中央改札 悠久鉄道 交響曲 感想 交響曲

「ちびイヴちゃん エピローグ」 ふぉーちゅん  (MAIL)
  壊れSS ちびイヴちゃん


  エピローグ ローズレイクにて

 柔らかな草の上で、メルフィとイヴはくつろいでいた。
「――ようやく、後始末が終わったわね」
「ああ……これで何とか普段どおりに戻れそうだね」
 柔らかな風が二人の頬を撫でる。
 二人が今いるのはローズレイクの湖畔。デイルの暴走(酔っぱらっていたらしい)によって破壊されたこの場所も、すっかりもとの状態に戻っている。メルフィとイヴ、ルーファスとエリザの四人がかりで、丸一日かけて修復したのだ。全く、壊すのは一瞬でも直したり作ったりするのは大変である。
「――それにしても、エリザさんには驚いたわね。あのデイル・マースを一人で倒してしまうなんて」
 あのとき、怒り狂ったエリザはデイルをたった一人でぼこぼこにしたのだ。
 彼が負った怪我は、骨折六ヶ所、裂傷(この場合は刃物傷)二十一ヶ所。火傷、擦過傷、打撲傷については数え切れない。
「見た感じ、おしとやかそうな人なんだけどなあ」
 この点について、ルーファスが言葉を濁していた辺りが妙に気にかかる。
(ま、女性は怒らせると怖いってところか)
 その辺については、メルフィも気を付けた方がいいかも知れない。
「デイル・マースもしばらくは大人しそうだし」
「――ああ、『あれ』ね」
 若干の恐怖が混じった表情で呟くイヴ。
 あのあと、拘束されたデイルはマリアとローラの合作クッキーによって完全に無力化された。二人は怒りと恨みをたっぷりと込め、結果、その作品は一欠片でドラゴンをも打ち倒す代物に仕上がったらしい。
 ルーファスによると、それ(もはやクッキーとは呼べない)を六時間ごとに投与することによってデイルを無力化し続けるそうだ。二百枚は焼いたはずだから、二ヶ月くらいは保つと思われる。
 余談だが、騒動の張本人であるマリアはこの薬物(だからクッキーではない)でデイル拘束に貢献したとして、魔法薬作成と流出に関する罪は問われないことになった。おそらくマリエーナでは魔法薬と究極クッキーの両方について研究するだろうが、その辺りはメルフィたちの知るところではない。研究の過程で犠牲者が出ないことだけを祈る。
「――でも」
 少しばかり顔色を曇らせ、イヴが口を開く。
「――本当に良かったの?あの話」
「ああ」
 イヴの問いに、短く答える。
 イヴを元に戻すのにつきあったあと、ルーファスたちはすぐに帰っていった。宮廷魔術師長とその秘書――やはり相当に多忙なのだろう。
 そのルーファスだが、彼は去り際、メルフィに「マリエーナに来ないか」と誘ったのである。宮廷魔術師団幹部の地位を提示して。
 おそらくは信頼できる人間に手伝ってほしいということなのだろうが、メルフィはその話を断った。こちらの考えが分かっていたのか、彼は何も言わなかった。
「――わたしのために断ったのなら――」
「いや、そうじゃない」
「――このことに関してはそうなはずよ」
 半年前のあのとき――イヴを助けるために、メルフィは自分の魂の一部を彼女に分け与えた。
 もともと別々の魂が混ざり合ったのだ。魔法的な処置によって安定させているが、このことはイヴがメルフィから離れられないことを意味している。
 メルフィがマリエーナに行くのなら、当然イヴも連れていくことになる。そしてメルフィが彼女に施した一連の魔法は、そのほとんどが禁呪に当たるものなのだ。ことが公になった場合、彼は処罰を受けることになる。
「――もしわたしが重荷になっているのなら」
「それ以上は言うな」
 ぎゅっ
 横を向きながらイヴを抱きしめる。折れそうなほどに華奢なその身体は、小刻みに震えていた。
「マリエーナの宮廷魔術師――確かにその地位は魅力的だ。昔の俺だったら、間違いなく飛びついていただろう」
 そう、一度記憶を失う前――魔法とその研究を至高のものとしていた頃の自分なら。
「だけど、今はそれより大事なものがいくつもあるんだよ。エンフィールドというこの街。自分を受け入れてくれた人々。それに――」
 イヴの顔に右手を当て、自分の方を向かせる。
「それになによりも、今目の前にいるイヴ・ギャラガーという女性が、今の俺には一番大切なんだから」
 それを聞いたイヴは、じわりと目を潤ませるとそっと両眼を閉じる。軽く顎を突き出しながら。メルフィはその唇に自分のそれを近づけ――、

『メェェェルフィィィィ』

 邪魔が入る。どうやらラブコメの神様は健在だったようだ(笑)。
(くっ、いいところで邪魔を……)
 胸中で罵りながら声が聞こえてきた方を向く。そこには――、
「ルーファスさん?」
 こちらに向かって飛んでくるルーファスの姿があった。エリザもいる。揃っての再登場に、嫌な予感を覚えるメルフィ。そして案の定――、
「デイル・マースが逃げた」
 エリザの言葉に、思わず目眩を覚える。
 話を聞いたところ、手違いから無力化剤(クッキーのことだ)を投与し忘れ、その隙に逃げ出されたらしい。
「破壊を繰り返しながら、街道をこちらに進んでいる。おそらくここが目的地だろう。迎撃ののち殲滅、あるいは捕縛しなければならない」
 なぜか異様なまでに盛り上がっているエリザ。メルフィはそれを見て軽く苦笑を漏らすと――、
「しゃあない。手伝おうか、イヴ」
「はい(……続きはあとでね)」
 メルフィスラート・ラインソードとイヴ・ギャラガー。この二人が平穏な日常を取り戻すまでは、まだ幾ばくかの時間が必要なようだった。


   (ちびイヴちゃん 完)





  後書き代わりの座談会

作者「皆さんこんにちは。司会進行の作者ことふぉーちゅんです」
ソーニャ「ふぉーちゅんさんの優秀弟子……じゃない。進行補助のソーニャ・エセルバートです」
(どんどんどんどん、ぱふーぱふー)
ソーニャ「効果音ありがとうございました。さて、突発的に書かれたというこのSSですが――出演者の皆さん、どうでしたか?」
(出演者に、順にマイクを向ける)
メルフィ「俺は結構満足だったな。それなりに活躍もできたし」
イヴ「わたしは結構苦労したわね……メルフィさんと一緒にいる時間が増えたのはよかったけど(ポ)」
ソーニャ「らぶらぶなお二人でした(ちょっとうらやましい)。パティさんはどうですか?」
パティ「ちょっと出番が少なかったわね。それが不満かな」
クリス「僕ほどじゃないでしょう」
シェリル「わたしもです」
トリーシャ「ボクはそこそこあったから……もうちょっと出たかったけど」
ローラ「あたしも出番少なかったなあ。最後で名前だけ出てるけど、あれじゃあねえ」
(マイクを持ち直し)
ソーニャ「と皆さん言ってますが、作者さん?」
作者「うーん。みんなもっと出したかったんだけど、収拾がつかなくなるからねえ」
ソーニャ「というと?」
作者「このSSはなんだかんだ言ってイヴの話だから。パティやトリーシャの出番を増やすと、そっちに食われちゃうんだ。二人とも勝手に動いてくれるキャラだから使いやすいんだけど、インパクト強いからね。ヒロインにするんでもない限り、パティなんかは『主人公へのアドバイザー+頼りになる友達』というスタンスでいてもらってる。トリーシャも同じこと」
ソーニャ「なるほど。クリスくんたちについてはどうなんです?」
作者「この三人は、完全に脇役。『魔力の強い人間に反応する魔法薬』という設定のために出しただけ。だから、第四話以降では基本的に用済み」
(うるうると泣く三人)
ソーニャ「な、なるほど……ところでこのSSですが、どんなことから思いついたんですか?」
作者「うん。悠久2のパッケージに、登場人物たちのSD人形が出てるだろ。それから思いついたんだ」
イヴ「なんでわたし?」
作者「そりゃ、聞くまでもないだろ。悠久2のなかで一番好きなのがイヴだから」
メルフィ「それ以前に、『長い黒髪』が好きなんだろ」
ソーニャ「WHではエリザさん、悠久1ではシーラさん、悠久2ではイヴさん――考えるまでもないわね」
作者「うーん。確かにそう言われてみればそうなんだろうけど――それだけじゃないんだよな。エリザはあのテラスでのシーンが来たし、シーラはやっぱり王道だろ。恭ちゃんボイスってのも大きいが」
メルフィ「イヴは?」
作者「クライマックスでの、照れてる顔に惚れた(きっぱり)」
ソーニャ「ああ、あの一度しか出ないやつね」
作者「ごくわずかしか出ないからこそ価値がある。ま、メルフィはよく見てるんだろうけど」
(しばらくメルフィたちを冷やかす声が続く)

トリーシャ「ところで、メルフィさんとルーファスさんって、どういう知り合いなの?本文中では書かれてなかったけど」
作者「うーん、結構長くなるんだけどな……あ、ちょうど来たから本人たちに説明してもらおう」
(そこに入ってくる人が二人)
ルーファス「こんにちわー」
エリザ「すみません、遅くなりました」
(ぺこりと頭を下げる)
作者「ちょうど良かった。君たちに質問が来てるよ。メルフィとどういう知り合いなのか説明してくれって」
ルーファス「はあ、そうですか……そうですねえ、メルフィくんと知り合ったのは、たしか五年前のことだったね」
メルフィ「そうです(自分の過去を明かされるのが面白くないのか、少し不機嫌)」
エリザ「当時、ルーファスさんはS&Wの3rdでしたね。わたしは2ndでした」
ルーファス「あの頃か……」
(当時のことを思い出しているのか、眉間にしわが寄っている)
ルーファス「あの頃は大変だった……アカデミーは潰れる寸前だし、部員は一癖も二癖もある連中ばっかりだったし、自分の責任を全く自覚せずトラブルばかり持ち込んでくる先輩はいたし」
作者「そういえば、そのデイルだけど……大丈夫?」
エリザ「手錠を五重にかけた上に全身に呪符を張り、独房の鉄格子に縛り付けて、ついでにあのクッキーを十個ばかり口に押し込んで来ましたから」
作者「(ちょっと引きつつ)そ、そう……それにしてもエリザ、君、デイルに対しては容赦ないね」
エリザ「当然です。あの男にはわたしもルーファスさんも多大な迷惑を被っているんですから」
ソーニャ「わたしも充分すぎるくらい被害を被ったわ」
エリザ「だいたいあの男がいたおかげで、わたしはWAと対立しなければならなかったんですから。おかげでルーファスさんには嫌われかかるし……ルーファスさんの周りには綺麗な人たちが多かったから、気が気じゃなかったんですよ?」
ルーファス「ま、まあそれはそれとして……(照れてる)、俺たちとメルフィのことだったな」
作者「そういえばそうだったっけ」
ルーファス「五年前、メルフィがいた国……なんていったかな」
メルフィ「アルヴィング公国」
ルーファス「そう、そのアルヴィング公国からS&Wに視察団がやってきたことがあるんだよ。それに魔術師ギルドの代表として、メルフィや、他に何人かがくっついてきていたんだ」
メルフィ「S&Wのことは辺境でも有名だったから。魔法学科・闘技学科ともに。何人かをS&Wに送り込んで、あとで軍や政府の役に立てようって腹だっただよ……結局は実現しなかったが」
トリーシャ「どうして?」
メルフィ「アルヴィング公国自体が他国に吸収合併されたからな。魔術師ギルドや騎士団は解体された。家の人間は全員死んでたから、そのまま旅に出たんだよ。幸い、金銭と暇だけはあったからね」
ルーファス「(重くなった雰囲気を振り払うように)でまあ、そんときデイル先輩がまた騒ぎを起こしてね……解決したのがこのメルフィと」
メルフィ「ルーファスさんだったわけ」
作者「ある意味、凄まじくとんでもない出会いだな」
メルフィ&ルーファス『ほっといてくれっ!』

ソーニャ「そういえば、作者さんに手紙が来てるわよ?」
作者「読んで」
ソーニャ「はいはい――差出人はシーブクレスト、ブルーフェザー一同。内容は『悠久PBのSSを書いてくれ』だって」
作者「悪いけど、そりゃ無理だ」
イヴ「どうして?」
作者「ゲーム持ってない。パソコンの他にはサターンしかないから、プレステ版をやるわけにも行かないんだ」
エリザ「ドリームキャストは?」
作者「僕にとって魅力的なソフトが少ないからな。移植される作品では、『Kanon』は声優さんがいまいちだし、『こみパ』はパソコン版を持ってる」
メルフィ「けど、プレステないときつくないか?ネタ的に」
作者「ああ。おかげで『Memories Off』もできないし、声つき『To Heart』もできない。もともとパソコン版の『To Heart』はともかく、『Memories Off』はパソコンに移植してほしいな。『plus』がパソコンで出たんだから、できると思うんだが」
ルーファス「作者、どさくさにまぎれて自分の要望を言わないように」
一同『全く』
作者「僕かっ?僕が悪いのかっ!?」
一同『そのとおり!』
作者「あううぅぅぅ」
(轟沈する作者)
ソーニャ「それじゃ、作者がめでたく沈んだところでそろそろお開きにしましょうか。お茶とお菓子もなくなったところだし」
(ソーニャの言葉に、一人一人席を立っていく)

(最後の一人がいなくなってから十分後――)
(ばたばたばたばた――ばたんっ)
マリア「ごめーん。遅れちゃったーって、みんなどこ?」
作者「…………」
マリア「あっ、作者っ!何でこんなところで寝てんのよっ!?」
作者「…………」
マリア「ちょっと、寝てないで起きなさぁぁぁいっ!」
(しばらく続くマリアの声。だんたんと幕が下りてきて――フェードアウト)






中央改札 悠久鉄道 交響曲 感想 交響曲