中央改札 悠久鉄道 交響曲

「M・M・R沿域練習曲2〜マリアと基礎魔法講座〜」 春河一穂  (MAIL)
悠久幻想曲アンソロジー

M・M・R 沿域練習曲
(マジック・マジック・レヴォリューション
 エンフィールド・バイエル)

レッスン2:マリアと基礎魔法講座〜絶対音感と歌唱力〜

春河一穂

エンフィールド学園の音楽室からピアノの音がする・・・・

ぽろろん・・・・
「ら〜ら〜ら〜ら〜らぁ〜」
じゃん・・・・
「ら〜ら〜ら〜ら〜らぁ〜」
じゃん・・・・
「ら〜ら〜ら〜ら〜らぁ〜」
じゃん・・・・
「ら〜ら〜ら〜ら〜らぁ〜」
じゃん・・・・
「ら〜ら〜ら〜ら〜らぁ〜」

「・・・・・うん、だいぶ高音域が出るようになってきたね・・・この魔法は
正確に音域を発音しないと効果は全く出ないから、毎日の発声練習が大事だよ。
言霊魔術はマリエーナでもまだかなり認知が無い魔法の種別だから・・・・
古代魔法の流れをそのまま汲んでいると言った方がいいかな?」

発声トレーニングしているのはマリアだった。ピアノに向かうのはゆん。隣に
セリーシャとミア、エミル、シェリルがいる。
「言霊魔法はまだ歌いこなせる使い手が少ないと言うことです。マリアちゃん、
頑張って・・・・。」
シェリルの応援にマリアも気合い満々の様子だ。
魔法好きなマリアにとっては、禁断の古代魔法という響きがテンションを高く保って
いるみたいだが。それもこれも先日のMMR適性診断から始まったことである・・・。


『オウ・・・ノー!!!!!』
「・・・・・・まただ・・・・・」

がっくしと膝をついて落ち込むマリア・・・思いがけない事態に頭を抱えるゆん。
セリーシャに至っては、筐体の取扱説明書『故障かなと思ったときは』を必至に
読み続けるありさま。
9回目のゲームオーバー(判定中止)。しかも開始数秒後である。
最初はマリアのたっての希望で高度な魔法からはじめたのだが、あれよあれよで
どんどんとレベルが下がっていく。基本メニューですらこの有様なのだから・・・

「マリアって魔法ダメなの?ぶぅ〜〜〜〜・・・・マリア、魔法使えるもん!!」
お姫様はこの事態にかなりご不満のようだ。

「えっと・・・・・『素質はあるのに魔法適性が無いと判断される場合』は・・・」
セリーシャは相変わらず説明書の分厚い本を眺めている。
「『このゲームは魔術師協会が正式に認定している魔法種の訓練及び適性判断を行う
ものですが、魔術師協会が正式には認定していないが、存在を確認している魔術も
適性判断の範疇に入れることが出来ます。これによって、素質があるのに適性がないと
診断された方に適した種別が確実に示されます。この非公式判断モードでは、公認され
ている4系統80種類に加え、非公認魔法8系統80種類が診断に追加されます。
非公認魔法には、音感、空間認知など、さらに多くの素質が要求されます。
非公式モード用の測定センサーは既に筐体に組み込まれていますので、モード変更のみ
で利用することが可能です・・・・・・』マリアちゃんにはこれしかないようですわね。」

急遽、セリーシャはモード変更を行った。マリアが真っ白になっている間に手際よく、
それは行われた。

「今度は大丈夫。広範囲に及ぶ診断が出来るようにシステムを調整しましたわ。」

数分後、先ほどとは全く違うモードでの再測定が始まった。今度はゲームと言うよりは
占いマシンに近い動作をしているようだ。
心理テストに始まり、個人データ、リズム感などが試された。
「音感テストですわ、次は・・・・」
マリアはヘッドフォンから聞こえて来るであろう音に合わせて左手のボタンを
小気味よく叩いている。先ほどの散々な時と比べると若干は楽しそうにゆんには見えた。
「うん。何かこれはいい感じだよ。」
「今度は歌唱力だ・・・・」

 マリアが歌う。澄んだ声が低音域から高音域まで少女としてはかなり広い幅で
奏でられる。さすがは声優、丹下桜(爆)。ハスキーボイスに定評があるだけある。

「マリアってあんなに歌が上手だったんだね。セリーシャも合唱部だから、高音域の
伸びはいいけど、マリアもそれに匹敵するよ・・・・」
「あれでしたら・・・・ひょっとしたら神聖魔法のアレが使えるかもしれませんわね。」
セリーシャが微笑みながらいう。
「ねぇ、セリーシャちゃん。アレって・・・・・?」
「わたくしだけが使えるひみつの魔法・・・・ですわ。」
セリーシャの言葉に、少し疑問を覚えるゆんだった。

今度のモードにはゲームオーバーは存在しない。一通りの測定が済み、結果が表示
された。

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        マリア・ショート さんに最適の魔法適性

メンタル面においての強大なキャパシティを活用できる魔法は、公認されている
術式を用いる魔法にはありません。あなたの性格から言って、面倒なことは省く
面があるため、定められた術式をこなさないと確実に発動しない公認魔法は発動
できないでしょう。キャパシティ上、ファンブルを招いた場合の危険が大きいため、
お勧めは出来ません。しかし、メンタル面のキャパシティ、音楽的な才能にはかなり
優れた面があります。絶対音感の持ち主の様ですから、覚えれば簡単に使える
「言霊魔法」を覚えてみては?
言霊魔法はエインデベルン地方固有の古代魔法で、歌を歌うことによって術を
発動させるというものです。エインデベルン魔術師協会では公認魔法として
正式に認可していますが、マリエーナ全土規模となるとまだまだ知名度は低いようです。
物理、神聖、精霊の3つに渡り、20の歌があると言われます。上位のものになると
歌の時間も長くなるようです。
まずは、初歩的な神聖魔法「シレーヌ・ブリーズ(歌姫の息吹)」を歌えるように
しましょう。
言霊魔法を歌えるのは、マリエーナでも十数人しかいないでしょう。
そのほとんどが、エインデベルン出身者と言われています。
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「ほら、言霊魔法ですわ。」
セリーシャが言う。
「なるほどね・・・・あたし、これ得意だよ。だってあたしの故郷は南エインデベルン
だから・・・・ね、セリーシャちゃん。二人でハモってみない?マリアちゃんに
教える意味も兼ねて。低音部を受け持つから、セリーシャちゃんが高音部を歌ってよ。」
「ええ・・・・。自身を無くしたマリアちゃんを元気づけるという意味も兼ねましてね。」

ゆんとセリーシャは一呼吸おくとゆっくりと歌い始めた。
ゆんのあとをセリーシャが追う輪唱で始まり、それが次第に倍音での
ハモリに変わっていく。魔力のこもった歌。その歌い手のふたり・・・・・。

空の波の癒し手 やさしくささやけば
暗き闇も次第に 白き光溢れる
空に 水に 風に 大地に
包まれて癒されん 歌姫の もとで

白き光満たされ 闇は彼方消えゆく
歌姫の手の中で 今は眠れ 迷い子


実習室内に安らかな空気がいっぱいに広がる。
ミアは瞳を潤ませながら敬愛する二人の歌に聞き惚れている。
マリアも黙したまま、二人の歌を聴いている。
エミルについては涙をぽろぽろ流しながら感激しているありさまだ。

「マリアには、この歌を歌えるようになってもらうからね。この言霊魔法には
もっと強力な歌があるらしいから・・・・」

「マリア・・・・頑張ってみる・・・・・・みんなを、見返してやりたいもん・・・」



と・・・・こんな事があって、こうして音楽室での練習となっているわけだ。
普通のピアノの他に、微妙なピッチ調整が要求されるために電気で音を出す
キーボードという楽器も用意されている。
あれから4日が経過している。発音練習の結果、かなり高音域をのばすことが
出来るようになったマリアである。

「もうシレーヌ・ブリーズの練習に入れるね・・・・。さすがはマリアだよ。
上達が早い・・・・」
「歌ともなれば、微妙な音程の上下がありますから、今まで以上に気を入れて
練習しなくてはいけませんわ。」

セリーシャがはっぱをかける

音楽室からは連日、マリアとその友人達によって歌が絶えることはなかった。

ところで・・・・何故物理の言霊魔法が使われなくなったか・・・・
というと・・・・・
じつは歌っている際に襲われてしまうからである。要は無防備になってしまうのだね。
それに気付くのはずーっと先のマリアであった。

「そ〜ら〜の〜な〜みの〜い〜や〜し〜て〜〜〜〜〜・・・・・」
「もうちょっと・・・・・・・・こんな感じで。きっちりと歌わないとちゃんと
発動しないからね、マリア。じゃぁ、もう一回。」
「・・・・の〜な〜みの〜い〜や〜し〜て〜〜〜〜〜・・・・・」
「マリアちゃん、先程よりはよくなりましたわ!その調子で頑張って下さいね。」
仲間の応援に後押しされて精一杯頑張ろうとするマリアだった。

<続く・・・多分>

********* MMR 次回予告 *******

言霊魔法をマスターしたマリアはついに物理魔法科主任教授ヴィクセンに
タイマン勝負を挑む。果たして勝利するのはどっちだ?
次回、沿域練習曲レッスン3「絶唱、紅白対抗言霊歌合戦!!」

********* あとがき **********

今回はやっつけ仕事的なSSです・・・・
信さんのリレーSS用にでっちあげた魔法設定をうまく活用する意味合いで
こんな展開にしてみました。
シレーヌ・ブリーズのイメージは、CCさくらの友世ちゃんの歌
「夜の歌」です。あのイメージでいってます。岩男さんの高音域の伸びは
すっごくいいですね・・・ろりぷにボイスですね。萌えてます、徹底的に(爆)
丹下さんもじつはアルバムを聴いてみるとかなりの高音域を歌いこなして
いるみたいです。だから、マリアちゃんでもOKかなって・・・・(爆)

声優ネタもふくんだこのシリーズ、次回で完結させたいですが・・・・。

春河一穂

1998年12月25日 初版発行


中央改札 悠久鉄道 交響曲