中央改札 交響曲 感想 説明

とらぶる・いん・ぺあれんと! No-2
とも


 ぷかぁ………

 「「……………………………」」

 紅蓮は上から落ちてこられたショックで、落ちてきた二人の男女は湖に突っ込んだ衝撃
とぶつかった衝撃でドザエモンのごとく力無く浮いてきた。その事態に、いつもなら真っ
先に助けに走るティナや朋樹は唖然としながら固まっている。

 「…………はっ?! ぐ、紅蓮さんっ!!」

 そのまま一分ほどが経過した後、やっとティナが我に返った。しかし、朋樹は一向に動
かない。しかも、ディアーナとクリスまで動けないでいる。トリーシャ達など、他のメン
バーは紅蓮ら三人を助けるために走り出していた。

 「朋樹…大丈夫?」

 「…翔おじさんに彩おばさん……」

 「へ?!」

 朋樹の呟くような…そして驚きの混じっている言葉を聞き、心配して声をかけてきたイ
リスも固まる。朋樹がそう呼ぶのはあの二人しかいないし、イリスも話で聞いていたのだ。

 「…やっぱり…そうですよね…」

 「…見間違いじゃないですね、朋樹君がそう言ってるなら……」

 朋樹の呟きが聞こえたのか、ディアーナとクリスも引きつった顔で言葉を交わした。そ
りゃ、世話になったとはいえあのテンションと騒動を実体験したのだ…顔だって引きつり
もする。

 「………ってぇな…いったいなん……っ!!!」

 「紅蓮さん、ここは抑えて!!」

 脇で浮かんでいる男女…特に男の方へ目掛け、紅蓮は躊躇もせずに魔法をぶっ放そうと
魔力を集中した。が、とっさにティナがそれを止める。

 「…あつつ…」

 「いたた…無事…着いたのかしら…?」

 幸か不幸か、二人も頭を押さえながらなんとか目覚めたようだ。水に浮いてても慌てた
り溺れたりしなかったかはかなり謎だが…

 「お………」

 「…れ、ん………?」

 「………っ」

 そして、紅蓮に視線を合わせた途端二人は言葉を失った。その反応に、紅蓮もおもわず
言葉を失う…

 「蓮、久しぶ「おおおおおおおっ!!!! 生ティナちゃんじゃねェかっ!!!!」」

 女――彩の言葉を遮り、男――翔の雄叫びがあたりに響き渡った。そしてそのまま…

 「逢いたかったぜMYラヴァ〜〜〜〜!!!!(爆)」

 「っきゃぁぁぁぁぁぁっ!!!!(涙)」

 ティナ目掛けてダイブをかましたっ!(爆笑)

 「「いきなりそれかこの色ボケ馬鹿親父(亭主)〜〜〜〜っ!!!!!」」

 ドガズッ!!!(×2)

 「のぐはぁっ?!」

 ザパァンッ!!

 しかし、ティナまで後一歩のところで紅蓮と彩のダブル踵落としを喰らい、翔は頭から
湖の中にでっかい水しぶき上げて撃沈した…懲りない男だ。

 「お袋………親父はまだこんな事してやがるのかよ…?」

 「…シメてはいるんだけど…この人も全然諦めるって言う言葉知らないものだから…」

 深刻そうな顔をする紅蓮と彩のすぐ脇に、翔のどざえもん姿がぷかりと浮いてくる。ピ
クピクしているあたり、死んではいないのだろうけど…さっさと仰向けにしてやらないと
高確率で死ぬぞ呼吸困難で(汗)

 ザバッ!!

 「っはぁっ!! いきなり何しやがる馬鹿息子に彩ッ!!!」

 そーゆー心配は要らなかったようだ…翔は簡単にあっさり復活した。自分を沈めた紅蓮
と彩に詰め寄り、怒りまくっている。

 「…息子の女に襲いかかろうとした馬鹿親父が何寝言ほざきやがる?」

 「…殺さなかっただけありがたいと思いなさい、色ボケ亭主。」

 「すまん俺が悪かった、だから刃物を喉に当てるのは止めてくれ二人とも(滝汗)」

 いつの間に手に具現化したのか、数本の小型ナイフを片手に持ち、紅蓮は翔の喉元に当
てていた。彩も自分の手刀を翔の首の頚動脈に当て、冷たい視線を放っている…殺る気満
々と言ったところか。さしもの翔も二人掛り相手では何もできないようだ。



 「あ、おじさんがティナに…。あ〜あ、紅蓮とおばさんの踵落とし綺麗に決まってるし。
 おじさんも懲りないなぁ……」

 「ねえ、朋樹…あの二人っていったい誰?」

 笑って三人の動向を解説する朋樹に、冷汗たらしたレミットが聞き返す。ちなみに、助
けに向かおうと走り出していたレミット達は近くまで行ったものの始まってしまった喧嘩
に等しい騒ぎに、ビビって聞き返してきていた。

 「うん、紅蓮のお父さんとお母さんだよ。」

 『はいぃぃぃぃ〜〜〜〜〜〜?!』

 事情を知っている者以外、全員が絶叫を上げた。そりゃ、いきなり出てきた人間が異世
界の人間……しかも紅蓮の両親とくれば驚くのも無理はない。


 「まあ、ディアーナやクリス、トリーシャあたりは知ってるけどね。そういえばレミッ
 トは知らなかったんだっけ?」

 「知るはず無いじゃない!」

 顔を真っ赤にしたレミットが、朋樹の言葉に怒鳴り返した。…つか。レミットが向こう
になんか飛ばされた日にゃ、どうなるか判ったもんじゃない。

 「全然変わらないな…って、向こうの時間の進み方はこっちの半分だっけ。そう簡単に
 変わる事はないね。」

 「…なんか、それ差し引いても若いわね…(汗)」

 「う〜ん…結構若く見えるからね、二人とも。」

     「あ、朋樹ちゃんじゃない〜! ディアーナちゃんやクリスちゃんも…こっち、
     来なさい〜!!」

 そっちを見ている朋樹達の姿に気付いたのか、彩が手招きをして大声で呼んできた。異
世界に来たにもかかわらず、まったく動じていない彩の呼び声に…一同唖然となる。

 「…紅蓮さんのお母さんといい朋樹といい…なんでこう普通でいられるの?」

 「さあ? それより、向こう行こうよ。」





 「久しぶりね、三人とも。元気だった?」

 「は、はい。」

 「久しぶりです、彩さん、翔さん。」

 「ぐ……おぉぉぉぉ………」

 『…………………………(汗)』

 にこやかに挨拶してくる彩に、クリスとディアーナは少し引きつった笑顔で返した。原
因は単純、すぐ脇に具現化の鎖でぐるぐる巻きにされた翔が放置されていたからである。
ちなみに、全員集まったと言うこともありみんないったん湖から出てきている。

 「紅蓮、決まりきった答えしか返ってこないと思うけど一応聞いておくね。」

 「あ? なんだ?」

 「翔おじさん、いつまでこのまま?」

 「あ〜…できれば死ぬまでこのままにしておきてェけど、さすがに自分の親だからな。
 お袋の許しが出たら解放してやるよ、あと一時間ほど出ねェと思うけど。」

 さらっと怖い事を言う紅蓮…父を父とも思わぬ言動だ。しかも、彩はその言葉に微笑み
をもって返す。

 「よくわかってるじゃない、蓮…じゃなかった。紅蓮?」

 そして、それは肯定の微笑みだったようだ。これまたあっさりと頷く。

 「…も、どーでもいいわ。好きなよーに呼んでくれやオバハン。」

 …スッ

 「…お袋、一応聞くけどこの手刀はいったい何なんだ?」

 「なんでもないわよ、蓮。ただちょっとカチンときただけだから♪」

 たかがカチンときただけで音も無く背後に現れ、殺気も感じさせずに首の頚動脈に手刀
を当てられたくない。しかもそれが満面の笑顔なものだからなおタチが悪い……。紅家の
親子喧嘩なんか想像したくもなくなってしまう。

 「とりあえず、そーゆーのは止めろってェの。んで、こっちに来た理由は何なんだよ?」

 冗談と判っているのか、たいして臆する事も無く彩の手刀を首から遠ざける。

 「え? 理由って…息子に会いに来たって言うのじゃ理由にならないかしら?」

 「……………おひ。そっちの世界からこっちに来るのはかなり大変なんだぞ…」

 あっさりと笑って言う彩に、紅蓮は顔を引きつらせた。

 「あら、そうだったの? それなら、レインの腕がよかったと言うわけね。」

 「マスターが絡んでんのかよっ!? …元王宮魔術師ってのも伊達じゃねェんだな…」

 ちなみに、紅蓮は空間次元移動系の魔法が苦手で、紅蓮らの世界への移動魔法を作る事
はできないでいた。それから考えると、レインはそれに関しては紅蓮以上となる。

 「…んで、滞在期間はどれくらいだよ? 世界と世界の壁を無理矢理に突き抜けてきた
 んだ…こっちの世界に弾かれるのは時間の問題だろ?」

 世界が異物を拒む、というやつだ。それには例外も生じ、偶然世界の穴を通じて世界と
世界の壁を通り抜けた例もある。その場合は異物とはみなされない…あくまでも強引に、
世界が違和感を感じるくらいに無理矢理に移動した場合のみなのだ。その滞在期間という
やつは、術者の魔力のキャパシティに比例する。

 「なんだ、少しは勉強してたんじゃない。そうね…こっちの時間に換算して十日くらい
 かしら。」

 「…そんなにいるのかよ………はぁぁ〜〜………」

 こっちの時間に換算して、となると向こうの時間では五日くらいに相当する。それほど
の期間でもないし、それくらいなら仕事のある翔が休んでもあまり支障はあるまい。

 ……ゴゴゴ…ゴゴゴゴゴゴ………

 「…あら、お客さんみたいね。」

 地響きのような音が起こり、突然湖面に光が走る。彩は平然と微笑いながら言ってはい
るが……すでに、周りはそんな悠長にしてられない状況だ。

 「お客どころの問題じゃねェだろ……」

 『うわ〜〜!!!』

 『きゃぁぁぁ〜〜!!』

 母親のにこやかな呟きに対するツッコミも、逃げ惑う者達の悲鳴によってかき消される。
ついでに言えば、ティナは子供たちを連れて避難しており、学生組も朋樹を残してみな後
ろへ下がっていた。

 「…この波動……まだ生きてんの、あいつ…」

 「生きて…って、お袋…?」

 瞬時に雰囲気を異ならせ…周囲に刃を思わせる空気を漂わせた母に、紅蓮は思いっきり
焦った。この程度の怒りを感じたり発したりするのはさして珍しい事ではなく、気にする
までも無いことだ…ただ、殺気までも纏わせている事を除けば。

 「彩、こいつぁヨルムンガルドの気配だ。どうする…殺れるか?」

 「…絶命は厳しいわね。トドメ、お願い。」

 いつの間に脱したのか、翔はニヤニヤとした笑みを浮かべながら立っていた。その身に
紅蓮の具現化した縛めはなく、今まさに召喚されようとしている対象を簡単に言い切る。
翔の短い問いに彩は冷笑とともに答え、湖面に浮かぶ、輝く魔法陣へ歩き始めた……!

 「ちょっと待てっ! なんでそんな事が判る、親父ッ! その意味ありげな笑みと共に
 どこへいこーとしてるんだ、お袋ッ!!」

 「決まってるじゃない…」

 「殺るために決まってんだろーが、馬鹿息子。」

 本気だか冗談なんだかわからない二親の言葉に、紅蓮は混乱したように叫びだした。そ
んな息子を見、翔と彩はあくまで本気で殺す気だと言い切る。

 「それに、なんか平和ボケしてるみたいだな紅蓮の奴は。」

 「そうね…あなたにでも簡単に予測できるのに、こっちにいる紅蓮はそれもできないん
 だものね。こうして久しぶりに紅蓮と会えたっていうのに、邪魔者もいるんだし。久々
 に暴れさせてもらうわ……」

 「シャゲェェェェッ!!!!!」

 まるでレクチャーでもしてやろうと言わんばかりの翔と彩。その二人の視線が、湖面に
輝く魔法陣に向けられた瞬間…その巨大さゆえに、古の伝説に記された「世界蛇」の名で
呼ばれる巨大な蛇身が姿を現した。鎌首を持ち上げ、魔法陣からその身をどんどん現しな
がら目の前の小さな獲物に目をつける。

 「ばかやろ、親父とお袋程度の腕でこんなデカブツ相手にできるかよっ!!」

 「できるわよ。」

 庇うように前に出ようとする息子の肩を掴み、彩はぽいと後ろへ放り投げた。そして、
その手に感じ集いし力は…間違う事無き、魔力。

 『すべて蝕む、天より降りし災いよ…汝が身を、我望む姿となせ…』

 パシィッ!!

 それと同時に形を成す、水に近しい透明度の鞭。ピシリと彩が一振るいする様は、まる
で戦女神―ヴァルキュリアを髣髴とさせた。

 「見てなさい、蓮。私たちもあなたと同じだという所…この際だから見せてあげるわ。」

 「シャァァァッ!!」

 僅かな笑みと視線を向ける彩。が、そこをヨルムンガルドが見逃すはずも無く…その巨
体に似合わぬスピードで彩に喰らい掛かる!

 「甘ェな…
 『風精よ…我らが身を疾き風となせ
   アークウィンド!』」

 しかし、それより速く翔の魔法が発動する! 一瞬にして風を身に纏った彩は、目に残
像を残すほどのスピードでその場から消え去った…!

 「ガ…?」

 「あら…。この程度のスピードで、もう見失うの? 伝説に名を残すヨルムンガルドの
 名を持ちながらその程度なんて…」

 自分の姿を捉えきれなかった巨大蛇を見、彩は憐れみをこめたように呟いた。決して巨
大蛇の反応速度が遅いわけではない…翔の支援を得た彩のスピードが速すぎたのだ。決し
て巨大蛇が弱いわけではない…実力の差がありすぎるだけなのだ…

 「……ッシャァァァァァァァッ!!!!!」

 本能的に危険だと判断したのか、巨大蛇は一瞬だけ躊躇した。しかし、召喚主の命令に
逆らえないのか…意を決したようにやけくそになって襲い掛かってきた!

 「恨むならあなたを私達にけしかけた召喚主を恨んでちょうだい。私達親子の対面の邪
 魔をしたんですもの…ね。」

 パシィ!!!

 「ガッ?! シャァァ!!!」

 彩が鞭を一振るいした途端、その先が無数に分裂しその巨躯を動けないほどに縛り付け
た! それに激しく抵抗する巨大蛇だが、縛めの力が強いのか力を失ってしまったのか…
威嚇の声を発するのみで身動きすらできないでいる。

 「あなた、後はよろしくね…バースト。」

 ジュウゥゥッ!!!

 「グギャァァァァァッ?!」

 彩の短い言葉とともに、巨大蛇の巨躯にまきついていた鞭がむせ返るような異臭と煙を
発しはじめた。それにもだえ苦しみ、身をよじって逃げようとするのだが…縛めは外れず、
巨大蛇はただ苦悶の絶叫をただ上げるだけだ。

 「はぁ…いつもこうだもんな…」

 いつの間に跳躍していたのか、翔はすでに巨大蛇の頭の上にしゃがみ込みながら愚痴を
こぼした。しかしその両の手にはしっかりと魔力が集中し、準備は万全を期している。

 「いいじゃない、私は魔法苦手だしこんなデカイのしとめるの面倒くさいんだし。」

 「へいへい。
  『集え荒き風…集え闇の劫火……
   我に従い一つとなれ…荒れ狂う竜巻となりて。』」

 「…親父が合成魔法使って、お袋が具現化だぁ……? これは夢だ…悪い夢だ………」

 目の前で行なわれている戦いに、紅蓮は目をそむけしゃがみ込んでブツブツと否定の言
葉を繰り返した。なんか認めたくない光景だったらしい。

 「はっはっは、現実だ♪ そーゆーわけで消し炭になれやデカ蛇。
 『フレア・トルネード!!』」
 ゴオォォォォォォッ!!!!!

 「〜〜〜ッ?!!!!」

 そんな息子に笑いながら、翔は巨大蛇の頭に乗っかったまま魔法を解き放った。瞬時に
紅い竜巻は巨大蛇の全躯を覆い、巨大蛇の苦悶の叫びすらかき消す……翔ごと灼熱の渦の
中に閉じ込めたまま(爆)

 「自分まで渦の中に巻き込まれてんじゃねェ馬鹿親父っ!!!!」

 「…どうせ格好つけたいんでしょ?」

 自らも渦の中にのみ込まれた父に、紅蓮はどでかい声で思わずツッコんだ。が、それく
らいであの翔が死ぬとは思ってはいないだろうし、彩も呆れたような視線を向けている。

 ゴオオォォォォ……………………

 「は〜っはっはっは! その通りだMYワイフ! 自らも炎に飲まれながら、敵だけ
 屠って俺は無事ッ! なんとゆー強さッ! なんとゆータフさッ!!」

 紅蓮と彩、朋樹以外の者がポカンとする中…翔はビシィッと空を指差したようなポーズ
で、口上のたまいながら竜巻の収まった中から出てきた。当然のように火傷一つ負ってな
いあたりが、さらに紅蓮と彩の怒りを買いそうだ。

 「ふっふっふ、これでティナちゃんも俺の事を……」

 ビシッ!

 「ブレイク。」

 ……チュッドォォォォンッ!!!!

 邪な笑みを浮かべた翔目掛け、無表情な顔のまま彩が鞭を振るい…紅蓮が万一のために
でもと指輪に具現化していた魔法を、これまた無表情な顔で解き放った。しかも、彩はす
でに翔の言おうとしていた言葉に気付いていたらしい……言葉を聞いてから魔法を放った
紅蓮より速く鞭が振るわれていた。さすが夫婦である(爆)

 「自分の歳を考えなさい馬鹿亭主。」

 「息子の女にまで手ェ出そうとすんなクソ親父。」

 「何言いやがる、恋愛の自由という物を知らねぇのか?!」

 メギィ…

 「「寝言は死んでから言え(言いなさい)」」

 「……うぁ」

 まったくもって懲りない翔の腹(鳩尾)に、紅蓮と彩の回し蹴りが鈍い音を出して深く
めり込んだ。そのハモった二人の声を聞きながら、翔は確実に意識を失った…
中央改札 交響曲 感想 説明