中央改札 悠久鉄道 交響曲 感想 交響曲

「天才医師の1日」 埴輪  (MAIL)
「ふう、もう朝か・・・。」
 少々憂鬱そうにつぶやく医者。自分の仕事は嫌いではないし、誇りも持っているが、それでも最近の状況を考えると、あまり朝が来るのはありがたくない。
「先生、おはようございます!!」
「おはよう、ディアーナ。」
 そういいながら、開業準備をはじめる。道具の煮沸消毒、薬棚のチェックおよび整理・・・。
「きゃあ!!」
 どんがらがったがっしゃ〜ん。いつものように悲鳴と派手な音が聞える。こめかみを押さえながら状況の確認をする。
「ディアーナ、いつも思うんだが・・・。」
「すみませ〜ん・・・。」
「どうしたら何もないところで転べるんだ?」
 幸い、今日は物は壊れていない。待合室がちょっと散らかっただけだ。
「ここは俺がやっておく。お前は外の掃除をしてくれ。」
「はい・・・・。」
 アインという実験台のおかげで最近、ずいぶん有能にはなってきたが、こう言うところは相変わらずである。


「おはよう、トーヤ。」
「ああ、おはよう。」
「はい、頼まれてた薬草。それと荷物の奥にあった医学書。ディアーナ達の教材にでもしてくれ。」
 アインが差し出した本は、トーヤも知らないものであるが、アインの口ぶりからいって、彼の技術向上にはつながらないようではある。
「すまんな。」
「いつも世話になってるからね。」
「せめてディアーナがお前程度に治療が出来ればいいんだがな・・・。」
「まぁ、焦ってもしょうがない。少なくとも治療中に血を見て気絶しなくなったんだから。」
 そう言って、追加の注文を聞いて出て行くアイン。何を考えているのかわからない部分はともかく、能力、人物共に申し分ない。ああ言う人材を自由に使えるアリサを、少し羨ましく思ってしまう。


「おっはよ〜、ドクター☆」
「おはようございます、ドクタークラウド。」
「ああ、おはよう。」
 通い組の「生徒」二人が到着し、とりあえずメンバーがそろう。
「さて、とりあえず講義をはじめるか。」
 既に入院患者の往診は済ましている。ディアーナがどじを踏まなければ講義の時間ぐらいはなんとか作る事が出来る。
「ねぇドクター。一体いつになったら実地をやらせてくれるの?」
「とりあえず、人体構造の基礎を理解してからだ。これを知っておかないとどんな事故につながるかわからん。」
「え〜!まだ基礎をやるの!?」
 いろんな人物の影響から、一時期に比べればずいぶん物分りがよくなったマリアだが、すぐに応用に行きたがる部分は変わらない。
「まだ、基礎部分の半分も終っていない。お前に必要のない部分は教えていないから、もう少し付き合ってくれ。」
 というトーヤの説得で、しぶしぶ講義を聞くマリア。なんだかんだいって、トーヤもずいぶん変わってきている。


「え〜っと、たしかこうやって、こうして・・・。」
 ちゅど〜ん。
 最近のクラウド医院の名物、大爆発である。というより、マリアが常駐している場所では、よく見られる光景である。
「マリア・・・。せめて呪文ぐらいはきっちり習得してくれ・・・。」
 ジョートショップでの経験で、コントロール能力全般は上昇したが、使う魔法の習得がきっちりしていなければ関係ない。実験台にされた十六夜は、いい迷惑である。
「ドクター、なぜマリアを野放しにする・・・。」
「すまんな。さすがになだめきれなかった・・・。」
 こう言うときのために、アインが結界で建物を強化してくれているためほとんど被害は出ていないが、十六夜の怪我は、確実に1ランク上がっている。かすり傷から軽傷に・・・。
「マリア、ここは俺がやっておくから、お前は外で練習してこい・・・。」
「は〜い。」
 しゅんとして出て行くマリア。十六夜の怪我は、爆発に巻き込まれた割には軽傷だ。プロテクションでもしたのだろう。


「えーっと、これがこうでここにこの薬を塗って・・・。」
 ヤスミンが、軽傷患者の処置をしている。まだまだ危なっかしい手つきだが、来た当初のディアーナや今のマリアよりはずっとましである。
「この怪我にはこっちの薬だったかしら・・・?」
 半ばパニクりながら治療をしようとするヤスミン。彼女の場合、進歩は早いのだが、経験値がそれに追いついていない。
「きゃあ!!」
 消毒液と薬ビンを地面に落としてしまう。幸い、患者にも本人にも被害はない。
「すみませんすみません!!」
「ヤスミン、後始末はやっておくから、お前は治療を続けろ。」
「はい・・・。」
 気まずい雰囲気のまま、治療は続けられたのであった。


「ドクター。」
「どうした?」
「アインのやつを一応診てやってくれ。」
「大丈夫だって。単に肩をはずしただけじゃないか・・・。」
 どうやら、またアインが馬鹿なことをやらかしたらしい。まぁ、こいつも仕事柄、よく細かい怪我はするほうなのだが・・・。
「で、一体何をやったんだ?」
「縄抜けのために、肩をはずしたんだ。この程度のことで壊れるほど、やわな体じゃないんだけど・・・。」
「あのな・・・。」
 無駄と知りつつ、一応診察するトーヤ。当然のごとく無駄である。
「で、一体どう言う状況で肩をはずしたんだ?」
「囮捜査。」
 大体状況はわかった。
「十六夜、次から使う人間を考えたほうがいいぞ。」
「こいつに頼むのが一番手っ取り早かったんだ。」


「さて、そろそろ閉めるか。」
「お疲れ様でした!」
 さすがに、外はもう月が天頂にある。そろそろしまっても問題はない。後片付けをしていると、当然のごとく騒音が鳴り響く。
「まったく、どうすれば1日に2回も3回もどじを踏めるんだ?」
 あきれつつ、後片付けに向かう。一人のときを恋しく思いながら、いつのまにか増えた弟子を放り出すわけにもいあかずに、ジレンマに陥る。
「先生、ごめんなさい・・・。」
「さっさと後片付けをしろ。でないといつまでたってもしまえないぞ。」
 そう言って、黙々と片づけをする。ディアーナも、気まずく思いながらせっせと掃除に励む。


 どんどんどん。
「どうしたんだ、こんな真夜中に・・・。」
「うちの息子が!!」
 急患である。さっさと診察室に連れて行き、てきぱきと診察をする。
「肺炎だな。とりあえず、しばらく入院だ。大丈夫、今のところ命に別状はない。」
 そう言って、薬を注射する。その間、ディアーナは病室と点滴の準備をする。
「10日ほど入院が必要だ。」
 患者の母親にそう告げる。頭を下げながら出て行く母親。こうして、クラウド医院の1日は終るのであった。

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