中央改札 交響曲 感想 説明

死に神の奏でる幻想曲 第一話
わ〜の


   敬愛の人

 黒い影が、こちらに向かってきている。久しぶりの不審者の到来に、門番は眉をひそめる。それの、黒い影、と言う表現は的確だった。マント、軽装の防具、服に至るまで、漆黒に彩られている。更には、同色のフードで顔を覆っていて、年齢はおろか、性別すら判別が不可能なのだ。これを不審者、または黒い影と言わずして、なんと言うべきであろうか?
彼が眉をひそめたのも無理はない。
「すいません、少しよろしいですか?」
職務質問が必要と判断し、黒い影に声をかけた。間近で見ると、以外と小柄であることが判る。
「この町には、どういったご用で来たのですか?」
「人に会いに来た」
その声を聞いて門番は驚いた。まさか、小さな子供の声が返ってくるとは思わなかったのだ。黒い影は門番の横を素通りし、慌てる門番に対し、つっけんどんに言い放った。
「人に会いに、自警団事務所に行くところ」
「え、あの」
「事務所に行くのだから、職務質問はもういいだろう」
「そ、そう言う訳には・・・」
「じゃ」
自警団事務所というものは、大抵町の入り口付近にあるものだ。かくて黒い影は、まだ何やら言っている門番を無視して、町の中に入っていった。



 「ノイマン隊長、お客様です」 
その頃、自警団事務所の第三部隊の詰め所では、隊長のカール・ノイマンが書類整理をしていた。
「客?」
「はい、12,3の子供です」
「子供か・・・まさか・・・ロビン、すまないがこの書類の整理を頼む。」
「わかりました」
ロビンにその場を任せて、応接間へ足を進めた。その扉を開けると、なかには先ほどの黒い影がソファーの横に立っていた。今はフードを外していて、肩の下くらいまで伸びたうす茶色の髪と、中性的な容貌を露わにしている。中性的すぎて、男か女かの判別がつかない。最も注目を引くのがその瞳だ。なんと、右目が光の色を、左目が闇の色をしている。子供は、ノイマンを見ると、嬉しそうに深くお辞儀をした。
「お久しぶりです、ノイマンさん」
「やはりフィラネスか!久しぶりだな、いったいどうしたというのだ」
どうやらかなり親しい間柄の二人は、互いに再会を喜んでいるようだ。
「ええ、実はこの二年で貯めた金で、どこかへ定住しようと考えたのですが、あなたの言っていた、このエンフィールドに行こうと考えたという訳です。」
「ここに住むのかね」
少し驚いたように言うノイマン。
「はい、でもその前に一言挨拶しようと思って・・・」
「成る程な、だが、お前だけでは住民登録など大変だろう。私がいれば、簡単に発行してくれるだろう」
確かにこんな小さな子供が、いきなり言っても相手にされない。だが、町の名士たるノイマンの口添えがあれば、大丈夫だろう。フィラネスは、いきなりの申し出に面食らったが、ありがたく好意を受けておく。
「うむ、では私の暇な内に済ませてしまおう」
「ありがとうございます」
「なに、気にすることはない。お前は何故か放っとけんのだ」
ノイマンは、この不思議な雰囲気の少年を、孫のように見ている節がある。彼らは、訝しがる隊員を後目に、役所へと向かっていった。



  あとがき
 かなり時間がかかってこれっぽっちです。うう・・よく考えたらこの話って、ノイマンに会っただけで終わってることに後で気がついた。
と、ともかくご意見ご感想下さい、待ってます。それでは第二話で〜。
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