中央改札 悠久鉄道 交響曲 感想 交響曲

「ローズレイクでスケッチを」 埴輪  (MAIL)
「あれ、アインは?」
「アインくんなら、出かけたけど・・・。」
「そうですか・・・。」
 久しぶりに、ナンパにでも誘おうと思ったアレフだが、いないものは仕方がない。とりあえずクリスでも巻き込むかと考える。
「しかし、珍しいなぁ、アインが一人で出かけるなんて。」
「そう言えば、スケッチブックを持っていってたッスよ。」
「スケッチブック?」
 アインには隠し技が多い。絵もその一つでコミカルなイラストから壮麗な絵まで結構幅広く描き上げる。
「まぁ、そう言うことなら邪魔しないことにするか。」


「これでよし。しかし相変わらず生傷のたえんやつだな。」
「それが仕事だ。放っといてくれ。」
「確かに俺がとやかく言うことではないがな。」
 アルベルトが、トーヤから手当てを受けている。最近はよく見習としてディアーナ以外にもヤスミンやマリアの姿を見ることがあるが、誰が出てくるかでその後の展開が変わってくる。今日は幸いにもヤスミンであった。
「ここも一気に女が増えたな。」
「だがな、この街では女の多い場所=危険という図式が成り立っているような気がせんでもないぞ。」
 アルベルトの言葉に、トーヤが答える。
「じゃあ、一番危険なのはアインの周りだな。」
「安全だったためしがあるか?」
「確かに、騒ぎには事欠かねぇけど・・・。」
 思わず考え込むアルベルト。逆に言えば、彼がそう言う意味での危険をすべて背負っているため、安全といえば安全なのだが・・・。


「あら、アインくん。」
「アインちゃん、こんにちは〜。」
「ああ、由羅、メロディ。こんにちは。」
 ローズレイクを散歩中だった二人は、ほとりで何かをしているアインに遭遇する。
「それはそうと・・・・、アインくん、なにやってるの?」
「簡単に言うと、スケッチやってる間にたかられて身動きが取れなくなった。」
 そう、由羅が質問を飛ばすのも無理はない。彼の周りには動物が大量に集まっていたからだ。内訳としては、頭上と膝に猫が計2匹、背中に中型犬が張りついていて肩から首にかけてはいたちのようなのが巻き付いている。
「追い払ったらいいじゃないの。」
「そう言われてもねぇ・・・。こら、あんまり人の体のうえでじゃれないの。」
 じゃれ始めた猫2匹をあやしながら、また鉛筆を動かす。妙などん臭さを感じさせる光景である。
「ふにゅ〜、たのしそうですぅ〜。メロディもまぜてまぜて〜。」
 そう言って、メロディまでまとわりつき始める。
「こらこら。犬が潰れてるぞ・・・。」
 アインとメロディにはさまれて、きゅ〜んと犬が鳴く。少し緩んだ隙に抜け出して、今度は別口でアインにじゃれ付く。
「まったく、メロディったらいつまでたってもお子様なんだから。」
 由羅がその光景を見て、あきれたようにつぶやく。最も、メロディ以外の人物では、成り立たない光景ではある。
「メロディ・・・。そこに引っ付かれると鉛筆が動かせないんだけど・・・。」
 などとほのぼのした空間を演出しつづけるアイン。由羅も半ばあきれながら、それでもほほえましく思いながらその光景を見つづける。そのとき、
「!!」
 突如、アインの姿が掻き消える。そして、アインがいた場所に一本の矢が刺さる。
「まったく、人が平和に絵を描いてるんだから、協力してくれてもいいだろう。」
 由羅の後ろから、メロディを横抱きに抱えた状態のアインが言う。最も、首にフェレットが巻き付いていて、背中に犬がぶら下がり、頭に猫が載った状態では、まったく格好がつかないのだが・・・。
「ふん、知るかい!」
 木陰から、複数の男たちが出てくる。知らぬ顔ばかりだが、雰囲気で堅気でないことだけはわかる。
「さて、折角の獲物が2匹もいる。今日は機嫌がいい。とっとと立ち去るなら、お前は見逃してやるが?」
「獲物?猫を狩るなんて悪趣味な・・・。」
 そう言いながらメロディを地面に下ろし、頭の上の猫を彼女に預ける。フェレットと犬は、由羅がどけてくれる。
「さてと、由羅、メロディ。自警団にいってくれないかな?」
「わかったわ。」
「ふにゅ〜、アインちゃんひとりでだいじょうぶですか?」
「大丈夫、死にはしないよ。」
 そう小声でやり取りをやっていると、男どもがどすの利いた声で言う。
「ケ、名にごちゃごちゃやってんだ!とっととそいつらをよこせ!!」
 三流だな、と内心でアインは考えながら連中に近付くアイン。
「いくらなんでも、友達を裏切る気はないんでね。アイン・クリシードの名において命ずる。具現せよ、転移の回廊。」
 一瞬にしてその場から消える由羅とメロディ。
「テメェ!獲物をどこに逃がしやがった!?」
「誰が、獲物だって?」
「あの人のふりした獣どもに決まってるだろう?」
「由羅とメロディのことか?」
 アインの声に、冷たさが混じる。だが、そんなことにも気がつかない男たちは、更に言葉を続ける。
「由羅?メロディ?ペット以下の分際で、名前なんて持ってるのか、生意気な。あいつらは俺達人間様のおもちゃで十分だ。」
「なるほど、それで狩の対象か。」
 そういったアインは、次の瞬間男の一人の目の前まで移動する。
「ならば、僕はお前達を狩らせてもらうことにしよう。」
 そう言って、相手の頭を無造作にわしづかみにする。
「なにしやがんだ!!」
「はなしやがれ!!」
 そういって、ライシアンハンターたちが斬りかかってくる。アインはつかんだ一人目を無造作に剣を振るうがごとく左右に振る。なぎ払われ、吹き飛ばされるハンターBとC。辛うじて首の骨は折れなかった物の、衝撃と仲間の剣の刃で重傷を追うA。
「さて、さっきの言葉を取り消してもらおうか?」
 何事もなかったのごとくたずねるアイン。びびりながらも去勢を張るリーダー格。
「ケ、人間として、そんな真似が出来るか!!」
 そういって、無謀にも斬りかかるリーダー。アインは、無造作にそれをつかむ。
「そうか。なら仕方ないな。」
 そういって、つかんだ剣を握りつぶし、残ったほうの手で相手の肩をつかむ。
「ぎゃー!!!!!!!!!」
 めきめき音を立ててショルダーガードとともに、相手の肩関節が砕け散る。
「さて、どうした物か・・・。」
 普段とそう変わらぬ口調で男たちを見まわすアイン。恐怖の視線を返す男たち。
「うーん、あまり美味しそうじゃないから、食べるのはやめとくとして・・・。」
 じっくり、材料を見定める目になって観察するアイン。
「アクセサリになりそうなパーツがないな。目が腐りきってるし・・・。」
「なに物騒なこといってるんだ・・・。」
 アインの言葉に、あきれたように突込みをいれるアルベルト。
「ほんと、お前さん敵にはまったく容赦しないな・・・。」
「結果だけ見れば、今までで一番ましだったと思うけど?」
「確かに、まだ再起が出来るんだから、よしとしないとな。しかし、アイン・クリシードの神経を逆なでするような馬鹿者が、この近辺にまだ存在したとは・・・。」
 なにやら、感心したように言う十六夜。その言葉を聞いて、恐怖に引きつるハンターたち。
「でも、思ったより早かったね、二人とも。」
「まぁな。お前さんに人殺しをさせるなんて、そんな後味の悪い真似はいやだからな。」
 苦笑する十六夜。海にいって以来、アインが誰かを傷つけることに、妙に過敏に反応する。
「さて、こいつらをとっとと牢に放りこんで、飯にしようぜ。」
「結局、スケッチが出来なかったな・・・。」
 残念そうにアインがつぶやき、この日の出来事は終ったのであった。

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