中央改札 交響曲 感想 説明

光と闇の交響曲Episode:08
刹那


悠久幻想曲SideStory
−光と闇の交響曲−

Episode:08 ターゲットはアリサ!?

休日のジョートショップ、シオンは依頼をこなした量から手伝ってくれたメンバーの給料を計算していた。

カランカラン♪

「シオン居るか?」
ドアベルを鳴らしながら、アレフが店に入ってくる。
「よう、アレフじゃないか。如何したんだ?今日はデートだって言っていたのに。」
「その事でちょっとな・・・。シオン、今日は暇か?暇だな。良し、ちょっと付き合え!」
そう言って、無理矢理シオンを連れ出そうとするアレフ。流石にシオンも黙って従うわけにはいかない。
「えぇい、引っ張るなっ!・・・ったく、一体如何したんだ?」
「う・・・実はな、今日のデートの相手がさ・・・他の街から流れてきた奴にナンパされちまったんだよ。それで・・・」
「彼女を取り返すために、その相手のところに殴りこみでもかけようってのか?」
「殴りこみって程のもんじゃないけど・・・。文句言って、彼女を取り返すんだっ!」
握り締めた拳を突き上げるアレフに嘆息するシオン。最早何を言っても聞き入れないだろうと言う事は明らかだった。
「ハァ・・・解ったよ、付き合ってやる。・・・すいませんアリサさん、そう言う訳なんでちょっと出掛けて来ますね。」
「はい、気を付けて行ってらっしゃい。」
「行ってらっしゃいっス」
「おっしゃぁ、行くぞシオン!」
アリサに挨拶して、シオンは息巻くアレフと共に店を出て行った。
「シオン君も大変ねぇ・・・。」
「ホントっス。」
店に残ったアリサとテディは、シオンに同情していた。

「で、その流れ者とやらは何処に居るんだ?」
店を出たシオンはアレフに尋ねる。折角の休日である。幾ら付き合う事を決めたとは言え、無意味に歩き回るのは御免願いたかった。
「それなら既に調べがついてるんだ。相手が今居るかどうかは解らないけど、奴はさくら亭に宿泊しているらしい。」
「ハイハイ、さくら亭ね・・・。それにしても、んな事調べる余力があるなら、もう2、3仕事を増やしても大丈夫だったかな?」
「げ、それは勘弁してくれ・・・。」
そんな事を言ってる内に、シオン達はさくら亭に到着した。

カランカラン♪

「いらっしゃい・・・って、またあんた達?今日はもうランチの時間は過ぎてるわよ?」
「コンチハ。別に食事に来たわけじゃないさ。人を探しててね。」
「シオンも?」
「俺はアレフの付き添い。ランチは終ってるのか・・・。なら、なんか軽い物とコーヒーを貰えるか?」
「ん〜、サンドウィッチとサラダ位ならすぐ出せるけど?」
「ならそれで良いや。」
キョロキョロと店の中を見渡すアレフを尻目に、さっさと注文を終えるシオン。そのまま何時ものテーブルに着く。と、直ぐ隣のテーブルに着いていたエルとトリーシャ、シーラが挨拶する。
「こんにちは、シオン君。」
「今日はこれから昼飯かい?」
「こんにちは、シオンさん。今日は如何したの?」
「よう。今日は収支の整理と皆の給料の計算をしてたんだけどね、アレフのアホに付き合うことになった。ンで、エルの言う通りこれから昼飯。」
席に座りながら答える。と、店を見渡していたアレフも近づいてきた。
「クソ、此処には居ないのか・・・。やぁシーラ。今日も綺麗だね♪」
「あ、アレフ君。こんにちは。」
「アレフ君、ボク達には挨拶無し?失礼しちゃうな。」
「おっと失礼。こんにちは、トリーシャ、エル。」
「そんな風に、とってつけたように挨拶されてもなぁ・・・。」
アレフの態度に白い目を向けるトリーシャ。エルは初めからアレフの事を無視している。
「なぁシオン。さっき給料って言ってたよな?アタシは別に給料なんて貰わなくても良いんだけど?」
「あ、それなら私も。シオン君やおばさまの力になりたくて手伝っているんだし、お給料は貰わなくても・・・。」
エルとシーラが言うが、シオンはそれに首を振る。
「駄目。うちは働いた量に併せてちゃんと給料を受け取ってもらうのが基本方針だからね。受け取って貰えないと、かえって気負ってしまう。特にアリサさんが。」
アリサの名前を出されて、納得するエルとシーラ。其処へ、パティが料理を持ってきた。
「はい、お待たせ。ねぇ、さっきからアレフは何をやってるの?」
パティの台詞にアレフの方を見ると、先程からしきりに店を見渡したり、2階に続く階段を見たりしている。見様によっては、かなりの不審人物に見えない事も無い。
「ああ・・・何でも、此処に泊まってる奴に、自分の彼女をナンパされたらしくてね。文句を言って彼女を取り返すんだってよ。ンで、俺はそれに付き合わされてるって訳。」
「ふ〜ん・・・あんたも大変ねぇ・・・。」

カランカラン♪

そんな事を話していると、誰かが店に入ってきた。入ってきたのは、かなり気障な格好と雰囲気をした男だった。
「おお、この様な店にこんなにも綺麗なお嬢さん方がいらっしゃるとは・・・。やはり休憩に戻ってきて正解だったな。」
男はそんな台詞をのたまいながら、シーラ達の着いているテーブルに近づいた。
「・・・こんな店で悪かったわねぇ・・・。文句があるなら泊まるんじゃ無いわよ・・・。」
男の台詞を聞いたパティはそんな事を呟いていたが、当然、男は気付かなかった。
「ねぇシオンさん。あの人がアレフ君が探してる人じゃないかな?」
「まぁ多分そうだろうな。ン?そう言えばアレフは何処に行ったんだ?」
「アレフ君なら2階に上がっていったよ。」
「・・・間の悪い奴。」
シオンがトリーシャと話しているうちに、男は直ぐ傍まで来ていた。
「如何でしょう、美しいお嬢さん。私と一緒にお茶でも?」
「あ〜ん?一昨日来な。」
そう言って、しっしっとばかりに手を振るエル。エルは脈なしと踏んだ男は今度はシーラに声をかけた。
「お嬢さん、如何でしょうか、私にお付き合い願えませんか?」
「え、あ、あの、私は・・・」
いきなり声をかけられてしどろもどろになるシーラ。それを見ていけるとでも思ったのか、男は更に台詞を続けようとした。が・・・

バキャッ!!

凄い音を立てて、シオンは男を張り倒した。その手には、嘗てアレフやアルベルトをも張り倒したハリセンが握られている。
「人が飯食ってンのに、隣で鬱陶しい真似すんじゃねぇつってんだろ・・・。」
そう呟くシオンの目は、かなり据わっていた。微かな殺気すら漂わせるシオンの様子に、さくら亭に居合わせた全ての客が呆然としていた。
「・・・あ、あの、シオン君?助けてくれて有難う・・・。」
呆然としつつも、何とかそれだけを言うシーラ。
「ああ、別に礼を言われるような事は・・・って、こんな遣り取り、前にした事無かったか?」
シーラに答えつつ、シオンはそんな事を呟く。確かに、一緒に行動する事の多いアレフが良くナンパする為、この手の遣り取りは日常茶飯事だった。
「くっ・・・君!いきなり何をするんだっ!?」
その時、復活した男がシオンに食ってかかる。この時にはシオンは何時もの調子に戻っていた為、男はシオンがかなり怒っていた事に気付いていなかった。
「・・・名乗りもせんといきなり口説き始めるような奴にとやかく言われる筋合いは無い。それからさっきも言ったが、人が飯食ってる横で鬱陶しい真似をすんな、ド阿呆。」
「む・・・確かに、此方が礼儀を欠いてたようですね。では改めまして・・・。私の名前はガイ。各地を転々としながら、美しいお嬢さん方に一夜の夢を与える旅人です。」
シオンに言われ、男−ガイが挨拶する。それを見遣りながら、シオンは呟いた。
「・・・要するに、相手の女性を弄び、一夜限りで捨てた挙句、すぐさま逃げるように別の土地に移り、そこでまた新しい女性を見つけて同じ事を繰り返す訳だ・・・。最低だな。」
シオンの台詞に、店の客全員が白い目を向ける。居た堪れなくなったガイは、シオンに指を突きつけて叫んだ。
「くっ、自分がもてないからって僻むような事を言わないで貰いたいな!・・・ハッ、まさか君がこの街一番と評判のナンパ師じゃないだろうな?」
見当ハズレの事を大声でのたまうガイ。大体、シオンがもてないと言う時点で間違っている。シオンは全く気がついてないが、シオンに好意を持つ女性は結構、と言うかかなり多いのだ。此処に居るシーラやパティ、トリーシャもその一人だったりする。
「何で俺がナンパなんてしなきゃならんのだ・・・。俺じゃなくて、ほれ、今2階から降りてきた男がそうだよ。」
白い目でガイを見遣りながら、丁度降りてきたアレフを指差す。いきなり注目されたアレフは戸惑っていたが、シオンの傍に立つガイを見て、すぐさま顔色を変えて詰め寄った。
「おいお前、俺の彼女を返せっ!」
「何の事だか解りませんね。それより、貴方はこの街一番のナンパ師だそうですね?」
「ああ、そうだ!」
『・・・。』
きっぱりと言い切るアレフに、白い目を向けるさくら亭客一同。尤も、アレフ達は自分達の世界を作ってしまっているため、全く気付いていない。
「ならば、私とどちらがナンパ師として優れているか、勝負だ!」
「な・・・、断る!俺はそんな事の為にナンパをしている訳じゃない!」
「フン、負けるのが怖いのか?それで良く街一番のナンパ師だ等と言えるな!」
「くっ・・・」

カランカラン♪

「こんにちは、シオン君居るかしら?」
「あ、あそこに居るっスよ。」
アレフ達が間抜けた言い争いをしているさくら亭に、アリサがテディを伴って現れた。
「あれ、アリサさん如何したんです?」
「買い物帰りなの。近くを通ったものだから・・・。今日は遅くなるの?」
「いえ、そんなには遅くなりませんよ。」
「そう?それなら夕食には帰ってきてね?」
そう言ってアリサは店を出て行った。それを見ていたガイは惚けたように呟いた。
「何て綺麗な方なんだ・・・私の好みだ・・・」
「おい・・・?」
「決めたぞ!アレフ、私と勝負だ!勝負内容は今の彼女を口説く事。それでは!」
「あ、おい、ちょっと待て!」
一方的に決めると、止めるアレフを無視してガイは店を出て行った。
「・・・如何するんだ、アレフ?」
「如何するって・・・如何すりゃ良いんだ!?」
シオンに問われ、頭を抱えるアレフ。幾らアレフと言えど、アリサをナンパの対象にする事は出来ないようだ。
「ボクとしては、アリサさんに全部話しちゃった方がいいと思うけど?」
「アタシも同意見だね。黙っているよりはそっちの方が良いと思うよ。」
トリーシャとエルが意見を言う。シーラとパティも同意見のようだ。
「・・・そうだな、此処で黙っていてもしょうが無いし・・・。急がないと、ガイに先を越されるな。」
そう言って、店を出ようとするアレフ。それをシオンが呼び止めた。
「おいアレフ。俺が送っていってやるよ。・・・パティ、これお代ね。」
「送るって・・・如何するんだ?」
「良いからしっかり掴まってろ。・・・シーン・クラビア!」
シオンが魔法を唱えると、シオン達の姿は消えてなくなっていた。

「・・・と言うわけなんです。」
シオンの魔法で一瞬にしてジョートショップに戻ってきたシオン達は、アリサに事情を話した。
「そう、そんな事が・・・。実はね、何人かの女性から、彼から鍵を取り返して欲しいって言う依頼を請けたところだったのよ。」
「え!?」
「・・・まぁ当然だろうな・・・。あんな性格じゃぁそうなるのも当然だろうよ。」
アリサの言葉に驚くアレフと納得するシオン。
「兎に角、この件に関しては私に任せて。貴方たちは、2階に行っていて頂戴。」
アリサの言葉に2階に移動するシオン達。丁度そのタイミングを計ったかのように、ドアがノックされ、ガイが店に入ってきた。
「失礼、アリサさんはご在宅でしょうか?」
「はい、アリサは私ですが?」
アリサが応対する。その態度は、彼女がガイの事を知っている等とは思えないほど自然な物だった。
「実は、先程さくら亭で貴方を見て以来、貴方の事が頭を離れないのです。如何でしょう、私と食事でもお付き合い願えないでしょうか?」
「まぁ・・・。そうですね、私の願いを聞き入れてくだされば、考えますわ。」
「願いですか?私に出来る事であれば何なりと!」
アリサの態度に調子付くガイ。見守っていたアレフは気が気では無かった。
「まず、この街に来てから声をかけた女性たちの家の鍵を全て返却する事。そして、直ぐにでもこの街を出て行くこと。これを守って頂けるのなら、1回だけお付き合いしますわ。」
「なっ!?」
アリサの台詞に顔色を変えるガイ。よもや自分の事が知られているとは思っていなかったのだろう。
「私、女性を傷付けるような方とはお付き合いする気はありませんの。」
「く・・・良いでしょう。こんな街、此方から願い下げだ!!」
言いながら、スーツのポケットから鍵束を取り出し、テーブルに叩きつけた。そのまま店を出て行く。それを見送ったシオン達は、2階から降りてきた。
「フゥ・・・年甲斐も無く怒ってしまったわ。ちょっと無茶が過ぎたかしら?」
「そんな事無いです。格好良かったですよ。」
「ふふ、有難う。でも、アレフ君は女性を泣かせるような事はしないわよね?」
「あはは、当然じゃないですかアリサさん。不肖このアレフ、間違っても女性を泣かせるような真似だけはしませんよ。」
アリサとアレフの会話を聞きながら、シオンは呆れていた。(女性を泣かせないなんて言うなら、付き合っている女性の数を一人に絞れよ・・・)と思いながら・・・。

「全く、何て街だここは!今までで最低の所だな!!」
通りを歩きながら、ガイはかなり独り善がりな事をのたまっていた。宿泊していた所では男に馬鹿にされ、何でも屋では女性からも馬鹿にされた(とガイは勝手に思っている)。今まで思い通りに事を運んできた彼にとって、この街は不愉快な物でしかなかった。
「おい。」
「ン・・・?何だ君は?私は今気が立って・・・」
「消えろ。」
ガイに声をかけた相手−シオンがそう呟くと同時に、ガイの姿が掻き消える。それを見届けたシオンは、嫌悪感も顕に呟いた。
「全く、何が最低の街だ・・・。まぁあの馬鹿には当然の報いだな・・・。」
シオンが使ったのは物や人を任意の所に強制転移させる魔法である。転移させた場所は、別の街の自警団施設である。其処では、ガイは指名手配されているのをシオンは知っていたのである。
その後、ガイが逮捕されたと言う情報がエンフィールドに届いたのは3日後の事だった。

Episode:08・・・Fin

〜後書き〜
どうも、刹那です。Episode:08をお届けします。
もうちょっと短くなると思ったのですが、書いてみると意外と長い・・・。
それでは、Episode:09でお会いしましょう。
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