中央改札 交響曲 感想 説明

死神の奏でる幻想曲 第三話
わ〜の



「脱出、脱出・・・・・・って言うけどさ。・・・・・・どうやって脱出するんだよ?」
「だ、だから、それを今探してるんじゃないか。たとえば、船とか・・・・・・」
「秘密の地下洞窟なんかないかしら?エンフィールドまで繋がってるの」
「そんな都合のいいものあるかなぁ・・・・・・」
「ピート君の言う、宝とかっていうのだって・・・・・・ホントにあるか分からないんでしょう?」
「そ、それは・・・・・・そうだけどさ・・・・・・」
『幽霊ギルド』の手を逃れた者たち・・・・・・ピート、クリス、シェリルの三人の会話である。
壊れたテントの下に隠れ、夜をやり過ごした三人は、持てるだけの荷物を持って、密林を進んでいた。ピートは宝探しのために、クリスとシェリルは脱出のために。





 『主人』

所で、この三人をぴったりと着けている者がいた。密林に隠れ、葉が擦れ合う音すら立てずに付いてきていた。
この者の視線の先で、三人は何者かと話している。・・・・・・どうやら『幽霊ギルド』の者らしい。ピートが何やら激しく抗議している。・・・・・・そして・・・・・・。
「簡単にいうなよーーー!」
どうやらピートは、『幽霊ギルド』の者の回答が気に入らなかったらしい。怒りの咆吼とともに、精霊球を投げつけた。『幽霊ギルド』の者は、断末魔にしては情けない悲鳴を残して、消滅してしまった。
「何なんだ?・・・・・・一体・・・・・・」
そうつぶやいたピートに答えるように、
「クククククク・・・・・・。軟弱者は露と消えたか・・・・・・」
樹上からやたらと渋い声が聞こえた。
三人が驚いて見上げると、黒いマントに身を固めた男が、枝から逆さまにぶら下がっていた。
「だ、誰だ、お前!」
「クククククク・・・・・・。私は暗黒の貴公子、その名も・・・・・・」
隠れていた者が動いたのは、その時だった。




「簡単にいうなよーーー!」
人間の投げつけた精霊球で、彼は消滅してしまった。
(やれやれ・・・・・・。暇潰しに見回りをしてみれば、この様か・・・・・・)
その様子を見て、男は内心、呆れ半分憎しみ半分でつぶやいた。男・・・・・・先ほど幽霊達に対し、演説をしていた男である。
幽霊達・・・・・・そうはいっても強力な奴は一握りしかいないのだ。この程度の攻撃で、滅びるものばかりだ。
(よくここまでクズ共が集まったものだ・・・・・・)
(ならば・・・・・・暇潰しに、遊んでやるか・・・・・・あの人間共と・・・・・・)
(この私、ヴァンパイア=ベルセリウスが・・・・・・)
そう、この男、ヴァンパイアである。生きとし生けるものの血を吸い、在り続ける糧とする種族。通常ヴァンパイアとは、日光に当たったとたん灰になって滅びてしまうものだが、この男、ベルセリウスは違う。その程度では消滅しない程の力を持ったヴァンパイアだった。
手頃な枝にひょい、と逆さまにぶら下がる。・・・・・・演出、というやつだ。
「クククククク・・・・・・。軟弱者は露と消えたか・・・・・・」
人間達が、驚いて自分を見上げる。ここまでは予定通り。
「だ、誰だ、お前!」
ここまでも予定通りの反応。だが・・・・・・。
「クククククク・・・・・・。私は暗黒の貴公子、その名も・・・・・・」
 ベキぃ!
ここで、何故だか枝が折れた。慌てて力を使い、空に浮こうとする。浮かない。しかも、なぜか身体が動かない。そのまま落下して・・・・・・。
 ベちゃ!
自分でも感心するくらい、いい音を立てて地面に衝突した。だがその感心が長続きするはずもなく、向ける方向のない屈辱感が襲ってきた。ベルセリウスがそのままの体勢で固まっていると・・・・・・
「あの・・・・・・大丈夫ですか・・・・・・?」
人間の一人が、声をかけてきた。
(なぁんだ、居るじゃないか・・・・・・私の怒りのやり場が・・・・・・)
心おきなく勝手な事をつぶやくと・・・・・・。急に、景色が変わった。
「なっ!?」
ベルセリウスは驚きの声を上げた。そこは空中だったのだ。マリオン島どころか、エンフィールド、それどころではなく、雷鳴山すら豆粒のように見えた。慌てて力を使い、空中に制止する。今度は浮けた。身体も動く。
「一体何が・・・・・・」
「私が、御主を無理に空間転移させたのだ」
「!!!」
彼の背後から、答えが返ってきた。反射的に、斜め前へ飛び、きびすを返しその声の主と距離を取る。
声の主の風貌を見て、彼は眉をひそめた。
声の主・・・・・所々に金糸銀糸の縫い取りのある黒い服、揃いのマント。深々と被ったフードの下には、真っ白な仮面。その目に当たる部分に、光に輝く宝石、闇に輝く宝石がそれぞれ埋め込まれている。当たり前だが、性別、年齢は分からない。声も仮面でくぐもっているため、判別の役には立たない。
この仮面のいう事が本当ならば、自分をここまで転移させた張本人だ。油断はできない。
「何だ?貴様は」
至極妥当な問いかけをする。それに対し仮面は・・・・・・腕を、前に伸ばした。ベルセリウムが、さっと身構える。
その直後、仮面の手には一振りの大鎌が握られていた。金色に輝く柄、白銀に輝く双方に突き出た刃、柄尻には金色に透き通る宝石。派手ではなく、もちろん地味でもなく、荘厳な、清廉な、邪な・・・・・・。
・・・・・・美しい・・・・・・
場違いな事だが、彼はそう思った。純粋に。ぼぅ・・・と見とれる。
「出てゆけ。この島から」
声がして、我に返る。慌てて仮面に焦点を合わせる。再び声を発する仮面。
「この島から出てゆけ、ここは、我らが一族の聖地・・・・・・」
不覚にも彼は微かに震えた。それほど異様な光景だった。・・・・・・どこが異様か、と聞かれても困る。とにかく、異様だった。この目の前の仮面、正に死神と呼ぶべきコレが存在していること自体に、違和感を感じていた。ひょっとしたら・・・・・・、これは幻なのではないか?
ベルセリウスは、死神に向かって手をかざした。
 ビュ!!!
何の前触れもなく、彼の掌から漆黒の力が吹き出した。それは槍となって、死神に迫る。だが・・・・・・。
  ぼふ・・・
「!?・・・馬鹿な・・・」
ベルセリウムの攻撃は、死神がマントで打ち払っただけで、消滅した。その時気付いたのだが、死神の羽織ったマントには、紋章が白銀色に輝いていた。それは丁度、鎌を抱いた人を象ったようだった。
とにかく、これはベルセリウムにとってはショックな事だった。今の一撃、手加減こそすれど、手抜きをしたつもりはなかったからだ。それを軽々と弾かれるとは・・・・・・。とにかく、目の前の存在は、幻などではない。そう認識すると同時に・・・・・・、手加減できる相手ではない、そう認識した。
「うおおおおお!!!」
ベルセリウムが吼えた。それと同時に、死神の周りに、四方八方に、数十という漆黒の槍が現れた。それが、死神に解き放たれる直前・・・・・・。
「『キャンサー』・・・・・・」
仮面の下で、死神がつぶやいた。
 どががががががっっっっ!!
彼は、呆然とした。自分は本気で、相手を殲滅するために力を放った。それを・・・・・・なぜ防げる?なぜ?そんな思いが、彼の中で交錯していた。
そう、死神は、小さく呪文を唱えたそれだけで、彼の全力を防いだのだ。
死神は、『蟹』の形に輝く光に、護られていた。薄青く輝く、神秘的な・・・・・・。
『蟹』とは、身籠もった女性の象徴。己の子を、どんな事をしても守り通す象徴。それはつまり・・・・・・。
『蟹』のそのハサミが掻き消えた。その瞬間、ベルセリウムは反射的に横に跳んでいた。
  ざッ・・・・・・
「!!!」
文字通り、目にも止まらぬ攻撃。彼は寸ででよけて、直撃を免れた。しかし、完全には避けきれなくて、片腕を持って行かれてしまった。・・・・・・『己の子』を、護り通さんとする、『母親』に。
突然、『蟹』が、すぅ、と消えた。時間制限でもあるのだろうか?冷静な者ならば、そう判断しただろう。だが、ベルセリウムに、そんな余裕は無かった。なぜ?という思いが、攻撃を受けて恐怖に変わっていた。全身から、嫌な汗が出る。息は元々していない筈なのに、息が苦しい・・・・・・。
「何者だ・・・・・・」
彼は、死神に問うた。
「貴様は、何者だぁ・・・・・・」
震える唇に、活を入れて。
「我は此の島の・・・いわば『主人』だ」
「主人だと・・・・・・?」
死神の答えに、聞き返す。
「その通り、此処は我ら一族の聖地、此処は御主のような悪事を働く者が来る処ではない」
「悪事を働くような者、だと・・・・・・?確かに、私は幽霊共を集め、人間達を混乱に陥れた・・・・・・。だがそれは、人間共の天秤で測った『悪事』だ。私はただ、定期的な食事を得るために、今回の騒動を起こしたのだ。それのどこが悪い・・・在り続けようとする事のどこが悪い・・・・・・?」
「・・・・・・」
震える口調で言う彼を、死神は静かに見つめていた。仮面を被っているせいでよく分からないが、雰囲気で伝わってくる。
暫しの沈黙を経て・・・・・・、
・・・・・・ふう・・・・・・
死神が、ため息をついた。プレッシャーが、薄れる。
「確かに、御主の言う通りだ。・・・・・・純粋に在り続けようとするものを、責める権利は誰にもない・・・・・・」
疲れたような、憂鬱な口調の死神。その言葉に力を得たか、ベルセリウムは全力で、脇目も振らずに逃げ出した。・・・・・・その程度の余裕しかなかった。懸命な判断だ。
「待て・・・・・・」
再び、プレッシャーが増す。
彼はビクン、と震えて、止まった。いや、動けなかった。それ程のプレッシャーだった。
「・・・・・・一つ教えてやろう・・・・・・。我の言う『悪事』とは・・・・・・」
言葉を、切る。そこに居るだけで、潰れてしまうようなプレッシャー。
「美しき魂を蹂躙する事だ!!!!貴様のように!!!!!」
死神が、吼えた。正に、天地を揺るがす様な声で。大鎌を振りかぶり、ベルセリウムへと迫る。
ベルセリウムは、動けなかった。悲鳴すら上げられなかった。
美しい鎌が、・・・・・・彼の身体を抜けた。・・・・・・彼の『肉体』は、切られていなかった。・・・・・・彼の『精神』は、切られていなかった。その代わり、彼の『魂』が、大きく、切り裂かれていた。
「貴様に騙された迷える魂たち・・・・・・その魂を引き裂かれる痛みを、身をもって知るが良い・・・・・・」
断末魔の声すら上げず、遺る筈の灰すら残らず・・・・・・ベルセリウムは消えていった。・・・・・・これが、『幽霊ギルド』の長の最後であった。





「・・・・・・ん?今、何か声がしなかったか?」
「ぴ、ピート君、脅かさないでよ・・・・・・」
「別に脅かしてなんかいないよ、ホントに声がしたんだよ!」
「ど、どこから・・・・・・?」
「ん〜、上から。うん、空から聞こえたって感じ」
「・・・・・・電波?」
「こら、クリス!俺はフィルじゃねーぞ!」
「わ、わぁ!ごめん!」
「ね、ねえ二人とも、もう少し静かに・・・」
そんな掛け合いをしつつ、三人は船の中に入っていった。そう、エンフィールドから乗ってきた船である。昨日の夜、沈められたように見えたのは、まやかしだったのだ。
一通り船の中を見回ったが、やはり誰もいないようだ。
「やっぱりこの船で、一度、エンフィールドに戻ろう。ここで起こった事を、自警団に知らせるんだ」
「う、うん・・・」
「それがいいわね・・・」
ピートの意見に全会一致し、彼らは錨を上げるため、甲板にでた。が・・・・・・。
甲板に出た三人は、そこで釘付けになってしまった。
「ふふふ・・・・・・ふふふ・・・・・・。そういうことされると、困っちゃうんだけどなぁ」
船首に腰掛けて、一人の少女が三人を見ていたのだ。・・・・・・あの『幽霊ギルド』の長を名乗った少女である。
彼女に釘付けになっている者がもう一人。先ほどベルセリウムを滅ぼした死神である。あの後直ぐにここへ来て、三人を見守っていたのだ。
(あの娘は・・・・・・!)
見た事のある顔だった。そして、驚愕する理由が一つ。
(あの子は、まだ『生きて』いる・・・・・・!)
直感的に、そう感じた。彼女の身体は何処かで眠っている。そしていわゆる『幽体離脱』状態になっている。・・・・・・そう感じた。
驚いている内に、少女がクリスを追っかけ回し始めた。・・・・・・からかって遊んでいるようだ。
(さて、どうしたものか・・・・・・取り敢えず、様子を見るとするか・・・・・・?)
護符を使うべく走るピート。それを追う少女。彼を捕らえる手。幽霊たち。笑う少女。笑い返すピート。手にあるのは・・・・・護符ではなく、ただの紙。飛び込むシェリル。畏怖の声を上げる少女。水音。護符を発動させるシェリル。・・・・・・退散していく、迷える魂・・・・・・。緊張が解けたか、わんわんと泣く子供たち・・・・・・。





『幽霊ギルド』は騒然としていた。当然だ、どこを探しても長がいないのだ。ベルセリウムに騙された者たちは、未だその感覚がない。
「・・・・・・やっぱり、逃げちまったんじゃねえかな・・・・・・」
「そんなはず無いって。きっとどこか」
「どこかってどこだよ・・・・・・」
『・・・・・・』
沈黙が、流れる。
「でもさ、あたしたち、護符アイテムが有効って事がバレちまったじゃないか・・・・・・。このままじゃ人間に消滅させられちまうよ・・・・・・」
「あの人がいなかったら・・・・・・」
沈黙が、流れる。
『・・・・・・怖いか?消滅するのが・・・・・・』
『!?』
「だ、誰だ!」
「人間共・・・・・・もう来たのか!?」
どこかから響く声に、辺りは騒然とする。だが・・・・・・。
『安心しろ、我はお前たちを滅ぼしに来たのではない・・・・・・』
諭すような口調。その優しい声に、幽霊たちの恐怖は不思議と薄らいでいった。シン・・・と、静まりかえる。
「あんた、誰なんだ?出てきてくれ・・・・・・」
一人が、つぶやくように言った。
その声に答えるように、柱の影から、すっ・・・と黒い影が現れた。先ほどの死神である。一瞬、誰もが息をのむ。暗闇の中、まるで仮面だけが浮いて現れたように見えたからだ。だが、それは一瞬で、ちゃんと胴体がある事が確認できた。・・・・・・元人間だけに、幽霊たちでも、こういう事は怖いのだ。
「我は、御主たちに『新しい生』への道を拓くために、やって来た・・・・・・」
「・・・・・・新しい生・・・・・・?」
「その通り。・・・・・・もう一度聞くが、怖いか?消滅させられるのが」
「当たり前だろ!」
「・・・何故だ?」
叫ぶ男の霊に、死神が問う。男は一瞬詰まって・・・・・・。
「・・・・・・俺たちは、肉体的に死んだ経験がある。だから、死ぬ恐怖って奴を生きてる連中より知ってるんだ。・・・・・・あんな、あんな苦痛はもう沢山だ。・・・・・・それを・・・それをもう一度味わうだなんて・・・・・・」
「成る程・・・・・・だが御主たちは知らない。死とは、新しい生の始まりである事を・・・・・・。死ぬと魂は、天へと昇り、浄化され、再び生を受ける。ある者は鳥となり、大空を舞うだろう。ある者は魚となり、水中を泳ぐだろう。ある者は人間となり、再び学ぶだろう・・・・・・」
暫しの沈黙。
「・・・・・・いいな、そういうの。僕、鳥になって空を飛びたいってずっと思ってたんだ」
それを破ったのは、まだ子供の霊。その瞳は、希望に輝いている。周りも影響を受けて、我も、我もと夢を語る。少年を見て、死に神は優しく微笑んだ。・・・・・・仮面を被っているので、周りには分からなかったが。
「でも、人間たちが来るのを待って、消滅させられろってのか?またあの苦痛を味わうのは・・・・・・」
対照的に、まだぐずっている男の霊。彼に対し、死神は、くっくっく・・・・・・と笑った。
「安心しろ、苦痛を伴わずに天に昇る術を私は知っている。死ぬ恐怖を知っている御主たちに、それをもう一度味わえとは言わぬ」
その言葉に、周りに更に希望の輝きが広がる。
「さて・・・・・・」
そんな様子を見ながら、死神は言った。
「天に昇りたい者は、胸の前で手を組み、目を瞑れ」
全員が、従う。最後までぐずっていた男の霊も・・・・・・。
『天よ、我が力を以て、浄化の海への道を拓け・・・・・・』
簡単な呪文。扉が、現れた。輝く扉が。浄化と、未来への希望、そして強い意志を与えてくれる輝きが。死に神の前に。・・・・・・その中に、吸い込まれていく迷える魂、魂、魂・・・・・・。そして・・・・・・。



「あれ?」
残ったのは、死神と、『幽霊ギルド』の長を名乗った少女。
彼女は、呆然と辺りを見回す。・・・・・・そして、怒りと、涙がこみ上げてきた。猛然と、死神に詰め寄る。
「どうして!?どうして私だけ残したの!?どうして助けてくれなかったの!?私が・・・・・・私が『幽霊ギルド』の長だなんて名乗ったから!?」
死神は、じっと彼女を見つめる。
「何でみんなと一緒に逝かせてくれなかったの・・・・・・?・・・・・・助けて・・・・・・私を一人にしないで・・・・・・」
それが精一杯で、後は、ただただ泣きじゃくる。
 す・・・
死神が、少女の頭に手を添えた。少女はびくっ、と震える。弾かれたように、顔を上げる。そこには、彼女に合わせて膝をつき、顔をのぞき込んでくる、無表情の光と闇の宝石があった。
彼女に、怯えはなかった。仮面からは、何の感情も伝わってこなかったが、その意外な程華奢な手からは、深い慈愛が流れ込んでくる。・・・・・・気付かなかったがこの死神、こうしてみると結構小柄である。
その慈愛に身を任せる彼女に、更に慈愛に満ちた声をかけた。
「御主は、まだ生きている・・・・・・」
「・・・・・・え・・・・・・」
彼女は、何を言われたか理解するのに、暫しの時間を要した。理解して・・・・・・。
「・・・・・・うそ・・・・・・」
「本当だ。御主は俗に言う『幽体離脱』の状態になってしまっているだけだ・・・・・・。まだ、何処かで身体が眠っているはずだ・・・・・・」
「ホントに・・・・・・?」
まだ、不安そうに聞く少女。
「ああ、本当だとも。・・・・・・我は、力になってやれないがね」
少女の顔が、見る見る寂しさと恐怖に変わっていく。『私を一人にしないで・・・・・・』・・・・・・不安に揺れるその瞳は、死神にそう訴えている。
その様子を見て、死神はクスッと笑った。
「案ずるな。・・・・・・街へ行け。・・・・・・そしてそこに私と同じ瞳をした者が一人住んでいる」
「あなたと・・・・・・おんなじ瞳・・・・・・?」
「そうだ、その者を探し出せ。必ずや御主の力になってくれるだろう・・・・・・」
そして、呆然とする彼女を前に、すっくと立ち上がる。
「・・・・・・あ・・・・・・」
その拍子に手が離れ、少女は名残惜しさに、思わず声を上げていた。
死神は、彼女の頭を撫でた。少し、乱暴に。
「がんばれ・・・・・・!」
今度は勇気が、彼女に中に流れ込んできた。
「・・・・・・うん!」
少女の元気な返事を聞いて、死神は極上の笑みを浮かべた。・・・・・・仮面の下で・・・・・・。
そして、まるで最初からその場にいなかったように。忽然と、死神は消えた・・・・・・。
そして、残された少女は・・・・・・。
「・・・・・・よし・・・・・・!」
自分を鼓舞するように、小さく、つぶやいた。









 あとがき

どうも、数日ぶりのわ〜のです。いや〜、今回もチョットばかし小説のパクリの続き(いや、ほとんどかも)。
この話は、悠久の小説を読んでいて、私の作品の第二話『マリオン島』、に出てきたフィルとロビンの疑問が湧いてきた事から思いつきました。それに乗じて、謎の仮面が暗躍したりするよーにしたり、マリオン島を濃い島に改造したりしました。・・・・・・それと、どのような経緯でローラが教会に居着く事になるか、という話への布石にしてみました。・・・・・・という訳で次はその辺の話です。
それにしても、死神が『鎌』を出したところ、もっと臨場感出したかったんですけどね〜。どうしても改善策が無くて・・・・・・。誰か、その辺のコツがあったら、教えてください。宜しくお願いします。
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