中央改札 交響曲 感想 説明

とらぶる・いん・ぺあれんと! No-1
とも


 ある日差しの強い夏の日。



 久々の休みの紅蓮は、いつものメンバーを連れてローズレイクに来ていた。あまりにも
暑いので、泳ぎに行こうという話になったのだ。が…

 「…んで、考える事はみんな同じかよ………」

 そんなため息混じりの言葉を発する紅蓮の目の前に広がるのは、水着に身を包んだ人、
人、人………。人垣の向こうではパティがカキ氷を売っていたりする(笑)。そして…

 「あ、紅蓮さん。こっちですよー♪」

 「ああ、今行く(うおおおぉぉぉぉぉぉっ!!!(感涙))」

 珍しく紅蓮の誘いを断ったティナが、待ち構えていたようにパラソルの下で手招きをし
ていた。白いワンピースの水着の上に薄めの上着を羽織っている姿が眩しい…と、あまり
見ないティナのその姿に、紅蓮は心の中で狂喜の雄叫びを上げていた。もっとも…

 「あーっ、紅蓮にーちゃんだ〜〜〜!」

 「うっわ、見てみろよ…にーちゃん鼻の下伸ばしまくりだぜ? みっともねーよなー」

 孤児院のガキ共の姿が無ければもっとよかっただろうが(笑)。

 「うるせぇっ、自分の女に見惚れて何が悪いッ!」

 「ぐ、紅蓮…ここは抑えてって(汗)」

 「ほ、ほら…あなた達も紅蓮さんにそんなこと言っちゃ駄目でしょ?(赤)」

 もう二十歳になろうと言う紅蓮が子供相手に本気で怒っていることに焦り、朋樹が慌て
て止めに入った。ティナも子供たちをたしなめるが…赤い顔をしているために、説得力は
まったくといっていいほど皆無だが。

 「覚えてろよ…お前らまとめて水の中に沈めてやるからな?」

 「いいも〜ん。おい、逆ににーちゃんのこと沈めてやろうぜ〜!」

 その言葉は紅蓮の脅しの言葉だったのかそうではないのか…。それを聞いた少年たちは、
上等だと言わんばかりにそれに乗ってきた。返り討ちにしてやると団結まで始める。

 「うし、いい度胸だ。すぐ着替えてくるから待ってろよ!」

 「にーちゃんこそ逃げんなよ〜!」

 「テメェらごときに逃げてたまるか、そっちこそ逃げんなよ?」

 そう言い残し、紅蓮は少し離れた場所にある更衣室のような小屋に走っていった。それ
を見送り、朋樹は軽くため息をつく。

 「相変わらずだなぁ…」

 「それが一番紅蓮さんらしいんですよ。」

 「ま…そうだけどね。」

 苦笑を浮かべながら呟いた朋樹の言葉に、ちゃっかりついてきていたディアーナが言葉
を返す。トーヤにていよく追い出されただけなのだが…時には休養も必要だとかなんとか
言われ、結局朋樹に誘われた嬉しさでここにいるのだ。

 「ね、早く行こうよ朋樹くん♪」

 「え〜! トリーシャよりあたしだよー!」

 「…とりあえず着替えさせて欲しいんだけど(汗)」

 両腕を引っ張り合うトリーシャとイリス(現在人間モード(笑))に困り、朋樹は表情
を曇らせた。両手に花で嬉しいのは違いない…が、状況が状況なだけに素直に喜べない。

 「「じゃあ、着替えたらボク(あたし)と泳ご………ボク(あたし)が先っ!!!」」

 「はぁ…」

 どっちかを選べばどちらかが乱入しようと試み、そのまた逆も然り。掴み合いを始めた
二人を見、朋樹は肩を落としてため息をつく。

 「大変ね、朋樹は。なんなら、今研究中の………」

 「絶対止めてね。」

 「ぶ〜☆」

 慰めの言葉をかけてくれると思いきや、レミットは紅蓮に聞かれたら一騒動起こしそう
な提案をしてきた。どうなるか結果がわかりきっている朋樹はあっさりと却下し、マリア
がむくれる…自信でもあったのだろうか。

 「ディアーナ、クリス、ラティン、カレア、レミット、マリア。あの二人は手がつけら
 れないから…先に行こ。」

 「え、いいの?(汗)」

 「いいの。少し頭冷やしてもらうから。」

 イリスが人間になれることが判明し、フォスター家内だけではなく外でまで騒動を起こ
すため…朋樹は二人に呆れていた。間に受けるトリーシャもそうなのだが…怒られても失
敗しても何らかの案を講じて行動に移すイリスには正直な話言葉も無い。その騒動の中に
毎回巻き込まれる朋樹の身にしてみれば…そうなってしまうのも無理は無い。

 「悪気が無いってのは判ってるんだけどね……」

 「え? 何か言いましたか、朋樹君。」

 誰に言うというわけでもなく呟いた朋樹の言葉に、ディアーナが気付く。振り向くディ
アーナに少し微笑うと、朋樹は首を横に振った。

 「ううん、なんでもないよ。早く着替えて泳ごう。」

 「はいっ。」

 なんだか良い雰囲気になった二人は、肩を並べてみんなの向かった小屋へと歩いていっ
た。睨み合いを始め、争いの元の朋樹がいなくなったことにも気づかずに(笑)



 「それじゃ、朋樹君に決めてもらおうよっ!」

 「望むところ! 負けないわよ!!」

 やるだけやって、一応決着がついたのか…二人はさっきまで朋樹のいた方向を同時に振
り向き…

 「「…………あれ?」」

 そして固まった。そりゃ、いると思っていた人物がいなけりゃ混乱するに決まってる。

 「あ? お前ら…何やってるんだ?」

 そんな間抜けな姿を見、不思議そうな顔をしながら紅蓮が歩いてくる。

 「紅蓮さん、朋樹くんはっ?!」

 「ともなら…俺と入れ違いでクリスやラティンと着替えるトコに来たけど。」

 「「しまったあぁぁぁぁっ!!!!」」

 そう絶叫すると、二人は慌てて小屋へ走っていった。


 「お、トリーシャにイリス。お先〜♪」

 「遅かったね。紅蓮のところにいるから早くね?」

 「おい、競争しようぜ!」

 「ちょっと…」

 「勝てるかな? じゃ、また後でね〜!」

 トリーシャとイリスを残し、男三人は駆けていってしまう。そして少し遅れて出てきた
女性陣4人組は…

 「あ、トリーシャ。やっと終わったの?」

 「じゃ、先行ってますね。」

 「マリア、水泳できる?」

 「う〜…ちょっと苦手なんだよね☆ あ、トリーシャ。早く遊ぼうね〜☆」

 きゃいきゃいと話しながら軽く声だけかけて向こうへといってしまう。後に残されるは
…固まったままのトリーシャとイリス。

 「「……はっ?!」」

 たっぷり一分は経過しただろうか…何かに気付いたかのように二人はハッと我に返る。
そして、同時にお互いを見るとがっちりと腕を組み合う。

 「一時休戦っ! 勝負はあとっ!!」

 「OK!!」

 そして頷き合い…慌てて更衣室へと駆け込むのであった。





 「いい光景だよなぁ…………」

 「そりゃそうだけど…ラティン、鼻の下伸びきっててみっともないよ…」

 女の子6人が、水着姿で遊んでいる…そんなおいしい光景を前にラティンの頬は緩みま
くっていた。たしなめる朋樹も、実は少し鼻の下が伸びたいてたりする。そりゃあ、海の
無いエンフィールドでこんな光景を見る事なんてほとんど無いし。

 ちなみにディアーナは淡い緑のビキニ(パレオ付)、カレアは黒いビキニ、トリーシャ
は背中の開いた白のワンピース、レミットとマリアはストライプ模様の色違い(青と白、
オレンジと白)のノースリーブ・ワンピース、イリスはスポーツタイプの青いビキニと選
り取り見取といった感じだ。

 「は〜っはっはっは! 悔しいなら俺に一発くらい入れてみやがれっ!」

 「言ったなぁ〜〜!! にーちゃん、今日こそティナねーちゃんから手を引いてもらう
 ぜっ!!!」

 「そうだそうだっ! ねーちゃんを返してもらうぞにーちゃん!!」

 んで、その脇で子供と同レベルになって遊ぶ紅蓮。いろいろやってはみるのだが、どう
も紅蓮に一発入れる事ができず…少年たちはムキになって走り回ったり跳ね回ったりして
いる。そんな紅蓮を、ティナは楽しそうにただ見ているだけだったりするが。

 「…紅蓮さんは相変わらずだよなぁ…」

 「いいんじゃない? ティナが近くにいるわけだし、紅蓮はそれだけでいいんだよ。」

 ティナの相手をするわけでもなく、孤児院の少年たちの相手をする紅蓮を見てラティン
は冷汗混じりに呟く。朋樹は全然気にしていない…やはり付き合いの長さの違いだろう。

 「朋樹く〜ん、ラティン〜。一緒に遊ぼうよ〜。」

 と、呼ばれた方向を見ると、いつの間に引き込まれたのか、女性陣にクリスが混ざって
いた。トリーシャの呼び声に思いっきり同意するように手招きをし、座っている二人を呼
んでいる…さすがに刺激が強すぎるのだろうか。

 「うん、今行く……………っ?!」

 〜〜〜ゥッ!!!!

 と…。突如、異常な魔力の力場を朋樹は感じた。イリスやレミット、クリスも何かに驚
いたようにきょろきょろと辺りを見回す…!

 「…何、これっ……今までこんな魔力感じた事…無いよっ?!」

 「流れからいって…あっちに集中しそうね。…って…」

 今で感じた事の無い、特殊な魔力だったのだろう…イリスは慌てておろおろしている。
反面…レミットは意外なほどに冷静だった。

 「レミット、冷静だね…」

 「まあね。ここまでとはいかないけど、似たような事なら結構あったもの。」

 「そ、そうなの…(汗)」

 いったいどういう体験を今までの冒険でしてきたのか…。そんなレミットに思わず聞き
返した自分に、カレアはちょっぴり後悔していた。



 「ッ!」

 「うわぁっ!」

 紅蓮もそれを感じたのだろう、すぐさま近くにいた少年二人をティナの方に放り投げた。
そのままそれを見上げ、両の手に魔力を集中する。

 「………っきしょ…」

 集中したはずの魔力はすぐさま霧散してしまう。いつもの自分なら、躊躇もせずに魔法
ぶっ放して終わりにしていた。しかし…今まで感じた事の無い悪寒と嫌な予感が体を覆い、
無意識のうちに魔力が散ってしまった。否、今まで感じた事が無いが感じた事のある…と
言った方が正しいか。

 「ちっ…なんだってんだよ、この楽しい時に…」

 「紅蓮さんっ! 危険です、その場から離れてください!」

 ティナもその不穏な空気を感じ取ったのだろう。先ほど紅蓮の投げた二人を軽々と受け
止めた直後に思い切り叫んできた。

 「気にすんな! 大丈夫だっ!」

 「何が大丈夫なんですかっ!!」

 ヴィィ……

 二人が距離をおいて叫び合う中、紅蓮の真上の魔力が徐々に形を成し…不快な振動音を
発し始めた。全然気にもとめていないようだが。

 「なんとなくだ、なんとかなるっ!」

 「そういう状況じゃないですっ!!」

 ィィィィィィ………

 構わず叫び合う二人…いい加減気付いて欲しいものだが。魔力は魔法陣を形取り、その
中央に姿を見せるは…ぼやけたような人間の姿…

 「とにかく、嫌な予感がするんですっ! 離れてください紅蓮さん!」

 「嫌な予感は俺だってそうだし大丈夫だっ!」

 ィィィィンッ!!

 距離を置いているため、ティナは感付いたようだ。が、なぜか大丈夫と紅蓮は言い張る。
その間にも、魔法陣に浮かんだ人間の姿は輪郭をはっきりと現しはじめた。向こうはこち
らが見えているのか、魔法陣に姿を浮かべている二人の人間は…顔をきょろきょろと何か
を探すように動かしている。そして…

 「紅蓮さん、避けてっ!!」

 「え…のあぁっ?!!」

 ズルッ…ザバァン!!!!

 魔法陣に姿を現していた二人が完全に形を成し、そのまま紅蓮の真上に落ちてきた。そ
れに反応したティナがとっさに叫ぶが…当の紅蓮は足を滑らせて水の中に沈んでしまう。

 「うわぁぁっ!」

 「きゃぁぁっ!」

 ドッパァンッ!!!!

 ジタバタと手足をばたつかせ、二人も紅蓮の沈んだ場所に落下…すごい音と水しぶきを
上げて水の中へと消えていった………(汗)

 「……ぐ…紅蓮さん?」

 あとに残されたティナは…立ち尽くしたまま呆然とそれを見届けていた。いったい何を
すればいいかもわからぬほど混乱したまま。
中央改札 交響曲 感想 説明