中央改札 悠久鉄道 交響曲 感想 交響曲

「未来への旅人 安息の地 (後編)」 月虹  (MAIL)
「まったく・・・あんな奴ばっかりじゃないだろうな?テディ。」
 先程、さくら亭でアレフに地獄のお仕置きをして、その後テディの案内で街見物を兼ねて残りのメンバーを探す途中でファバルがぼやいた。
「大丈夫っス。ナンパをするのはアレフさんだけっスから。」
「ならいいんだが・・ん?ケンカか?」
 ファバル達の進行方向の少し先で金髪のショートカットの女の子と緑の髪にメッシュが入っている耳の長い女・・エルフなのだろう・・が口ゲンカをしていた。その横でリボンをした茶色い髪の女の子がケンカを止めようとしていた。
「あ、あれはマリアさんにエルさん・・それにトリーシャさんまでいるっス。」
 そう言った後、テディはファバルにあの三人も助けるのを手伝ってくれた事を教える。
「・・・とにかく止めなくてはな。」
 そう言うと走り出しマリアとエルの間に割って入りケンカを止める。     
 突然、知らない人物が間に入ったので二人はケンカを中断し、その矛先をファバルに向ける。
「ちょっと、マリアの邪魔しないでよ!」
「そうだ、お前には関係無いだろ」
「二人ともやめなよ。すみません、どうもありがとうございま・・あれ?テディ。」
 二人を制してトリーシャが見知らぬ男・・ファバルに礼を言おうした時肩に乗っているテディに気がついた。その言葉でマリアとエルもテディが居る事に気がついた。ケンカがひとまず落ち着いたのでファバルは自己紹介を始めた。


「ふ〜〜ん、じゃあファバルさんも助かった理由が分からないんだ。」
 トリーシャがファバルを見ながら尋ねた。
 四人と二匹は公園に来ていた、話が長くなりそうなのでここに来たという訳だ。
「なあんだ、てっきりマリアは魔法を使ったと思ったのに。」
「俺は、魔法は得意じゃないよ。」
 ファバルがそう言うとマリアはつまらなそうな顔をした。
 魔法が苦手、という事を聞き興味が無くなってきたのだろう。
「そうだ!ファバルさんの事聞かせてよ。ボク、ファバルさんが何してるか知りたい。」
「俺の事?・・べつに話すほどの事なんて無いんだが、まあいいか。俺は見ての通り冒険者をしている・・していた、だな。だがこれは趣味みたいなもんだ。俺の本分は科学者・・いや、正確には学師・・か。そして、俺が研究している物を総称して、魔道と呼んでいる。」
「まどう?お前そんなもの研究なんかしてるのか?」
 エルが不機嫌そうな声でファバルに聞いてくる。エルが魔法を使えないという事を知らないファバルは、なぜ怒っているのか分からなかった。怒っている理由をトリーシャに聞こうとした時マリアがエルに文句を言い始めた。
「そんな物ですって?エル、いい度胸してるじゃない。」
「なにか文句があるのか?」
「二人ともやめなよ。」
 再びケンカが始まる。そして、二人のケンカは魔法についての論争に発展した。そこへ、
「なあ・・俺は一度も魔法を研究しているなんて言ってないんだが?」
 ファバルの言葉に三人が「「「え?」」」と、声をハモらせた。
「じゃあ、さっきマリア達に言った事は?」
「説明が足りなかったか・・魔道は魔道であって魔法じゃない、まして魔導でもない。」
「「「???」」」
「つまりだ・・」
 魔道とはこの世界の事全てを研究するというもとに作られ、その実は単に自分が研究したい事をすると言う物である。しかし、一見馬鹿らしい事に思えるがこの研究には多種多様なものがある。科学・生物・命の起源・生物の成長・進化の過程・魔法・魔物・魔族・天使・神族など、このような物を自分が納得するまで研究するのである。
「・・とゆうことだ。」
「分かったような・・」
「分からんような・・」
「ぶう★マリアわかんな〜〜い。」
「分かれという方が難しいしな。まあ、これで俺が魔法至上主義者ないって分かったろ。」
「ああ。まあ魔法がいつも頼りになるって訳じゃない事はわかっていたけどな。」
「なんですって。みてなさいよ、エル。」
 と、言うといきなり詠唱を始めた。慌ててエルとトリーシャが止めに入る。が、まったく聞いていない。
「えと、後はこうして・・あれ?こっちだったかな?ま、いいか・・」
「ちょっと待て!そんなでたらめな呪文・・く、聞いてない、ええとあれは・・」
 そう言うと、ポケットを探り出す・・そして、何かを放り投げる。
「ここを、こうして・・よし。いくわよ、<カーマインスプレッド>」
 その場にいたエルとトリーシャは爆発に備え身をかがめる・・・しかしいつまで待っても爆発はこない、そこで恐る恐る目を開けると・・・そこには立ち尽くすマリアとファバルが居た。そして二人の間には人の高さぐらいの透明な正方形があり、その中には爆発したような炎が渦巻いていた。
「な、何・・これ?」
「これが魔道の一つ、魔力を一切使用しない結界だ。」
 そう言った後、結界と言ったものがちいさくなっていき、最後には消えて無くなる。
「ねえねえ、今のどうやったの?マリアにも教えてよ。」
 呆然と立ち尽くしていたマリアが瞳を輝かせ聞いて来た。
「教えて、と言ってもなあ・・」
「いいじゃない、教えてくれたって。」
「う〜〜〜ん、じゃあこうしよう。俺の出す問題が解けたら教えてやるよ。」
「ほんと!?」
「ああ。さて、問題を出すぞ?人間が一番最初に覚えた魔法は何だ?」
 そんなの簡単じゃない、とばかりに自信満々な顔して答を言おうとした時にファバルがそれを遮る。
「・・・ただし、理由を明確に答えろ。言うだけなら誰でも出来るからな。」
 その言葉にマリアは考え込む。
 その間にファバルは公園に着いてから眠りっぱなしのテディとコクバ起こす。そして、まだ考え込んでいるマリアに対して声を掛ける。
「まだ時間が掛かりそうだな、俺は行くから答がわかったらジョートショップまで来い。」
 その言葉に文句を言うがまったく無視し、テディとコクバを連れてその場から足早に立ち去って行った。


「そんな事があったんスか。」
 公園から五分程歩いたところで、テディが何があったか聞いてきたのでいきさつを話した。この時コクバはファバルの上着に付いているポケットの中で未だ寝ていた。
「マリアさんはいつもああなんスよねえ・・・・あれ?」
「どうした、テディ?」
「こっちに走ってくる人・・・トリーシャさんじゃないっスか?」
 言われて振り向くと確かに、トリーシャが走ってきている。
 そして、ファバル達の傍に来ると軽く深呼吸して話しかけてきた。
「ファバルさん、ボクも街案内を手伝ってあげるよ。」
「気持ちは嬉しいが・・・いいのか?」
「ボクは大丈夫だよ。それに、この街の事ならボクに任せてよ。」
「それじゃあ、お願いするか。」
 トリーシャとテディの案内でファバルは街を見て回った。
 日が傾きかけた頃トリーシャがファバルに先程マリアに出した問題の答を尋ねてきた。
「う〜〜ん、教えても良いんだが、トリーシャがマリアに答を教えないとは限らないからなあ」
「ボク、誰にも喋らないよ。」
 しかし、ファバルはその言葉に不安を覚えた。
 なぜなら、街を案内されている時とにかくトリーシャはよく喋った、聞いてもあまり意 味の無いものから噂話まで、そんなトリーシャが絶対に答を言わないとは思えなかったからだ。
「そうだなあ、じゃあヒントをあげよう。」
「ヒント?」
「ああ、それじゃあ一つ目のヒントからだ・・・・」
 ファバルはトリーシャにヒントを聴かせ始めた。
 一つ目は、その魔法は一般的に知られている四つの魔法のどれにも属さない。
 二つ目は、その魔法は誰も知らない、と言うより存在した事すら覚えていない。
 三つ目は、その魔法は誰もが持っている、悪人でも赤ん坊でも。
「以上がヒントだ。これ以上は教えないからな。」
「ねえ、ファバルさん。それって誰も答える事が出来ないんじゃあ・・・・」
「そうっスよ。今のを聞くと答えることが出来ないっス。」
「ああ・・・・そうなるな。」
 それは、詐欺なのでは・・・というトリーシャとテディの言葉を聞いて心外な、と言わんばかりの声で反論した。
「確かにすぐには答える事は出来ないだろう。だがさっき見た図書館に行けば少しくらいは手掛かりがあるかもしれない、探しもしないで無理なんて言葉は聞きたくない。」
 その言葉にすこし俯く。
「・・・と言うのが建前で、魔法もしっかり覚えてない奴に魔道を教える事なんて出来ない、と言うのが本音だけどな。」
 ファバルの言葉を聞いて安堵のため息を漏らす一人と一匹。
「じゃあファバルさん。その魔法だけどボクにも使えるの?」
 トリーシャの質問に即答する。
「使えないだろうな。」
「どうしてっスか?」
「この魔法の使い方を俺も含め誰も知らないからだ。」
 その場に静寂が訪れる、そして少し経った後、トリーシャに声を掛けてくる者がいた。
「トリーシャちゃん、こんな所で何してるんだい?」
 声の方に振り向くとそこには青いターバンをし、槍を持った男が立っていた。
「アルベルトさん。アルベルトさんこそどうしてここに?」
「隊長の所に行く途中なんだけど・・・それより。貴様、見かけん顔だが何者だ!」
 アルベルトの敵意の篭った質問にファバルはカチンときたが自分の素性を聞かせた。
 ファバルが答えてもまだ疑っていたがトリーシャの手前口には出来なかった。
「それから、俺はジョートショップで働く事になったからよろしくな。」
 その言葉を聞くと、アルベルトは憤怒の形相で槍を構え、そして
「き、貴様ーーーー。アリサさんの優しさにつけ込んでアリサさんをたぶらかすとは、ゆるさん!詐欺の容疑で逮捕してやる!」
 そう言いながら、槍でファバルを突く。
 当然の事ながらファバルはそれ避ける、しかし
「む、抵抗するか。公務執行妨害も付け加えてやる!」
 再び槍で突かれそうになるのでコクバをトリーシャに預ける。
 さらに槍の突く速度を上げメッタ突きをする。それをファバルは紙一重でかわす。    
 ただし、ファバルが武術の達人だからではない、単にアルベルトが怒り狂って滅茶苦茶な攻撃をしているからにすぎない。
 それでも、多少は武術の心得が無ければ全てはかわせないだろう。
(全くなんだっていうんだ?しかし、これじゃいつか疲れてしまう。・・・仕方ない。)
「トリーシャ、テディ。目を瞑ってろ!」。
 その言葉を聞き、目を瞑る。
(魔力秘めたる石よ、その力を解放せよ、その力瞬きの光となりて、)
「・・・<閃光>」
 声と共にいつ手にしたのか持った石を放り投げる。
 再び、突進して来るアルベルトの前に来ると、石は光り輝き、直視できない程になる、そして、だんだんおさまっていき、光が消えると石は粉々になり砂と化す。
 光の直撃を受けたアルベルトは目を押さえうめいている。
「さあ、今のうちだ。トリーシャ、テディ、いくぞ!」
 トリーシャにそう叫び、テディを掴み大急ぎでその場から立ち去る。
「て、てめえ、まちやがれ!」
 アルベルトがなにやら文句を言っているようだが無視して走るファバルとトリーシャ。


「はあ、はあ、はあ・・こんなもんでいいだろう。」
 走り出して数分が経ち、日がもう沈み始めていた。
「それにしても・・あいつはどうして怒ってたんだ?」
 ファバルがトリーシャにその訳を聞くと納得した。
「ふ〜〜〜ん、あいつがアリサさんをねえ・・・」
「ねえねえ、ファバルさん。さっきの、もしかして・・・」
「ん?ああ、あれも魔道だ。」
 その言葉を聞いてどういう物か尋ねてくる。
「さっきのは閃光・・つまり目くらましみたいな物だ。呪文とほんの僅かな魔力で発動させる事が出来る。」
「へえ〜〜。あ、そうだ!」
 そう言うとトリーシャは預かっていたまだ寝ているコクバを差し出す。
 トリーシャに礼を言うとはっ!と思い出したように自分の手を見る。
 アルベルトから逃げる時、テディの事を考えず走ったので案の定ぐったりしていた
「テ、テディ・・大丈夫か?」
「だ・・大丈夫じゃないっス。ボクの事・・考えて走ってほしいっス。」
 その言葉に、苦笑するファバル。
 暗くなってきたので、トリーシャに送ろうと言ったが、テディを早くジョートショップに連れて行った方が良いと言われ、その場で別れることにした。
「じゃあな、トリーシャ。」
「うん。またね、ファバルさん」
「お・・・おやすみなさいっス。」
 トリーシャに別れの挨拶を告げるとファバルは足早に帰路への道を急いだ。


「う〜〜〜ん、それにしても散々な一日だったな。」
「ボクにとっても散々な日だったっス。」
 ファバルのぼやきに、だいぶ回復したテディがファバルに文句をつける。
「悪い悪い、それより俺の助けてくれたのってもういないのか?」
「いえ、後二人会ってないっス。」
 その二人の事を聞こうとした時ジョートショップが見え、テディは走って行ってしまった。
「ふう、まったく。・・・コクバ、大丈夫か?」
 ファバルの言葉を聞くとコクバはパチッ、と目を見開いた。
「・・・正直言ってあんまり大丈夫じゃないでありまス。・・ゲプ。質、量共にかなりの物でありまス。ゲプ。消化するにはまだ時間がいるでありまス。・・ゲプ」
「・・・お前が消化しきれんとはな、だがあの場合、ああしないと被害が広がるからな。待ってろ、もうすぐジョートショップに着く、アメリにも多少肩代わりさせよう。」
 会話の後、再びコクバは目を閉じた。
 そしてファバルはジョートショップへと急いだ


「ただいま。アリサさん」
「あら、お帰りなさい。ファバルくん。」
「おかえりなさいっス」
「オヤビン、えらい遅いやないっスか。」
「オッス、お帰り。」
「お・か・え・り・な・さ〜〜〜い。」
「うみゃあ、おかえりなの〜〜〜。」
「ただいま・・って、お前ら誰だ?」
 部屋にはアリサとさっきまで一緒だったテディ、そしてアメリ。この一人と二匹の他に赤毛の少年と狐のような耳を生やした女性と猫耳の少女がいた。
「ああ、さっき言った残りの二人っス。」
「・・三人いるんだが?」
 もっともだ、その事を説明しようとしたテディを狐耳の女性が止めた。
「その事についてはこのお姉さんが説明してあげるわ。」
 そういうと、その女性は説明し始めた。
 女性の名前は橘由羅、自分を除く二人が助けるのを手伝ったと教えてくれた。
 そして、ここに居る理由も教えてくれた。
「・・とゆうわけよ。分かった?ファバルくん」
「ああ。だがなんで俺の名前を知っている?」
「うふふ、大人の女性は何でも知ってるのよ。」
(・・アリサさんかアメリが教えたんだろうな。)
「自己紹介はいらないようだが、一応しておこう。俺の名前ファバル、よろしくな。」
「オレの名前はピート。よろしくな、ファバル。」
「ふみぃ、メロディです。ファバルちゃんよろしくなのだあ。」
「さあ、皆ご飯にしましょう。」
 と言うアリサの声を聞いて、テーブルを見ると、ご飯の用意が出来ている、どうやら先程の理由だけでここに居る訳ではなさそうだ。
「はい、わかりました。でも、その前に部屋に戻ります。」
 そう言って部屋に戻り、コクバをベッドに寝かせる。その後、ファバルは皆の所へと戻った。
「なあなあ、ファバル。お前ってさあ、女顔なんだってな。」
 椅子に座ろうとした時に、ピートが聞いてはならない事を聞く。
「なんで・・それを?」
「アメリちゃんがおしえてくれましたよ。」
「ほんとよ〜〜〜。ねえ?アメリちゃん。」
 メロディと由羅の言葉を聞きアメリは固まる。
「アメリ・・本当か?」
 低い声で尋ねる。
「・・・・」
「もう一度聞く、本当か?」
 今度は少し怒りのこもった声で。
「は、はい。」
「そうか・・あれほど余計な事を喋るなと念を押して言ったんだが。」
 そう言うとファバルはアメリに顔を近づける、そうするとアメリからアルコールの匂いが漂ってきた。
「酒、飲んだな?」
「ほ、ほんのちょっぴりだけやっス。」
 アメリの言葉を聞くと顔を離しため息をつき、そして、
「・・・明日から一週間おやつ抜き。」
 アメリに対しそう宣告する。
 宣告されたアメリはと言うと、呆然と立ち尽くしていた。数分後、
「そない殺生なっス!ウチの人生の三分の一を取るような物やないっスか!」
 とわめき散らす。しかし、おやつが人生の三分の一とは大げさである。
「オヤビン〜〜〜。それだけは堪忍してっス〜〜〜。」
 アメリが何か言っているがファバルはそれを無視し料理に手をつけた。
 そして、宴会のような夕食でジョートショップは盛り上がり、一日の終わりを告げた。

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