悠久アニパロ劇場「天使候補生」①

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「悠久アニパロ劇場「天使候補生」①」 春河一穂　(MAIL)
悠久幻想曲アンソロジー・アニパロ劇場

「天使候補生」 side CMNC

カリキュラムＡ　天使

（もし、「某候補生」を悠久キャラと設定でやってみたら・・・・）

辺境の小国家エンフィールドに侵攻してくる、
レミット帝国の召還獣兵団「リクティム」。

その猛攻からこの楽園を死守せんと、エンフィールドでは、
魔術師及び魔法鍛冶師などにより６体の魔装騎兵（インフリット）が建造された。
それは圧倒的な機動力と火力から、神の使い「天使」とよばれている。

それを駆ることが出来るのは成人前の子供達。しかもかなりの潜在魔力、
そして遺伝的な特殊能力をもつものだけであった。

エンフィールドには「天使」の乗り手を育成する学校がある。
天使候補生達の学校・・・・Angel Knights Academy・・・・ＡＫＡである。

けたたましい警報がＡＫＡ全域に響いた。

『南方よりリクティム進行中。「天使」緊急出撃せよ！！繰り返す・・・・・』

「速くっ！！」

天使ハンガー・第３デッキ。
そのタラップを足音が二つ駆けていく。
紫色の髪の少女と少年だ。
気づいている人も多いけど、この二人はゆんとリオである。
ゆんが使徒の騎士（パイロット）。リオは従者（リペアル・ファティーマ）であったりする。

リオが手元の小型端末のキーをせわしく叩く。
端末をハンガーの操作卓に接続してさらに操作卓をせわしく操作する。

パシュッ

小さな排気音と共に胸部のコアが開く。

「ゆんおねえちゃん、無理は禁物だよ。・・・・・無事に帰ってきてね。」

「もちろん。愛するりおくんのためだもん。絶対に帰ってくるよ。」

すっとゆんの姿はコア内部へと解けて消えていった。

「騎士搭乗確認・・・・完了。アイデンティファイ（認証）を開始します。
ゆんおねえちゃん、リラックスして・・・・」

操作卓のモニタリングは次々に緑色の光にあふれていく。
認証をパスし、ゆんの精神が完全に天使と一体化したことを
示している。

「同調完了。潜在魔力レベル、精神状況、脳波共に異常なし。
外界接続まで５・・・４・・・３・・・２・・・・１・・・・接続。」

ふわっとしたえもしれない浮遊感がゆんを包み込む。

「接続完了。出撃許可を申請します。」

浮遊感が落ち着いたところで目を開く。もうこれはゆん自身の体の感覚を超越し、
「天使」自体の感覚である。

「なるべく早くお願いね、リオくん。」

「わかってる・・・・・。」

『全インフリットに出撃許可が出ました。フォスティエル、セスティア、ハンガーアウト。』

水色と濃紺の天使がゆっくりとハンガーから離れていく。ちなみにフォスティエルにはトリーシャが、
セスティアにはセリーシャがパイロットとして搭乗している。
ファティーマデッキではせわしく操作卓を駆っている少女がいる。
セリーシャ機を担当するのは、ぴんと立った耳が可愛いキズ・・・・ではなく、サラサ・タチバナ。
トリーシャ機のファティーマはクレア・コーレインである。

「ゆんおねえちゃん。ハンガーアウトです。頑張って。」

『ファースト機・ルーン・ヒルデ、ハンガーアウト。』

がくん。
後ろへ押される感覚がゆんに伝わる。そしてカタパルトから地上へ向けて射出される強いＧを感じる。
６体の天使はリニアカタパルトによってエンフィールドの宙高くに舞い上がっていった。

「コントロールをパイロットに移行します。」

リオの言葉を聞いて、ゆんは制御球に魔力を込める。動き方は頭でイメージすればいいのだ。

エンフィールド南部のユルカ大平原が戦場となっている。
既にフォスティエルとセスティアが臨戦態勢に入っていた。
大きなフィンをセスティアは展開している。このフィンにより、
大気中の魔力をも吸収・収束させて撃ち出すことが可能だ。
専用のバスター砲をセスティアは装備している。

「天使の裁きをここに！！！」

キュイイイイイイイイイイイイイイン・・・・・・・・・・・・・

金属音が高まり、砲口にプラズマが青白く渦巻く。

バシュゥッ！！！！！

プラズマ弾が射出される。もの凄い反動を受けるセスティア。
ＡＫＡのファティーマデッキでは、必至に反動を押さえようと更紗が操作卓をせわしく操っていた。

シュウウウウウ・・・・・・

両足のスタビライザーが展開し、必至に反動をこらえる。大地の草が疾風に巻き上げられ、
緑の螺旋を形成する。

ギュウウウウウウウン・・・・・・

７体のリクティムが天使の裁きに巻き込まれて蒸発した。

「フォスティア、そちらに３体！！」

クリスからの通信が入ってきた。クリスの乗る天使『クロイス・クリン』は
主に策敵用の装備のされた機体だ。
火力は少ないが、情報収集能力には長けている。

「まかせて！！クレア、武装に出力の６０％を接続。一気にケリ付けるよ！！」

トリーシャが制御球に魔力を込める。フォスティアの主武装の棒の先端にプラズマが走り、
おおきな手首状に展開する。
この状態がフォスティアの臨戦態勢なのだ。

「フォスティア・チョォ～～～～～～～～～ップっ！！！！！」

一気に振り上げた右手を一気に斜めに振り下ろす。

バシュゥン・・・・・・・

手首状の閃光はフォスティアを中心に弧を描くように、周囲１キロ四方を凪ぎ払った。

リクティムの最後である爆発が辺りで次々起こり始める。

シュウン！！！

ルーンヒルデが翼を広げて宙を舞う。宙にもリクティムはいるものである。

「ファースト、まもなく飛行タイプリクティムと遭遇します。数は４０。
ファーストなら大丈夫ですよね？」

「クリス、ありがとう。んじゃ、やってみようか？」

キイイイイイイイイン・・・・・

潜在魔力をさらに上昇させていく。臨界まで。

「ゆんおねえちゃん。魔力が臨界を突破したよ。臨界超過分は兵装に回すけど、それでいい？」

「そうして。あと、出力を１００％にしていいわ。一気に殲滅させる！！」

ゆんの胸元のマナ・ブーストがまぶしく光を発する。

「行くよ！！！」

一気に加速を始めたルーンヒルデ。
左手に握られた短い棒からは光の刃が輝き出す。

目まぐるしく、狂ったかのように激しく動き回る。
縦横無尽に高速で舞うルーンヒルデは、次々とそして確実にリクティムを切り裂いていく。
ジェットコースターより激しいＧがゆんを襲う。だけど、これがたまらいのだ。
一歩間違えば死ぬかもしれないのに・・・・・・

エンフィールド上空に光の花が咲く。
その光の中から真珠色の機体。ルーンヒルデである。

「ま、こんなもんね。」

兵装のエネルギーをカットし、拳を突き上げてガッツポーズをとる。女の子なのに（笑）

「ゆんちゃん、こちらはあらかた殲滅させましたわ！！天使の裁きを数発お見舞いしましたから。」

「セリーシャ、天使の裁きはかなり魔力消費が激しいよ。大丈夫？」

「何とかね。天使のコントロールには問題無しですわ！！」

「ファースト、こちらクロイス・クリン。敵を完全に殲滅しました。レーダー上、反応無しです。」

セリーシャとの通信に、クリスが割り込んでくる。戦闘は終了した模様である。

「わかったわ。みんなに伝えて。これよりＡＫＡへ帰還します。」

「了解。全天使へ。これより帰還します。」

それから数刻後。６体の天使が雷鳴山麓の大地へと消えていった・・・・

「お疲れ、ファースト！！」

ＡＫＡのパイロットフロア。選ばれた天使の使い手とその従者のために用意された区画。

「何とかなったねぇ・・・・」

シュウウウウウウウウウウ

ハンガーデックに天使が降り立つ。

コアからゆんが抜け出てきた。

「ゆんお姉ちゃん、お疲れさま。機体のリペアにかかるから」

リオがそういってリペア用のエレベータに乗り込む。
機体の点検を始めたリオによろしくと声をかけ、ゆんはラウンジへ向かった。

「トリーシャ、お疲れ。」

「あ、ゆんちゃん、お疲れ。」

「・・・・・アクチェをあげてもらったね。今日の動きは良かったよ。」

「おとうさ・・・・いや、特級教官からの指示で、新しい装備を追加してもらったんだ。」

「ってことは、プロジェクトＧＤの進行が順調って事なんだね。」

プロジェクトＧＤとは、現在よりさらに反応力を高め、モジュール化構成とした新たなる
次世代インフリットの建造プロジェクトである。

現在のインフリットには、そのための試作装備等が臨床試験のために搭載しているのだ。

紅茶をあおるゆん。

「ルーンヒルデにも専用のモジュールが試作されているって聞いているよ。多分近いウチに
装備されるんじゃないかなぁ。」

それぞれの個性にあった装備とチューニング、モジュールからリクティムは構成されている。
基本的なのはコアモジュールのみ。あとは天使の騎士に応じて多彩に外観は変わる。

「どんなユニットがルーンに装備されるんだろう・・・・・
セリーシャ機がマナバスター砲、トリーシャ機が電磁チョップ棒、クリス機が超高レンジセンサ、
ルーティ機がレーザーハンマー、メロディがヴェイパーディフェンサー・・・・・」

「心配しなくても大丈夫ですわ。」

ゆんの向かいにいつの間にかセリーシャがやってきていた。

「先ほど、リオちゃんがリカルド教官に呼ばれてましたの。その数十分前には、何かのモジュールが
天使ハンガーに搬入されたことが確認されていますわ。多分、ゆんちゃんの機体用の兵装ではないかと
わたしは思いますわ。」

「リオ、ちょっといいかね？」

ハンガーデッキのルーンヒルデのコア傍らでリペア作業に精を出しているリオをリカルドが呼び出す。

「ええ、ちょうど今リペアが一段落しました。」

「ルーンヒルデ用の次世代タイプ専用装備が届いたのでな。
専用基本システムソフトウェアと・・・・・新型コアだ・・・・・・。
これはもう、次世代機のプロトと言えるかもしれないな・・・・」

それからのリオは大変だった。
コアの変更は機体を全く新しくするようなものである。
今までとは全く異なる新設計のコアに、新設計のフレームを組み付け、そこに既存のルーンヒルデ
の装甲を組み付けていく。ネットワークシステム及び、アクチュエータはコアに合わせて新設計
された企画外品が組み込まれた。

更紗にクレアがサポートに回って作業は続けられた。

１０時間ほど後・・・・ようやく専用装備の搭載が終わる。以前より精悍な姿となった
ルーンヒルデを見つめるゆんの姿がそこにはあった。

「ゆんお姉ちゃん。基本的なデータの移植は完了です。あとはコア内コクピットにての設定だけです。
コアに搭乗して。」

シュウウウウウウウウ・・・・・・・・

以前よりも小型のコアシェルが開く。

すうっとゆんは両手を構えてコアへと吸い込まれていく。

（これが最新型のエンジェルコア・・・・・・）

すうっと目を閉じ、静かに心を落ち着ける。

ぶんっ

ハム音と共に光のリングがめまぐるしくゆんの全身を囲みながら上下を繰り返す。

「パイロット認識完了です。インフリットウェアのアップデートとコンバート行います。
ゆんお姉ちゃん、イニチアティヴをお願いします。」

全く今までとは違うインフリットオペレーションシステムは、より高度な思考フィードバックを
より高速なレスポンス性能で可能としている。システムのモジュール設計自体を見直し、
より高速な処理系で実行できるように再設計が行われていた。

「全センサ及び、兵装備ライン、内部動作系統ニューロンネットワークに異常はありません。」

「うん。こっちでも確認済み。ルーンヒルデ、動作系及び思考制御に異常なし。
各駆動部アクチュエーションレスポンス、旧コア・旧システム比３２５パーセント向上。
・・・・・・だけど、２５０％でアレしといてよ。高性能すぎてもじゃじゃ馬なだけだから。」

「はい、ゆんお姉ちゃん。ルーンヒルデの最高出力比率、２５０％でリミットロック。
リミッターを設定しました。ゆんおねえちゃんの意思により自由に解除可能です。」

キーをせわしく叩くリオの指。画面のバーは、次々とグリーンに塗り変わっていく。

「リミット設定。お疲れさま。更新は終わったよ。シミュレーション確認、運用上異常なし。」

最後にエンターキーを押して、リオの動きが止まった。

「ルーンヒルデの整備完了・・・・」

「新システムの初期化及び個人データの構築も終わったわ。」

にゅっとコアからゆんが乗り出す。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　★　　　★　　　★

「候補生の皆さん、今日はフロインクでの実戦訓練です。みんなの得意なカリキュラムね？」

ＡＫＡの候補生アカデミーでは候補生達のカリキュラムが進められていた。
ゆんのファティーマのリオの双子の妹、ミア・バクスターや、ポプリ・ファーム、
エミル・シャンティノの姿もある。

教官は１級教官ヴァネッサ・ウォーレンであった。

何故かは知らないが、天使パイロットは少女がほとんどである。

「かなり後方とはいえ、あたし達は実戦経験も積んだ、天使候補生トップですからね。」

ミアが言う

「そうね。いつも通りリラックスしていきましょう。だけど、あまりにもリラックスしてしまうのも
問題よ。」

「だね。ぼうっとしてたらこっちがやられちゃう・・・・・・」

ヴァネッサの言葉にくすっと笑いながらエミルが言う。

「さぁさぁ・・・・ファティーマがお待ちかねよ。騎乗に取りかかりなさい。外界接続は１８０秒後よ。」

ヴァネッサの言葉に、ハンガー内の各自の乗機に散っていく候補生達であった。

「よっ、ミア。こっちの準備はＯＫだぜ！！」

ミアのファティーマはピート・ロスである。ピート用に簡単オペレーション仕様にカスタマイズ
されたファティーマコンソールに向かいながら、ミアに声を掛ける。

「んじゃ騎乗ね。サポートお願い。」

コア内部のコックピットへと入り込んでゆくミアから言われ、ピートはシーケンスを開始させた。

「エミルちゃん、大丈夫？」

その横のフロインクデッキではエミルが魅緒と話し込んでいた。魅緒がファティーマとして
エミルをサポートしている。本来なら魅緒が天使候補生となるべきなのだが、本人の
ファティーマ技術も身につけたいとのたっての願いから、ファティーマとしてカリキュラムを
受けている。いずれは天使候補生としてのカリキュラムを再度受ける事となるだろう。

「問題ないよ、行こう！！」

その言葉を聞いて魅緒はシークエンスを開始させた。

とそこへ、警報が響く。

『リクティム出現！！エンフィールド北方より進行中。天使の出撃を要請。繰り返す・・・・』

天使騎士のフロアもまた、慌ただしい。

「ゆんお姉ちゃん、このまま出ましょう。シーケンスを開始させます・・・・・。」

リオがコンソールを指で叩く。コンソール自体もシステムの入れ替えで更新されている。
すっとゆんがコアに吸い込まれたのを確認し、リオは実行キーを押した。

マリエーナ連邦内の最後の独立国家、エンフィールドはそんな子供達によって護られている。
そして今日も、エンフィールドの天高くに光が打ち上がっていくのだ・・・・・

＜続く＞

・・・・・・・・ごめんなさい。今回は自分の好きなコミック、「女神」に染まってみました。
悠久キャラで女神やるってのはやはり問題ありまくり・・・・・
宇宙を舞う女神達を悠久世界でどう表現するかが・・・・ね（笑）

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