中央改札 交響曲 感想 説明

死神の奏でる幻想曲 第一話
わ〜の


さてさてそれでは・・・まずは宣言させて頂きます。私の今まで投稿したSS、あの続きがどうしても思いつきません。ということで、一気に1stが始まる少し前くらいまで飛ぼうと思います。
アルベルトの活躍は?ホールで出てきた謎の少女は?バイロン、オーウェルの雪辱の炎は?色々あると思いますが、『気にしないで下さい』(オイ)。
このままじゃ全く動けないので苦肉の策、ということで。今までの話は「こんな事があった」と受け取って下さい。上に挙げたクエスチョンについては・・・これからのストーリー上『殆ど影響はありません』。



  さくら亭


暗闇の中で、誰かが泣いていた。
いや、暗闇という表現は正しくない。・・・・・・何も、無いのだ。光すら・・・・・・。何となく、そう直感した。
まあ、暗闇だろうが何も無かろうが・・・・・・この泣き声からして、まだ幼い子供だ。こんな所で泣いているのを放って置くわけにはいかない。どこにいるのか首を巡らせ・・・・・・ようとしたが、なぜだか全く動かない。まるで、密度の高い綿の中に押し込められたようだ。どうにかして動きたいのだが、手足も全く動かない。
どうしたものか・・・・・・。途方に暮れていると、頭の中にある考えが浮かんできた。
『これは夢ではないか・・・?』
そうだ、そうに決まっている。起きたら、『ああ、何だ。夢だから動けなかったのか』という事がよくあるではないか。
何だ、夢だったのか・・・・・・。そう安堵して、もがくのを止める。すると、段々と意識が遠のいてきた。目が覚めるのか・・・・・・夢すら見ない深い眠りにつくのか・・・・・・。まあ、どちらでもいい。このまま流れに身を任せ・・・・・・先ほどの泣き声が、又、聞こえた。
暫く無視していたが・・・・・・だめだ、気になって『眠れ』ない。
『・・・・・・暗いよぉ・・・・・・怖いよぉ・・・・・・寂しいよぉ・・・・・・パパ、ママ・・・・・・みんな、どこに行っちゃったの・・・・・・?』
だめだ、気になって『眠れ』ない・・・・・・。やはり、放っておけない。
『・・・・・・誰か助けて・・・・・・私を一人にしないで・・・・・・』
今、助けにいくよ・・・・・・再び、もがき始める。
『・・・・・・誰も、いないの・・・・・・?』
此処にいるよ・・・・・・。
『・・・・・・誰かいるの・・・・・・?』
ああ、いるよ・・・・・・。今そこに行くから、じっとしておいで。
『・・・・・・早く来て・・・・・・』
ああ、直ぐ行くよ・・・・・・。しかし困った。一体どこにいるのだ?・・・・・・・ひょっとしたら、以外と近くにいるのではないか・・・・・・?辛うじて動く瞳を動かすと・・・・・・何だ、直ぐ足下ではないか。うずくまっていたせいで、視界に入らなかっただけだったのだ。
顔は見えないが、服装からして女の子だろう。無理矢理親から引き離された、子供。そんな雰囲気だった。
懸命に、身体を動かす。・・・・・・だめだ、動かない。そうしている内に少女はあらぬ方向へ歩き出す。
違う・・・そっちじゃない・・・そこを動かないで・・・・・・。
声が聞こえていないのだろうか?全く反応がない。身体を動かそうと、更にもがく・・・・・・動けない。
このとき再び、頭の中にある考えが浮かんできた。
『夢ごときで何を必死になっているんだ・・・?』
そうだ、これは夢なのだ。動けるはずがない、目の前でさまよい歩く少女は自分の作り出した幻だ。・・・・・・さあ、ゆっくり休もう。
そう思って再び意識が遠のく中で・・・・・・一人の男が見えた。
『こっちだよ・・・こっちだよ・・・』
少女を手招きしている。彼女には男の声は聞こえるのだろうか。ゆっくりと、おぼつかない足取りで男へと近づいていく。
・・・・・・そのとき、男と目があった。その瞳から伝わるのは・・・・・・果てしない悪意。手にあるのは・・・・・・鋭いナイフ。男が再び少女を見る。果てしなく、冷たい瞳。
何をするつもりか・・・大体予想がつく。
だめだ・・・・・・そっちに行ってはいけない・・・・・・
呼びかけに、少女の足が止まった。
そう、そっちへ行ってはいけない・・・・・・危ないよ・・・・・・
こっちにおいで・・・・・・寂しいんだろう?・・・・・・さあ、後三歩も歩けば良いだけだ・・・・・・
少女が、恐る恐る、一歩踏み出した。
そうだ・・・・・・
だめだ・・・・・・
早くおいで・・・・・・
止まるんだ・・・・・・
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・











「フィラネス!!」
「・・・何か?」
気だるそうに顔を上げると、大男の顔が飛び込んできた。何故だか少し不機嫌そうな顔をしている。
「何か?じゃねーよ。昼飯、さくら亭に食いに行くんだろ?急がねーと休憩時間おわっちまうぜ」
「・・・ああ、そういえばそうでしたね・・・・・すみません、アルベルトさん」
ここでやっと合点がいった彼は、大男・・・アルベルトに謝りつつ立ち上がった。
うららかな午後。昼食にはかなり遅い時間帯。この時間なら、さくら亭も空いているだろう。
外に出ると、優しい風が身体をなでていく。
「どうした?フィル。お前、今日珍しくタルんでるじゃねーか」
「ええ、昨夜変わった夢を見て・・・・・・ゆっくり眠れなかったんです」
横を歩くアルベルトに、彼・・・フィルはボンヤリと、しかし先ほどよりははっきりした意識で言葉を返した。
「そうか」
「つめたっ!聞かないんですか?どんな夢だったんだ?とか」
「だってよぉ、お前のそういう話って聞き飽きた。それにつまらん」
アルベルトの気のなさ過ぎる返事。抗議する彼に、更に気のない回答。
そう、彼が気になる夢を話すのはよくあることで、今回が特別という訳ではないのだ。しかも夢の話が微妙に予知夢が入っていて、占いとかそういう方面ではかなり有名なのだ。アルベルトはそういう占いとかはあまり好きではないので、彼のその手の話はなるべく聞かないようにしているのだ。
「今回はすごく意味ありげでした!絶対に何かあります!」
「あーそうか。何かあったら自警団に連絡してくれ」
「私も自警団員ですよ!」
更に抗議する彼の耳で、美しいピアスが揺れているのを見て、アルベルトは深いため息をついた。
(そうなんだよなぁ・・・)
そうなのだ、自分より頭一つ分どころか二つ分も背が低いようなこの男が、自分と同じ自警団員なのだ。いや、事情を知らない者から見れば『美少女』である。年はアルベルトと同じのはずだが、見た目は14か15くらいにしか見えない。顔を見れば、誰が『男』などと言おうか。肩まで伸びたつややかな髪、ぷっくりとした可愛らしい唇、綺麗な弓なりの眉、そして・・・・・・特徴的な・・・・・・光と闇の瞳。
アルベルトはこの瞳について聞いたことがある。その答えは・・・『突然変異だそうです』・・・だった。まあそれはさておき。
いかにも戦闘に向きそうにない細っこい体つきだが、背中の太刀が心行くまで似合っていないが、その彼がアルベルト並みの怪力の持ち主で、更に自警団一の魔法の使い手というのだから、世の中というのは解らない。ついでに言うと、宗教人。
アルベルトは何度か彼の家を訪ねたことがあるが、中はワケのわからない物で満たされている。先に挙げたピアスを始め、身体のあちこちに着けたアクセサリーには宗教的な意味があるとか。朝と夜に一回、祈りを捧げるようで、自警団の野外演習で張ったテントの中で、一時間以上もブツブツと祝詞を唱え、同じテントの者たちを苦しめた。その者たちは朝起きると、『もう二度と彼と同じテントにはなりたくない』、と口を揃えた。ちなみに宗派の名前は・・・無いそうだ。何でも『天を崇める』宗派だそうだが・・・・・・。
「・・・・・・」
「?、何です?急に黙り込んで」
フィルは不思議そうに問いかける。
「別に・・・・・・っと、後ろから誰か来たぞ」
「・・・トリーシャさんとエルさんですね」
「二人とも何で解るの?」
あっさりと言い当てられて、後ろからこっそり近づいていた二人の内一人。トリーシャが少し不満そうに言った。
「お二人とも、こんにちは」
「ああ・・・」
「こんにちわ、フィルさん。相変わらず綺麗だね」
トリーシャの一言で、フィルが浮かべていた優しい微笑みが、ムッとした表情になった。
「トリーシャさん、褒め言葉になっていませんよ。私なりに気にしているのですから」
「あはは、ごめんごめん・・・だってホントに綺麗なんだもん・・・・・・。ところで二人とも、何をもめてたの?」
彼女はあまり悪そうに思っていないようだったが、フィルはこの問いを聞いて、ここぞとばかりに口を開いた。
「夢の話をしていたのです。・・・いえ、しようとしていたんです。アルベルトさんが聞いてくれないのですよ」
「だから、俺はそう言う話は嫌いだって言ってるだろ」
ウンザリした口調で言うアルベルトと、成る程、という表情のトリーシャとエル。アルベルトがこういう話を好いていないというのは、フィルも承知しているのだが、とにかく誰かにこの話を聞いてもらいたいのだ。
「ボク、フィルさんの夢の話、好きだよ」
「あたしも嫌いじゃないよ」
だから二人がこう言ったとき、パァッと顔が輝いた。
「じゃあ、話しますね」
彼のとびっきりの笑顔を見たら、だれがイヤなどと言えようか。今回も例外ではない。・・・・・・天然の天使の微笑み、というやつである。
「まず、泣き声が聞こえたんです・・・・・・何もない中で・・・・・・」
「何もない中で?真っ暗だっただけじゃないの?」
歩きつつ言葉を交わす。ちなみにアルベルトは、一歩下がったところを歩いて、会話が聞こえないようにしている。
「何もなかった・・・・・・何故だか解らないけれど、そう直感しました・・・・・・。とにかく、泣いているのは子供のようだったので・・・・・・そんなのを、放って置けませんよね?」
「ああ」
「ふつう、ほっとけないよね」
「そうですよね・・・・・・。それで、どこにいるか探そうと首を動かそうとしたのですが、全く身体が動かなかったのです。そのときに、これは夢だ、と気づいて身体を動かそうとするのを止めたのですが・・・その時、子供が何かを言っているのが聞こえたのです」
「何かって?」
「・・・・・・『暗いよ・・・・・・怖いよ・・・・・・寂しいよ・・・・・・パパ、ママ・・・・・・みんな、どこに行っちゃったの・・・・・・?』・・・・・・夢だとしても、放って置けませんでした・・・・・・。何とかその子の傍に行ってあげたかったのですが、やはり身体が動かなくて・・・・・・。その時、男が現れたのです」
「男?唐突だな」
「どんな人だった?」
フィルは、嫌悪感を隠せない様子で、空を見上げた。
「・・・・・・果てしなく冷たい、果てしない悪意に満ちた瞳、・・・・・・手には鋭いナイフ・・・」
「ナイフ?!大変だよ、その子がそんな男の所に行ったら!」
「はい、私もそう思って必死で呼びかけたのですが・・・・・・ゆっくり、その子は、その男の方へと行ってしまって・・・・・・。そこで、夢は終わりました」
彼の話が終わると、トリーシャは、はぁ〜っとため息をついた。
「なるほどね〜」
「意味ありげだな」
「そうでしょう?」
二人の反応に、彼は嬉しそうに笑った。



からん、からん・・・
「いらっしゃーい・・・あら、あなた達」
さくら亭の扉をくぐると、カウベルの涼やかな音と、パティの元気な声が響いた。
「やっほー、パティ!」
「じゃまするよ」
「あんたたち、ご注文は?」
「ボクは、パフェ。いつものね」
「あたしはハーブエール。ラベンダー以外だったら何でもいいよ。パティに任せる」
「わかったわ。フィルとアルベルトは、いつも通りでいいわね」
一方的にそういうと、パティは厨房に引っ込んでいった。彼らとしても異存はないので、何も言わない。
「どうも皆さん、こんにちわ」
フィルはさくら亭の先客たちに柔らかく挨拶をした。
「お〜っす!」
「こんにちわぁ〜」
元気よく挨拶をしたのはピートとメロディだった。他にもリサ、アレフがいる。クリスとシェリルもいるが、なぜか真っ青な顔をしている。その中で、アレフが笑顔で声をかけてきた。
「よお、フィル、トリーシャ、エル。相変わらず、綺麗だね」
エルは無反応。トリーシャは、「やだアレフさん・・・」と、照れたが、対照的にフィルは、顔をしかめて彼を見た。
「なぜ私まで一括りにしているんです?」
「そのまんまの意味」
「そうそう」
「ふにゅ〜、フィルちゃんかわいいの〜」
散々に言われて、彼は『ほっといてください・・・』とつぶやいた。
「何で俺の名前は呼ばないんだよ」
会話が途切れたところで、わざと自分の名を呼ばなかったアレフにアルベルトが食って掛かる。それに対して、アレフは余裕の表情でフフン、と笑う。
「何だ、アル。寂しいのか?」
「そんなわけあるか!!それに、アルって呼ぶな!!この軟派大魔王!」
「なに!?」
「まあまあ二人とも落ち着いて」
喧嘩を始めた二人を、フィルが仲裁する。元々この二人は仲が悪く、喧嘩はいつものことなのだが・・・。
「この二人、いつになったら進歩するんだ?」
「あたしは、一生このままだと思うね」
リサとエルの会話が、この二人に対する感想である。
「そうだよ、アル。落ち着けよ」
「ピート、お前には言われたくなかったぞその言葉!それに、アルって呼ぶな!」
「まあまあ、怒らない怒らない。それより、今日はすっげーニュースを持ってきたんだ!」
「たいしたモンじゃないわ、くだんない噂よ、ウ・ワ・サ」
そこへ注文の品を持ったパティが、興奮したピートの声に茶々を入れた。ドン、ドン、とそれらを置いていく。ちなみにアルベルトの『いつも通り』は、腹に溜まりそうな残り物である。フィルの『いつも通り』は、サンドウィッチに紅茶である。
「何だよ、パティ。その言い方」
「くだんない事をくだんないって言って何が悪いのよ」
ムッとした口調で睨むピートに、彼女も負けじと睨み返す。バチバチと火花を散らし始める二人。
「いつものことが原因ですか?」
「そう」
リサの短い答えを聞き、フィルは軽くため息をついた。いつものこと、とは、ピートのさくら亭への入り方である。パティはさくら亭のことを何よりも大切に思っている。しかしピートは、細かいことに全く頭が回らないので、いつもドアが吹っ飛びそうなほど乱暴に入ってくるのだ。しかも何度言ってもなおらない。当たり前だが、これがパティには我慢がならないのだ。
しかしいつまでもにらみ合っていてもらう訳にはいかないので、必ず誰か仲裁にはいる。それがいつものパターン。
「ふにゅ〜。ピートちゃんもパティちゃんもケンカしちゃダメなの〜」
今回はメロディだった。二人ともフンッ、とそっぽを向くとそれきり顔を合わせない。
「ねえピート、すっごいニュース何なの?」
「あ、そうだそうだ・・・。俺、すっげーニュースを持ってきたんだ!」
その場の雰囲気を変えようとトリーシャが聞くと、ピートは先ほどまでの睨み合いを欠片も感じさせることもなく、再び興奮した口調で後から来た四人に言った。
「それがさぁ!すっげーんだよ!マリオン島ってあるだろ?あそこにさ、幽霊が出るっていうんだ!」
「マリオン島に幽霊?」
フィルの表情が変わった。その貌は、戦闘に縁のない者には、ただ眉をひそめただけと映ったが、アルベルト、リサ、エルの三人には、この場にそぐわぬ、ある鋭さを感じ取った。
「どうしたんだい?坊や」
リサが問うと、鋭さが一瞬でナリを潜め、キョトン、とした表情でリサを見た。
「え?・・・いえ、ここ最近でマリオン島に渡航した船があったか思い出していたのですよ」
「そうかい?」
釈然としないものを感じつつ、リサは口を閉じた。それに対しアルベルトは、あきれた口調でいった。
「お前な、何考えてるかと思ったら。こんな噂、いちいち真面目に考えるなよ」
「なんだよアル!お前は信じてないのかよ!」
「アルって呼ぶな!お前の言う『すっげーニュース』で、実際にすごかった事なんて一度もないんだよ!」
「何だと!ちゃんと聞き込みもしたんだぞ!」
アルベルトに言われ、ピートは聞き込みの成果をまくし立て始めた。・・・・・ツバを飛ばしながら。
曰く、幽霊船。青い灯火のついたボロボロの船が、音もなく近づいてきて、急に消える。
曰く、キャンプを張っていると濃い霧が発生し、キャンプの回りを黒い影がうろつく。
曰く、怖くなって逃げ出すと気味の悪い足音が追いかけてくる。振り返るとそこには恐ろしい貌をした幽霊が・・・。   えとせとら


「なるほど」
フィルは納得顔で頷いた。
「それでクリスさんとシェリルさんは、青い顔をして耳を塞いでいるのですね」
そう、ピートが聞き込みの調査を披露している間、クリスとシェリルは耳を塞ぎ、震えていたのだ。二人は幽霊とかそういった類のモノに免疫がないのだ。
「何をそこまで怖がっているんだ?別に行く訳じゃあるまいし・・・」
「多分、行くのでしょうね。マリオン島に」
「え?」
あきれた口調で髪をかき上げたエルは、フィルの台詞に思わず聞き返した。
「そうですよね、二人とも?」
確認の色の強いフィルの問いかけに、がたがた震えつつ頷く。
「何で知ってるんだ?」
「エンフィールド学園は毎年一回、考古学の授業を取っている奴はマリオン島で実地研修をするんだ」
「へぇ・・・」
「その辺りの情報は自警団にも入ってきますから」
フィルとアルベルトの説明に感心する。
「へぇ〜!いいなぁ!二人とも!俺も連れてってくれよ!」
「だ、ダメだよぉ、許可を取ってない人は。あそこに渡るには役所で許可を取らなきゃいけないんだよ」
「ちぇ、ケチだな」
羨ましがるピートに、まだ青い顔をして答えるクリス。
そんなやりとりを目にして、フィルがクスッと笑った。
「そんなに心配ならば護符アイテムでも持っていけば良いではありませんか。あそこでは魔法は使えませんが、護符アイテムは有効のはずですから。・・・・・・エルさん、マーシャル武器店にも護符アイテムを置いていましたよね?」
「ああ、色々置いているよ。入り用だったらいつでもおいで」
フィルに話を振られて、エルは怯える二人を安心させるように笑いかけた。それが功を奏したか、少しだけ二人の怯えは少し薄らいだようだ。
「ひる、を前、こんなはらひをまう゛ぃで受けほるのか?ひーほの持っへきたはらひらぞ?」(フィル、こんな話マジで受け取るのか?ピートの持ってきた話だぞ)
「・・・なんて言ってんだ・・・?」
アルベルトが口に料理を詰め込んだまま喋ったため、ピートは何を言ったか解らないようだった。一方大体理解したフィルは、眉をひそめつつ口を開く。
「口に食べ物を入れたまま喋らないでください!・・・・・・まあ、幽霊なんて案外どこにでもいるモノですから」
「そうなの?」
聞いてくるパティに、紅茶を口に含みつつ頷く。
「結構いるものですよ。肉体が滅びても精神が滅びなくて、彷徨するモノというのは。因みに精神が滅びても、肉体が『生きて』いて、誰かに意のままに操られている存在を、我々は『ゾンビ』や『スケルトン』と呼んでいます」
『なるほど・・・』
思わず納得する一同。 そのときエルが口を開いた。
「でもフィル、前どっかで、肉体か精神のどちらが欠けても存在できないって聞いたことがあるけど?」
「良い質問です・・・・・・一般的にはそう言われていますが、真実として存在とは、『肉体』、『精神』、そして『魂』で成り立っています。現代では『精神』と『魂』が混同される場合が多いのです」
彼特有の、優しい口調で語る。
「はい、しつも〜ん」
「はい、アレフさん」
「『精神』と『魂』の違いって何だ?」
「存在とは、まず『魂』があるものなのです。言い換えれば存在する『基盤』ですね。基盤さえあれば『精神』、『肉体』のどちらかがあれば在り続けることができるのです。・・・・・・幽霊とは肉体が滅んでも精神と魂がありますから、在り続けることができるのです」
「う〜ん、何となく分かるんだけど・・・・・・よく分からないわね」
「俺も・・・」
「メロディ、よく分からないですぅ」
「まあ、何となく分かれば十分ですよ」
優しく微笑んで彼は言う。・・・・・天然天使の微笑み。
「・・・・・・何でお前が女じゃないんだよ・・・・・・」
「ほっといて下さい!好きで女性らしい顔をしている訳ではないのですから!」
それを見て、ため息に言葉を乗せたような調子で言うアレフ。抗議するフィル。
「そんな事言うと、女の子から恨まれるよ」
ケラケラと笑うリサの言葉に反応したのはトリーシャだ。
「そうだよ!その肌!髪!無頓着でトリートメントもしてないのにそんなに綺麗なんてあり得ないよ!さあ、その秘密を教えて!この前の家宅捜索では、どこにもヒントがなかったよ!」
「家宅捜索?荒らし屋、と言った方が適切ですよあれは・・・」
詰め寄るトリーシャに、この前の『家宅捜索』の惨事を思いだして、彼はもっともな意見をつぶやいた。そして同時に、心の中でも、こうもつぶやいていた。



(マリオン島に幽霊、ですか・・・・)
鋭い『何か』を秘めて・・・・・・。


















 あとがき

どうも!お久しぶり過ぎます。わ〜のです。あの掲示板に書き込んだ日から数日・・・・・・やっとこれだけ書けました。久しぶりに書いたけど、相変わらず筆遅いな〜♪(オイ)
まあこの調子なら、筆は遅いですが何とか書けそうなので、これからも温かく見守って下さい。・・・・・・感想などを頂けたら涙がチョチョ切れます。
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