『さくら亭』を出た一行−リオ、ティア、マリア、トリーシャの4人−はシェリルを探しにローズレイクへと向かっていた…。
…ちなみにマリアは…シーラちゃんの『お仕置き』を恐れ、逃げるようにであったが…。
「リオくん、なにさっきからびくびくしてるんだよ?」と尋ねるトリーシャ。
「だ、だって…こんなとこ、由羅さんに見つかったら…」と答える。
そうだよねぇ〜。しかもティアちゃんと手をつないでいるしねぇ〜。
「そんなに心配しなくてもだいじょ〜ぶだってば♪」「そうそう。それにさ、こぉんな時間に由羅がいるわけないでしょ☆」
「そーだよ。それにいつものように酔っ払って家で寝てるかもしれないしさ♪」「うんうん、きっとそうに決まってるって☆」
これらはトリーシャちゃんとマリアちゃんだが…。
「きゃい〜んっ、リオくんみっけっ♪」……二人のフォローを木っ端微塵に台無しにしてくれる『声』が聞こえて来たりする…。
「う、うわぁ〜っ!?」とまあ、少し情けない悲鳴を上げるリオ…。
「うふふふ…リオくぅん〜、あたしとねぇ……………って、ちょっとあんた。その手、なによ?」ティアの方を−正確にはリオの
手を握っている方を−見て、こう言う由羅…。
「え〜と…それはね…」「リオくぅん〜、そんなお子様からさっさと離れちゃいなさいよぉ〜」「…いやです…」と冷汗を流す
リオと手を離すように言う由羅とそれを断るティア…。
「あんたには言ってないわよっ!」ティアに向かい、こう言い放つ由羅。
それに対するティアちゃんの回答は「絶対にいやですっ!」と由羅に言い、更にあっかんべーをする。
「ここここのぉ…小娘ぇ〜」…それを見て…マジぎれ一歩手前になる由羅さん…。
「どどどどーするんのよぉっ!?」「そ、そんなの、ボクに聞かないでよっ!!」この有様を見て慌てふためくマリアちゃんと
トリーシャちゃんの二人…。
「と・に・か・くっ! その手を離しなさいよっ!!」無理矢理を引きはがそうとする由羅だが、
「なにをするんですかっ!?」「!!!?」とリオをかばうように前に出たティアに脛を蹴られる。
「て、ティアちゃんっ!?」それを見て慌てて後ろから彼女を抱き止めるリオ。
むに
「あ、あの…り、リオさん…?」…彼にとんでもないところを掴まれて…顔が真っ赤になるティアちゃん…。
「え? わっ!? ご、ごめんなさいっ!!」慌てて手を離す…。
「りぃお〜くぅん〜。なぁにやってんのかなぁ〜?」…途端にこわぁい目で睨むトリーシャちゃん…。
「あ、あのっ、べ、別に悪気は…」「すけべ」…こんな強烈な一言をぼそっと呟くマリアちゃん…。
一方…。
「……こぉんのぉ〜、小娘ぇ〜。色気もないのにリオくんを誘惑しないでよっ!!」「べぇ〜だっ!」「うっきーっ!!?」
…取っ組み合い寸前の由羅とティアの二人…。
そして…。
「い、痛いぃ、いたたたっ!」『何か』に押し潰されたのか、こう絶叫する由羅。
「早くどいてってばぁっ!! 大事な胸がつぶれちゃうぅぅっ!!」悲鳴まじりに『加害者』に向かい、こう叫ぶ。
…悲鳴を上げる由羅を無視し、更に彼女を押し潰したまま『加害者』−リオの護身獣−が毛繕いをしていたという…。
十数分後、ローズレイク…。
「すっごく疲れたよぉ〜」…やっとのことで由羅の『魔の手』から逃れたリオがこうもらす…。
「あのね…由羅をペットで押し潰した人のセリフじゃないんだけどぉ…?」と呟くように突っ込みを入れるマリアちゃん…。
「そ、そうかな?」「まあまあ…それよりもさ、あそこにいるのシェリルじゃないかな?」と指を差すトリーシャ。
「あ? ほんとだ。シェリルぅ〜」と声をかけながら近づく面々…でも…。
「あちゃ〜、まぁた本の世界に入っちゃってるぅ…」シェリルの表情を見たマリアの第一声はこれであった…。
「もうぉ〜、しょーがないなぁ…現世復帰トリーシャチョップっ!」
ぽく
「はうっ!!……あ、また私、本の世界に…?」正気に戻ったシェリルにトリーシャはこう話し掛けた。
「はいはい、それはいいからさ。それよりもちょっと頼みたいことがあるんだけど……」
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「…僕、これからどうしたらいいの…?」…『さくら亭』で途方に暮れるリオくん…ちなみにティアちゃんはというと…まだ彼の
手を握ったままであったりする…。
その様子を様々な目で見守るパティ、リサ、トリーシャ、マリア、クレア、シェリルの面々…。
ローズレイクにて一同は中和薬の生成をシェリルにお願いしたが…『…私、そんなの出来ません…』と申し訳なさそうな答えが
戻って来たのだ…。
「…やっぱ、マリアに作らせるしか…」「それはぜぇったいダメよっ!」トリーシャのこんな呟きをさえぎるようにパティ。
「ぶぅ〜、なんでよっ!?」「だって…マリアちゃんの作るお薬って失敗ばかり…」「しぇりぃるぅ〜?」ドスの効いた声で
シェリルを睨むマリアちゃん…。
「確かにシェリル様のおっしゃる通りですね」「くぅれぇあ〜?」「っていうかさぁ…クレアさんがこんなことしなきゃねぇ…」
「あう…」マリアに睨まれ、更にトリーシャに痛いとこを突かれてうめき声をもらすクレアちゃん…。
そんなこんなをやってると…。
カララン…♪
「あ、いらっしゃ〜い♪…って、なぁんだぁ、ナッツか…」あからさまに残念そうな顔になるパティ。
「悪かったな、客じゃなくてっ…ところでガン首並べてなにやってんだ?」むっとした顔で尋ねるナッツ。
「ああ、実はね…」と今まであったことを説明するリサ…。
「ふぅ〜ん…それで困っていると?」「ええ、そうなんです。何とかなりませんか?」とナッツに尋ねるシェリル。
「中和薬での解呪はムリだな…」「なんで?」首を傾げるトリーシャ。
「悪いけどオレ、ポーション調合の実習、赤点寸前だったんだ…」…一同絶句…。
「じゃあ…ティアちゃんは…ずっとこのままなの…?」と呟いて彼女の方に視線を向けるリオくんと、
「………」…リオに見詰められて少し照れてるのか…頬を朱で染めてもじもじしてるティアちゃん…。
(…こ、このままでいいかも…?)と急に浮かんで来た考えを頭を振って追い出すリオくん…。
「???」そんな彼を見て不思議そうに小首を傾げるティアちゃん…。
「別に解呪は出来ないって言ったわけじゃないさ」「でもさ、さっき中和薬は作れないって?」問い返すパティ。
「中和薬がなくても解呪は出来るよ」「え、でもぉ…どうやってですか…?」これはシェリル。
「こうすんのさ……”Despell!”」とティアの頭に手をかざして呪文を唱えるナッツ。
しゅわぁ〜
とたちまちに『惚れ薬』の効果が解呪される…。
「気分はどう?」「ティアちゃん…?」と問い掛けるナッツとリオ。
「…うん、大丈夫です……あ?…ご、ごめんなさいっ」…自分がリオの手を握っていることに気付き、慌てて離す…。
「う、ううん、僕、気にしてないから」ちょっと残念そうな顔でリオくん…。
「ナッツさん、今の≪ディスペル≫って?」尋ねるトリーシャ。
「ん? あ、これね。魔法などの効果を打ち消す呪文だよ…って、学校で習ってないのかよっ!?」逆に驚くナッツくん。
「え、えとぉ…ボク、その時、居眠りしてた…」…えへへと答えるトリーシャちゃん…。
「…シェリルは?」「わ、私…その講義の時、本の世界に…」…恥かしそうにシェリルちゃん…。
「…マリア…?」「マリア、そんな地味な呪文、キライだもん☆」…きっぱりとこう答えるマリアちゃん…。
「お前らなぁ…これ、ティアでも簡単に唱えられるぞ」3人の答えを聞いて呆れるナッツくん…。
『う…』…言葉に詰まる魔法使い達…。
一方、リオとティアはというと…。
「…あの…リオさん…?」「え? なに…?」ティアに問い掛けられ怪訝な顔になるリオ…。
すると。
「わっ!?」急に首にしがみつかれ慌てるリオ。
「……………」「…え…?」…顔を赤くして…リオの耳元で何かを囁くティア…。
そして。
「ナッツさん、私、先に帰ります」リオから離れるティア。
「ん? ちょっと待って。オレも一緒に帰るわ」と言って立ち上がる。
「おっと、そうだ。パティ」「なに?」「いつも通り出前頼むわ」「はいはい」以上、ナッツとパティの会話。
彼ら−ナッツとティア−がいなくなると。
「ねえねえ、リオくん。さっきさ、ティアちゃんからなに囁かれたの?」尋ねるトリーシャ。
「えっ!? そ、それはっ、な、内緒だよっ!」「え〜、なんでだよぉ〜?」ちょっとむくれるトリーシャ。
「だ、だってっ、ティアちゃんとの約束だからっ!」と答えるリオ。
「だってさ。諦めちゃったらトリーシャ?」「むぅ〜」パティにこう諭され更にむくれるトリーシャちゃん。
「あ、あのね…僕達、なんかとっても大事なこと忘れてるみたいなんだけど…?」と恐る恐るみんなに尋ねる…。
「そうかな?」と首を傾げる一同だが…。
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「ちょ、ちょっとぉ〜っ! あたしを押し潰したまま寝ないでよぉ〜っ!!」
…まだリオの護身獣−今はすーすーと寝ていたりする−に押し潰されたままの由羅さんであった…。
ちなみに…リオが気付いて彼女を解放したのは…翌日の昼であったという…。
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「お〜い、そんなに逃げないでくれぇ〜(はぁと)」とまだティルトを追いかけているアルベルト。
更に。
「アルベルトさぁん、ティルトさんを追いかけるのをやめて下さい〜(怒)」とアルベルトを追いかけるセリーヌ…。
「誰でもいいからっ、助けてくれぇーっ!!(泣)」
…ポーションの効果が切れるまで一晩中逃げ回ったティルトくんであった…。
≪Fin≫
[あとがき]
シーラ「…今回はリオくんとティアちゃんが主役なんだけど…」
パティ「…その割には…悲惨な目に遭ったのが約3人ほどいるけど…」
ミュン「…ええ、そうですね…」
REIM「ははは…実は約2名ほど…最後の最後まで忘れてて…(苦笑)」
パティ「その『2名』は誰と誰よ?」
REIM「ティルトとアルベルト」
シーラ&ミュン「(笑)」
パティ「あははは、寄りにも寄って今回の被害者じゃないの(爆笑)」
ミュン「(笑いながら)そ、それでこのお話は、どうして書いたのですか?」
REIM「えとですね、今までポーション・ネタを使ったお話を書いていなかったんで」
シーラ「そうなの。でも、何故、リオくんとティアちゃんなの?」
REIM「フィムさんを犠牲者にしてもね、ちょっと面白み欠けるかなと思ってね(苦笑)」
パティ「確かに。そーゆうSSは結構あるしね」
ミュン「と言うか…シーラさんの制裁が怖かっただけなんじゃあ…?(ぽそ…)」
REIM「そ、それはないですよっ」
パティ「どーだか」
シーラ「??? あの、みんなしてなにを話してるの?」
シーラさんは知らなくてもいいですっ!