−Epilogue−絆は永遠に…そして未来へと |
REIM |
「今回は勝てると思ったんだけどな」ミッション終了と同時におどけた口調でこんな事を言うシャドウ。
「まったくだ」と首肯する紅月。
「二人ともご苦労だったな」これはランディ先生。
「「「「「はい…?」」」」」と鳩が豆鉄砲をくらった顔をする学生達…但し、トリーシャは除く。
「ランディ先生、どういう事だ…?」ムチャクチャ怖い顔をして問い詰めるルシード…。
ちなみにシェールの肩を借りて立っているが。
「ふん、きちんと説明してやる。怖い顔すんじゃねぇ」と言うや否や。
「それは私が説明しますよ」慌てて振り返ると…ここにいないはずのフィム先生がいたりする…。
「フィムくんっ!? あっ!?」思わずこう言ってしまい、慌てて口を押さえるシーラ…幸いな事にリーゼやランディ先生、
ルシード以外の面々には聞こえなかったみたいだが。
「先生、そいつはどーゆうこったい、それは?」問い質すアレフ。
「たいした事じゃないさ。『共通の敵』を出して、みんなの結束を高める為だったんだよ」と答えるフィム先生。
「それって…つまりぃ…」「お前ら、最初のミッション、足を引っ張り合ったみてぇだしな」補足するランディ先生…。
「「「「……………」」」」痛いところを突かれて押し黙ってしまうリーゼ、シーラ、シェリル、トリーシャの4人…。
「なんだ…?」「更紗やティセに聞いたんだが、コイツら、足の引っ張り合いをやったらしいんだ」首を傾げるアレフやクリスに
こう説明するルシード。
「…お姉ちゃん…?」それを聞いて、まじまじと姉の顔を見てしまうシェール…。
「…あ…は…ははは…」妹に向かって愛想笑いするリーゼ…。
「まあ、そんな事があったからね、それで紅月やシャドウの人格データをミッションに参加させていたのさ」と締めくくる。
「あの…?」「なんだ、小娘?」「さっきの黒メガネの人は…?」ランディ先生に尋ねるシーラ。
「あ、あれね。『デイル・マース』といってね、来年度のミッション授業に備えて作った人格データなんだけど」ランディ先生に
代わりに答えるフィム先生。
「ふん、ザコなんぞ作りやがって」「ランディ先生が作ったものなんですけど…?」というフィム先生の突っ込みが入る…。
「……小娘もご苦労だったな、最も詰めが甘かったがな」とトリーシャの方にこう言って、話題を変えてしまうランディ先生…。
「…トリーシャ…あなた…」「あ…あは…あははは…(滝汗)」…リーゼに向かって愛想笑いする…。
何しろ、ランディ先生やフィム先生から『協力してくれたら成績アップ』というあまぁ〜い言葉に釣られて協力したのだ。
でも…その『代償』はどーなるのか、考えておくべきだったかも…?
「くす…怒ってないからそんなに怖がらなくてもいいわ…」…でも…目は笑っていなかったりする…。
「ノック千本とか100mダッシュ百本とかは言うつもりはないから♪」…さらりと全身筋肉痛になりそうな事を言う…。
「はっきりと言ってるじゃないかぁぁぁぁっ!!!(絶叫)」…きっつぅ〜い『代償』であった…。
一方、現実空間では…。
「ふう…一体、何のつもりだったのですかねぇ〜?」と一部始終をモニタしてたハメット先生がこんな疑問を口にする…が。
「「「「「……………………」」」」」…無言で周りを囲む学生達…。
「あの…? みなさん、どうしたのですか…?」戸惑うハメット先生。
「…なるほどな…お前も共犯か…」と納得した顔で呟くルー…。
「はあっ!? 馬鹿な事をおっしゃらないで下さいっ!! 何故っ、私がっ!?」即座に否定する…しかし。
「…ふぅん…シラを切るんだ…」「…洗いざらい白状してもらおうか…」…指をポキポキと鳴らしながらハメット先生に詰め寄る
ビセットとアルベルト…。
更に…。
「…すごく痛かった…」「ティセもぷんぷんですぅ!」「…覚悟はいいか…?」」…更紗、ティセ、エルの3人も詰め寄る…。
「だぁかぁらぁっ、ですねっ、私はっ、無実ですっ!!」半ば悲鳴の様に身の潔白を訴える…。
しかし…。
「うぎゃぁぁぁぁぁっ!!!!」…まぁったく関係ないのに…学生達からボコにされたハメット先生であった…。
後日、この話を聞いたフィム先生の呟き…。
「やれやれ…ハメット先生を身代わりにしておいて大正解だったな…」ミッション中にハメット先生へ『参加者の転送の仕方』の
手順を催眠暗示で覚えさせる特殊プログラムを組み込んでおいた上に『仮病』という病気で学園を休んで難を逃れたのだった…。
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そして…数ヶ月の時が流れ…。
「ふっふ〜ん♪」ルンルン気分で鼻歌を歌いながら、自宅でバースディーパーティ−フィムのである−の準備をするシーラ。
「あらあら、ずいぶんと楽しそうね。それで今夜はフィムくんの部屋にお泊りかな?」そんな彼女を見て、一緒に準備していた
母親がこうからかう。
「もう、からかわないでよ、ママ」真っ赤になった上に口をとがらせる。
「それで、バースディーケーキの方は? 確か、リーゼさんのお店に頼んだんでしょ?」と何事もなかったかの様に尋ねる母親。
「それでしたら、これから私がリーゼ様のところに…」「あ、私が行って来るからジュディは少し休んでて」と告げる。
「いいの、シーラ?」「え? 何がなの、ママ?」と首を傾げながら出かけるシーラ。
「…あのコ、完全に忘れてるわね…」ダイニングから出ていく一人娘の背中を見ながら、ぽつりと呟く母親であった…。
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「やぁっぱ、南の島はいいわねぇ〜♪」と浜辺を歩きながら、ご満悦な顔を見せるシェール。
そして、
「ルシードくんもそう思うでしょ?」「なぁに言ってやがるっ。ムリヤリ、連れて来たんだろうがっ」むっとするルシード。
「あははは、怒らない怒らない♪」「ったく」…イヤだったら断ればよかったんじゃないの? ルシードくん?
「そりゃそーと」「なに?」「その格好で寒くねぇか?」「…あのさぁ、今、夏だけど…」デリカシーのないセリフに呆れる…。
今、シェールはノースリーブの白色のワンピースで決めていた…。
「んあ? 夏だって言っても寒い時は寒いだろうが」「あ〜、はいはい。ムキならなくってもいいでしょ」とサンダルを片手に
ルシードのところに駆け寄るシェール…。
「あ? なんだよ?」自分の目の前に立たれて戸惑うルシード…。
「ちょっとさぁ、目を閉じてくれる?」「なんだよ、一体?」と言いつつも言われた通りにする…。
彼が瞳を閉じた事を確認すると…少しつま先立ちになるシェール…。
それを見計らったかのように。
RRRR〜♪♪
…彼女のポケットの携帯が鳴る…。
「もうぉ〜、いいトコだったのにぃ〜」と携帯を取り出し、『通話』ボタンを押す。
「もしもし、シェール……あ、シーラさん? どしたの、そんなに慌てて?」
一方のルシードは。
「…何を企んでいたんだ? シェールのヤツ…?」…お前ね、アレフを見習えとは言わんから、ちっとは女心を理解しろよ…。
「……はあっ!!? お姉ちゃんにばれたぁっ!!?」素っ頓狂な声を出すシェール…。
「急に大声出すなよっ」「あ? ごめん……それよりもっ、シーラさん、それって一体どーゆうコトっ!?」と携帯に向かって
詰問するシェール。
『…え〜と…それは…そのぉ…』携帯を通して消え入りそうなシーラの声…。
「ちょっと貸せ」「あっ」「ルシードだけど、一体、何がどーなってるんだ?」シェールから取り上げた携帯に出るルシード。
『…実は…今回の旅行…リーゼさんには「私と一緒に行く」ってことになってて…』「…なるほどな…」…ジト目でシェールを
睨みながら理解する…。
「…あは…あははは…」愛想笑いをするしかないシェール…。
「それでリーゼさんに見つかったと?」『…ええ、まあ…』大方の事情を理解するルシード。
「大方、それを忘れてフィムせんせーのバースディーケーキを買いに行ったってトコか」『……………』無言の肯定を返す…。
「はあっ!? ちょっとっ、あれほど、あたしが帰って来るまでお姉ちゃんのトコに行っちゃダメってっ!!」とルシードから
携帯をひったって怒鳴るシェール。
『ま、まあ、不幸な事故ってことで…』「あのねっ!!」『そ、それじゃあ、これでっ!』「あっ、こらっ!!」
プツ……ツーツーツー…
逃げるように電話を切るシーラちゃん…。
「もうっ、なぁんてコトしてくれるのよっ!!」「ズルしたからだろうが」「う…」ルシードからの正し過ぎる突っ込みが入り、
落ち込むシェールちゃん…。
そして、
「こぉなったら、とことん楽しんでやるんだからっ!! というワケでっ、ルシードくんっ!」あ、開き直った?
「なんだよ?…!!?」…いきなり、シェールちゃんに唇を奪われるルシードくんであった…。
…人との『絆』は…何物に代え難いもの…。
…その『絆』を『死』と言う『永遠の別れ』が…二人を分かつその時まで…永遠に…。