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天使のような微笑みplusライム[HP]


天使のような微笑み

 よく晴れた午後
2人は白いテーブルを囲んで、荷物を椅子の上に
置いて、見つめ合っていた。
旅の途中。
一瞬、目が合って、またそらす。
それを繰り返しながら、クレープが
なくなっていった。
「小学生の頃、空にあこがれてね」
茶ぱつの男の子が照れながら言った。
心は真面目に語っていた。
「私もよく空眺めてたよ」
店の中は人が行き交い、2人のいる場所は
駅の中のホールだった。
近くに店が並び、甘い香りがしていた。
「チョコ好きだもんね」
「甘いもん好きなくせに」

 2人の過去・2人の過去
今日のこの日が、未来日記になった。

「好きな文字もskyだった時あったし、
文字が好きなんだよね」
「j-skyとか?」
「そうそう」
「紙飛行機の形が好きだったり」
「j-phoneのメーカーもいいし」

「前、友達と会って、空見上げたら
星がたくさん見えたんだ。そこは美星って言う
町で、ホントに星がよく見える所なんだ」
千春が星の話をしている。
「・・・・・・・」
悟は黙って聞いていた。
「今度、行ってみる?」
「いつ?」
「9月でも見えたよ」
「見るか」

星の話をしながら時がまた過ぎていった。

「星の周りに一本のすごく大きい太い線が
あって、雲かなってまた間違えちゃった」
「俺みたいにか?」
「そっ、まーた間違えた。ホントに雲かと
思っちゃったんだもん」
「バカだな」
「自分も間違えたじゃん」
「ははは?」
「友達がね、天の川見えるかなって言ったのね。
7月にしか見えないって思ってたから、
私はあいまいな言葉を返したんだ。そして
星を見てたら、雲らしいのがあるじゃん。
びっくりして、あれ、天の川? って
聞いちゃった。2回聞いちゃったよ。
始めて見ちゃった」
千春は笑いながら言った。
「分かるだろ、天の川くらい」
「始めて見たんだもん」
「俺、単に間違えただけだよ」
「うそー。始めて見たんでしょ」
「俺んとこ、星がいっぱい見える所だから
子供の時からずっと見てるよ」

「星、見に行こうよ」
悟の温かい声がして、千春の手をつないだ。
すぐ横にいる悟。千春はドキッとして少し
手が揺れた。
「ホントに星見に行くの?」
「千春と行きたい」
「今すぐ?」
「今すぐ」
駅のホームが暗くなっていた。
終電までに乗って帰らないと行けない筈の2人は
その電車に乗った。
美星行き。
電車で1時間揺れながら、2人はずっと手を
つないだままで美星に着いた。

「うわー」
「ほー」
風が涼しく2人の前を吹き抜けながらも、
風は止まない。
「悟、きれいだね」
「天の川がどれか分かるか? 千春」
「あれでしょ?」
つないでない手で指さす、千春。
「あれだよ」
千春が指さした手を悟がふれる。
何も言わない空間を星達が見守っていた。
「千春」
「悟」
2人の手が空から遠ざかり、千春の顔に
あった。
「ずっと、こうしていたいね」
「ずっと、ここでそうしていたいな」
「ずっとね」
千春がそう言うと、悟がキスをした。
「ずっと側にいるからな」
「ずっと居てくれる?」
「ずーーーっと」
「ホントに?」
「俺ね。ずーーっと、ここで千春と木になって
ここに居たい気分」
「・・・・・・・」
「千春は?」
「木には、なりたくないなあ」
「・・」
「悟だけ、木になれば?」
「千春・・・・」
「木にはなれないけど、悟の・・・」
「何? 悟の」
「悟の側にずーーーっと居れる事は出来るよ」
「あっ!!!!」

悟が笑ったその時、千春が叫んだ。
「うるせーなあ」
「願い事・・・」
千春がすぐにつぶやいて、悟の前を離れた。
「おい、離れるなって」
悟がすねて言った。
「なんだよ、千春」

星が消えて、千春が振り向いた。
「ねえ、願い事した?」
「出来るかよ。教えろってば!」
「だって、消えちゃうじゃん」
「・・・何、願い事したんだよ」
悟は怒りながら言った。
「教えたら効かなくなるじゃん」
「じゃ、教えろ。俺は願い事出来なかった
んだからな!」
「じゃ、悟の願い事教えてよ」
「は? 何、願うんだよ」
「あるじゃん、願い事」
「ねーよ」
「ある」
悟は怒りながら、千春の方に歩いて行った。
「これが願いだよ」
星空の下。
風の吹く丘の上。
月だけの明かり。
夏が過ぎて、秋の風の匂い。
虫の鳴き声が丘の上まで、山の向こうまで
聞こえていた。
三日月が出ている丘で、2人はキスをした。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・願い・・・叶った」
千春がつぶやいた。
「俺の願いも叶ったよ」
2人は笑って、もう一度キスをした。
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