中央改札 交響曲 感想 説明

HAPPY END! , Happy end ? (2)
辻村 貴之[HP]


ショート邸−−−−−−−


「ぼうやは私の背中を任せられる男なんだ。絶対に返してもらうよ!」

 そう言って獲物のナイフを構えるリサさん。一流の傭兵である彼女の加勢は、はっきり言ってありがたい。

「あいつはあたしの親友だからね。必ず助けだす!」

 その拳に魔法の力を集めファイティングポーズを取るのはエルさん。彼女も実に頼もしい援軍だ。

「お願い! 悠くんを返して!」

 そして、その瞳に涙を浮かべて懇願するのはピアニストのシーラさん。深窓のお嬢様な彼女だが、実はこの場で一番強いのは彼女だろう。なにしろ彼女、アル−自警団第三位の戦闘能力を誇るアルベルト−を一撃で倒すほどの猛者。その実力たるやこの街で・・・・ええっと?・・・?・・・!!・・・ す、少なくとも十指には入るお方である。



 そして相対するは、悠さんを誘拐した皆さん。彼女らは皆、数多のマジックアイテムその他で要塞と化したショート邸に立て籠もっていらっしゃる。


「お兄ちゃんはローラのものよ〜!」

 不治の病により百年の眠りにつき、悠さんの活躍で元の体に戻った彼女。幽体離脱ははっきり言って反則だよ。ローラ。

「ふみ〜ぃ 悠ちゃんはぁ、めろでぃ〜の、王子さまです〜ぅ」

 動物的能力を持つねこ耳少女なメロディさん。その嗅覚で裏口に回った別働隊はあっさりと発見されてしまったそうだ・・・。

「ぶーーー!! 悠はマリアのものだもん!!」

 悠さんのおかげで成長し、その実力に見合った魔法を使うようになったマリアさん。保有する大量のマジック・アイテムは大きな障害だ。

「うふふふ。悠さんは私の運命の人、です」

 トリップした表情でそう主張するのは、この街が誇る新鋭作家で優秀な魔法使いでもあるシェリルさん。もじもじとさせたその手で編まれているのは、あろう事かヴァニシング・ノヴァ!!

「例えシーラであっても、悠は渡せないわ!」

 フライパン片手に火を噴くパティさん。ひ、ひええぇぇぇ!!!

「そうだよみんな! まずは最大の障害、シーラさんからだよ!」

 そして最後は誘拐犯のリーダーらしいトリーシャ。周りの人を刺激しないように声には出していないのだけど、その唇の動きと性格から『でも悠さんは僕のものだからね!』そう言っているのが見て取れる。



・・・・・・・・つまり悠さんを巡っての熱い乙女の大戦争が勃発していたのだった。




「はぁぁぁ。悠さん。恨みますよぉ・・・・・」

 事の元凶である悠さんに、頭痛とため息がする僕。はっきり言って彼、かなりというか相当に女性に甘い。まあ、だから実力ではブッちぎりでこの街一の彼が誘拐されることになったんだろうけど。そんな彼、実は『鈍感王』で『無意識なうちにモーションをかけるのは日常茶飯事』というとんでもない人だったりする。

 それでもまだ落とすのがまだ普通の娘なら良かった・・・・。ううぅ。

 けれど現実には、彼が落とす相手は例外なく『個性的ですばらしい素質を秘めた美少女』であり、さらに質が悪いのは悠さんが『他人の才能を開花させる達人』であるという事実。

 今では悠さんを慕う乙女は例外なく全員が『得意分野では一流の腕。かつ戦闘能力も自警団の猛者に匹敵する』という洒落にならない有様である。

「でも、一体どうすれば良いんだろう・・・・・・」

 このままではたった一人の男のために街が滅ぼされかねないという恐るべき事態に、何の打開策も見いだせない僕。強行突入しようにもすでに自警団はほぼ壊滅しちゃってるし・・・・・。はあぁ。本当にどうしよう。見なかったことにして逃げちゃダメ、かな?

「あらあら賑やかね。どうしたのかしら?」
「ご主人様ちがうっス! 喧嘩っス! 悪いのは悠さんっスよ〜」

 そんな途方に暮れる僕の前に『救世主』アリサ様がやって来たんだ・・・・・・
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