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悠久の輪舞9話「PASTorPRESENT」
ユーイチ


悠久幻想曲「悠久の輪舞」
9話「PASTorPRESENT」
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フェニックス美術館での盗難事件から1ヶ月。
自警団第3部隊隊長のレインは事件の事がどうも腑に落ちず、自警団で1人事件の真相解明の為残業を続けていた。
相棒のは「くだらねえ。」と言い残し寮へ帰着してしまった。
もっともレインとしては仕事に集中できるので願ったり叶ったりなのだが。


(何故シンは美術品を盗む気になったんだ?彼はエンフィールドに来て日も浅く、犯行に至るには準備が手薄。
彼ほどの知恵者ならしようと思えば何の手掛かりも残さず犯行に及ぶ事など造作もないはず。それに見合う実力もある。)


考えれば考える程疑問が芽生えてくる。
一般的に事件を解明する上での第一歩は「自分ならどうするか?」だ。
犯人の状態、思想、能力などを頭に入れて事件現場のビジョンを再構築していく。

 しかし、レインが分析すればする程その仲に奇怪な点が浮かび上がってくるのだ。

(あのシマ(事件)についての証言者は3人、全員はっきり姿を捉えたわけではないが証言は一致しているし
証言から作られたモンタージュもシンのシルエットに酷似している。
更に証拠品の中にあった御札、指紋こそ検出されていないがこの手の類のアイテムを扱うのはエンフィールドでシンのみ。
警備員の一人がこれを張られて金縛りに会ったと言う・・・・・。)



そこまで考えた所でレインはデスクの片隅に置いてあったコーヒーに手をかける。
彼の口の中に苦味と安っぽい酸味が広がった。


(こう考えると物的証拠はほぼ揃っていると見て間違いはない、しかし動機に於いては全くの謎だ・・・。)

「フム。」



(!!そうだ!それに取り調べの時も有無を言わさずに役所から逮捕状が出た。
彼の話も聞かず、しかもあんな驚異的なスピードで。
何かがおかしい・・・・・・。)


ガチャ
「お〜い、レイン。その辺にしとけよ。毎度の事ながらお前は真面目過ぎだぜ!
何か奢ってやるから飯にしよう。」

根を詰めていたレインに親友のアルベルトが心配して声をかけた。
「ああ、そうしよう。今日も昨日も缶詰だったんでな。」
「全く、よくそんな食生活で隊長の激務に耐えられんな。」
笑い会って二人は部屋を後にする。


だが、レインの考察さえもこの事件の裏に潜む影の、氷山の一角にしか過ぎなかった。





同時刻―ジョートショップ―

(一体誰が、何の目的で俺を貶めようとしている?)


シンはベランダからエンフィールドの夜景を眺めながら思案をめぐらす。
「フッ。」
不意にシンの口から自嘲気味な笑いがこぼれた。
(元から記憶が無いんじゃあ考えても分かるわけないか・・・・。 )
「如何なさいました?主様。」
その様を見ていた使い魔のミーコが主を気遣う。

「いや、何でもないよ。少し物思いにふけっていただけだから。」
「左様ですか。それでは先に休ませていただきます。」
「ああ、お休み。」

ミーコが部屋を出ると同時にアリサが部屋に入ってきた。
「アリサさん、どうしたんですか?」
「どう、シン君、町の暮らしには馴れた?」
アリサはシンの隣に歩みを寄せる。

「ええ、よい友人にも恵まれましたし、楽しい日々ですよ。どうしたんです?いきなりこんな事を・・・・。」

「ええ、それは・・・・」






クククククッ

(!?)

突如、シンの頭の中におかしなノイズがこだました。

ヒャハハハハハ

(!?この笑い声は?いつもの夢で聞くあの声・・・・・?)


「?どうしたの、シン君。」
シンの様子がおかしいのにアリサも気付いたようだが声は聞こえていないようだった。

(俺にしか聞こえないのか!?)


(ざまあねえなァ。お前ほどの奴も記憶をうしなやあこんなモンだ。)
その声は次第にはっきりとシンの頭の中に響いてくる。




(誰だ!?おまえは!?何処から俺に話しかけている!!)


「ココだよ。」
「!!」
シン達が声のする方に目をやるとそこには禍禍しい模様の入った眼帯をつけた男が立っていた。
背格好はシンと同程度、しかしその男から発せられる気は人のものとは思えないほどの圧迫感を帯びている。



「誰だ、貴様。」
その異様な気を振り払ってシンが殺気を送る。


「ヒャハハハ。腐っても鯛か、よくこの中でそれ程の殺気を投げかけられるなあ。」
男はシンの送る殺気など諸共せずに乾いた笑いを発する。


「もう一度聞く、お前は誰だ?」
「クックック、オレ様の名前はシャドウ、暗黒の世界を支配する男だ!」
先程よりも強烈な威圧感がシャドウと名乗った男から発せられた。


「シャドウ?一体どうやって俺の前に現れた?俺に何の用だ!!」
普段は温厚で相手を威圧する事など滅多にないシンだったが、流石に声を荒げてシャドウを威嚇する。
現にアリサも驚きを隠しきれないようすだった。


「ヒャハハハ、強がるのも良いが汗だくだぜ?まあ相手の強さが分かるのも実力の内だがなァ。」
「クッ。質問に答えろ!」

額に多量の汗をにじませながらシンは反論するがその顔には明らかにあせりが見えた。
「シン君・・・・・・。」




「フン、まあいい、今日のところは挨拶だけだからな。名刺代わりにこいつをやるぜ。」
そう言うとシャドウは懐から黄ばんだ紙切れを取り出す、それは御札だった。

「そ、それをどこで!」
「?」




「クククッ、多いに悩め!多いに苦しめ!そしてオレを多いに憎め!!
お前の呪われた因縁はどうしようも無いものだからなあ!!」
シャドウの手から御札が離れると一条の光が発せられ、アリサとシンの前に発せられる。



次の瞬間そこにシャドウの姿は無かった。

「くそ、一体どういうことだ?あいつは、それに俺は一体何者なんだ?何故あんな男が・・・・・・・・・。」


フワッ


「?」
錯乱状態にも似たシンを暖かいアリサの腕が包んだ。
「ア、アリサさん!?」

「あなたが困惑する気持ちはよく分かるわ。最近様子もおかしかったし、自分の過去に何か大きな事があったのか不安な気持ちもわかる。
でも一人で悩みこまないで、あなたにはあなたの手助けをしてくれる仲間や私、それにミーコちゃんだっているじゃないの。
一人では背負いきれない物もみんながいれば何とかなるわ。忘れないで。」







シンの瞳から一筋の雫が流れ落ちた。
「アリサさん、すいません。ありがとう・・・・・・。」





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後書き
ユーイチ:久しぶりにシリアス編をお送りしました。
ここの所ギャグばかりで・・・・・。
さて、シンの持つ「因縁」とは、彼の過去とは?
彼と仲間達はこの得体の知れない闇にどう立ち向かっていくのでしょうか?
がんばれシン!負けるなシン!
アリサさんの腕で泣いた事がアルベルトに知れたら大変だ!
?:ユラリ
Y:ん?
アルベルト:うう、アリサさん、オレがレインの野郎とさくら亭でCランチを食っている間に・・・。
      ゆるさんぞ!シン〜!!!!!
Y:ハハハハ、それではまた。
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