中央改札 交響曲 感想 説明

ルーンの逆襲−No2
とも


 「……ひとつ聞きたい。何だ? これは………」



 『猛紅蓮注意』

 そう、そのドアにはそう書かれた張り紙が張り付けてあった。

 「………言葉通りだよ。」

 答えるように、リカルドが何かを恐れるように呟く。その後ろにいた面々も、何かを思
い出したくない、といった表情で目を泳がせていた。静寂ががその場を包んだが、部屋の
中から聞こえる「むぐぅー!」とか何かが暴れる音が響き、中の凄まじさを物語っている。

 「くくく……はぁ〜っはっはっはっは!!」

 と、静まっている面々を嘲笑うかのようにカイルが笑い始めた。苦笑しているように、
なぜか楽しげに。

 「くくっ、まだまだ堕ちてはいないようだ……なっ!!」


 言って、ドアを蹴り開ける。そして、中に入るととんでもない状況だった。

 砕けたイス、シーツや毛布等がぐっちゃぐちゃになったベッド、倒れたタンスに散らば
る本。なによりも、縄でぐるぐる巻きにされ、なおかつ猿ぐつわまでされて転がっている
紅蓮の姿がそこにあった。

 「むぐぐ……むがぁ?!」

 「おーおー。無様な姿だなぁ、紅蓮。」

 「むぐむがっ!! むがが、むぐが!!」

 「あ? んなこと知るか。とりあえず、こいつ取れ。」

 なぜ猿ぐつわかまされてる紅蓮とカイルが会話できるのかは謎だが…やはり聞き取りづ
らいのか、紅蓮の猿ぐつわを取り、ロープを解いた。

 「っはぁ、〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜たくよぉっ!! 何も怒鳴れねェし、
 動けやしねぇっ!! たかが四日四晩不眠不休で動いただけで、なんで無理矢理休まさ
 れなきゃいけねぇんだぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 「……気は済んだか?」

 その怒鳴り声を間近で聞いていたカイルは、楽しそうに尋ねる。紅蓮の方も、さっぱり
とした顔つきで首を縦に振った。

 「おう。……んで、カイル。」

 「あ?」

 コキコキと首の骨をならし、疲れをとるようにのびをする。そして紅蓮は、カイルの肩
をポンと叩き、呼び止め……

 「俺の姿を見るなり、無様はねェだろうがよッ!!!」

 いきなり殴りつけた。カイルも予想できなかったのか、それをまともに喰らってしまう。

 「紅蓮、貴様ぁ……いきなり何をするッ!!」

 「うるせェッ! 一日監禁されて気が立ってるんだ、表出ろや!!」

 「望むところだ……面白いッ!!!!」

 いつの間にか、決闘を始めることになってしまう二人。それを見たリカルドは、慌てて
止めようとするが……揚雲に止められてしまう。

 「揚雲くん、邪魔をしないでくれ!」

 「…いえ、その心配は無用です。あの二人にとっては、挨拶のようなものですから…」

 そう、諦めたように呟いた揚雲の言葉が終わった直後……外から、凄まじい爆音と怒声
が響きわたってきた。





 「あ〜〜〜〜〜〜、すっきりした〜〜〜。」

 「ふん、少しはできるようになったな……」

 かすり傷を所々に負い、外から帰ってきた二人は晴れ晴れとした顔つきだった。二人は
そろってテーブル席に座ると、いきなり神妙な顔つきになる。

 「…で。いきなりこっちに来たっつーコトは……なんかあンだろ?」

 「ああ。お前、ティナを石にされちまっただろう?」

 「……ああ。今、ルーンのクソ野郎を捜しているところだ。」

 「それでデューク。貴様もだろう?」

 「そう……だよ。いいよな、カイルは。揚雲は石にされなかったんだろう?!」

 カイルの問いに紅蓮とデュークが頷く。が、デュークは吐き捨てるかのように言葉を投
げかけた。カイルが笑いにでも来たのだと思ったのであろう。……しかし、予想とは裏腹
に、カイルと揚雲の表情に陰りが差す。

 「ふん、揚雲だって石にされそうになった。……が、こいつの仲間の美月が代わりに石
 になっちまってた…。受けた恩は返す。それくらいは魔族でも常識だ。」

 「カイルさん…」

 「……ルーンの居場所は知ってる。知りたいか?」

 「「なにっ?!」」

 それを聞き、紅蓮とデュークは思わず叫んだ。この一週間、知る限りの手段を使ってい
た。たとえどんなに遠くにいても、見つけられるような呪文、魔法。しかし見つけられな
かったのだ…どんな魔法にも、引っかかることが無かったのだ。

 「相手が、どんな探索無効の魔法を使っていようが…占いによる探索を封じる手だては
 ないからな。いい女を持ったぜ。」

 笑みを浮かべると、隣にいた揚雲を抱き寄せる。揚雲は頬を赤く染めて抵抗するが、カ
イルの腕力には勝てずにそのままでいる。

 「…で、それを親切に教えてくれ…そうにはないな。」

 紅蓮は立ち上がると、半身を引いて構えをとった。デュークもそれに同意するように頷
くと剣をかまえる。

 「オレだって、そうしたいのは山々だがな…。時間がない。紅蓮、久々に組むか?」

 普段のカイルからは想像できない言葉だった。以前に何度か、成り行き上で組んだこと
はあった。が、どれも紅蓮から提案or脅迫し、カイルが渋々条件をのんだ…ことしかな
かった。彼からこの提案をするというのは、カイルを知る者から見ると天地がひっくり返
るほど驚くことだ。それを表すようにデュークは固まり、紅蓮は唖然となっている。

 「そうだな、組むか。頼むぜ、ライバル。」

 「ふん、貴様こそ足を引っ張るなよ。」

 笑う紅蓮に対し、カイルは少し怒ったような表情で答える。カイルは少しひねくれてい
るのだ。もっとも、それで損することが多いのだが。

 「…で、場所は?」

 「この街の、湖の島。遺跡のある島をご存じですか?」

 「マリオン島か…」

 そう。マリオン島は古代魔法文明の未知の結界に覆われており、現代の魔法を無効化し
てしまう場所なのだ。長達、魔術師ギルドの人間がいくら探索の魔法をやってもわからな
いはずである。探索の魔法がそこに届く前に無効化され、うやむやにされてしまうのだか
ら。

 「なるほどな…考えやがったな、ルーン。」

 「しかし、あそこに入るには許可が必要ではないかね? 早くとも、許可が下りるのに
 は二日は…」

 「必要ねェだろ。」

 イタズラを思いついた子供ように笑う紅蓮。少なくとも、正規のやり方をとるつもりは
ないようだ。

 「ふん。魔族のオレ様が、人間のルールに従ってられるか。」

 「…俺、元々よそ者だしなぁ…」

 「俺はこの世界の人間じゃねェし。」

 各々、自分勝手に言い逃れをする。カイルはともかく、紅蓮とデュークはここに住んで
るわけだが…。しかし、この三人。許可を取ったり、それに伴う出費は絶対に出さないよ
うだ。

 「どうする? 魔法は無効化されるんだろ?」

 「ふっふっふ、んなもん、関係ない。」

 「なにか、良い案でもあるのか?」

 「ああ、頑丈な俺らでしかできねェけどな。」

 そう言うと、紅蓮はカイルとデュークに耳打ちをした。







 「じゃ、頼むぜ。」

 「………高くつくぞ、紅蓮。」

 渋々と、長は魔法の詠唱に入る。対象は、紅蓮とカイル、デュークの三人。みんな、紅
蓮の説明通りに作られたでっかい布の固まりを装備している。まあ、簡単な話パラシュー
トだ。装備を整え、パラシュートをつけた三人を島の上空に転移させる。落下と同時にパ
ラシュートが開き、三人は無事着地…という、かなり無謀な作戦だった。後続部隊は正式
な申請をすでに通しているため、許可がおり次第すぐさま応援&迎えにいく手はずとなっ
ている。

 「紅蓮、あのボンボンシバいたってや!」

 「紅蓮さん、ボク達の分もボコボコにしちゃってねっ!」

 「デューククン、気をつけてね。」

 「デュークさん、頑張って下さいッス!!」

 「カイルさん、ご無事で…」

 見送りのみんなと言葉を交わす三人。もっとも、生きて帰ってくる気は十分だし…こい
つらが死ぬとは思えない(ぉ

 「三人以外はその魔法陣から離れい。………ハァッ!!!!」

 魔法陣内に三人しかいないことを確認すると、長は最後に気合と共に魔法を放つ。直後、
紅蓮達三人の姿は消えていた。







 「ひゅ〜う♪ い〜眺めだな。」

 「おい、紅蓮。こんな布きれで本当に無事に着地できるのか?」

 「いいからいいから。すぐに開くって…ほら!」

 しばらくは自由落下していたものの、会話が終わらないうちにパラシュートが開く。開
くと同時に、結界の有効範囲までの間にわたって物質の重さをコントロールする魔法が放
たれ、落下速度は緩やかになっていた。







 「…っと。手厚い歓迎……」

 オーガーの強靱な腕が、まるで磁石が反発し合っているかのように紅蓮の横を通り過ぎ
る。それを軽く見過ごすと、腰の二振りの刀を抜いて斬りつける!

 「ご苦労さんってな!!」

 抵抗すらないように、刀身はオーガーの身を真っ二つにした。凄まじい斬れ味のため、
血が一瞬遅れて吹き出る。見ると、刀身が淡い光に包まれていた。

 「紅蓮、魔法は消えちまうんじゃなかったのかよ!?」

 「魔法は、な。魔力は消せねェだろ、さすがに。」

 カイルの問いに、笑って答える。そして、振り向きざまにゴブリンの頭を斬り飛ばした。

 「なるほど…魔力で刀をコーティングして、威力を上げてるのか。」

 「ふん、小細工が好きなヤツ…だっ!!」

 言葉と共に、カイルはオーガーを簡単に頭から真っ二つにする。デュークも、ファイナ
ル・ストライクを応用した広範囲攻撃法を用いて雑魚を一蹴していた。

 「さて、と。雑魚をいちいち相手にしてちゃキリねェからな…。カイル、デューク! 
 こっちに来い!」

 言われるままに、二人は紅蓮の方に走り出す。それを追って、モンスター達もこちらに
向かってきた。紅蓮は、いつの間にか刀を納めている。

 「どうする気だ?!」

 「…こうするのさ。とも、技借りるぜ!」

 モンスターを引き離して二人が紅蓮の後ろへ下がる。遅れてきたモンスター達は、得物
がひとまとまりになったことに狂喜し、我先にと喰らいつこうと飛びかかってきた!

 「…超重力の、塵と化せ…!」

 そう呟く、紅蓮の掌が…腕が、黒い光をまとった。最初は指先から。一度指に光が灯る
と、急激に浸食するかの如く肘先まで。そして、その光の周囲がユラユラと歪んで見える
ことに二人は気付いた。モンスターが眼前に迫った瞬間、その技が放たれる!

 「流派―式流が裏奥義! 重獄…轟掌ァッ!!」

 デュークは以前に一度見ているが、カイルはそれを見て驚愕する。紅蓮の手が闇に包ま
れ、さらに巨大化しているかの如くまわりのモンスターが肉塊と化していくのだ。紅蓮が
手を握れば、無数のモンスターが不可視の巨大な手に握り潰される。紅蓮が手を地面に叩
きつければ、不可視の巨大な手によって地面が陥没すると共にモンスター叩き潰されてい
った。


 「ふん…また一段と化け物に近づいたか、紅蓮。」

 「へっ。生まれつき、魔族っていうバケモンのカイルにゃ言われたかねぇな。」

 「お前らなぁ…」

 驚愕はしていたものの…紅蓮に憎まれ口を叩くカイル、その憎まれ口にさらに対抗する
紅蓮。もはや、戦いの最中というには程遠い会話だ。といっても、その周囲には肉片と化
したモンスターが死屍累々としているが。

 「さて、こんな小さな島だ。そんなにモンスターは出てこねェだろ。」

 「同感だな。人間ごときの結界だが、オレ様の魔法もいまいち扱いにくくなっている。
 モンスターを召喚するにしても、これだけの数を召喚したのだからな。しばらくは数を
 補充なぞできまい。」

 当初、人間である紅蓮やデュークの使う魔法のみ無効化されてしまうと考えられていた
のだが…どうやら、カイル達魔族の使う魔法にも多少なりとも影響が出ているらしい。魔
法が発動するものの、威力や効果が著しく低下してしまうのだ。






 「…考えが甘かったか。」

 「同感。」

 「もう、どーでもいいけどよ…」

 それから少し進んだ後。探索に入るまでに時間がかかったことを実感させられるくらい
のモンスターの軍団が襲いかかってきていた。魔法で一掃できないということが災いし、
三桁を軽く超えるモンスターの駆除に時間を喰われていた。

 「ったく、これって結構疲れるのによ…っと!!」

 無造作に手を振り下げ、不可視の高重力の手で周囲のモンスターを潰しながら紅蓮は呟
く。実際、あまりのモンスターの数に疲れているのだ。デュークやカイルも何とか踏ん張
ってはいるものの、辛いことには変わりない。

 「ったく、ルーンの野郎…。テメェは手ェ出さずに高見の見物かよ。」

 「紅蓮、ぼやいてる暇あったら手を動かせ!」

 「うるせぇ! カイルこそサボってんじゃねェぞ!!」

 攻撃の手が休まったのを見、カイルが紅蓮を叱咤する。言われた紅蓮は、苛ついたよう
に怒鳴り返した。

 「…言い合いしながらモンスター蹴散らしてるお前らが言うなよ…」

 いつしか、カイルと紅蓮のモンスター撃墜数の意地の張り合いとなってしまい、みるみ
るうちにその数が減少していく。紅蓮が一匹倒せばカイルがもう一匹、カイルが仕留めれ
ば紅蓮も仕留めるという繰り返しによって、相当数のモンスターが屠られていった。






 「お、やっと入り口が見えてきたぞ。」

 以前、この島に遊びに来たことのあったデュークが、見覚えのある遺跡の入り口を見て
安心したように呟いた。揚雲の再度の占いによって、遺跡の場所の特定ができたのだ。

 「間違いないのだろうな?」

 「ああ、このなかにルーンはいる。」

 疑り深そうに聞き返すカイルだが、デュークは自信満々、ハッキリと自分の言葉を再肯
定した。

 「…やれやれ。どーやら、またお客らしいぜ。」

 疲れたように呟くと、紅蓮は腰の二振りを抜く。さっきは戦いに夢中で気付かなかった
が、デュークが初めて目にする刀であった。

 それぞれ青と黒に染まっている刀身が、日光に照らされて鈍い光を帯びている。青の刀
身は、暖かい日の光すらも凍らさんばかりに冷たく輝き、黒の刀身は、その身に映る太陽
ですらわずかな光の点にしてしまっていた。



 「紅蓮、お客って多いか?」

 「知らね。でも、ズルズル何かを引きずってる音がすんぞ?」

 その音は、遺跡の中で反響しているのか次第に大きくなっていく。一歩入れば闇の、そ
の中で蠢いているもの…蛇身がグネグネと獲物を求めるように揺らめいていた。

 「ヒドラか…ちぃとばかし厄介だな…」

 「ふん。だからといって、躊躇している暇なぞ無い。」

 カイルの言うとおりだった。いくら超回復能力を持つヒドラであっても、躊躇なんかし
ている暇なんて無いのだから。すでに、島に降り立って丸一日が経過しようとしている…。
一刻も早くルーンをシバき倒し、解毒剤を手に入れなければならない。

 「つーわけで…邪魔するヤツは斬るッ!!!」

 そう言った紅蓮の姿が、瞬時にして闇の中に掻き消える。刹那の間を置き、刀身が空を
斬る音と何かを斬り裂いた音が、狭い空間内にこだまするように響いていた。

 「…刀術・狂裂き『朧』…」

 呟く言葉が聞こえ、ヒドラであろう断末魔が響く。紅蓮が再び姿を見せたとき、その持
つ刀がぬらりとした血にまみれていた。

 「しゃげぇぇぇぇ!!」

 「やかましい。」

 暗き闇の中でさえ、なお暗く見える光に包まれた黒剣を一振りし、カイルがトドメの一
撃を喰らわした。通常なら死なずに悶えるか再生してしまうヒドラが、その一撃であっさ
りと沈黙してしまう。

 「…くだらん。」

 「カイル、お前ってなんでそういっつも冷めてんだ? もうちっと明るく行こうぜ?」

 「ふん、無意味に明るすぎる貴様に言われる筋合いはない。」

 「カイル、後で覚悟しておけよ…」

 相も変わらず睨みあったり喧嘩腰になったりする紅蓮とカイル。ケンカするほど仲がい
いとはよく言うが、この二人もそうなのであろう。なんだかんだいいつつも無意識のうち
にお互いをサポートし、足を引っ張り合うことがない(故意に足を引っ張ることがあるが
……)

 「はあ……お前ら、いいコンビだよ……」

 「「こいつと一緒にするなっ!!!」」

 「…しかもハモってるし…」








 「ったく、ウゼェな………」

 もうすでに何匹になるかわからないヒドラを叩き潰し、三人はちまちまと奥に進んでい
た。さして広くはない遺跡なのだが、出てくるモンスターが災いし時間を喰われている。

 「むかついた。二人とも、ちょっと下がっててくれ。」

 そういって、紅蓮はカイルとデュークを問答無用で後ろに下げる。そして、鳥の卵を一
回り大きくしたような金属の塊を5〜6個取り出した。

 「ほれ、冥土のみやげにくれてやる。」

 そのまま全ての塊からピンらしき物を引き抜くと、モンスターに投げつけた。そして、
それがモンスターに当たった瞬間……

 ずっどぉぉぉぉぉぉんっ!!!!!!

 爆発音、爆風と共に、モンスターが一瞬で塵と化した(笑)

 「紅蓮、貴様いったい何をしたっ?!」

 「気にすんな、単なるパイナップル(手榴弾)だ。」

 「あんなパイナップルがどこにある?!」

 「ああ、そーゆー名前の爆弾だ。」

 漫才めいた会話を交わしつつ、カイルが紅蓮に詰め寄った。紅蓮は事も無げに言うが、
そんなものを遺跡内で使われてはたまったものではない。

 「心配すんな、遺跡にゃ影響与えねェ。俺だって、ンなコトで死にたかねえよ。」

 「オレ様だって、そんなたわいないことで死にたくないわ!!!」

 もっともな意見である。が、紅蓮は気にせず先へと進みだした。

 「ほれ、とっとと行くぞ。俺ァ、ルーンのクソバカ野郎を早くシバキてぇんだからな。」

 『クソバカ野郎とは………相も変わらず下品ですねェ……』

 「「「!!!」」」

 そんな紅蓮の言葉に答えた、ここにいるはずの人物の声。それを聞いた三人は、すぐさ
ま得物をかまえる。

 『おやおや、そうやって武器をかまえて……そんなに僕をいじめたいんですか?』

 言葉が終わると同時に、目の前に続く闇の中にさらに濃い闇が空間から滲み出してくる。
それは徐々に具現化し、見たことのある青年の姿を現していった。以前、紅蓮らに敗北し
て逃げていった姿に変わりないのだが……以前と違う部分がただひとつあった。全てを凍
りつかせるような、精気を感じさせない眼。威圧感を秘めた、冷たい眼光が三人を捉えて
いた。








            ……ルーン、降臨………
中央改札 交響曲 感想 説明