中央改札 悠久鉄道 交響曲 感想 交響曲

「青年の初仕事 その1」 埴輪  (MAIL)
 謎の青年が運び込まれてから3日、それなりに平穏な日々が続いていた。
「で、アリサさん、僕を助けてくれた人たちって、どこにいけば会えるかな?」
「そうね、みんなの住所を教えてあげるわ。ついでだから、これをお願いできるかしら?」
「これは?」
「私からみんなへのお礼。」
「わかった。ちゃんと渡すよ。」
「それじゃあ・・・。」


 とりあえず、近場のさくら亭から回ることにする。
「こんにちは〜。」
「いらっしゃい!ってあんた!?」
 入ってきた客を見て、思わず驚きの声を上げてしまうパティ。紛れも無く、3日前に自分たちが助けた重傷の青年である。
「えっと、ここに僕を助けてくれた人がいるって聞いたんだけど・・・。」
 そういって、店の中を見る。店の中には傭兵ふうの女性、猫のような耳を持つ少女、長い黒髪のお嬢様ふうの少女、銀髪で背の高いハンサムな青年、小柄でだぶだぶの服を着た少年、アクセサリをいっぱいつけたエルフ、金髪で非常に幼く見える女の子、そして店の従業員らしい少女、の8人がいた。全員親しそうだが、みごとに関係がつかめない組み合わせである。
「奇遇だね、このちび以外の全員がそうさ。」
 エルフがそういって、金髪の女の子を指差す。
「誰がちびですって!?」
「お前以外に誰がいる?」
 その台詞に、思わず反射的にだぶだぶの服の少年を見る青年。50歩100歩とはいえ、確かに彼のほうがやや背が低い。
「悪かったな。それじゃあこのお子様以外って言いなおそうか?」
「マリア子供じゃないもん!!」
 みごとに子供である。
「つまり、このマリアって子以外全員なんだね。」
 それを聞いて、驚く女の子。
「え〜!?なんでマリアの名前、知ってるの!?」
「今自分で言ったじゃないか。マリア子供じゃないもんって。」
 その様子を見て、思わず苦笑するエルフ。
「ま、とりあえず自己紹介しようじゃないか。それに、いつまでもお客さんたたせておくわけにもいかないだろう?ちなみに、あたしはリサ・メッカーノ、ここに宿泊してる、みての通りの傭兵だ。」
 リサと名乗った傭兵ふうの女性の一言で、とりあえず話が進む。


「本当は、僕から自己紹介するつもりだったんだけどね。」
 苦笑しながら、青年。結局、話の流れから最後に自己紹介をする羽目になったようだ。
「僕はアイン。知っての通り、3日ほど前にこの街で行き倒れていた流れ者。家族構成、出身地、その他もろもろは不明。」
「へ?」
 怪訝な顔をするアレフ。さらっと答えるアイン。
「だって、僕記憶喪失だもん。」
「あっさり言うことか?」
「無いって言っても4年前より昔の物だけだからね。大体、生活に困ってないもん。」
 そう言う問題なのだろうか、と思わず唖然とする一同。まじまじと青年を観察してしまう。顔はかなりの線を行く美形といっていいだろう。ただし、ハンサムというにはやや中性的過ぎるし、また優しげに過ぎる。さすがに女と間違えられる事は無いだろうが・・・。
「外見と中身がかけ離れてるな。」
 話せば話すほど、訳のわからない人物である。悪人でないことだけは確かなのだが、どうも若さとか覇気とかいった物にかけているような気がする。
「それはそうと、まずアリサさんからの預かり物。」
 そう言って、包みを開く。中には特性のお菓子が入っていた。お茶うけにちょうどいい。
「それと、しばらくはアリサさんのところで働くことになったから。で、お礼といっては何だけど、何か一つずつ、仕事を引き受けようと思うんだけど。」
「仕事?」
「うん。棚の修理から犬の散歩まで、何でもいいよ。あ、でも魔法関係はやめてね。僕は魔法が使えないから。」
「魔法が使えない?魔力が無いのか?」
「いや、単に技術が無いだけ。覚える機会が無かったからね。」
「な〜んだ、魔法が使えないんだ・・・。」
「使えなくて困ったことが無いから。」
 マリアの言葉に、苦笑しながら答えるアイン。
「じゃあ、お部屋の模様替えのお手伝い、お願いしていいかしら。」
 シーラがおずおずと質問する。
「出来ない仕事じゃないから、かまわないよ。」
「ちょっと、シーラ。さすがに病み上がりの人間に頼む仕事じゃないわよ。」
 苦笑しながらたしなめるパティ。それを聞いて、倉庫整理の手伝いを頼もうとしていたエルが言葉に詰まる。
「大丈夫だよ。どっち道今からすぐにって訳には行かないし。」
 そう言って、何事も無く日程を詰めに入るアイン。結局、エルやパティも便乗で倉庫整理などを押し付け、もとい頼むことにしたのであった。

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