中央改札 交響曲 感想 説明

ただ一人の少女のために…≪前編≫
REIM


 時は春の息吹が聞こえ始めて来る3月の頃…。

 「今日は割と早く終わったな…」「ええ。それでね、お昼どうするの?」「う〜ん、そうだなぁ…」とまあ仕事帰りなのか、
 只今エンフィールド一番の熱々カップルの二人−多分、誰かは言わなくても判ると思う−がこんな会話をしながら歩いていた。
 「あのね、私ね、お弁当作ってきたの。一緒にどうかな?」「それじゃあ、公園にでも行きますか?」「うんっ!」と二人が
 『さくら亭』の前を通り過ぎようとしたその時!
 「どうしてぇっ、駄目なんですかっ!!!?」「ダメなもんはダメなのっ!!! 瑞穂っ、いい加減にしなさいっ!!!」
 「美穂姉なんかっ、大っキライですぅぅぅぅっ!!!! ”Carmine=Spread!”
   どっかぁぁぁんっ!!!
 という怒鳴り声と爆発音とともに『さくら亭』の扉が吹っ飛ぶ…。
 そして。
 「こらぁーっ、瑞穂っ!!! お店、壊す気っ!!?」というパティの怒鳴り声とともに「うわぁぁぁんっ!!!」と泣きながら
 瑞穂が『さくら亭』から飛び出して来た。
 そんな一部始終を見ていた二人はというと…。
 「…一体、何があったんだ…?」「…さ、さあ…? 姉妹ゲンカっていうことはわかるけど…」と顔を見合わせながら二人同時に
 店内を覗くと…美穂が黒焦げになって床にぶっ倒れていた…。
   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 「……というワケだ…ったく、頭が痛いよ…」とさっきあった事をフィムとシーラの二人に話し終えるアレフ…。
 「…そうなの…?」「…そりゃ、確かに…」と納得する二人…。
 「そこっ! それで納得しないっ! それでお店の扉、壊されたんだからねっ!」少々八つ当たりぎみ言うパティ。
 「…それって、いつものことなんじゃあ…?」「なんか言った…?」「ううんっ、なんでもないわっ!」とジト目で睨むパティに
 向かい、大慌てで首をぶんぶんと横に振るシーラ…。
 「…でだ、美穂…話を戻すけど…別にいいじゃないのか?」「よくないっ!!」とフィムの≪ウンディーネ・ティアズ≫で怪我を
 治してもらった美穂が彼にこう即答する。
 「…一体、何が不満なんだよ…?」帽子の上から頭をかきながら尋ねるアレフ…。
 「そーよ。あんたがそーゆう態度とるってコトは、なんかあるんでしょ?」「そうね…」これはパティとシーラ。
 すると。
 「…じゃあ逆に聞くけど…クリスくんってさぁ、『強い』って言えるの…?」「…………」答える事が出来ず沈黙する一同…。
 「黙っているってコトは…みんな、『弱い』って思っているんでしょ…?」とたたみ掛けるように美穂。
 「確かに…いっつもびくびくしてるし、女の子に話しかけられただけで逃げ出すけどさぁ、あれでも優しいトコがあるんだぜ」と
 苦し紛れのフォローをするアレフ…。
 「…なあ、アレフ…俺には欠点ばかり強調されて聞こえるんだが…?」と突っ込むフィム…。
 「そっかぁ…?」「そうね、あたしにもそー聞こえるわよ」「うん、私も…」順にアレフ、パティ、シーラの3人。
 「……と、とにかくだ…クリスと瑞穂の二人、お似合いだと俺は思うけどな」ちょっとだけ呆然としていたフィムがこう言う…。
 「そうだな、クリスなら瑞穂を泣かすようなコトはしねぇだろうし」「そうそう。姉として心配する気持ちはわかるけどさ」
 「そうね、私もそう思うわ」とフィムに同意するアレフ、パティ、シーラの3人。
 すると…。
 「……あなた達……随分と瑞穂の肩を持つわね…?」…ぞっとする口調で問い質す美穂…。
 「そりゃ、馬に蹴られて死にたかないからね」代表して答えるフィムと同意するように頷く3人…。
 「……そう……みんなの考えは…よぉく判ったわ……”偉大なる主よ…”」「”Dryad=Lullaby!”
   どたっ
 「ったく…これ以上、パティを怒らせて俺の仕事を増やすんじゃねぇ…あとはアルベルトあたりにでも引き取ってもらうかな…」
 …≪ホーリー・サンダー≫の詠唱中に…フィムが放った≪ドラアッド・ララバイ≫で即座に眠らされる美穂…。
 「…怒りっぽくて悪かったわね…」「…情け容赦なしだな…今のは…」と拗ねるパティちゃんと呆れるアレフくんであった…。
 (美穂「うぅ……なんでぇ…なぁんでぇ…神聖魔法だけ相手を眠らせる魔法がないのぉ…(泣)」)

 それから…ほぼ3時間後のジョートショップでは…。
 「……疲れた…」とジョートショップに戻って来るや否や、テーブルの上に突っ伏するフィム…。
 そんな彼を見て…。
 「…珍しいもんを見たなぁ…」「ええ…本当ですね…」と必死に笑いをこらえるナッツとミュン…。
 ちなみに二人は…『ミュンさん、お昼作るの大変そうだから、うちで一緒にどう?』と妊娠7ヶ月目のミュンを気遣ったアリサの
 提案を受けてジョートショップで昼食を摂っていたのだ。
 「あらあら、どうしたのかしら?」「…うん、実は…」とさっき『さくら亭』であった事を全て話すシーラ…。
 「そうなの。瑞穂ちゃんも大変ね」「でも珍しいですね。美穂さんと瑞穂さんがケンカするなんて…?」と口々に感想を述べる
 アリサとミュンの二人。
 「っていうかさぁ…姉妹ゲンカで攻撃魔法を使うなと言いたいな、オレとしては…」これはナッツである…。
 「…まったくだ…」突っ伏しながら呟くように同意するフィム…おかげで『さくら亭』の扉を修理するハメになった上に昼食を
 食べ損なったのだから無理もないが…。
 「…大丈夫…?」「…あんまり…大丈夫、じゃないな…」と気遣うシーラに力ない答えを返すフィム…。
 「そうだ、フィムさん、お昼どうするんっスか? もう残ってないっスよ?」そんなフィムにこう問うテディ。
 すると。
 「くす…大丈夫よ、テディくん。フィムさんの分はシーラさんが作ってあるし、ね?」と微笑みながらこう言うミュン…ちなみに
 最後の『ね?』はシーラちゃんに向けられていたりする。
 「ええ、まあ…あ、でも…どうしてわかったんですか…?」ちょっと頬を朱に染めながら尋ね返す…。
 「ふふ、だって今、シーラさんが手にしてるバスケットがそうなんでしょ? それに私も同じようなことしてたしね」と夫の方を
 見ながら答える…どーやら『恋する乙女』の行動パターンは古今東西、同じものらしい…。
 一方、アリサはそんな女の子達を優しく微笑みながら見ていた…。
 ジョートショップに流れている穏やかな空気を断ち切るかのように。
   がらんがらんっ!
 と激しくカウベルが鳴り響き、
 「大変だっ、瑞穂がまだ帰って来てないっ!! 探すのを手伝ってくれっ!!」とティルトが転がり込んで来た…。
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