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光と闇の交響曲Episode:22
刹那


悠久幻想曲SideStory
−光と闇の交響曲−

Episode:22 盲目のヴァイオリニスト


ジョートショップの正門である祈りと灯火の門、其処に一台の馬車が到着する。交通の便で言えば田舎と言わざるを得ないエンフィールドの数少ない交通の足、乗り合い馬車だ。其処から、随分と大きな荷物を持った少女が降り立つ。
「此処がエンフィールド・・・。とても暖かな雰囲気の街ね・・・。」
その少女は何故か瞳を閉じたまま、周囲を見渡すかのように視線を巡らせ、微かな声で呟く。そして、大きな荷物を抱え直すと歩き始めた。歩き始めても尚少女の瞳は閉じられたままだった。


所変わってさくら亭、シオンは此処の手伝いに来ていた。
「悪いわね、手伝わせちゃって。これ、6番テーブルね。」
「気にするな。」
申し訳無さそうにするパティに返事しつつ、出された料理を慎重且つ素早く運ぶ。そんな作業が何度となく繰り返されている。普段ならさくら亭も昼時を過ぎれば此処まで混む事は無いのだが、今は事情が違っていた。
それから30分ほど経ち、漸くシオンは一息ついていた。
「お疲れさん。」
「アレフ、何時の間に来てたんだ?」
「つい今しがた。しっかし、すげぇ数の客だったな。」
手にコーヒーを持ったアレフが、シオンの座っている席に近づいてくる。アレフの言葉に、シオンは微かに頷いた。
「まぁ・・・な。理由は解ってるんだが。」
「何で?」
「ほら、今度此処の劇場で音楽のコンクールがあるからよ。ハイ、シオン。これはせめてものお礼ね。」
シオンにアイスコーヒーの入った容器を渡しつつ、パティがアレフに説明した。そう、今月開催される音楽コンクールの関係者や、それを聞きに来る客で、さくら亭は連日満員なのだ。兼業している宿屋のほうも、予約を含めれば既に満室だった。あまりに忙しく、パティとその親だけでは捌き切れない為、急遽以来と言う形でシオンに応援を頼んだのだ。
「あんだけ忙しかったなら、俺も呼んでくれりゃ手伝ったのに。」
「あんたに頼むと女性客に手を出すでしょうが。」
「おいおい、幾らなんでもそんな事しないって・・・。」
「信用出来ないな。幾らでも前例が在るんだから。」
「シオンまで・・・。」
2人に言われ、項垂れるアレフ。2人はそれが演技だと知っているので全く取り合わない。そんな遣り取りをしている時に、ふと外から怒鳴り声が聞こえてきた。
『何処見て歩いていやがる、このアマ!』
『あ、ご、御免なさい!』
「・・・何かあったみたいだな。」
「如何する?」
「一応様子見て、危険そうだったら手を貸す。」
「それが妥当だよな。もしかしたらぶつかった事を怒ってるだけかも知れないし。」
そう言いつつ、シオンとアレフは店の外を見る。其処では、大きな荷物を持った少女−先程祈りと灯火の門に居た少女だ−を数人の柄の悪そうな男が取り囲んでいる。どうもぶつかった事を注意するだけでは済みそうに無い雰囲気だ。
「御免で済んだら自警団は必要無いだろうが!」
「謝ろうってんなら、それなりの誠意を見せてもらわないとなぁ?」
「あの、如何すれば・・・」
「な〜に、あんたの持ってるそのバイオリ「はい、そこまで。」

バキィッ!

「ぐはっ!?」
鈍い音がしたかと思うと、崩れ落ちる男その1。その後ろにはハリセンを構えたシオンが居る。先程の鈍い音はそのハリセンで思いっきり叩いた音らしい。
「お前、前にも思ったんだがそのハリセン何処から出したんだ?」
「ポケットから。」
「・・・四次元・・・?」
「冗談だ、間に受けるな。」
「な、何だテメェ等!?」
男をど突き倒したかと思ったら訳の解らない漫才じみた遣り取りを始めたシオン達に、取り残された形になった男達が詰め寄る。シオン達は五月蝿そうに男達に向き直った。
「・・・まぁこういうのは俺達の仕事とは違うとは思うけどな。その辺にしとけ。彼女は謝ってるだろう?」
「それ以上やるってんなら、俺等が相手になるぜ?」
「んだとぉ・・・?」
あくまで自然体で立っているだけのシオン達に対し、身構える男達。今にも飛び掛ろうとした時に、男達の内の一人が何かに気付いたようにはっとし、他の男達を諌めた。
「お、おい、待てお前等。」
「何だよ、何怖気づいてやがる?相手はたったの二人だぞ?」
「馬鹿!もう片方は知らねぇが、ハリセン持ってる方、あいつはジョートショップの何でも屋だぞ!」
その男の台詞に、まともに顔色を変える他の男達。
「なっ、仲間以外に対しては鬼より容赦が無いと言う、あの!?」
「にっこり笑って悪魔も斬り殺すと言うあの!?」
「目的の為なら手段も問わないと言うあの!?」
『何でも屋のシオン=ライクバーン!?』
「やべぇ、逃げろっ!」
男の声を合図に、慌てて逃げ出す男達。今度はシオン達が呆然とする番だった。
「・・・なぁ」
「・・・聞くな。俺にも訳が解らん。」
暫し流れる白けた空気。と、その空気を吹き飛ばすように、男達に絡まれていた少女がシオン達に話し掛けた。
「あ、あの・・・。助けて頂いてどうもありがとう御座います。」
「いや・・・助けたと言うか勝手に逃げてったと言うか・・・」
「でも、助かった事は事実ですから。あの、それでですね・・・迷惑ついでに、場所を御教え願えないでしょうか?」
「ああ、それは構わないけど。」
「実は、さくら亭と言う所に宿を取っているのですが、場所が解らなくて・・・」
「え?さくら亭なら目の前に・・・」
少女の台詞に怪訝そうな顔をするアレフ。だが、直ぐに何かに思い至ったのか、バツが悪そうな顔をする。
「さくら亭は直ぐ其処だよ。何なら、俺等が案内するよ。」
「あ、重ね重ねすみません。お願い・・・出来ますか?」
「御安い御用さ。ほれ、シオンも行くぞ。」
そう言って、アレフは少女の手を引いて歩き出す。と言っても、さくら亭のドアは目の前にあるのだが。
「・・・あいつにしては、あの娘が盲目だって事に気付くのが遅かったな。まぁそれは良いとして・・・。この街に、あんな連中居たか・・・?少し気になるな・・・」
アレフ達が店に入った後、シオンは少しだけ険しい表情で、男達が走り去った方向を睨んでいたが、軽く嘆息すると自身もさくら亭に戻った。


「へぇ、それじゃ貴方もコンクールに出場するんだ?」
あの後、少女は茅場マドカと名乗った。彼女も、今度開催される音楽コンクールに出場するのだと言う。
「ええ、私が選ばれたのは偶然のような物なんですけど・・・」
「そんな事は無いだろう?茅場マドカといえば、天才ヴァイオリニストとして有名だ。」
「て、天才だなんて・・・。」
シオンの賞賛の台詞に顔を真っ赤にして照れるマドカ。
「良く知ってんな、そんな事。もしかして、結構有名?」
「音楽界ではな。俺の友人にもヴァイオリニストが居るんだが、そいつも絶賛してたし。」
「へぇ、シオンの友人にも居るんだ?なんて名前?」
「ヴィンセント=レシーカー。」
「ヴィンセント=レシーカーって、まさかあの『奇跡の弾き手』ですか!?」
シオンの言った名前に敏感に反応し、驚きの声を上げるマドカ。その勢いの良さに、詰め寄られたシオンだけでなく、傍に居たアレフやパティまで驚いている。
「あ、あぁ・・・確かにあいつはそう呼ばれていたが・・・」
「なぁ、何だその『奇跡の弾き手』って?」
「『奇跡の弾き手』・・・彼の奏でる音色は、聴く者全ての心に響き、感動を与え、心の傷を癒す事さえすると言う、音楽の神に愛され、その祝福を受けた者。ヴィンセント=レシーカーの名前は、全ヴァイオリニストの憧れなんです。」
アレフの質問に、何処か恍惚とした表情で説明するマドカ。先程までの慎み深かった態度からのあまりの豹変振りに、女性には常に紳士的に接する事を心掛けているアレフでさえ、やや引き気味だった。
「あ〜、でもさぁ、そんな凄い人が認めてるって事は、マドカさんも凄いって事なんじゃないの?」
「え、それは・・・」
「まぁそうなるな。あいつは下らないお世辞や追従を何よりも嫌っていたから。あいつが認めたって事は、君のヴァイオリニストとしての実力は本物って事だ。もっと自分に自信を持つと良い。」
「・・・はい。ふふ・・・。」
「?どうかしたの?」
不意に笑みを漏らしたマドカに、怪訝そうに尋ねるパティ。聞かれたマドカはちょっと照れ臭そうに答えた。
「いえ、シオンさんが私の知っている人にそっくりだったから、何となく懐かしくなってしまって・・・」
「へぇ・・・そんなに似てるんだ?」
「ええ。優しくて、暖かくて、とても強いのに、何処か悲しい雰囲気を持っていて・・・何だか傍に居る筈なのにひどく遠く感じてしまう、でも、気が付くと傍に居てくれる・・・そんな人。」
頬を赤く染めながらそんな事を言うマドカ。それを聞いてパティとアレフは面白く無さそうな顔をする。アレフは、なんと言って良いか解らないで困っているシオンの肩に手を回すと、何となく疲れたような表情で呟いた。
「・・・ハァ、またお前か・・・」
「何だその『また』ってのは?」
「解らないなら良いよ・・・。ったく、かなりのレベルだってのに・・・」
ホントに解らないと言った風情で答えるシオンに、更に疲れが増したように感じるアレフ。そんな二人を尻目に、パティがちょっと怖い表情でマドカに詰め寄っていた。
「ねぇ、マドカさん?それってもしかして初恋の人とか、そう言った人じゃないわよねぇ?」
「?良く解りましたね。もう2年ほど前になると思いますけど、偶然知り合った方なんですが・・・。」
「その人は?」
「・・・亡くなりました。事故、だったそうですが・・・」
「あ・・・その、ゴメン・・・」
「いえ、良いんです。もう、立ち直れましたから。」
申し訳無さそうに謝るパティに笑顔で答えるマドカ。その笑顔は、繕ったものではなく、本物の笑顔だ。それ故、パティもそれ以上恐縮する事が無くて済んだ。
「さて、それじゃ、私はちょっと出てきますね。」
「あれ、マドカちゃん何処か行くの?」
「ええ、この街を少し周ってこようかと。残念ながら街並みを眺める事は出来ませんが、雰囲気を感じる事は出来ますから。」
「ああ、それなら俺が案内するよ。」
そう言って、立ち上がったマドカに付いて行こうとするアレフだが、パティがそれを遮った。
「あんたはいいの!」
「いや、でもほらまた誰かに絡まれるかも知れないし。」
「・・・それなら、俺が一緒に行こう。」
『えっ!?』
シオンの意外な申し出に、アレフもパティも声をハモらせて驚く。アレフなんかとは違い、こう言った時にシオンが積極的に動く事は先ず無い。危険があるとは言え、あの程度の相手ならアレフでも十分だ。それなら、アレフに任せるのが何時ものシオンの対応だった。
「ど、如何したんだ?何時ものお前らしくないぞ!?」
「・・・少し気になる事があってな・・・。それで良いか、マドカ?」
「え、えぇ・・・。私は嬉しいですけど・・・宜しいんですか?迷惑じゃ・・・」
「構わない。先程も言ったが、俺も少し気になる事があるんでね。それじゃ、行こうか。」
そう言って、まだ呆然としているアレフ達を放ってさっさと店を出るシオン。マドカもアレフ達を少し気にしつつもそれに従った。


「あの、宜しいんですか?アレフさん達、なにやら驚いていたようですが・・・」
「ほっとけ。どうせ直ぐに立ち直る。それより、そのヴァイオリン何時も持って歩いているのか?」
「これですか?」
そう言って、手にしたヴァイオリンを少しだけ持ち上げる。その表情は、何処か懐かしげだ。
「これは、私にとって唯のヴァイオリンと言うだけでなく、お守りみたいなものですから。」
「お守り?」
「ええ。これを持っていると、不思議と心が落ち着くんです。それに、これを持っている時に道に迷った事って無いんですよ?」
「・・・そうか。なら、大切にしなきゃな。」
「はい!」
嬉しそうに頷くマドカ。それを見るシオンの表情はひどく優しい。もし此処にシーラやパティといった彼に惚れている女性陣がいたなら、惚れ直すことだろう。あまり感情を表に出す事の少ないシオンには、珍しい事だ。もっとも、盲目の少女にとっては、あまり関係無いかも知れないが。
そんな遣り取りをしながら街を周る二人。そして、二人が少し人通りの少ない通りに入った時、不意に周りから10人前後の男達が二人を取り囲んだ。
「・・・やはり来たか。」
「あの、シオンさん・・・」
不安そうな声を上げるマドカの頭を軽く撫で、安心させると、シオンは男達に向き直る。それを待っていたかのように、男達の内の一人、他の連中とは明らかに違ったスーツ姿の男が口を開く。
「探しましたよ、マドカさん。さぁ、貴方の持っているそのヴァイオリンを、此方に渡して貰いましょうか?」
「貴方は・・・!嫌です、このヴァイオリンは絶対に渡しません!」
男の声を聞いた途端、嫌悪も顕にし、強い調子で相手の提案を突っ撥ねるマドカ。その激しさにやや驚きながら、シオンが尋ねる。
「知ってる相手か?」
「ええ、以前にも何度かこのヴァイオリンを渡すように言ってきた相手なんです。」
「フッ・・・稀代の作り手たるロマーヌ作のそのヴァイオリン、君のような小娘にはあまりに勿体無い。それは私のように高貴な者にこそ相応しいのだ。さぁ、解ったらさっさと渡すんだ!それとも、痛い目に遭いたいか?」
高慢な態度で命令してくる男の態度に、かなり不機嫌になるシオン。もっとも、自分に酔っている男はそんな事に気付きもしていないが。
「・・・ロマーヌ作ってので解った。要するに、金持ってる以外に取り柄の無い屑貴族の馬鹿が、それを欲しがってるって訳だ。さっき君に絡んでいたのも奴の私兵、ってとこだろうな。」
「貴様・・・この私に向かって随分と舐めた口を利いてくれるじゃないか・・・?穏便に済ませてやろうと思ったが、気が変わったぞ。お前たち、やってしまえっ!」
激昂する男の掛け声で、一斉に飛び掛ってくる他の男達。マドカは身を竦めるが、シオンは冷静に吐き捨てる。
「・・・三流。」
シオンの姿が揺らぎ、その一瞬後、男達は全員気を失って崩れ落ちた。
「な、なっ!?」
「格の違いが解らない。愚かの極みだな。そんな程度の者が、道具だけ揃えたって意味が無いだろうに・・・取り敢えず、眠っておけ。」
そう言いつつ、男の首筋に手刀を叩き込む。あっさりと気を失う男に、何事かを呟いた後、状況が解らず固まっているマドカに声をかける。
「終ったよ。」
「え、えと・・・一体どうなったんですか?」
「奴の記憶を操作した。もう君とそのヴァイオリンが狙われる事は無い。」
「は、はぁ・・・」
いきなりそんな事を言われても、はいそうですか、と納得できる訳が無い。まだ戸惑っているマドカを、シオンはさっさと手を引いて歩き出した。
「あ、あの!」
「ほれ、まだ街を全部見て周ってないぞ。」
「は、ハイ!」
手を引かれているマドカは顔を真っ赤にしつつ頷いて、歩き出した。


あの後、色々と周った二人は休憩も兼ねて陽のあたる丘公園に来ていた。
「とても良い街ですね、此処は。来た時にも思いましたが、凄く暖かい雰囲気がすると言うか・・・」
「確かに、そんな雰囲気はするな。まぁ余所者の俺が言うこっちゃ無いが。」
「シオンさんは、この街の人では無いんですか?」
「ああ。まぁ俺自身はこの街が気に入っているが・・・この街が俺を受け容れてくれるかどうかは別問題だしな・・・。」
何処か悲しげなシオンの台詞に、少し申し訳無さそうにするマドカ。だが、直ぐに表情を改めると、話を逸らした。
「・・・何だか、こう暖かい雰囲気の中に居ると、気分良く弾けるような気がします。」
「なら、何か弾いてみてくれないか?」
「え、でも良いんですか?此処は公共の場ですし・・・」
「外で音楽を奏でてはならないと言う事も無いだろう?それに、元々音楽ってのは市民達の娯楽だったんだ。こう言った場所で弾かれてこそ、曲も本望だろうよ。」
「そう・・・ですね。それじゃ1曲・・・。」
シオンの台詞に頷き、ヴァイオリンをケースから出して構える。一呼吸おいて気持ちを整え、静かに弾き始める。
「ほぅ・・・」
感嘆の呟きを漏らすシオン。マドカの奏でる旋律は、優しく響き、聴く者の心に深く浸透していく。(・・・ヴィンスが認めるのも解るな。シーラと同質の音、か・・・。)そんな事を思いながら、心地よい旋律に心を委ねるシオン。やがて曲も終わり、シオンが賛辞の言葉を贈ろうとすると、周りから幾つもの拍手が鳴り響く。
「え、え!?」
「・・・如何やら、公園にいた人達が集まってきたみたいだな。」
「れ、冷静に分析しないで下さいよぉ・・・」
何時の間にやら沢山の人に聞かれていたと知り、ひどく照れるマドカ。シオンはいたって冷静だった。
「まぁ良いじゃないか。それより、アンコールの声が上がってるが、答えないのか?」
シオンの言う通り、先程からアンコールを望む声が沢山上がっている。マドカは照れながらも、周囲の人達に一礼してから、再びヴァイオリンを構え、静かに弾き始めた。先程とは曲が違うが、やはり何処か優しさを秘めた旋律。ふと、何かを思いついたかのような顔をするシオン。懐に手を入れると、フルートを取り出し、吹き始める。その音色は、ある種の戦慄さえ感じさせるほどに澄み切っており、そして、とても暖かな感じを聴く者に抱かせた。
「!?・・・」
いきなりの事に一瞬驚くマドカだが、フルートの旋律に導かれるように演奏に集中する。シオンの奏でるフルートの音色は、マドカの弾くヴァイオリンの音色を引き立てるかのように響き、即興とは思えないほどのハーモニーを奏であげる。周囲の人達は、息をする事さえ忘れたかのように、二人の天才の奏でるハーモニーに耳を傾けていた。


「凄いです、シオンさん!あんなに素敵な音色を奏でる事が出来るなんて・・・!」
さくら亭への道すがら、マドカは興奮しながらシオンに話し掛けていた。あの後、周囲に乞われるままに4曲も弾き続け、日が落ち始める事で漸く解放されたのだ。
「・・・落ち着けって。」
「落ち着けませんよ、あんなモノを聴かされれば、誰だって!」
「ははははは・・・はやまったか・・・?」
興奮冷め遣らぬマドカの様子に、乾いた笑い声を上げるしかないシオン。そんなシオンの様子を気にする事無く、マドカはシオンに話し掛けつづける。
「でも、ホントに凄いです!私の事天才だって仰ってましたけど、シオンさんの方がよっぽど凄いです。あんなに澄み切った音色、私初めて聴きました!」
「あははははは・・・」
この後、マドカの賛辞はさくら亭に着くまでずっと続き、その間シオンは乾いた笑い声を上げつづけた。
この日行われたたった二人の小さな演奏会は、エンフィールド中に知れ渡り、マドカの名は知らぬ者が居なくなり、ジョートショップには演奏依頼が急激に増えたと言う。


Episode:22・・・Fin

〜後書き〜
どうも、刹那です。光と闇の交響曲第22話、如何だったでしょうか?
今回登場のオリキャラ・茅場マドカは音楽コンクール関係の話のみのゲストキャラです。ホントは今回でコンクールの話を書くつもりだったのですが、結局はこうなりました。
因みに、シオンのフルートの腕前は、楽器の違いこそあれ、現状ではシーラより上です。
それでは、Episode:23でお会いしましょう。
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