−Rhapsody−バレンタイン・ラプソディー |
REIM |
2月14日午前0時、シェフィールド邸。
自室でパソコンに向かっていたフィムの耳に。
こんこん
と控えめにドアをノックする音が聞こえる。
「ん? どうぞ」とディスプレイから顔を上げて声をかけるフィム。
「よかった…まだ起きてたんだ…」「どしたの、シーラ?」と部屋に入って来た従妹に声をかける…。
「はい、これ」「あっと、もうそんな時節か…」綺麗にラッピングされた細長いもの−もちろんチョコレート−を受け取る…。
そして、ラッピングをとき、チョコ一欠けらを口の中に放り込む。
「今年も時間通りだね」と時計を確認するフィム。
「うふふふ…」と嬉しそうに微笑むシーラ…。
「でもね…」「?」「遅刻しないでね…今年も遅刻したら7年連続なんだから…」とフィム。
…バレンタインデーに限り、遅刻をしているらしい…。
「…もうぉ……フィムくんの…いじわる…」ちょこっとだけ拗ねちゃったシーラちゃんであった…。
午前9時頃、大学部のロッカールームでは。
「ルシードか…おはよう」「ああ、おはよ」とアルベルトに挨拶を返すルシード。
「…ずいぶん、眠たそうだな…?」「まあな…レポート書いていたんでな…」「…相変わらずだな…」呆れるアルベルト…。
「やかまし。お節介焼きの妹がいるオメーと一緒にするな」とロッカーを開けるルシード…すると。
どさどさどさぁっ!
「……なんだ…これは…?」…鳩が豆鉄砲をくらった顔をする…。
「…ひい、ふう、みい………大漁だな、おい?」「…どーゆうイミだ…?」とアルベルトに尋ねるルシード…。
「…なあ…まさか…まさかとは思うが…今日、どーゆう日なのか知らんのか…?」「??…どーゆう日だよ、今日は…?」
…この瞬間、アルベルトの意識が別世界に旅立ったという…。
同時刻、高等部3Aの教室では…。
「…シーラくん…廊下に立っていなさい…」「………(半泣)」
…結局7年連続の遅刻をしてしまい…担任のリカルド先生に『廊下行き』を宣告されちゃったシーラちゃんであった…。
放課後、中央広場では…。
「…ったく…アレフもそーだけど…フローネの早とちりには…」と溜息をもらすパティ…。
「パティ様、何があったのですの?」と尋ねるクレア。
「え? ううん、何でもないわよっ。それよりも今年も遅刻したんだって、シーラってば?」「ええ」と答えるクレア…。
「…うぅ…パティちゃんやクレアさんのいじわる…」…イヤな事を思い出してしまうシーラ…。
その横から。
「パティさん、シーラさん、クレアさん、どうして、今日はみなさんチョコレートを持っているのですかぁ?」これはティセ。
「え、ティセちゃんは知らないの? 今日はね…」とバレンタインデーの事を説明するシーラ…。
「はや? そうなんですかぁ?」と納得したように見える…が…。
「でもでもぉ、ティセも欲しいですぅ〜」「………ティセらしいわ……」「うわぁい、パティさんに誉められちゃいましたぁ〜」
…それは…絶対違うと思うぞ…。
丁度その時に。
「お前、ほんっとに知らんのか…?」「だぁかぁらぁ、なんなんだよっ?」「せんぱぁい〜(泣)」と声が聞こえて来る…。
「あら? 兄さまとルシード様、フローネ様ですわ…?」「うげっ!?」このクレアの台詞で…いやそぉ〜な顔になるパティ…。
「どうしたの…?」「シーラさん、聞いて下さいよぉ〜」とシーラに泣きつくフローネ…。
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「はあっ!? あんた、それマジで言ってんのっ!?」と素っ頓狂な声を出すパティ…。
「し、信じられないわ…」「る、ルシード様…らしいですわ…」…心を込めて呆れるシーラとクレア…。
「…んだよ…その反応は…?」「…トーゼンの反応だと思うぞ…」と疲れたように突っ込みを入れるアルベルト…。
「そうですよ、センパイ…」…ルシードに義理チョコを渡して…『なんだ、これは?』と言われたフローネが同意する…。
「ったく…あ? どーした、ティセ?」「…ご主人さまぁ…ティセ、それ欲しいですぅ…」…もの欲しそうにルシードの持つ
チョコを見つめているティセ…。
「んあ? これか? ほれ、お前にやるわ」とチョコの山(既に30個以上…)を渡す…。
「わぁ〜いっ♪」と早速ぱくぱくと食べるティセ…。
「……あんた…トコとん…女心が理解出来てないわね…」とほんの一瞬だけ殺意が浮かんだパティ…。
「あ、そだ。パティちゃん、さっきのチョコ、どうしたの?」「ぎくっ!!」…とぉってもイヤなコトを思い出すフローネ…。
「え?」と怪訝な顔をするクレア…。
すると…さっきの仕返しなのか、
「くす…クレアさん、フローネさん、実はね、パティちゃんはね…」…意味ありげな顔をして二人に囁くシーラ…。
「ちょっとっ、シーラっ!! そっから先、言ったら絶交だかんねっ!!」とわめくようにさえぎるパティ。
「でもぉ〜、パティちゃんが悪いわけじゃあ…」「それでもダメったらダメっ!!」…でも…。
「あの、シーラ様。それはどういう事ですの?」「あ、私も聞きたいです」…かえって興味深々の顔になるクレアとフローネ…。
「ん〜、どうしようかなぁ〜?」と思わせぶりの顔になるシーラ。
すると…。
「…あ…」と言う呟きが聞こえて来る…。
そちらに視線を移すと…一人の女子生徒が…急に時計塔の影に隠れるのが見える…。
それを見て…「「「???」」」と怪訝な顔になる一同…。
一方…件の女子生徒はというと…『こっちに来て』と手招きなんかをしていたりする…。
「…なんだ、一体…?」とアルベルトが彼女の方へと歩いて行く…。
「センパイ、結構もてますね」「あのな…オレと決まったワケじゃねぇだろーが。アルベルトだっているんだぞ」とルシード。
「そうですわ、兄さまだって、結構素敵な方ですわ…(うっとり)」これはクレアちゃん…。
「…単細胞だけどな…(ぽそ)」「ルシード様、何かおっしゃいましたかっ!?」…知らん顔してたりする…。
ちなみに…アルベルトと女子生徒はというと…何か二言三言話をしてたかと思うと…細長く四角い物を受け取り…こちらの方に
戻って来てたりする…。
そして…。
「高等部1Aのエレナからだってよ、パティ」
ずしゃっ!!
その一言で思いっきりずっこける…。
「これで12個目の収穫ね、パティちゃん♪」「わぁーっ!! それ、言っちゃダメーっ!!!」と慌ててシーラに抗議する
パティだが…時既に遅し…。
「え? それじゃあ…さっきのチョコも…?」「ふ、ふしだらですわっ!!」…これはフローネとクレア…。
しかも…。
「ふみゃ? パティちゃん、チョコもらったの?」何時からそこにいたのか分からないが…垣根の上からひょこっと首を出して、
こう問い掛けるメロディ…。
「…だってよ…」…辛うじてこう呟くルシードくん…。
…この後…学園中にどういう噂が流れたのかは………とても怖くて書けない……。