中央改札 悠久鉄道 交響曲 感想 交響曲

「<夏祭なハナシ> 〜そのイチ〜」 hiro
 

 七月某日。
 納涼祭とかいう名目のイベントがある。
 開催場は陽の当たる丘公園。
 七つの鐘が鳴る頃がもっとも人の数が飽和状態になる時間帯であろう。夏であるからし
て、その時間でもまだ宵闇と言った風景。それでも人工の光りがなければバランス感覚が
あやうくなる程度の明るさではある。
 入り口から軒を連ねるように並ぶ夜店の数々。おもに食べ物が主だが、射的や輪投げ、
金魚すくいなどという祭りにはかかせないものも無論あった。
「うにゃははは。おねえちゃん、まるにゃんちゃん。こっち、こっち」
 まわりの享楽な雰囲気に溶け込んでか、ネコ絵柄の浴衣のメロディ・シンクレアがうか
れていた。そのかしまし娘その一に引っ張りまわされているのは、青葉結城ことゆーきで
だった。黒のシャツにショートパンツという、動きやすい服装を好む彼らしいスタイルだ。
 困ったような、それでいてちょっぴり嬉しいような、そんな表情のゆーきは、
「ちょっとちょっと、メロディさん。どこまでいくんですか」
 そう問われて、メロディは急制動をかけた。当然、いきなりのそれにゆーきが反応でき
るはずもなく、メロディの背中に鼻っ柱をしたたかに打ちつけた。
「うにぃ。そういえばそうですねぇ」
 首をかしげながら、そんな言葉を放ったメロディは、まわりを四顧(しこ)としていた
が――
「あ〜! あれ、あれがやってみたい!」
 目を輝かせ、メロディはその屋台に指差すやいなや、そこに駆け込む。ジンジンと痛む
鼻を押さえながら、ゆーきは、しゃがみこんだメロディの肩越しからそれを覗き込む。
「ヨーヨー釣りじゃないの」
 背後からの声に驚いて見上げれば、橘由羅が自分の頭越しに見下ろしていた。で、視線
を戻せば、いつの間にやらちゃっかりと、メロディの横にまるにゃんの姿が。瞬間的にこ
ころの隅あたりにジェラシーの念が浮かんだが、ムリヤリ沈めた。
 由羅は瑠璃色の浴衣。まるにゃんはゆーきと類似したカッコ。
「あ、そんなことしたらダメだよ」
 まるにゃんが、メロディの行為に待ったをかけた。
「どうして〜?」
 あどけなくメロディが聞いてくる。その拍子に、さらさらの桃色の髪の香気がまるにゃ
んの鼻孔をくすぐった。
「だって、割れちゃうじゃない、ツメでひっかいたりしたら」
「え〜? ちがうのぉ?」
 遊び方を知らないらしいメロディに教えるべく、まるにゃんは店のおじさんから水風船
を吊るための道具をもらった。ちなみに、一回二ゴールドである。
 水をたたえた囲いの中には、無数の水風船がぷかぷかと遊泳している。その結び目に巻
き付いているゴム、それにフックを引っかけて吊るのだ。
「お師匠様、頑張ってくださいね」
 まるで自分のことにように、やけに熱のこもったゆーきの声援。
「任せといて。――で、メロディちゃん、どれがほしいの?」
「う〜んとね……アレ! あのピンクのシマシマのやつがいい」
「あれならメロディにピッタリね。がんばってとってやりなさいよ、まるにゃんくん」
 ハッパをかけてくる由羅にうなずいたまるにゃんは、こよりにつないだだけの頼りない
フックをそこまで移動させる。
「……とっ」
 慎重に下ろし、紙が水に触れないようにフックの先だけを使い、なんとかして取り易い
位置にもっていこうとする。あまり時をかければ、集中力の限界で手元が狂うかもしれな
い。迅速かつ正確におこなう必要がある。……って言っても、そんなに難度は高くない。
邪魔さえ入らなければ、まるにゃんにはカンタンなことである。
 ……で。入った。
「あ☆ まるにゃんたちじゃない。あんたたちも祭りに来てたの?――なになに? 水風
船?」
 無遠慮に話しかけてきた少女、マリア・ショートは、まるにゃんの固まった横顔を見て
首をかしげた。すその長い山吹色の浴衣が似合っている。
「どうしたの? ゆーきまで」
 同じく凝固していたゆーきを上目づかいで見たあと、目で由羅に問いかけた。
「いまね、いいところだったのよ。もうちょっとで取れてたんだけどねぇ……それをマリ
アちゃんが」
「……あはは。そ、そんなの、もう一回やればいいだけじゃない。おじさん、マリアにも
一本ちょうだい」
 実に頼もしい言葉を吐いたマリアは、腕まくりをして水風船に向かい合った。
 が。あっさり返り討ち。
「あれ?……おっかしいなぁ。おじさん、もう一本」
 パシャ。
「……もう一本!」
 パシャ。
「……もう一本!」
 パシャ。
「……もう一本!」
 パシャ。
「……もう一本!」
 バシャン!
 ……………………
「もうマリアやだ! あきた! なんでとれないの!?」
 叫びたくなる気持ちは分かるが、だからといってオノレの不器用さを店のおじさんにあ
たる道理はない。鼻白むおじさんに、別口から声がかかった。
「俺にも一本くれないか?」
 長身の人影、ケイ・ラギリオンだった。藍色の浴衣を着込んでいる。マリアの横手に腰
を下ろし、そ知らぬふりをしながら、マリアがしつこく取ろうとしていた水風船をいとも
あっさり吊ってみせた。
「やるよ。ほら」
 マリアにそれを渡すとき、はじめてこちらに顔をやった。素顔だが、どこか照れを隠し
たそんな容貌である。
「……あ、ありがとう、ケイ……」
 はにかんだように、マリアが素直に礼を言った。
「いいないいな。ケイちゃん! メロディにもとってとって!」
「ああ。いいよ。――どれだ」
 数分後。
 目的の物をゲットして喜ぶメロディの声で、やっとのことまるにゃんとゆーきが現世に
返ってきた。
「はっ!?……あ、あれ? メロディちゃん……? ケイちゃん?」
「ナニがどうなったんでしょうね……お師匠様」
 事態が呑み込めず、まるにゃんとゆーきはしきりに首をひねっていた。


「ロディ様、あれはなんですか?」
 クレア・コーレインが、屋台のひとつを指差してかたわらの青年、ロディ・クラウディ
ウスに質問した。かすかな風に揺れて、軒先に吊るされた風鈴が音を立てる。
「ん? あれか。あれは風鈴だよ。クレアは知らないの?」
「当たり前だ。クレアは温室育ちなんだ。そんな田舎の風物詩みたいな物、知ってるわけ
がない」
 不機嫌そうに、クレアの兄であるアルベルト・コーレインが答えた。
 そのロディに対する当て付けとしか思えないセリフにクレアは、ぎゅっと唇を引き締め、
「お兄様。いいかげんにしてくださいませんか? 先ほどからわたくしたちのあとをつけ
まわしてはそのような児童のセリフ……! ガマンにも限度というものがありますわ」
 それほど大声量でもないが、迫力は充分あった。特に兄には絶対な効果だ。
 ショックをうけたらしいアルベルトは、うろたえ、
「そんな……! クレア……お、オレは……ただおまえを心配して……」
「心配? どこに危険があるんですの?」
「そ、それは……」
 言葉に詰まったアルベルトを、クレアは『そらみなさい』とでも言うような顔で、
「とにかく! お兄様はもう付いてこないでください。――さ、まいりましょう、ロディ
様」
「え? あ、うん」
 アルベルトに憐れみの視線を送りながらも、ロディは内心ほっとしていた。うるさくて
かなわなかったのは事実だからだ。それに、お邪魔ムシでもあったし。
 でも、一応言ってはおく。
「あれで良かったのかな……アルベルト、本気でキミのことを心配してたんだと思うし」
「いいんです。あれくらい言ってやらないと、始終ついてきてしまいますわ」
「そりゃ、そうだろうけど」
「……イヤなのですか? ロディ様」
「な、何が?」
「わたくしと二人っきりでいるのが……そうなのですね……」
 勝手に決め付け顔を覆い泣き出すクレア。ロディはどこからか射るような視線に背筋の
凍るような悪寒を感じつつ、あわてて弁明した。
「そんなわけないじゃないか。嬉しいに決まってる。――おれは、クレアといるときが一
番安心できるんだ……だから……」
「…………」
「……だ、だから」
 思わず握り拳を作って熱弁していたロディを、これまたクレアが熱望したような眼差し
を向けていた。
「キサマぁ……! ナニをこんにゃくみたいなクソ柔らかいナンパなコトを抜かしとるん
だ!」
 憤怒の形相でアルベルトが割り込んできて、その場のムードをコナゴナにしくさってく
れた。しかし、アルベルトの怒りもすぐさま凍りつく。クレアの闘気を激烈に浴びたから
だ。
「…………お兄様」
 その顔があまりに輝いていたから、アルベルトも、それにロディもつい油断しつられる
ように笑った。一変、怒りに眉が吊り上がる。……ひたすら恐かった。
「――覚悟はよろしいですわね!?」
「ま、待て。クレア! 落ちつ――ぎゃ」
 クレアのアッパーが見事に決まり、アルベルトは屋台に頭から突っ込んだ。ガタイがデ
カイだけに、その一撃で屋台は半壊。店のヒトは目を点にして呆然としている。
「……っ……さ、さすがに、オレより力が強いだけのことは……」
 朦朧としかけた意識をかぶりを振って繋ぎ止め、目線を上げれば――
 腰に手を当てたクレアが、顔をひそめながら自分を見下ろしていた。怒りのため今にも
弾けそうだ。――と言うか、兄を足蹴にした。
「ぐえ……クレア、おまえ……実の兄に……」
「黙りなさい。わたくしに兄などいません! あなたのその性根、わたくしが叩き直して
さしあげます。ありがたく思いなさい!」
 とことん目がマジだ。
 そのそばで、他人のふりもできずロディは、おろおろとしているだけであった。


「お、そこのおふたりさん。焼きトウモロコシでもどうだい?」
 黒髪黒瞳の青年アヤセが、自分に気づかず通り過ぎかけた若いアベックに声をかけた。
「アヤセ? こんなとこでなにやってるんだ?」
 男の方、リュウイ・ヴァレンツがうろんに聞き返してきた。ラフな服装である。対照的
に連れの少女、シーラ・シェフィールドの方は紫紺に花柄の浴衣である。
「見て分からないのか。出張だよ出張。夜鳴鳥雑貨店のな。売り物はトウモロコシ。経費
も安くすむ」
 言っているアヤセの前方、木の棒にブッ刺された黄金色のトウモロコシがこおばしい香
りとともに焼かれていく。一見、火元であるはずの焚き木が燃えているように思えるが、
……なんと、虚空で火炎が発火しているのである。
 アヤセの能力、それがこの炎を自在に操る力なのだ。
「ところで、おまえらこんなとこでデートかよ。シーラのファンに見つかったら事だぞ?」
「で、デートだなんて……」
 朱に染まった顔を、シーラは隠すようにうつむかせた。
「ち、違うって。ただ一緒に来ただけで……そのデートとかじゃ……」
「そういうのをデートって言うんだよ。てなわけで、このことを志狼あたりにバラされた
くなかったらひとつ、ないしふたつ買ってもらおうかな」
「そういうのを、脅迫っていうんじゃないのか?」
 ぷつぷつ文句をたれながらも、ふたつ分買ったリュウイは、ひとつをシーラに差し出し
た。もちろん、代金は自分持ちである。
「はい、シーラ」
「あ、うん。どうもありがとう、リュウイさん」
「どういたしまして。熱いから気をつけてね。落とさないように」
 どうも色気とは無関係なほがらかっぽいその関係に、アヤセは苦笑した。
「たしかに、いいお友達がお似合いかもな」
「なにか言ったか」
「い〜や、なんにも。――そうだ。他のやつらに会ったらここに来るように言っといてく
れよ。売り上げ低いと店長に叱られるからな」
「友人使って稼ぐなよ……」
「それが商売人ってやつだ。そう言えば、八つの鐘を合図に花火があるの、知ってるか?」
「花火? 去年にはなかったような」
 シーラがいぶかしげに言ってくる。アヤセは肩をすくめ、
「今年からやることにしたんだとさ。これをエンフィールドの名物にでもして、他の街か
らもヒトを集めようってつもりなんじゃないのか?」
「やることにしたって……評議会の連中か?」
「ああ。場所はローズレイクでだと。……役所の人間がやるもんだから、あんまり派手じ
ゃなさそうだけどな」
「ま、楽しみがひとつ増えたくらいに思っておくよ」
 気楽に答えて、リュウイはトウモロコシをひとかじりする。咀嚼(そしゃく)していた
リュウイの表情がみるみる変わっていった。
「アヤセ、おまえ、これにナニをつけた……?」
「お、気づいたか? 赤ワインをちょっと隠し味がわりに。オトナの味がするだろ?」
 こともなげに返答するアヤセからシーラをかえりみたリュウイは、そこに予想どおりの
展開が起きていることを認めた。
「……シーラ……」
 ほおにうっすらと赤みが差し、瞳孔がとろんしていて、足元が危なげだ。
 酔っているのである。
 一般のヒト(子供も含む)なら、この程度のアルコールなどどうということはないのだ
ろうが、シーラは別格である。たとえ微々たる量であろうとも、あるだけでカラダが反応
し酔っ払ってしまうという……
「リュウイィ〜〜…………」
 呼び捨てでこちらの見方が馴れ馴れしすぎる。まるで同性の親友でも見るような目なの
である。つーか、親友だろうとここまであけっぴろげな態度はシーラはとらない。
 酔って理性のたがが外れたのだろう。
「……キャハハ、リュウイったらふたりもいたのねえ……あ〜、アヤセなんかよにんもぉ」
「しっかりしろよ、シーラ」
「う〜? なにがしっかりするのお? わたしはらいじょうぶ……」
「ダメだな、こりゃ。連れて帰ってたらどうだ、リュウイ」
「そーそー。おんなのこをおくるのはぁ、おとこのこのやくめなのよ〜」
「いいよ。そこらのベンチで少し休んでれば。せっかくだから花火見てかないと」
「……はなびぃ〜……はなびはなびはなびはなび……そっかぁ。ハナをみにいかなきゃ…
…どこぉ? ハナびはぁ……」
『…………』
「そ、それじゃ、アヤセ……」
「あ、ああ」
引きつった愛想笑いをしたふたりは、一方は仕事に、一方は連れをかついでいった。


タンッ!
「ちっきしょぉ〜〜〜〜っ!」
 おおざっぱを絵に描いた風体の少年、ピート・ロスが痛恨の叫び声を上げた。一丁のラ
イフル銃をブンブカブンブカと店のヒトにヤな顔されるくらい振りまわし、残念がってい
る。
「甘いな、ピート。おまえには精密さが欠けてるんだ」
 薄手の黒い服に身を包んだ青年フィール・フリーエアが、あなどった笑みを浮かべなが
らピートと交代する。
 タンッ! タンッ! タンッ! タンッ! タンッ!
「……どうやらきょうは調子がすぐれないみたいだ」
「ヘタくそ」
 ピートのチャチャ入れに憤然としたが、それでも平常心を保ったフィールは、黙ってピ
ートと代わってやる。
 射的屋。
 その対立したしょうもない拙戦(せっせん)を観戦していた三人のうちふたりまでは呆
れた眼差しを送っていた。
「あのふたり、よくあきないわねえ」
 なでしこ色の浴衣が髪と調和している。ローラ・ニューフィールドである。
「そうですよね。いったい何があそこまでライバル心をかりたてるのやら」
 そのお兄さん役が似合っていそうな少年……イヤ青年であるメルク・フェルト。実年齢
より五歳以上若く見えるのである。しかも、身長も低い。
「セリーヌさんもそう思わない?」
「仲が良くて〜、よろしいんではないかと〜」
 無難な解答だが、本音であろう返答をしたのはセリーヌ・ホワイトスノウ。浅黄(あさ
ぎ)色の浴衣である。
「まあ。それは言えてるわよね」
「ケンカするほど仲がいい、っていいますからねぇ。あのふたりはちょっとばかり仲が良
すぎな気もいますけど」
「こっちにまで被害が拡大しないのがせめてもの救いだけど」
 とか談話しているうちに、ふたりの戦いは佳境に入ったようだった。ピートが狙ってい
た景品があともうちょっとで落ちそうなのだ。
「よ〜〜〜し! この最後の一発でぇ――!」
 ピートが俄然(がぜん)張り切って撃鉄をがちゃりと引き起こし、銃口を景品に合わせ
にかかった。
 紙に吊るされた景品は、衝撃だけでも落っこちそうだ。一発かすめただけでも万事OK
のようである。
 ぴんと張り詰めた空気。トリガに指をかけ――
 タンッ!
 弾丸は思わぬ方向に飛んでいき、壁にはじかれた。
 すこしのあいだ、そのコルク栓をがっかりした様子で見つめていたピートだったが、思
い出したようにフィールを睨みつけ、
「なにすんだよ!? フィール! これでオレの勝ちだったのに! 自分が負けそうだっ
たからって卑怯なことすんなよな!」
「なんの話しだ? 俺、なんにもしてないぞ」
「ウソつき! いまぶつかってきたじゃないか!?」
「ぶつかっただけだ。外したのはおまえの腕が悪いせいじゃないか。そんなことで恨まれ
る筋合いはないけどな」
 盗人猛々しいとはこういうコトだろう。フィールくん、なかなか図太い性格の持ち主の
ようである。あくまで、ピートのときだけだろうが。
 そのしゃあしゃあとした口調がお気に召すはずもなく、ピートは地団駄をバシバシ踏み、
「じゃあ、おまえもやってみろよ!」
 乱暴に銃を渡されたフィールは大様に射的場まで行く。ピートはタックルをしかけるつ
もりなのか、腰を落とし、半身だ。
「メルクさん……あれってマズイんじゃないの?」
 ローラが少々不安そうに言ってくる。
「そうですね。あれじゃ、すぐにでもケンカに発展しそうだ」
「いや、そうじゃなくて……お店がね――」
「分かってますよ。――ふたりとも! そのへんにしといたほうがいいですよ。お店の方
に迷惑がかかりますから」
 とか仲裁に入りにいくメルクであるが、それくらいでやめるはずもない。華麗にムシさ
れてしまった。そんなことでメルクは気分を害したりしないが、どうしたものかとこめか
みをかきながら思案に暮れはじめた。……って、悠長なコトをしてる局面ではない。
 この場を取り繕うには、この手法しかない、と英断したメルクは、
「あ……!」
 フィールからするりとライフルを取り上げ、手早く撃鉄・弾込めをし、発砲した。
 タッ、
 もう一発発砲。
 タンッ!!
 あまりに動作が迅速だっため、銃音がふたつ連続に響いた。手動でこれとは……驚くべ
き早撃ちである。しかも、一撃必中だ。
『…………』
 フィールたち、それに射的屋の人間まで暫時絶句した。
「あの、これでもらえるんですよね?」
 そのメルクのセリフで我に返った店員さんが、床に転がっているふたつの景品を持って
くる。受け取ったメルクは、フィール、ピートにそれを渡し、
「はい。これでふたりの不和の理由は解決です」
 言ってニコリとほほ笑んだ。



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