中央改札 交響曲 感想 説明

ただ一人の少女のために…≪後編≫
REIM


 さて、クリスや瑞穂の方に向かったエルはというと…。
 「おいっ、二人とも無事かっ!?」「え、エルさん…私よりもクリスさんがっ!!」と泣きながら辿り着いたエルにすがる瑞穂。
 「…こいつは思ったよりひどいなぁ…」一目、クリスの傷口を見て顔をしかめる…。
 「取りあえず傷口をふさぐか…”Tinkle=Cure!”」≪ティンクル・キュア≫で傷口だけをふさぐ…。
 「もう…大丈夫なんですか…?」「さあね。今のトコは大丈夫だろうけど、早くドクターに診せないとマズイね」と顔を上げて
 『戦場』の方を見ると。
 「つぅ…」モンスターにやられたのか、左腕を押さえてうめくフィムに、
 「参ったね、こりゃ…」ナイフを投げつけるものの、相手の分厚い皮膚に弾き返されてしまい、完全に手の出し様がないリサ…。
 「こんのぉーっ!!」「くたばれぇーっ!!」各々、得物を振り回すティルトとアルベルトだが…。
 「くっ!!」「なんなんだよっ!! この固さはっ!!?」「俺が知るかっ!!」彼らの物理攻撃も通さないようだ…。
 (このままだと…ジリ貧だよな…)と思わざるえないエル…。
 なにしろ、決定打を与えられない上に相手の攻撃力はシャレならない程に強いのだ…。
 クリスと瑞穂の二人を連れて逃げ様にも…『戦場』の真っ只中を通らなければならないし…。
 (…さてと…どーしたもんか…)と思うや否や。
   ぱっきぃぃぃんっ!!
 「くそっ!!」折れた刀を投げ捨て、予備のグラディウス(=大型の戦闘ナイフ)を抜くティルト…。
 (…打つ手なし、か…)覚悟を決めるエル…。
 その時!
 「”Scarlet!”」「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」ティルトやアルベルトが相手していたモンスターが巨大な
 『炎の柱』を叩きつけられて断末魔をあげた…。
 「全員、無事かっ!?」『(フォスター)隊長っ!!』表情が明るくなるティルトとアルベルト。
 「おせーぞ、おっさんっ」と憎まれ口を叩くフィム。だが、彼の顔にも笑みが浮かんでいる…。
 「すまんな…ふんっ!」尋常でない魔法攻撃を受けて、ふらふら状態のモンスター−既に虫の息状態−を一刀両断する…。
 「相変わらず、凄いねぇ…」思わず見とれるリサ…。
 その一方で。
 「大丈夫か?」「あんまし…」左腕を負傷したフィムのところに駆け寄るナッツとヴァネッサ。
 「ちょっと待ってて…”Holy=Heal!”」と治癒呪文をかけるヴァネッサ。
 「これでよしと。後でドクターのところに行ってちょうだい」と言い残して今度はクリスの方に向かう。
 「サンキュー。それで、あのモンスターは一体なんだ…?」「あれはモンスターなんかじゃない。クリチャー…人造魔獣だ」
 「なん…だって…?」高位の魔術師であるナッツの答えに絶句する…。
 「しかも戦闘用クリチャーだから、生半可な攻撃はまったく受け付けない」「お、おい…それじゃ、どーやって倒せって…?」
 うめく様に尋ねるフィム…。
 「最上位の攻撃呪文…それも≪スカーレット≫か、≪メテオロイド・ストライク≫をぶつけりゃ、防御力が削りとれるから…」
 「なるほど…それでおっさんが倒せたわけか…」とナッツの言いたい事を理解する。
 「そーゆうコトだから、後は頼んだよ」「ああ、わかったぜ……”Libitina=Blade!”」闇の精霊の力を
 借りて、精霊剣−愛用のウォーハンマーは既にへし折られていた−を作り出すフィム。
 「そんじゃ、頼んだぜっ」と戦列に復帰する。
 「ああ…さてと……”偉大なるマナよ、その秘めし力を二つに分けよ!”」と何時の間に覚えたのか、魔法の連射発動の
 準備呪文を詠唱するナッツ。
 続けて、
 「”大いなる力を秘めしマナよ、全てを焼き尽くす炎の柱となせ、Scarlet!”」今、リカルド達が相手してる
 クリチャーに一発目の≪スカーレット≫を叩きつけ、更に、
 「”Repeat!”」二発目を序盤でフィムに足止めされたクリチャーに叩きつける。
 「今だっ、アルっ! ティルト君っ! フィムくんっ!」というリカルドの声とともに!
 「どりゃあーーーっ!!」「くらえーーーっ!!」「これで終わりだぁーーーっ!!」3人の得物がクリチャーに襲いかかる!
 『ぐおぉぉぉぉぉぉっ!!!』断末魔をあげて、2体のクリチャーの生命活動が永遠に停止した…。

 その頃、クリスや瑞穂達は…。
 「瑞穂っ、大丈夫なのっ!?」瑞穂やクリス、エルのところに駆け寄る美穂。
 「み、美穂姉っ!? どうしてここにっ!?」姉の顔を見て驚く。
 「詳しい話は後だ。美穂、クリスを頼む」「…これは…ひどい…」クリスが受けた傷を見て顔をしかめる…。
 エルが唱えた≪ティンクル・キュア≫だけでは、完全に傷を癒せなかったのだ。
 「クリスさん、私の事をかばってくれて…」表情を曇らせる瑞穂…。
 「そう…なの…?」…美穂の心の中で何かが変わる…。
 「美穂さんっ、エルさんっ!」フィムの手当てを終えたヴァネッサが駆け寄って来る。
 そして、クリスが受けた傷口を見るや、
 「…うっ……大丈夫なの…?」顔をそむけながら美穂に尋ねる…。
 「…美穂姉……」心配そうな顔で瑞穂…。
 (…せめて…≪ディヴァイン・リカバリー≫が…使えれば…)…唇を噛む美穂…。
 相手の回復力を高める高位の神聖魔法で……司祭クラスの技量を持つ者にしか使えないのだ…。
 「…美穂姉の魔法でクリスさんを…お願いです…」と泣きながら姉に哀願する…。
 (…でも…やれるだけはやってみようか…)妹の泣き顔を見て、こう決意する…。
 そして、少し深呼吸してから、
 「”偉大なる主よ、その聖なる力を彼者に分け与えよ、Divine=Recovery!”」と一気に呪文を唱える。
 その結果……。

 それから3日後…『さくら亭』では…。
 「あの…クリスさん、お怪我の方は…?」と隣に座っているクリスにおずおずと尋ねる瑞穂…。
 何故、おずおずとしているかというと…。
 「Checkだよ、美穂」「う〜。ならば…これでどう?」「いいのか? これでCheckmate、と」「ひ〜ん(半泣)」
 彼らの近くで美穂とナッツがチェスをしていたからである…。
 「ええまあ…美穂さんの魔法のおかげで…」こっちも美穂の機嫌を伺いながら答えるクリス…。
 「よかったぁ…」ほっと胸を撫で下ろす瑞穂…。
 でも…。
 「ほのぼのしてるトコで悪いんだけど…どーやって美穂を説得するつもりよ?」二人の前にハーブティーを置きながら、小声で
 瑞穂に囁くパティ…。
 「それはそうなのですけどぉ…」「まあ、あれじゃねぇ…」と溜息をついて同時に美穂の方を向くと。
 「もう一局っ」「…もういいだろう…3回連続だぞ…? それにさぁ…瑞穂が何か言いた…」「ほらっ、もう一局やるわよっ!」
 「人の話を聞けよ…」…チェスに夢中になっていたりする…。
 そんなこんなやってる時に。
   カララン…♪
 とカウベルが鳴り、
 「うふふっ、クリスくん見っけ♪」「うわっ!? で、出たぁーっ!!」由羅の姿を見て悲鳴をあげるクリス。
 そして、
 「クリスくん、怪我の方は大丈夫なのぉ〜」「ゆ、由羅さんっ、やめて下さいよぉ〜」とまあ、いつもの如く、あまぁ〜い声を
 出しながら引っ付こうとする由羅と引っ付かれそうになり悲鳴をあげるクリス…。
   ぶち…
 「げ…」…瑞穂から『何か』が切れた音がパティの耳に入った…。
 瑞穂が肩を怒らせて立ち上がろうとした時。
   ばっかぁぁぁんっ!!
 という凄い音とともに、
 「ふぎゃぁぁぁぁぁっ!!!」ともんの凄い悲鳴をあげる由羅。
 「ちょっとぉ〜、美穂っ! なにすんのよっ!?」ホウキでぶたれた尻尾を撫でながら涙目で文句を言う。
 「うちの妹の『彼氏』にちょっかいを出すからよっ」しれっとした顔でこう告げる美穂。
 この前の一件で、クリスの事を見直していたのだ…妹をかばって大怪我をしたという事を瑞穂から聞いて。
 「…はあ?…それって、クリスくんのこと…?」「クリスくん以外に誰がいるというのよ?」由羅の疑問に答える美穂…。
 「あ、あの…美穂姉…それって、つまりぃ…そのぉ…」こう言ったきり、真っ赤になってもじもじする瑞穂…。
 「…どーいう風の吹き回しだ…?」「つい最近までは散々反対してたくせに…」呆れた顔で呟くナッツとパティ…。
 「べ、別にいいじゃないのっ! というコトだからっ、由羅さん、いいわねっ!?」「よくないわよっ!!」速攻で答える由羅。
 「あ、あの…?」何とか会話に割り込もうとするクリス…ちなみに彼の顔も赤かったりする…。
 「ささ、二人とも公園にでも行って来たら? この酔っ払いはあたしがなんとかしとくから♪」とクリスと瑞穂の二人を店の外へ
 出るように促す。
 「……言ってくれるわね…美穂…?」この美穂の台詞により、ぶちぎれモード一歩前の由羅…。
 「あら、ヤル気?」「望むとこよっ!」「『さくら亭』の『名物』がまた増えたのかな…?」「勝手に増やさないでよっ!!」
 順に美穂、由羅、ナッツ、パティ…。
   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 「みんな、そんなトコでなにやってんのよ?」『さくら亭』の入口の前でたむろしてる一同−フィム、シーラ、アレフ、ルー−を
 見て尋ねるマリア。
 「いや、別に…」「そうそう、なんでもないさ…」言葉を濁すルーとアレフ…。
 「ふぅん…?」「な、なんだ?」「ど、どうしたの、マリアちゃん…?」マリアに視線を向けられ対処に困るフィムとシーラ…。
 「…あやしい…」ぽそっと呟くマリア…。
 「べ、別に怪しくなんかないさ、なっ?」「あ、ああ、やましい事はしていないっ」「そ、そうだぜっ」「そ、そうね…(汗)」
 慌てて否定する一同…。
 「ふぅん…じゃあ、なぁんでぇ、そんなトコでコソコソしてるのよ?」「そ、それは…そのぉ…」答えに詰まる…。
 「やっぱり怪しい…」ジト目で睨むマリア…。
 そして、『さくら亭』の中を覗き込もうとするマリア…。
 その直後。
 『”Vortex!”』「んきゃぁぁぁぁぁっ!!!」
 …美穂と由羅の二人が放った攻撃呪文の余波を受け、扉ごと吹っ飛んだマリアちゃんであった…。

     ≪Fin≫


 [あとがき]
  シーラ「今回はクリスくんと瑞穂ちゃんを主役にしたお話ですね?」
  パティ「さしずめ、クリスと瑞穂の仲を進展させようとして書いたんでしょ?」
  REIM「ええ。この二人の仲って、ほとんど進展していませんでしたから」
  パティ「まあ、美穂がいるんじゃねぇ(苦笑)」
  ミュン「でも、瑞穂さんもそうですけど、トリーシャさんの方もほとんど進展してませんよ?」
  REIM「トリーシャさんのは、別な機会に」
  シーラ「そうなの。それで、次回は私達が主役なるのかしら?」
  REIM「う〜ん…流石になんとも言えないですね」
  パティ「ふぅ〜ん?」
  ミュン「それよりも次回はフィムさんやシーラさんを主役にしませんと…大変なことになりますよ?」
  REIM「何故ですか?」
  パティ「シーラのお母さんが怒ってるとか? このところ、二人のらぶらぶシーンがなかったし(笑)」
  シーラ「………(顔真っ赤にしてもじもじしてる…)」
  ミュン「いえ、セーラさんよりも…アリサさんが…」
  パティ&REIM「???」
  ミュン「次回もお二人が主役でなかったら…REIMさんを折檻するって砥石で大鎌を砥いでましたよ…」
  REIM「…………(絶句)」
  パティ「…長生きしなさいよ…あんた…」
  シーラ「…そういう問題ではないんじゃあ…?」

   ……アリサさん、怒ると怖いからなぁ…まあ、口よりも手が早いパティさんよりはマシだけど……(ばきゃあっ!!)
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