葉…。
 「キサマぁっ!! ここで叩き潰してやるっ!!」「望むところですわっ!!」と身構える…。
 その途端…。
 「総員退避ぃーっ!!」「防空頭巾をかぶってぇーっ!!」と蜘蛛の子を散らすように逃げ去る人々…。
 『”ジ・エンド・オブ・スレッド!!”』と双方、≪ジ・エンド・オブ・スレッド≫を使い…その余波で…彼らの近くにあった
 名もない店が一軒、文字通り潰れた…。
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 「…ふう…参りましたね…」と肩を揉みほぐすベケット団長…。
 さっきまで…被害にあった店主に怒鳴り込まれていたのだ…しかも頭から湯気を出した状態で…。
 「…さて、どうしたものですか…?」思案顔になる自警団長…。
   こんこん
 「失礼する」と返事も聞かずに団長室に入るノイマン第三部隊長…彼の後ろにはデュルセル第二部隊長もいる…。
 「おや、どうしたのですか?」と丁寧な口調で問いかけるベケット団長。
 「うむ、今日の乱闘の件で来たのだが」と答えるノイマン。
 「もう、お耳に入りましたか?」「ああ、市民からの苦情は必ず私のトコを通るからな」これはデュルセル。
 「そうですか…やれやれ、参りましたよ…アルベルトくんやカーテローゼくんのお二人には…」と溜息混じりに団長…。
 「ふむ…今月で店舗2軒、屋台4台だからな…」「やはり、捜査から第三部隊をはずすべきか…」これまた先程の団長同様に溜息
 混じりにデュルセルやノイマンが呟く…。
 「アルベルトくんも捜査からはずす必要もあるでしょう…そうしないと第三部隊の隊員達も納得しないと思います」と団長。
 「ああ。元はと言えば、フィムリード君への妨害が原因だったしな…ところで、そのフィムリード君だが…?」とノイマン。
 「まったくと言っていいくらい反証集めはしておらん。むしろ、10万Gを稼ぐ事に集中しておる」答えるデュルセル。
 「それはそれで困りましたね…何とかなりませんか?」「それが出来れば、こんな苦労はせんよ…」苦笑混じりにデュルセル…。
 「それでは、自警団以外は誰も調べていないと…?」「いや、シェフィールド夫人が独自に反証集めをしておったが…?」
 「まあ、彼女にとってはアリサさんは幼馴染だ。じっとしておられないのだろう」順にベケット、ノイマン、デュルセルである。
 …彼らとて、全てを見通せる神でもないし、万能でもない…セーラ・シェフィールドが盗難事件の反証集めをしている一番の
 『動機』が別なところにあった事に気づくよしもない…。
 それはさておき…。
 「いっその事、第二部隊を捜査に投入しますか?」と二人に提案するベケット団長。
 「それはまずいだろう…それにフォスターくんが黙って引き下がるとも思えん」と反対する第二部隊長。
 「いや、第二部隊を投入した方がよい。このままでは捜査自体が行き詰まるかもしれん」これは第三部隊長。
 「しかしですな…」「無論、大人数で大々的にやる必要はないがな」「小人数で秘密裏に…ですか…?」…ノイマンの真意を
 汲み取ったベケットがこう口を開く…。
 「ああ。それでな、それを誰がやるか、だが…」

 ところ変わって、自警団事務所の地下にある資料室では…。
 「チーフ、ちょっといいですか?」と若い隊員が美穂−当時、第二部隊資料室チーフ−に話しかける。
 「なに?」「ショート財団の財務状況を調べていたのですけど…去年の夏頃から多額の使途不明金が発生しているんですよ…」
 −表向きは『各種資料の管理』という事になっているが…その実態は『脱税摘発』を主任務としている部署なのだ…。
 「どれどれ…あ、ほんとだ…えと、額は…32万G…か…」と書類を覗き込む美穂…続けて、
 「内訳はわかるの?」「いえ、そこまでは…ただ、うち10万は今年の3月末に発生しています」という隊員の報告を聞いて、
 何か、引っ掛かるものを感じる美穂…。
 「う〜ん…なぁんか引っかかるなぁ…」考え事をする時の癖なのか、上の方を向いて頬を人差し指でとんとんと叩く…。
 「それでどうしますか?」「そうね…引き続き調査しておいて」差当たり、こう指示する…。
 その時、
 「美穂さん、団長と隊長がお呼びです。すぐに団長室に来て下さいとの事です」と他の部署の隊員が伝えに来る…。
 「え? あたし?」「はい」「そう、わかったわ」
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 「…失礼しました…」と挨拶して、団長室から退室する美穂…そして…。
 「…どうしよぉ…大変な任務、受けちゃったなぁ…」と溜息をもらす…。
 一方、団長室では…。
 「これでいいかね?」「ええ、彼女でしたらちゃんと事件を解決してくれますよ」とノイマンに答える団長。
 「しかしだな…」と言いよどむデュルセル…。
 「デュルセル隊長とっては目に入れても痛くない程、大切なお孫さんという事はわかっています」とベケット。
 続けて、「ですけど、この困難な任務を達成出来るだけの能力を有している人となると…」「美穂君しかいないという事か…」
 「ええ、ノイマン隊長のおっしゃる通りです」と団長に言われ、今まで巧妙に隠された脱税の数々を美穂がことごとく暴いた事を
 思い出すノイマン…。
 「それはわかっておるつもりだが…」「君には悪いが…やはり適任かもしれん」「そこまで言うなら…もう何も言わん…」
 …無理矢理、自分の感情を押さえる事に決めたデュルセルである…。
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