悠久幻想曲「悠久の輪舞」
6話「PANIC・DAY」
旧王立図書館、
エンフィールドが自治都市となる以前に建てられた街一の大図書館。
この図書館では年に一度、地下の書庫の大掃除が行われる。
しかし、あまりの蔵書数のため、今だ手付かずの区域は数知れず。
今年も図書館に、この季節がやってきた。
「やあ、イブ。」
「こんにちは、シンさん。今日はよろしく。」
本来、図書館の大掃除は所員のみで行われるのだが、今年は違った。
毎年掃除をしていた所員が、イブを抜かしてこの日に限って欠席したのだ。
原因はやはりこの大掃除の過酷さゆえだろう。毎年掃除が終わると筋肉痛を訴える者数知れず。
この行事は図書館所員泣かせとも言えた。
そのため、各自様々な理由でこの日は欠席(スト?)していた。
だからここでジョートショップの出番となったのである。
「それでは地下の書庫に案内するわ。」
「わ〜☆すごい魔法書とかあるかな〜。」
「なにか面白い物語は・・・・・。」
「ボクも楽しみだな〜。」
なぜかこの様な日に限って、手伝いにきたメンバーがマリア、シェリル、トリーシャだったりする。
シンもミーコも嫌な予感を感じていた。
「どれも貴重な本なので、扱いには注意してください。危険な本も多数あるので、くれぐれも遊び半分で開けないようにして下さい。」
蔵書が多いため、場所を分かれても終わりきらないので全員が固まって掃除が始まった。
10分後・・・・・・・・・・・・・
ボ―――――。
既にシェリルは本の世界にいた。
「ああ、こんなところでこの物語の原作が読めるなんて感激です。」
周りには大きな時計を抱えたウサギや、金髪のかわいらしい少女が飛びまわっているようだ。
「お、おい、シェリル?大丈夫か?」
いち早くその異変に気付いたシンが声をかける、が。
「・・・・・・・・・・・どんどんウサギとの距離は遠くなっていきます。・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・少女の声も・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いつまでたっても・・・・・・・・。」
全く耳には入っていなかった・・・・・・。
「私に任せてください、主様。」
ここで登場したのはいつもその大声でシンを起こすミーコであった。
「せえの、シェリルさー―――――――――――――――ん!!!!!!!!」
その日、街の人々はシンが珍しく二度寝したのだと勝手に理解した・・・・。
しかし、
シェリルは微動だにしていなかった。
「はあ、はあ、はあ、もしかして主様よりも重症・・・。」
「だめだよ、ミーコちゃん。シェリルがこうなったら。危ないから下がってて。」
息も絶え絶えのミーコの前に立ったのはトリーシャだった。
シェリルの親友である彼女にはこの様な場面の対処法がしっかり用意されている。
荒療治だが・・・。
「いくよ、必殺!トリーシャチョ―――――――――――――――ップ!!」
スコン
トリーシャの手刀が小気味良い音をたててシェリルの脳天にヒット。
「あら?私、あっ、すいません!つい読み始めてしまって。」
何事もなかったかのようにシェリルが正気を取り戻した。
その言葉にイブを除く人々は脱力してしまった・・・・。
50分後
さて、やっと落ち着きを取り戻した一同は、各々イブに出された指示にしたがって黙々と作業を始めた。
しかし・・・・・・
「あ〜!これって10年前に絶版された高等魔法書だ。」
次に騒ぎ出したのはやはりマリアだった。
パカッ
なんの配慮もなくマリアの手の中で本は開かれる。
すると一条の光と共に本から気味の悪い悪霊が飛び出してきた!!
「なにやってるのさ〜、マリア〜!!」
たまらずトリーシャが本棚の後に隠れる。
と、その時一匹の悪霊がイブ目掛けて飛びかかってきた。
「危険ね。」
こんな時でもイブは冷静だった。(笑)
「危ない!ホーリー・グレイス!」
シンの手から後光が指しこむとその悪霊は跡形もなく消え去った。
「ありがとう、シンさん。」
しかし、悪霊はどんどん本の中から飛び出してきている。
「マリア!早くその本を閉じるんだ!」
注意されてやっとマリアが本をしまうが既に3、4匹の悪霊が下界の空気を吸うに至っていた。
「厄介な事になったな、早く魔法で成仏させるか。」
そういってシンが身を乗り出した瞬間。
「大丈夫!!マリアにお任せ!ルーン☆バレットォ!」
チュドーン!!
この日、エンフィールド3回目の大音。
「アハハ。失敗しちゃった。」
そこらへんを跋扈していた悪霊は跡形もなく消えていたが、同時に書庫の天井の一画も跡形もなく消えていた。
「・・・・・・・・・・・。」
次の日、ショート財閥会長のモーリス・ショート氏が旧王立図書館に多額の修理費用を払ったのは言うまでもない・・・・。
ちなみに、図書館にはその日からマリア・ショート立ち入り禁止の札が掛けられる様になった。
―――――――――――――――――――――――――――――
後書き
今回は物凄いドタバタでした・・・・。こう言うのは簡単なのですがねえ。
シンもイブも大変ですね。同情しますよ、ホント。
自分で書いておきながら。(笑)