中央改札 交響曲 感想 説明

光と闇の交響曲Episode:03
刹那


悠久幻想曲SideStory
−光と闇の交響曲−

Episode:03 意外な才能?

「さて、今日から仕事に取り掛かってもらうわけだけど、幾つかの説明と、皆に聞いておきたいことがある。」
保釈された翌日、ジョートショップに集まった皆に問い掛ける。
「先ず、皆は其々の用事を優先させる事。学校や仕事何かをサボるような事だけはしないで欲しい。」
「でも、それで大丈夫なの?」
パティが心配げに尋ねる。他の皆も同じような気持ちのようだ。
「問題なし。焦っても如何にかなる事じゃ無いしね。あくまでジョートショップの手伝いは副業とする事。その代わりといっては何だけど、アレフとリサにはなるべくメインで手伝って貰いたい。出来るか?」
「ああ、俺は構わないぜ。」
「あたしも構わないよ。元々そのつもりだったしね。」
アレフとリサの返事に頷くシオン。他の皆も納得している事を確認し、次の質問に移った。
「じゃぁこの件はそう言う事でいいな。ンじゃ、次に質問だ。この中で、人間相手でも魔物相手でも良い、兎に角実戦経験のある者はどれ位居る?」
シオンの問い掛けに、エルとリサが挙手する。それは予め予想していたのか、軽く頷くだけのシオン。その他は何の反応もしなかった。
「実戦経験者は俺を含めて3人だけか・・・。少しばかり厳しいかな・・・?」
「それがどうかしたのかい?」
呟くシオンに、リサが尋ねる。少し考えながらも、シオンも答える。
「いやな、手っ取り早く金を稼ぐなら、魔物退治とかの依頼が尤も実入りがいいんだ。だが、実戦経験の無い人間にそう無理はさせられないしな・・・。まぁ何とかできる範囲で受けるようにするか・・・。」
その呟きを聞き、アレフがシオンに問い掛ける。
「それならさ、お前とかリサとかが教えながらやれば良いんじゃないか?クリスとかシェリルとかは魔法が使えるし、俺は少しだけど剣が使える。経験さえ積めば・・・」
「・・・そうだな、それじゃ俺が何人かずつ面倒見てみるか・・・。」
「良いのかい?結構危険だと思うけど?」
「まぁそんなに危険な仕事はやらせないけどね。まぁそれは兎も角として、早速今日の分の仕事を割り振ろうか。」
そう言って、今日分の依頼を纏めた紙を手に取るシオン。
「シェリルとクリスは図書館で魔法書目録作成の手伝い、エルは門番、ピートとメロディはペットの世話の代行を其々受け持ってもらう。アレフ、シーラ、パティ、マリアそれにリサは俺と一緒に雷鳴山に出没する魔物退治を受けてもらう。それじゃ皆、頑張ってくれ。」
「ちょっと待ったぁっ!」
振り分けが終って解散しようとした皆をトリーシャが止める。
「シオンさん、何でボクには何の仕事も無いのさ?」
「ああ、それはこれから説明する。トリーシャには店の手伝いではなくて、別の事をやって貰いたいんだ。」
「別の事?」
「大した事じゃない。今までのように街の噂を集めたりして欲しいだけさ。」
「?どうして?」
「簡単な事。噂ってのは大半が根も葉もないような物だけど、その中には何割かの真実が含まれている可能性がある。それをトリーシャには集めてもらいたいんだ。俺の無罪を証明し、真犯人を捕らえる手がかりがつかめるかも知れないからな。」
「そう言う事か、うん、解ったよ。」
シオンの台詞に納得するトリーシャ。そして其々受け渡された依頼をこなしに、皆が店を出て行く。残ったのは魔物退治組だ。
「さて、魔物退治に行く前に、軽く皆に戦い方だけでも教えておくか。リサも手伝ってくれ。」
「あいよ。それで、何処でやるんだい?」
「陽のあたる丘公園が良いだろう。この時間帯なら人も殆ど居ないだろうしな。」
そう言って、用意をするシオン。そして、公園へと向かった。

「で、これから何するんだ?」
陽のあたる丘公園について、アレフがシオンに問う。シオンは持ってきた荷物を降ろしながら、皆に説明をする。
「まぁ簡単な適性検査と実戦に向けての訓練だな。アレフは剣が使えるって言ってたな、ンじゃこれで良いか。」
「これで良いって、貰って良いのか?」
シオンが差し出した剣を受け取りながら、尋ねるアレフ。無理も無い、渡されたのは名剣と言うほどではないにしろ、業物である事は素人目にも判る物だった。
「構わないさ。どうせ旅の途中、遺跡に潜って手に入れた代物なんだ。取って置いたって誰も使わんしな。で、アレフはそれで良いとして、パティは如何するか・・・。」
「あたし?あたしは武器なんか使った事無いわよ?」
パティが困惑気味に言う。当然だろう、男勝りで腕っ節が強いと言っても、それはあくまで一般人としての話である。
「まぁそれは判ってるけどね・・・。そうだ、トンファーでも使ってみるか?」
そう言って、袋の中から黒光りするトンファーを取り出す。そんなに大きくない袋の何処にそんな物が入っていたのか気になるシーラとリサだが、いきなり何処からとも無くハリセンを取り出すような男である。気にしない事にした。
「トンファー、ねぇ・・・。あたしに使えるかな?」
「まぁ達人になろうなんて思わなければ、比較的使いやすいと思うぞ。少なくとも、使えもしないのに剣とか構えさせるよりはマシの筈だ。」
「ふ〜ん・・・。まぁ足手まといになんてなりたくないしね、やれるだけやってみるわ。」
そう言ってやる気を見せるパティ。シオンは苦笑しているが、以外に強くなるんじゃないかと内心では思っている。はっきりとした目的をもって励む者は、急速に成長するものだ。
「あのシオン君、私達は?」
「そうよ、マリアにも何か頂戴よ〜。」
今まで取り残されてたシーラとマリアがシオンに話し掛ける。それを聞いて、シオンも二人に向き合う。
「取り敢えずアレフとパティはリサに見て貰っててくれ。・・・シーラは兎も角、マリアは武器必要ないだろうが、魔法使うんだから。」
「魔法使っていいの!?」
「・・・まぁ簡単なものならな。アイシクル・スピアとヴォーテックスクラスまでなら使用可。それ以上のレベルの物は絶対に使わないように。」
「ぶ〜☆解ったわよう。」
シオンが少し強めに言うと、不承不承頷くマリア。魔法の中でも派手な物が特に好きなマリアにとって、レベルの低い物しか使えないと言うのはかなりつまらないのだろう。
「それで、シーラは・・・如何しようか?」
シオンがやや困ったような表情で聞く。シーラはかなり表情を暗くしながら「私じゃ・・・足手まといかな・・・?」と呟いた。シオンはその呟きを聞いて、慌てて説明した。
「違うって、誰も足手まといだなんて思ってないよ。唯、シーラは今更俺が如何こう言う必要は無いんじゃないかと思ってね。」
『え・・・?』
シオンの物言いに、皆が唖然とする。アレフたちもそうだがシーラ自身が一番呆然としていた。リサは思い当たる物があるのか苦笑しただけだったが。
「もしかして皆気付いてなかったのか?多分、俺とリサ、エルを除けばシーラが一番強いんだが。」
『ええ〜っ!?』
シオンの告げた驚愕の事実に、アレフ達が揃って声を上げる。シーラは真っ赤になって俯くだけだ。
「如何いう理由でかは知らないけど、護身術でも習ったんじゃないか?身のこなしがはっきり言って達人レベルだよ。」
それを聞いて益々驚くアレフたち。シーラは相変わらず真っ赤になったままだ。
「実戦経験さえ積めばかなりのモノになると思う。それに、シーラは潜在魔力が強いからね。鍛えれば魔闘家としても一流になれるだろうな。」
「あ、あのシオン君、それ以上言わないで・・・。」
殆ど茹蛸状態になりながら、それだけを言うシーラ。シオンもそれを見て流石にちょっと言い過ぎたかと反省するが、言った事を撤回する気は無いようだ。
「まぁその辺は本人が決める事だしね。俺がとやかく言うことじゃない。それは兎も角として、これから仕事にいくまでは此処で出来る限りの訓練をする。」
「仕事に行くまでって、そんなに悠長にしてて平気なのかい?」
リサが確認すると、シオンは微かに笑いながら言った。
「ああ、その辺は全然大丈夫。今回の依頼で退治する魔物は、日が暮れてから雷鳴山に出没するらしい。だから、それまでは時間があるって事。さ、少しでも時間が欲しい。早速訓練を始めようか。」
リサとシオンの指導のもと、訓練を開始した。

「さて、依頼によると魔物が出るのはこの辺のはずだが・・・。」
地図を確認しながら呟くシオン。日は既に暮れかかり、辺りは夜の帳に包まれかかっている。
アレから、数時間の間訓練を続けた結果、アレフ、パティ、マリアの3人は結構様になった。シーラに関しては、実戦経験が無いだけでその実力は既に達人クラスだということが判明した。因みに、シーラはシオン手製の特殊な手甲を受け取っている。普段は普通のリストバンドだが、戦闘時には変形して手甲になると言う優れものだ。マジックアイテムに目の無いマリアはそれを物欲しそうに見ていたが、取り敢えず無視している。
「そろそろいい時間だからね、アレフ達も気を抜くんじゃないよ。」
辺りに気を配りながら、アレフ達に忠告するリサ。それを聞いて気を引き締めるアレフ達。その時、戦闘を歩いていたシオンが立ち止まった。
「如何したのよシオン?」
「・・・来る!」
パティの問い掛けに短く答えながら、鞘から剣を抜き放つ。光を放つ闇・・・と言う些か矛盾した表現こそがしっくり来る色の刃を持つ、不思議な雰囲気を持つ長剣だ。その刃の先に、多数の魔物が姿を現す。
「結構数が多いね・・・。ゴブリン12、コボルド10、オーガ4ってところかい?」
「まぁそんなところだろうな。取り敢えず俺とリサがトップを務める。アレフ達は俺達が討ち漏らしたのを準じ叩いていけばいい。決して無理はするなよ。」
アレフ達に指示を出し、一気に魔物の群れに突っ込むシオン。リサもそれにやや遅れて突っ込んで行く。
「はああぁぁぁっ!!」
3,4体のゴブリンを纏めて薙ぎ払う。剣を振るう勢いをそのままに、飛び掛ってきたコボルドを真下から真っ二つに切り裂く。
「神魔封滅流・斬式・・・魔神剣!」
裂帛の気合と共に剣を振り、発生した衝撃波が数体の魔物を纏めて吹き飛ばす。技を放った後も全く動きを止めず、瞬く間に敵を屠っていく。
「せぇぇあっ!」
リサも負けじと二本のナイフを両手に持って敵に切りかかる。シオンがその斬撃で一気に切り裂くのに対し、リサの場合は的確に急所に攻撃を加えていく。シオンのように纏めて仕留める事は出来ないが、それでも確実に一体ずつ屠っていく。
そんな二人の様子を、他のメンバーは呆然と眺めていた。
「す、すげぇ・・・。」
「あの二人、あんなに強かったんだ・・・。」
アレフとパティが呆然と呟く。シーラも呆然としていたが、ふと何かの気配を感じ振り返った。その視線の先に3体のゴブリンが居る事を確認すると、すぐさま気を引き締める。
そして、飛び掛ってくるゴブリンを捌きながら、的確に反撃を加える。
「せいっ!」
普段のシーラからは想像も出来ない鋭い一撃が、不用意に近づいたゴブリンの腹部にまともに突き刺さる。その一撃でゴブリンは絶命した。
「!何時の間に、んなろっ!」
「このぉっ!」
残りの2匹も気が付いたアレフとパティが仕留める。二人とも、これが初めての実戦だとは思えないほどの鋭い一撃だった。
暴風が荒れ狂うかのようなシオンとリサの攻撃を何とか逃れた2体のコボルドがアレフ達に襲い掛かろうとしたが、マリアがそれを阻止する。
「ふふ〜ん、今度はマリアの番ね☆いくわよぉ・・・ヴォーテックス!」
普段は制御に失敗し魔法を暴発させてしまうマリアだが、先程シオンに上手い制御の仕方を教えてもらったので、上手く発動する。渦巻く真空の刃がコボルドをあっさりと切り裂き、絶命させた。
そうこうしている内に、シオンとリサは其々最後の一匹を仕留めようとしていた。
「神魔封滅流・斬式・・・双裂斬!」
「これでとどめだよっ!」
シオンの切り上げから即座に切り落としに繋げる斬撃がオーガを切り裂き、リサの放ったナイフが逃げようとしたゴブリンを仕留める。
これで全ての魔物を仕留め終わり、今回の依頼は完了した。

「それでは、本日の業務結果を報告してもらいたいと思います。」
シオン達が依頼者に報告を済ませて帰ってくると、他のメンバーは既に集まっていた。時間が遅い事もあって、直ぐに報告会を始める。
「僕達はちゃんと出来たよ。」
「それから、イヴさんからの託で、『頑張ってください』だそうです。」
図書館組のクリスとシェリルが先ず報告する。イヴの託は少々以外であったが、それでも嬉しい事に代わりは無い。シオンは少しだけ顔を綻ばせた。
「俺たちもちゃんとできたぜ。」
「うみゃぁ、おばあちゃんにお菓子を奢って貰いました〜。」
ピート達はがんばった褒美に、飼主からお菓子をおごってもらったらしい。かなりご機嫌だ。
「あたしの方も問題なくこなしたよ。まぁ今日は特に訪れる奴も居なかったからね。」
門番の依頼を受けたエルが報告する。今日は特に人が訪れる事も無かったようだ。
「俺達は魔物退治の依頼を受けた訳だが、問題なくこなせた。以外にアレフ達も戦える事が解ったからな、報酬以外にも良い収入があったな。」
それを聞き、やや怪訝そうな顔をするエル。リサ同様シーラの事は気が付いていたし、アレフやパティが役に立ったと言うのはまだ解る。だが、何時も魔法を暴発させまくっているマリアまでもが役に立ったと言うのが些か信じがたいのだろう。クリスやシェリル達はあからさまに驚いてた。
「今度余裕があったらクリス達も見てみようか。以外に戦闘適正が高いかも知れないな。」
クリス達の驚愕を半ば無視し、シオンが言う。その台詞にクリスとシェリルは焦るが、反対にピートは嬉しそうだ。メロディはよく解らないと言った顔をしている。
「或いはエルに任せてみるのも一興かな?」
微かにからかうような意味合いを込めてエルを見遣るシオン。ぶっきらぼうで冷たいように見えるエルが実際には面倒見の良い性格だと言う事を、シオンは知っていた。だからこそからかうように言ったのだ。
「何でアタシが・・・」
「リサだってアレフとパティの面倒を見てくれた。俺はマリアとシーラの面倒を見た。実戦経験者の中で、面倒見てないのはお前だけだぜ?」
エルの反論を封じ込めるように言うシオン。そう言われて、半ば諦めたように溜息をつくエル。
「・・・ハァ、解ったよ。ンで、アタシは誰の面倒を見れば良いんだい?」
「取り敢えず、ピートとメロディに格闘術を教えてやって欲しい。クリスとシェリルの面倒は折を見て俺がやるから。」
「あいよ。」
エルは魔法を使えないから、必然的にクリスとシェリルの面倒は、実戦経験があり、且つ魔法を使えるシオンが見る事になるのだ。
「シオン君、御免ね。宜しくお願いします。」
「宜しくお願いしますね、シオンさん。」
クリスとシェリルがシオンに頭を下げる。その横では、ピートとメロディがエルに話し掛けている。
「なぁなぁ、どんな事教えてくれるんだ?」
「ふみぃ、“かくとうぎ”ってな〜に?」
「あ〜、今日は遅いから、次に戦闘系の依頼を受けた時ね。」
エル達の様子を見ながら、かすかに苦笑するシオン。その心中では、(年の近い親子みたいだな)とか思っていたりする。
「何にせよ、今日はお疲れ様。それじゃ、今日は解散。」
このシオンの台詞で、本日の業務は終了となった。

Episode:03・・・Fin

〜後書き〜
どうも、刹那です。今回からお仕事開始です。
初仕事、と言うより初戦闘と言う内容ですが、如何だったでしょうか?
次は「火元はマリア」を元にした話になる予定です。
それでは、Episode:04でお会いしましょう。
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