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光と闇の交響曲Episode:07
刹那


悠久幻想曲SideStory
−光と闇の交響曲−

Episode:07 ジョートショップVS自警団

「こんにちは〜。シオンさんいますか〜?」
休日のジョートショップに、トリーシャが訪れる。部屋で本を読んでいたシオンはその声を聞き、下に降りた。
「おはよう、トリーシャ。如何したんだ?今日は休日だから依頼は請けないぞ。」
「あ、シオンさんおはよう!あのね、シオンさんに話があるの。お父さんからの伝言なんだけどね。」
「リカルドからの?」
怪訝そうな顔をするシオン。先日リカルドを含めた一部の自警団員と捜査上の協力を約束したが、そんな急に進展が見られるとは思えない。だが、それ以外で自警団と協力するような事は無い筈だ。
「何でも、グラシオコロシアムを借り切って戦闘訓練をするらしいの。それでね、シオンさん達ジョートショップのメンバーも一緒にやらないかって言ってたよ。」
「戦闘訓練、ねぇ・・・。」
あまり気乗りしない様子のシオン。別段強さを求めるような性格ではない為、休日を潰してまで訓練などしようとは思わないのだ。
「ほら、シオンさん達って魔物退治とかの依頼も請けるでしょ?それに備えて訓練しておいた方が良いんじゃないかって。」
「・・・そう、だなぁ・・・。魔法組は兎も角、直接戦闘組はやっても良いか。それじゃ、メンバーに予定を聞きに行きますか。」
ちょっと考える素振りを見せたものの、結局申し出を受ける事にしたシオン。直接戦闘要員であるアレフ、ピート、エル、シーラ、パティ、リサ、メロディの予定を聞く為、トリーシャと共に店を出た。

「で、結局集まったのはアレフ、シーラ、パティ、リサか。思ったより集まったな。」
メンバーを見渡して、シオンが言う。シオンは休日の事ゆえあまり集まらないのでは、と思っていたのだ。彼等は既に各々の準備を終えている。後はリカルドが来るのを待つだけだ。
「シオン君、良く来たな。」
丁度フィールドに出て来たリカルドがシオンに話し掛ける。
「よう、リカルド。それで、今日はどんな訓練をするんだ?」
「ウム、予定としては一対一、一体多等の様々な状況を想定した模擬戦形式でやろうと思うのだが、如何だろう?」
リカルドがシオン達に説明する。シオンは暫し考えた後頷く。
「・・・まぁその辺が妥当だろうな。それで、如何組み合わせるんだ?」
「取り敢えず自警団、ジョートショップ其々から一名ずつ出してやってみよう。」
「OK。」
シオン達は色々と話しながら、順番やこの後の訓練メニュー等について話し合っている。
「それにしても、シオンもリカルドとは結構話してるよな。」
「そうだねぇ。リカルドの方も、坊やの事を認めてるみたいだしね。」
アレフ達がシオンとリカルドの様子を見ながら話している。彼等が訓練メニューを考えてくれないと、何もしようが無いのだ。
「そう言えば、お父さん最近良くシオンさんの話をするようになったんだよ。」
見学に来ているトリーシャが言う。
「リカルドおじさま、どんな事を話しているの?」
「あ、それ私も気になるな。」
シーラとパティが尋ねる。トリーシャは少し考えてから答えた。
「そうだなぁ・・・人柄とか、実力とかかな。結構べた褒めなんだ。」
「もしかして、アルベルトより気に入ってんじゃないか?」
「俺がどうかしたか?」
「どうわぁっ!?」
アレフが冗談混じりにアルベルトの名前を出すと、丁度計ったかのようにアルベルトが声をかける。
「あ、アルベルト!?何時からいたんだ?」
「つい今し方だ。隊長に言われて、模擬戦の準備をしていたんだ。で、俺がどうかしたのか?」
焦るアレフに怪訝そうな顔で尋ねるアルベルト。どうやら、先程の会話を聞いていた訳ではないようだ。本当に解らないと言った顔をしている。
「いや、別に何でもないよ。それより、今日は随分大人しいじゃないか、坊やが居るってのに。」
アルベルトの質問をかわしつつ、からかうように言うリサ。それを聞き、アルベルトは渋面になる。
「隊長に言われているんだ。あの犯罪者に訓練時以外で突っかかっていったら、即座に追い返すってな。だから我慢してんだ。」
アルベルトの台詞に苦笑するアレフ達。やはりリカルドはアルベルトの行動パターンをしっかりと把握しているらしい。
その時、話し合っていたシオン達が全員を呼んだ。
「よし、皆集まってくれ。先程シオン君と話し合って、訓練内容を決めた。まずはジョートショップ側と自警団側から其々一人ずつ戦う一対一形式の模擬戦。その後は一対多の変則戦闘。最後に多対多となる。」
「ジョートショップ側の一番手はアレフだ。準備してくれ。」
リカルドの説明を聞いた後、シオンの呼びかけで準備をし、フィールド中央に進み出るアレフ。自警団側からも、一人前に進み出る。丁度普段の闘技場と同じ光景だ。
「それでは、始めっ!」
審判役のリカルドの合図で、模擬戦が始まった。

相手はアルベルトと同じ槍使い。間合いを取っては不利と判断したアレフは、開始早々一気に間合いを詰めた。
「でやぁっ!」
気合と共に振るった剣は相手の槍に受け止められるが、気にする事無く連撃に繋げる。最初の一撃でペースをつかんだアレフが終始おしている。逆に、相手は素人相手に、と言う考えからか、必要以上に焦っていた。
「このぉっ!」
苦し紛れに突き出した槍を上手くかわすと、がら空きになった胴を薙ぐ。
「貰ったっ!」
綺麗に決まった一撃に蹲る自警団員。
「其処までっ。勝者アレフ!」
リカルドが勝負の終了を告げる。アレフは満足げに、相手は酷く悔しそうに其々の仲間の下へ戻った。
「やったな。いい試合だったよ。」
「アレフ、あんた結構強かったのね。」
「おめでとう、アレフ君。」
戻ってきたアレフを労うリサ達。アレフは疲れているのか、軽く手を挙げただけだ。
「結構気疲れするだろう?人同士の戦いは。」
シオンはそうアレフに問い掛ける。
「ああ。魔物相手の時と全然違うな・・・。ハァ、疲れた・・・。」
「はいアレフさん。お水とタオル。」
「おお、サンキュー、トリーシャ。」
シオンに答えながら地べたに座り込むアレフに、トリーシャがタオルと水を差し出す。それを見た後、シオンは次のメンバーを告げる。
「それじゃぁ次はパティだな。頑張って来い。」

「さ〜て、頑張るわよ!」
シオンから貰ったトンファーを構え、気合を入れるパティ。それとは対照的に、自警団員Bは気だるそうにしている。
「はぁ、俺の相手は女かよ・・・。こりゃ楽勝だな。」
「!・・・よくも言ったわね・・・。」
嘲るような相手の言葉に完全にキレるパティ。自警団員Bはそれに全く気付いていない。
「それでは、始めっ!」
「はあぁぁっ!!」
リカルドの開始の合図と同時に一気に懐に飛び込み、油断し切っている相手の腹に鋭い一撃を叩き込む。それでは止まらず、連続して攻撃するパティ。そのあまりに鬼気迫った様子に、流石のリカルドも止めるのを忘れて呆然としていた。
「これで、トドメッ!!」
回転しながら、突きを繰り出すパティ。遠心力によって威力を増したそれは、比較的大柄な自警団員Bを容易く吹っ飛ばした。因みに、最初の一撃の時点で彼は意識を失っている。
「・・・しょ、勝者、パティ・・・。」
あまりと言えばあまりな光景に言葉を失いつつも、何とか終了を告げる。尤も、パティはそれを聞く前にさっさと自陣に戻ってしまっているが。
自陣に戻っても、パティはかなり殺気立っていて、呆然としたままのアレフ達は声をかけられない。ただ一人冷静なシオンが声をかける。
「パティ、あそこまでやる事は無かったんじゃないか?相手は最初の一撃で意識を失っていたんだ。」
「冗談じゃないわ、あれでもまだ足りない位なんだからっ!!」
憤慨しつつ言い返すパティを見詰め、あくまで冷静にシオンは問い掛ける。
「・・・アレであいつが死んだとしても、同じ事が言えるか?」
「え・・・」
シオンの問い掛けに言葉を失うパティ。その様子を見ながら、言葉を続けるシオン。
「パティは素人だ。おまけに怒りで抑制を欠いていた。そんな状態で、あそこまで連続して攻撃を加えれば、最悪殺してしまっていたかも知れない。それでも、お前は同じ事を言えるのか?」
「そ、それは・・・」
完全に言葉を失うパティ。他のメンバーは言葉をかけることも出来ずに、見守っている。
「確かにあいつの態度は褒められたものじゃない。だからと言って、殺して良いような事でもない。良いか、もう一度言う。パティは素人だ。感情の箍が外れた状態で手加減できるほどの技量は無い。無意識でも手加減が出来る位技が体に染み込むまで、戦闘時は出来るだけ冷静でいる事を心がけるんだな。でないと、何時か取り返しのつかない事を起こすぞ。」
「うん・・・。ごめん、シオン・・・。」
シオンに言われ、項垂れるパティ。そのあまりにうちひしがれた様子に、仲間も何も言えなかった。
「まぁ、解っているならそれで良いさ。ンじゃ、次はシーラだな。」
「あ、うん。」
シオンに呼ばれ、我に返るシーラ。今までずっと呆然としていたのだ。慌ててフィールド中央に歩み出た。

「宜しく、お願いします。」
相手に対して礼をするシーラ。相手は大分戸惑っている。
「あの、シェフィールドさん?貴方は戦えるのですか?」
「あ、はい。一応・・・。」
シーラの返事に、未だ訝しげながらも構える自警団員C。それを見てシーラも構える。
「それでは、始め!」
合図が出されるが、双方とも動こうとしない。シーラは元から受身のスタイルだし、相手も一人目二人目と連続して負けているため、かなり慎重になっている。このまま長時間睨み合いが続くと思われたが、意外な事にシーラが間合いを詰めた。
「!貰ったっ!!」
勝機と見た自警団員Cは、懐に飛び込まれる前に得物の剣を横薙ぎに振るう。そのとき、手甲が形状を変化し、肩辺りまでを覆う盾のようになった。それで相手の攻撃を防ぐと、相手を掴みそのまま一気に投げ飛ばす。決まったと思っていた攻撃を防がれ、完全に動きの止まっていた自警団員Cはあっさりと投げられた。
「それまで!勝者シーラ!」
「ふぅ・・・有難う御座いました。」
相手に礼をして自陣に戻るシーラ。普段の控えめな態度からは信じられないほど毅然とした態度に、シオン達も戸惑い気味だ。
「シーラ、やるじゃないか。アレフより強いんじゃないかい?」
「そ、そんな・・・リサさん、からかわないで。」
戦闘のプロであるリサに褒められ、赤くなって俯くシーラ。それは普段の彼女と同じ態度である。
「はは、シーラはやっぱりその方が良いな。俺としてはね。」
「あんたも調子に乗らないの!」
引き合いに出されたアレフがシーラをからかうが、パティにど突かれて黙り込む。先程怒られて落ち込んでいたパティも、自分の調子を取り戻したようだ。
「此処まで全勝か・・・。これは俺達を褒めるべきか、自警団が不甲斐無いと見るべきか。兎も角、次はリサだな。」
「あいよ。」
リサは軽く答え、フィールドの中央へ向かった。

「あんたが私の相手かい?」
「はい!リサ殿、宜しくお願いします!」
異常に礼儀正しい相手の態度に苦笑しつつ、愛用のナイフを構える。相手も構えるが、その得物は驚いた事にリサと同じナイフである。尤も、相手は二刀流であるが。
「始めっ!」
リカルドの合図で、同時に接近するリサと自警団員D。ナイフは間合いが狭い為、どうしても接近戦になってしまうのだ。
「はっ!」
「てぇいっ!」
繰り出された一撃目をかわし、ナイフを繰り出すリサ。相手もそれをかわされたナイフを引き戻して防ぎつつ、残った一刀で斬りかかる。
「せぁっ!」
相手のナイフをかわしつつ、離れると同時に小さな投げナイフを3本同時に放つリサ。相手はそれをかわそうとしてバランスを崩してしまう。
「そこっ!!」
相手に体勢を整える間を与えずに繰り出されたナイフは、相手の首元に突きつけられる。
「其処まで!勝者リサ!」
「中々良い腕だけど、まだまだだね。」
「あ、有難う御座いました!」

「流石だね、リサさん。格好良かったよ!」
「コラコラトリーシャ・・・。そんな大したもんじゃないって。」
自陣に戻るなり声をかけてきたトリーシャに苦笑を返しつつ答える。
「同じ得物の相手は如何だった?」
「結構良い経験になったよ。此処に来るまで、あまりナイフ使いってのはいなかったからね。あいつも経験を積めば良い戦士になるんじゃないか?」
「成る程ね。それは後ででも直接言ってやるんだな。」
言いつつフィールド中央に向かうシオン。その彼にシーラが声をかける。
「シオン君、頑張って!」
その声に手を挙げて答えるシオン。シーラの意外に大胆な行動にアレフは驚き、同じように声をかけようとして先を越されたパティとトリーシャは恨めしそうにシーラを睨んでいた。それを見て、リサは(坊やも隅に置けないねぇ。さて、如何なる事やら。)と思っていた。

「ふっふっふっ・・・遂にこの時が来たか・・・。オイ犯罪者!今日こそ貴様を地べたに這いずらせてやるっ!!」
「あ〜はいはい、精々頑張ってな・・・。」
気合入りまくりのアルベルトに対し、あくまで気だるげに対応するシオン。
「それでは、始めっ!」
「どぉりゃあぁぁっ!!」
開始と同時に凄まじい勢いで連続攻撃を仕掛ける。普段はイノシシだ何だと馬鹿にされているが、その実力は本物である。だが、シオンは突き出された槍に軽く剣を宛がい、あっさりと弾き飛ばす。
「なっ!?」
「確かにスピードはあるし、攻撃も鋭い。だけど、あまりに単調すぎる。そんなんじゃ一生かかっても俺には掠らせる事も出来んよ。」
「なろおっ!!」
弾かれた槍を慌てて拾い、再び連撃を放つ。今度は多少のフェイントを交えたものだ。だが・・・。
「フェイントを交えるのは良いがな、ただ交えれば良いってものじゃない。・・・まだまだ甘いな。」
繰り出される連撃を同じ突きによる連撃で完全に受け止める。あっさりと離れ業を出され、呆然とするアルベルト。その様子を見て、苦笑しつつ槍を弾き、剣を突きつける。
「其処まで。勝者シオン。」
「まぁそう言う事だ。精々精進するんだな。」
言い残し、さっさと自陣に戻るシオン。アルベルトは未だに呆然としている。
「随分と人間離れした事をやってのけるじゃないか。アレが坊やの実力かい?」
「さぁね。なんにせよ、手抜きはしなかったよ。・・・手加減はしたけど。」
シオンの物言いに呆れる一同。アレだけの離れ業をやっておきながら、手加減しているというのだから無理も無い。
「シオン君、少し休憩を挟んでから次の訓練に移ろうと思うが、良いかな?」
「ああ、休憩は10分位な。それ以上休むと今度は体が冷えるから。」
「うむ、解った。」
離れた所から話し掛けてきたリカルドに答えるシオン。ジョートショップの面々は気ままに休憩を始めた。こうして、自警団とジョートショップの合同演習の時間は過ぎていった。

この後行われた一対多、多対多の戦闘でも、ジョートショップ側は自警団側を圧倒していた。この結果を受けて、リカルドが第1部隊全員強制参加の特別訓練を行う事を決意したが、それはジョートショップのメンバーには何ら関係の無い事である。

Episode:07・・・Fin

〜後書き〜
どうも、刹那です。Episode:07、楽しんでいただけたでしょうか?
今回は戦闘メインです。描写が甘いのは、勘弁してください。
ジョートショップメンバーがかなり強くなってますが、ゲーム本編の双六時の戦闘でも負けなかったし、これ位の差は許容範囲かと思います。あくまでメインはジョートショップの方ですし。
それでは、Episode:08でお会いしましょう。
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