中央改札 悠久鉄道 交響曲 感想 交響曲

「未来への旅人」 月虹  (MAIL)
「これで…最後じゃ。」
 ふう、というため息とともに老人の動きが止まった。
老人の顔には、誰の目から見てもはっきりとわかるほどの疲労の色があらわれている。
しかし、その瞳には老いに対する嘆き、死に対する恐怖などは無い。
 あるのは、優しさと何かを成し遂げようとする強い意思を感じさせる瞳、そして、死などとは別の悲しそうな瞳。
その瞳をある一点に向ける。そして、“それ”に語り始める。
「すまぬ…ワシの力が及ばぬばかりにまえに苦労をかけるようじゃ。」
 と、その目から一筋の涙がこぼれる。
「しかし、ワシが生涯をかけて作り上げたものがお前の身を守ってくれることじゃう。」
 ぐるっと部屋を見回してそうつぶやく。
「本来ならば何か話をしてからにしたかったのだが…そうも言ってはおれぬ様じゃのう。詳しい事はデータに残っているそれを頼りにしてくれ。」
 といって両手を天にかざす。
「今よりソウルバイパスを行う、これによりお前は自分の身を守るための力を手に入れることができる…じゃがこれを手に入れたことでお前はわしを恨むかもしれん、憎むかもしれん、じゃが全てはこの世界のため、平和を維持するため、そしてなによりもお前自身のためなのじゃ。」
 言い終わると両手から虹色の光が溢れ出てきた。その光は全身からも現れた、そして光は両手の先に集まってゆきだんだんと球形を作っていった。そして光がおさまると球は、人の頭の2倍になっていた。
 その球はゆっくりと落ちてゆき、その先にはいろいろなコードが付いているカプセルがあった。そのカプセルは大人一人分が楽に入れるほどの大きさだった。球が老人の話し掛けていた“それ”に近づくと球は少しずつ少しずつそれの中に入っていった。
 球が完全に消えると老人はその部屋から出て行き、ピッと言う音がなり、その部屋への出入り口が閉じられた。老人が何かのボタンを操作すると、ドオオオオオンという大きな音を立てながらその部屋が地面に沈んでいった。
 老人は居間のような部屋の椅子に座った。
「ふぉふぉふぉ…魔族の馬鹿共め、今ごろのこのこ出てきても目的のものはもうここには無いわ。」
 と、窓の外を見ながらそう呟いた。
「しかし、ワシ一人であの世とやらに行くのも、ちと寂しいからのう、ついてきてもらうとするかのう。このラードゥーンの最後の舞台じゃ、派手に一緒に踊ってくれよ。」
 老人、ラードゥーンは魔力を最大まで高めそして放出した。放出された魔力は数秒後、爆発し、家の周りに潜んでいた魔族を消し飛ばしながら全てを飲み込んでいった。
「後…頼…ぞ…ノ…ア。」
 それが、爆発で消えてゆくラードゥーンの最後の言葉だった。

これは、悠久なる歴史の一つ。しかしこれは誰の記憶にも存在しないただ一人除いては。

  そして物語は、悠久なる風が吹く【悠久都市エンフィールド】へと舞台を移す。


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