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「マリーネの大冒険 前編」 埴輪  (MAIL)
「あ、マリーネ!!」
「帰ってきたんだ!!」
 登校して来たマリーネを見て、駆け寄ってくる2人の少女。ミュリエルとセリスと言う名で、マリーネの親友である。編入初日に、マリーネに助けてもらったことが縁で、友達づきあいが始まったのだ。
「うん、ただいま。これ、御土産。」
 そう言って、例の鞄から取り出したペンダントを2人に差し出す。
「これ、なに?」
「月光石、だって。」
 セラフィールドの特産品である。セラフィールドでしか手に入らない代物で、それなりに値が張る。当然、マリーネの小遣いで買える代物ではないのだが、月夜が御土産にと用意してくれたのだ。
「綺麗・・・。」
「いいの、これ?」
「うん。私には、これがあるから。」
 そう言って、アメジストのペンダントを見せる。アインが細工した物である。
「いいなぁ。」
「アインさんからのプレゼントなんでしょ?」
「うん。編入祝いにって、くれたの。」
 心底羨ましそうな2人。少し苦笑するマリーネ。
「本気で羨ましいなぁ。アインさんと一緒に住んでるなんて。」
「でも、優しいけど変な人よ?」
「だけど、カッコイイじゃない。」
「でも、変な人よ?」
 散々な言われようである。
「そろそろ、話題を変えたらどうだ?」
「だって、変な人なんだもの。」
 声をかけてきた級友に対して、あっさり返事をするマリーネ。最も、他の二人は多少決まり悪げだが。
「カリオン、何の用よ。」
 少しとげのある口調でミュリエルが聞く。酷い目に会わされたのだから、無理もない。
「だから、悪かったって。最も、すぐに信用してもらえるとは思ってないけどな。」
 そう、かつてのいじめっ子は、もっと強い相手に懲らしめられて、すっかり服従してしまったのである。
「まぁ、いいわ。で、カリオンはどう思う?」
「アインさんのことか? 確かに、カッコイイとは思うよ。」
「でも、変な人よ。トリーシャさんとかマリアさんとかクリスさんとかに聞いてみたらいいと思う。多分、同じ答えが返ってくるわ。」
 ジョートショップや第3部隊の関係者の名前を挙げる。
「それに、すっごく綺麗。前まで、一番綺麗なのはアレフさんかと思ってたけど・・・。」
 プラチナブロンドの髪をいじりながら、セリスがつぶやく。
「外見には性格は余り出てこないから。」
 実際に付き合ってみないと、あの性格の特異性は分からないのだ。
「マリーネ、アインさんのこと、嫌い?」
「ううん。大好きよ。それに、とっても感謝してるわ。」
「じゃあ・・。」
「でも、変な性格なの。」
 困惑する3人。どうも、変な性格にこだわりでもあるようだ。
「みんな、授業が始まるぞ!!」
 入ってきた教師の声で、慌てて席につく子供たち。当然、マリーネは既に着席している。


 昼休み。いつものごとく中庭でみんなで昼食。最も、ここ一月ほどは、マリーネが出張中だったために一人かけていたのだが。
「あ、これ美味しそう。分けて分けて。」
「うん。じゃあ、このツナサラダと交換ね。」
 お弁当のときにはよく見られる光景だ。最も、男1に女3というのはあまりない構図だが。
「で、どう言うところが変な性格なの?」
「けんかを吹っかけてきた相手としりとりするところとか、異常にマイペースなところとか。」
「異常にマイペースなのは、マリーネも同じだと思うけど・・・。」
 ミュリエルに突っ込まれて少し考えこむマリーネ。
「私、そんなにマイペース?」
「うん。」
「アインさんが、うつったのかしら・・・。」
「そこ、真剣に悩まない。」
 いまいちマリーネはとろくさい。思わずそう考えてしまうミュリエル。口調も行動も、何処かおっとりしているような印象が強い。本人の自覚はともかく、マリーネは相当アインの影響を受けているのは間違いない。
「そう言えば、やっぱりアインさんの本命って、シーラさんなのかしら。」
「裏をかいてリサさんだったりして。」
「マリーネはどう思う?」
「いないんじゃないかな・・・。」
 ある意味、現在の境遇が近いため、そう言う点はアインの気持ちがよくわかる。
「どうしてそう思うんだ?」
「私と、同じだから。」
 クエスチョンマークが浮かぶ3人。10歳の普通の子供に、そこまでの理解力を求めるのは酷だろう。最も、感受性の問題で、あまり触れてはいけないと感じはしたようだが。
「でも、だったら贅沢な話だよなぁ。」
「え?」
「あんなにいっぱい好きって言ってくれる人がいるのに、誰にもなびかないなんてさ。」
 それは考えもしなかった。しかも、マリーネの目から見て、みんな個性的で魅力的な美人だ。確かに贅沢な話である。
「そうかもしれない・・・。」
「マリーネ、そう言う事は考えなかったでしょう。」
「うん。」
 うなずくマリーネ。最も、マリーネはアインに恋をしようとは思わないし、そう言う気持ちにもならない。アリサや十六夜なんかに対してと同じ意味での「好き」だ。
「アインさん、何処まで分かってるんだろう?」
「少なくとも、8人分しか分かってないと思う。私には、それ以上の事はわかんない。」


 放課後、ジョートショップでマリーネ達は御喋りに興じていた。
「で、アインさんは?」
 一番気になるところを聞くトリーシャ。シェリルやマリアも同じような顔である。惚れた男が帰ってきていないのだ。気にもなるだろう。
「シーラさんの護衛。私は、十六夜さんたちにくっついて帰ってきたの。」
「護衛? シーラに?」
 怪訝な顔をして聞き返すマリア。それもそのはずだ。絶空来迎剣の分、どうしても十六夜には負けるが、逆にいうとそのレベルでないとシーラには勝てないのである。
「シーラさんは『か弱い乙女』だから。」
「まぁ、そうだけどね。」
 苦笑するトリーシャ。踵落しが得意だろうがどうだろうが、か弱い乙女はか弱い乙女だ。
「おい、マリーネ。」
「あ、十六夜さん。」
「不審な人影とか、見なかったか?」
「どうかしたの?」
「ああ。セリスが、行方不明になった。」


 聞くところによると、それ以外にも十人前後の子供が行方不明になっているらしい。十六夜達が帰る前からのことだ。
「でも、セリスは今日、学校に来てたわ。単なる寄り道じゃないの?」
「いや、学校から帰ってきて、出ていった様子もないのに居なくなったそうだ。」
「そう、ちょっと調べてみるわ。」
 そう言って、アメジストのペンダントを目の高さに持ち上げるマリーネ。瞳に怪しい光がともる。
「・・・間違いないわ。さらわれてる。」
「え!?」
「どう言うことだ!?」
 そのとき、突如空間が捻じ曲がる。
「今日こそは戻ってきてもらうぞ、M26!!」
 アインに撃退されたはずの男が現れる。どうやら、あの光の玉から逃げ延びたらしい。
「貴様!!」
 攻撃をしようとした十六夜だが、男の能力のほうが先に発動する。
「きゃあああああああああああああああ!!」
 そばにいたため、巻き込まれて一緒に連れ去られるマリア達。
「くそ!!」
 とっさに月光石を投げ込む十六夜。なにかを悟ったらしく、それを受け取るマリーネ。そして、彼女達の意識はそこで途切れた。

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