中央改札 悠久鉄道 交響曲 感想 交響曲

「未来への旅人  運命の歯車」 月虹  (MAIL)
「さて今日の仕事は・・・」
 ファバルがジョートショップで働き始めて一週間が経っていた。
 今日も仕事に取り掛かろうとしていた。
「あれ?アリサさん、このカッセルって人の仕事なんですけど・・・」
「どうしたの?ファバルクン。」
「いえ、このローズレイクって言う場所がどこにあるのか・・・」
 ファバルはエンフィールドに来てそれなりの時間が経つがまだこの街を把握しきれてはいなかった。
「それならボクが案内するっス。」
「悪いなテディ。・・他は後でも出来るな。よし、それじゃあアリサさん、行ってきます。」
「まかせておくっス。ご主人様、行ってくるっス。」
「気をつけてね、二人とも。」


「ファバルさん。コクバさんとアメリさんはどうしたっスか?」
 ジョートショップを出て数分後、テディが尋ねてくる。
「ああ、あいつらなら、まだ寝てるが?」
「あれ?でもファバルさんを起しに行った時は居なかったスよ?」
「まだ説明してなかったか、あいつらは・・・」
 そう言うとテディに話し始めた。
 ファバルの話まとめるとこう言う事だ。
 コクバとアメリはファバルの使い魔のような存在でありファバルの体を住処としファバルが呼べば大体現れる。なぜ大体かと言うと彼等が拒否する事が有るからである。ただし彼等は外に出ている事が好きなので呼びもしないのに出てくる事が多々有る。そして今は体の中で寝ていると言う。
「・・・と、いうことだ。」
「魔法生物のボクとは違うっスか。」
「まあ、そういうことだ。」 
 そんな他愛も無い話をしているとローズレイクへと着いた。
「さて、依頼人は・・」
「あそこっス、あの小屋がカッセルさんの家っス。」
 その言葉を聞いて辺りを見まわすと湖のほとりに小屋が一つあった。
「あそこか・・・しかしこんな所に住んでいて楽しみなんてあるのか?」
「メロディさんとかがたまに遊びに来てるみたいっスよ。」
「ふ〜〜ん、まあさっさと依頼を聞いて終わらしちまおう。」
「そうっスね。」


コンコン、
「ジョートショプの者だが・・」
「カッセルさん、仕事を受けにきたっス。」
 そう言って扉を開ける。
「おお、すまんな。」
「うみゃ、ファバルちゃんにテディちゃんだあ。」
 扉を開けるとそこには一人の老人・・カッセルと、メロディがいた。
「・・・噂をすれば、だな。」
「そうっスね。」
「ふみぃ?」
「ま、そんな事より仕事の内容を聞きたいんだが。」
「うむ、仕事と言うのはさほど難しくは無い・・ゴミ拾いじゃ。」
「ゴミ拾いっスか?」
「最近この辺りにゴミを捨てる輩が増えてきての、その後始末を頼みたい」
「そうは言ってもここは広いんだが。」
「分かっておる。範囲はこの小屋から中心にやってくれれば良い。それと、時間は昼までだ。」
「昼までか・・・じゃあ早速始めるとするか。」
「ういっス。」
「うみゃあ、メロディもごみひろいするう。」
 そう言って、辺りを飛び回る。
「遊びじゃないんだぞメロディ。」
「ふみぃ。」
「気を付けるのだぞ。」
「ボク達に任せておくっス。」
「ゴミ拾いで何に気を付けろっていうのかね。」
「うみゃぁ。いってきま〜〜す。」
 カッセルの言葉に三者三様の答を返し仕事に取りかかる。


「・・邪気は感じられぬか。」
 カッセルはファバル達との話を交わした後小屋へと戻っていた。
 そしてそこで呟いた一言。どうやらゴミ拾いというのは名目で本当の目的はファバルに会う事だったらしい。
「アリサの所に行き倒れが住む事になったと聞いたが・・あ奴なら問題あるまい。」
 そう言うと小屋にある椅子へと腰を下ろす。
「さて、あ奴らが終わるまで、まだまだ時間が・・何者だ!?」
 独り言をふいにとぎらせ不自然に、だが注意しなければ気がつかない暗い影が出来た部屋の隅へと言葉を発した。
「くっくっく。俺様の気配を感じるとは、老いたとはいえさすがは英雄様だ。勘は鈍って無いらしいな。」
 カッセルの言葉を聞いて影から拘束衣のような服と眼帯をした一人の男が現れた。
「魔物の類ではなさそうじゃが。」
 その言葉を聞いて男は口元をにやりと歪める。
「ヒャーハッハッハ。その通りだ、俺様は魔物なんてチンケな物じゃあねえ。・・人間と言う保証もねえがなぁ。」
 笑いながらそう言い、そして一呼吸置いた後にそう呟いた。
「しかし、いったい何時の間にここへ入ってきたのだ?」
 カッセルが男に尋ねる。
「俺様に不可能なんて言葉はねえんだよ。」
 男はカッセルの問いにさも愉快そうに答えた。
「いったい何が目的だ?」
「目的ぃ〜〜?・・・別に目的なんてねえが、そうだな・・」
 男はしばし考え、そしてこう言った。
「老いた英雄様に会いにきたってのはどうだい?ヒャーハッハッハ。」
(こ奴、本当に何が目的だ?)
 カッセルは油断無く男を見据えていた。
 当然、先程の言葉が嘘だというのは分かっていた。自分に会いにきた所で相手にメリットが有るはずも無く相手の真意が読めずにいた。
 そんな事を考えているとカッセルの視界から男の姿が消えた。
「!?」
 カッセルが驚き、辺りを見回す。
「どこを見てやがる?ヒャッヒャッヒャ、英雄様といえど年には勝てんらしいなあ。」
 男は何時の間にかカッセルの後ろにいた。
「どうせなら全盛期の貴様と戦いたかったが・・・」
 男は一旦黙り、そして少しの沈黙の後、
「そうそう、てめえを殺しはしねえ、だが・・」
「だが?」
「だが、俺様の事に関する記憶は消させてもらうぜ。」
 その言葉にカッセルは驚愕した、記憶を操作できる者がいる事に。
「また、会おうぜ。英雄様よ。」
 そう言うと男の手が光り、カッセルの頭に近づく。しかし、その手がピタリと止まる。
「・・・いや今度会うときはハジメマシテ、だな。」
 その言葉の後、男の手が再び近づき、カッセルの頭に触れる。
 男の手が触れるとカッセルの目が見開かれ、そして少しした後男の手がカッセルの頭から離れる。男の手が離れるとカッセルは倒れこむように椅子に座った。
「ケッ、仕方ねえなあ、もう一人の英雄様に期待するとするか。」
 意識の無いカッセルを見て男はそう呟いた。
「クックック、せいぜい幸せに浸っておくんだな。」
 誰に言った言葉かは分からない、だが一つだけ分かる事がある。
 それは、決して好意ではない事だ。
 有るのは、悪意のみ。
 そして男は現れた時を逆にした様に闇に溶け込み姿を消した。


「なあ、さっき小屋から声が聞こえなかったか?」
 ファバルが手を休め、テディに尋ねる。
「ボクにはなにも聞こえなかったスよ。」
 テディも手を止め、(最もあまり役に立って居るとは言えないが)そう答えてくる。
「メロディには何か聞こえなかったか?」
「ふみぃ〜〜、メロディにはなにもきこえませんでしたよ?」
 メロディも手を止め、(メロディはゴミ拾いと言うよりもほぼ遊んでいたが)答える。
「・・・俺の聞き間違いか?」
 何か釈然としないままファバルはゴミ拾いへと戻った.


「ったくよお。あのじいさんは。」
 ファバルは少し不機嫌だった。
「ファバルさん少し落ち着くっス。」
「そうなのぉ、おちつくのぉ。」
「そうは言ってもなあ。」
 ファバルは少し不機嫌だった。なぜかと言うとごみ拾いをし終わって小屋に戻ってみるとカッセルが寝ていたからだ。眠っていたのはカッセルの責任ではないのだがそんな事などファバルは知らないのでカッセルに対して怒っていた。
「報酬は貰えたからいいじゃないっスか。」
「・・・・そうだな。まあ、いいか。」
「それより、これから何処に行くんスか?」
「何処に行くって言っても選択肢は三つしかないだろう。」
 ファバルがテディの問いに即答する。
「もう昼時だからな、一つはラ・ルナに行く、一つはさくら亭に行く、もう一つはジョートショップへ戻る。さあ、どれにする?」
 そう言ってファバルは指折りしてテディとメロディに尋ねる。
「ボクはご主人様のところに戻りたいっス。」
「うみゃあ、メロディもアリサちゃんのところがいい。」
「う〜〜〜ん、やっぱそれが妥当か。」
 テディとメロディの意見を聞きファバルもそれに賛成する。
「さてと、メシを食いに戻るとす「「メシ!!」」・・おまえら、急に出てくるなよ。」
「オヤビン、ウチらを忘れんといてほしいっス。」
「自分たちも腹が減ったでありまス。」
 ファバルが出発しようと声をかけている途中にコクバとアメリが現れた。
「まったく。・・・そうだ出て来たついでだ、コクバ、寄る所があるからついて来い。」
「えええ!・・自分はお腹がすいたでありまスのに。」
 不満げな声をあげてはいるがしぶしぶファバルに従うコクバ。
「そう言うな、それにすぐ戻れる。それとアメリはテディ達と一緒に帰っていろ。」
「了解やっス。」
 コクバとは反対に嬉々として声を出すアメリ。
「それじゃあ、ボク達は先に行ってるスよ。」
「うみゃあ、メロディおなかすいたのぉ。」
「ウチ、もう空き空きやっス。」
「じゃあな、俺もすぐ戻る。」
 三人(一人と二匹?)と別れてファバルとコクバは目的地へと歩き出した。
「・・・ボス、『あそこ』に行くのならこの道では遠回りになるでありまスが?」
「ああ、少し雑貨店によって行こうと思ってね。」
 その言葉に納得するコクバ。
「しかし、『あそこ』も頑固でありまスね。」
「まあ普通はそうだろうな、だが今日こそは大丈夫だろう。」
「そうでありまスね。」


「ほんと、頑固なやつらだったな。しかし、なんとかこぎつけられたな。」
「だけど、たったあれだけとは・・・ケチな連中でありまスね。」
 あからさまに不満そうな声で話すコクバ。
「まあ、あれだけでも無いよりはましだから良しとしよう。」
「それよりも、ボス、そろそろ戻ろうでありまス。」
「そうだな、腹も減ったことだし、帰るとするか。」
 話している本人達にしか理解できないような事を話しながらファバルとコクバはジョートショップへの道を歩いていた。
「ん?・・誰かこっちに走ってくるがあれは・・・」
「あ、本当でありまスね。」
「あれは、メロディに・・・トリーシャ?」
「メロディさんはわかりまスが、なんでトリーシャさんまで来るんでありまスかね?」
「さあな、俺にもわからん。」
しかし、ファバルはどこか感じていた。何かよくない事が起こるのではないかと・・・

そしてそれは的中してしまう。

エンフィールドでの運命の歯車が回り出した瞬間だった。

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