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光と闇の交響曲Episode:05
刹那


悠久幻想曲SideStory
−光と闇の交響曲−

Episode:05 女装の麗人?

「今日は全員で一緒に仕事をしてもらう。」
ジョートショップに集まったアレフ、エル、リサの3人にシオンが言う。
「仕事内容は、逃走中のモンスターの捕獲。詳細は・・・」
「ちょっと待った。全員一緒にって、他の仕事は如何すんだ?」
説明を始めるシオンをアレフが遮る。エルやリサも怪訝そうにしている。
「他の仕事は、この依頼が終った後、余裕があったらやる事にする。兎に角この仕事を片付けないとね。それじゃ、役所まで行こうか。」
そう言ってさっさと歩き出す。アレフ達も、急いで後を追った。

役所に着いたシオン達は、依頼をしてきた職員に早速説明を求める。
「このモンスターは、元々自警団が追っていたのですが、異常に素早く逃げ足が速い為、捕まえられずにいるのです。そこで、皆さんにも依頼をした次第です。」
「自警団がねぇ・・・。一体どんな魔物なんだ?」
「どうも人に怪我を負わせるということは無いようなのですが、食料を奪ったり、女性の着替えを覗いたりと言った事をしていると・・・」
「・・・どんな魔物だよ・・・。」
「何か、真面目に考えるのが馬鹿らしくなるね・・・。」
「・・・アホらしい・・・」
職員の説明を聞き、アレフ達はげんなりしている。シオンは何やら考えていたが・・・
「・・・まぁ何にせよ、依頼を請けたからにはちゃんとやらせて貰うさ。魔物がちゃんと出てきてくれさえすれば、今日中に捕らえる事は可能だ。」
と言い、立ち上がる。
「それじゃ、早速準備にかかろうか。」

「で、何で私等はこんな所に来てるんだい?」
リサがシオンに尋ねる。一行は今由羅の家の前に来ていた。
「魔物を捕まえる準備の為だよ。・・・お〜い、由羅〜。」
さらりと言って由羅の家のドアをノックする。少しすると、ドアが開き由羅が顔を出す。
「な〜に〜?ってシオン君じゃない、どうしたのぉ〜?」
「ちょっと由羅に頼みたい事があってね。時間大丈夫か?」
「いいわよぉ。さ、入って入って。」
由羅に案内されて居間に入る。全員が座った後、シオンが説明を始める。
「実は、役所から奇妙な魔物の捕縛を依頼されてね、その為の準備を由羅にも手伝ってもらいたい。」
「準備って?」
「リサとエルに化粧してやってくれ。なるべく綺麗に見えるように。」
「なっ!?」
「坊やっ、一体何を言い出すんだい!?」
シオンの言葉にエルとリサがすぐさま反応する。アレフは突然の展開に唖然としている。
「ん〜それは良いけど、何か意味があるの?」
「ああ。相手は食い意地が張っていて、その上女好きと言う欲望の塊みたいな奴だからな。女か食い物で釣れる筈。んで、食い物だと用意するのに金かかるし、失敗したら無駄になるからな。幸い、こっちには女性がいるし、化粧する程度なら大した手間にはならないし、失敗したとしても特に損はしないからね。」
「ちょ、ちょっとシオン!?何を勝手に・・・」
「そ〜言う事ね。解ったわ、私に任せて頂戴。」
エルが文句を言おうとするのを遮って、由羅が目を輝かせながら言う。その輝きに不気味なものを感じたのか、リサとエルは逃げ出そうとするが・・・
「ああそれから、逃げた場合仕事放棄とみなし、全治一週間程度の怪我を負ってもらうからそのつもりで。」
シオンの台詞で逃げるに逃げられなくなってしまう。観念したリサ達だが、トンでもないことを言い出した。
「わかったよ、やればいいんだろう?その代わり、坊やとアレフもやるんだよ!」
「そうだな、アタシ等だけじゃ不公平だからな。シオンとアレフにもやってもらおうか。」
この台詞に慌てたのは、今まで呆然としていたアレフだ。
「なっ、ちょっと待ってくれ、何で俺まで!?エル達だけで十分じゃないか!」
何とかエル達を説得しようとするが、エル達は聞き入れようとしない。由羅に至っては既にやる気十分だ。アレフは最後の望みであるシオンに話し掛ける。
「なぁシオンも黙ってないで何とか言ってくれ!」
「・・・まぁ仕事だし。諦めろ、アレフ。」
「うそだろぉ・・・」
頼みの綱のシオンがあっさり受け入れた為、がくりと崩れ落ちるアレフ。こうして、全員が由羅の手によって化粧を施される事となった。

「じゃ〜ん、本邦初公開♪女装姿のシオン君で〜す♪」
「・・・。」
リサ達の化粧を終え、最後のシオンに取り掛かっていた由羅が隣室から出てくる。続いて部屋から出てきたシオンを見て、アレフ達は絶句してしまう。
「お前ら、何固まってんだ?」
「いや、だって、なぁ・・・」
「坊や、あんたホントに男かい?」
「どう見ても同一人物には見えないな・・・」
シオンに話し掛けられて、何とか本人である事を納得するが、それでも未だ衝撃は収まらないようである。無理も無いだろう。薄く化粧を施し、女物の服を着て、念の入った事に胸に詰め物までしてあるシオンは、下手な女性より遥かに綺麗なのだから。
「私も自分でやってて驚いたけどねぇ。まぁシオン君は元が良いから。・・・リサ達も、うかうかしてられないんじゃなぁ〜い?」
「!何を言ってんだい、そんな事あるもんか!」
「そうだ、幾ら綺麗だからって男だぞ!アタシ等が負けるもんか!」
由羅の挑発的な言葉に、むきになって反論するリサとエル。シオン達は、それを見て呆れていた。
「単純と言うか何と言うか・・・。あれほど嫌がってたのに、簡単にやる気出すんだから女ってのは訳がわからん。そう思わないか?」
「あ?あぁそうだな・・・。」
シオンに返事を返しながら、アレフは(落ち着け俺っ、相手はシオンだぞ、男なんだぞ!それなのに見惚れてどうする!)とか考えていた。どうやらシオンの女装は色んな方面に色んな影響を与えているらしい。尤も、本人には自覚が無いようだが。
「ほら、ぼさっとしてるんじゃない!さっさと魔物を探しに行くよ!」
由羅の挑発で俄然やる気を出したリサとエルがシオン達を引っ張っていく。
「いってらっしゃ〜い♪」
呑気に手を振る由羅に見送られて、シオン達は街へと繰り出していった。

買い物しながら街を歩いていたトリーシャは、途中でとんでもないものを見つけた。魔物を探している途中のエルとアレフである。
「あーっ!エル、なんて格好してんの!?」
「げっ、トリーシャ・・・」
「やば、如何すんだよ、エル?」
「如何するったって・・・」
街一番の噂好きのトリーシャに見つかって慌てるエル達。特にアレフは女装しているが故に、かなり焦っていた。
「如何しちゃったの、エル?そんな格好してるなんて・・・。あれ?そっちの人は・・・まさか、アレフ君!?」
「ああぁぁ・・・俺の人生終わりだ・・・」
トリーシャに気付かれ、崩れ落ちるアレフ。噂好きのトリーシャに知られれば、今日中にはアレフが女装した事が知れ渡るだろう。アレフの信用が地に落ちるのは目に見えて解ることだ。そんなアレフを気にも留めずに、トリーシャはエルに事情の説明を求める。
「で、どうしてそんな格好してるの?仮装か何かの仕事?」
「いや、実はな・・・」
と、事情を説明するエル。
「へぇ〜、それじゃその格好で魔物を誘き寄せて、そこで捕まえようって事ね。・・・ん?って事は、シオンさんも女装してるの?」
「ああ。愚図ってたアレフと違ってね。仕事だからってあっさり認めてたよ。」
それを聞き、トリーシャは目を輝かせる。
「それは是非とも見ないとねっ。それで、シオンさんは今何処にいるの?」
「街を周ったら、街外れで合流する予定だけど・・・。あんまり見ない方が良いと思うぞ?」
「何で?もしかして、凄く酷いとか?」
「いや・・・。」
聞き返されて言葉に詰まるエル。不思議に思うトリーシャだが、取り敢えず目先の好奇心を満たす事を優先させたようだ。
「良くわかんないけど、取り敢えずボクも一緒に行くよ。良いよね?」
「まぁ、別に構わないけどさ・・・」
こうして、済し崩し的にトリーシャも魔物の捕縛に同行することとなった。

「ええぇ〜っ、これがシオンさん〜!?」
街外れでシオン達と合流し、シオンの姿を見るなりトリーシャが声を上げる。
「嘘・・・こんな事って・・・」
「だから言ったろ、見ない方が良いって・・・。」
シオンのあまりの美少女然とした姿に、愕然とするトリーシャ。どうやらエル達と同様、女としてのプライドを甚く傷つけられたようだ。
「トリーシャの奴、何を驚いてんだ?」
「さぁね・・・」
訳がわからずリサに尋ねるシオン。どうやら自分がかなりの美少女と化してる事に全くもって気付いていないらしい。あまりと言えばあまりな態度に、何を言う気も無くすリサ。
「まぁそれは良いとして、これから如何するんだい?結局魔物を誘き出す事は出来なかったじゃないか。」
愕然としているトリーシャと、落ち込んでいるアレフを無視して、リサは話を進める。勢いでやってしまった事とは言え、普段とは違う女性らしい格好をし続けるのはやはり恥ずかしいのだろう。エルも同様の表情をしている。
「当てが外れたかな・・・。食料を用意したほうが・・・ん?どうやらこれ以上何かをする必要は無さそうだな。」
そうシオンが言うと、まるでタイミングを見計らったかのように、少し離れた場所にある茂みから何者かが姿を現す。
「!アレが今回のターゲットって事かい?」
「漸く出てきたね・・・。」
小声で会話を交わすリサとエル。シオンも含めて3人とも気付いているが、あえて気付かないフリを続ける。ここにくるまで話し合って決めた作戦である。魔物を誘き出せても、下手に動く自警団の二の舞になってしまう。そこで、相手が近づいてくるのを待って、十分近づいてきたら取り押さえる、と言う作戦だ。シオン達は魔物が近付いて来るのを辛抱強く待つ。因みに、アレフとトリーシャはまだ魔物に気付くどころか、其々が受けたショックから立ち直ってすらいない。
「うひ、うひひ。」
奇妙な声を上げながら、慎重に近づいてくる魔物。そろそろ十分かとシオンが思った瞬間、一気に間合いを詰めて飛び掛ってきた。シオンに、である。
「うひひっ!」
「きゃあぁぁぁっと!」
わざとらしい悲鳴を上げながら、飛び掛ってきた魔物を捌き、1本背負いの要領で地面に叩きつける。以外に丈夫なのか、直ぐに飛び起きる魔物。シオンは危険と悟ったのか、目標を変えようとする。
「ふふふ・・・アタシ等を無視するなんて、いい度胸じゃないか・・・。」
「覚悟は出来てんだろうねぇ・・・?」
そんな魔物に、異様な殺気を放ちながらにじり寄るエルとリサ。どうやら、自分達を無視して真っ先にシオンに向かった事が許せないようだ。
「うひっ!?うひひ!」
その殺気を感じ取り、今度はトリーシャの方に飛び掛っていく。
「ちょっと、何でこっちに来るの!え〜いっ、ルーン・バレット!」
「うひひ〜っ」
いきなり標的にされたトリーシャが放った魔力の弾丸が、魔物を吹き飛ばす。
「ふふふふふふ・・・とことんアタシ等をバカにしようってんだな・・・?」
「くくくくくく・・・今度こそ逃がしゃしないよ・・・。」
二度も無視され、先程にもまして凄まじい殺気を放つエル達。逃げる暇も与えずに、一気に襲い掛かる。
「やれやれ・・・あんな風に殺気だってたら、幾ら魔物だって標的にはしたく無いだろうに・・・。そう思わないか?」
「ははは・・・そうだな。何にせよ、これでやっと女装を解く事が出来るよ・・・。」
「二人とも、結構マイペースだね・・・。」
異様な音が響く中、シオン達は取り敢えず任務が成功したことを喜んでいた。

翌日の朝、何時ものように今日の依頼をチェックしていたシオンは、ある物を見て顔をしかめる。
「・・・何だこれは・・・?」
「どうしたっスか、シオンさん?」
近寄ってきたテディに、無言で依頼表を見せるシオン。それを見たテディは、唖然とした。
「・・・シオンさん指定で絵画のモデル・・・但し、女装してっスか・・・。」
「如何するよ、これ・・・?」
流石のシオンも驚いているようだ。
「まぁ仕事っスからね、引き受けるべきじゃないっスか?報酬も良いっスし。」
「そう言う問題じゃないと思うんだが・・・。」
それでも、依頼と言う事で仕方無しに引き受けるシオン。この後、手伝いに来たアレフが大笑いしてシオンに半殺しの目にあったのは言うまでも無い。
因みに、女装したシオンへの依頼はこの後1週間続いたと言う。

Episode:05・・・Fin

〜後書き〜
どうも、刹那です。
予告どおり「煩悩もんすたー」が元ネタです。初期段階ではあまりに話が短くなってしまい、ある程度長くなるよう修正するのに苦労しました。
それでは、Episode:06でお会いしましょう。
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