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「悠久幻想曲 Perpetual Due 第一話」 春河一穂  (MAIL)

「ついに来たんだね。」

マリエーナ王国の王室客船『永遠の旋律』号は、マリエーナ王国大陸を離れること1週間、
ついに南の大陸リュクセーヌ公国へと着いた。

玄関口となる港湾都市、そこへ今着いたばかりの永遠の旋律号の船尾では、マリエーナ王国の旗が勢いよく靡く。
港湾都市の名はシープクレスト。じつはこの都市はリゾートとしての側面を持っているのである。



悠久幻想曲 perpetual due

「悠久の碧と幻想の蒼」 旋律1

春河一穂



永遠の旋律号の船腹が開き、3台の乗用車が姿を現した。
エンフィールドのナンバープレートを付けているAクラスと(全然スパイシーでない)スパシオ、そしてナディアである。

オーナーは、ゆんと澪乃姉妹である。ナディアはわざわざエインデベルンの屋敷まで取りに行っているのだ。

「国際免許証はあるよね。」
「レミット様のお父上、つまり国王陛下に直にいただいたでしょう?ゆん。」
「そう?」
「そうだろ、しっかりしろよ、ゆん。」
「さぁ、二人とも、港湾事務所で輸入手続きをとりましょう。」

Aクラスにゆん、ナディアには澪乃が乗り込む。もう1台パシオ君に悠久がすでに乗っている。

「みんなはどうする?入国手続きしないと!!」

同行しているのは、トリーシャ、リオ、マリア、レミット、セリーシャ、ローラ、クレア、メロディ、
セロ、シェリル、ミア、エミル、悠久、魅緒の14名。さすがに3台の乗用車ではちとキツイかもしれない・・・。

夏休みを利用してシープクレストのリゾートへ来たのである。
レミット、セリーシャ、澪乃などを除けば初の海外旅行であったに違いない。

                   ★  ★  ★

1週間前。旅行旅立ちの日のこと。

「南へ〜行こうランララン、南へ〜行こうランララン・・・・♪」

はぁ・・・・・・

エンフィールドから高速街道王都南線で下ること3時間。
ゆん姉妹の故郷エインデベルンよりさらに南下する。
エインデベルンで支度を済ませて鼻歌混じりでハンドルを握るゆん
隣には汗粒をたら〜りとたらして乾いた笑いになっているゆんの愛しの君リオくんの姿がある。
開け放した窓からは気持ちのいい風がキャビン内を吹き抜けていく。
草原の中をただひたすら、南の港へと走り抜けていく。

「ねぇ、ゆんお姉ちゃん、何故そんなに上機嫌なの?」

リオが尋ねる。

「初めての海外旅行・・・初めての船・・・だからかなぁ・・・」

ハンドルを握りながら、ゆんはリオにそう答えた。


先行する車ではゆんの姉、澪乃が運転をしている。
こちらの車両は8人乗りということでほとんどはこっちに乗っていると言うことになる。

「あら・・・・ゆんちゃん上機嫌だね」
「そう?トリーシャちゃん・・・・」
「うん・・・・でも隣ではリオくんが冷めてるよ。」
「そうね・・・・あの子、海外は初めてだからね。
「なるほどな・・・ゆんは初めてであったか」
「ローラもはじめてなんだよ〜時間旅行はしたけどね」

後部席ではレミット、ローラが談話中。助手席のトリーシャもそれに加わっている。

「はい、ジュース。セリーヌさんに作ってもらったんだよ〜。」

紙コップが全員に行き渡る。ちなみに、ゆんの車には同じ物をミアが持っている。

「そう言えば、ゆんの後ろは悠久さんなのね・・・」


「魅緒、エミル、いいか?トイレ休憩はちゃんと言うんだよ。」

後ろのパシオ君はお荷物専用。でも二人の女の子と保護者(あと人外な方)が乗っている。
魅緒の兄、悠久はすっかり二人の少女の保護者になっていた。

「大丈夫だよ。お兄ちゃん。」
「こっちも〜」

横に妹、後ろにエミルちゃん。
さらに・・・・

「ふみぃ〜きもちいいのぉ・・・・」
「そうだね〜」

メロディにセロもいるのだ。

「にしては・・・今回はかなりの団体だなぁ・・・・」

ハンドルを握りながらそう考えていた悠久であった・・・・。

それから船に揺られて、ついに着いたのである。


                   ★  ★  ★

 入国が許可され、ようやく市街地へと車は入ってきた。
エンフィールドとはかなり違う雰囲気に少女達は期待に胸を躍らせる。
高原の避暑地とは違う、海に面したリゾート、シープクレスト。
その海岸沿いの大通りを郊外へ向けて走る。


開け放した窓から、ひんやりとした潮風が流れ込んでくる。
カーオーディオは、それぞれの趣味にあった音楽を休み無く奏で続けている。

港湾通りを過ぎ、ひときわ大きな建物の前で、澪乃は車を止めた。

『シープクレスト役所・公安本部』とプレートが掲げられている。
ここで街の情報を少しでも知っておこうというのが目的である。

ゆん(リオ、ミア)、澪乃(レミット、マリア)、悠久(魅緒、エミル)は、代表で役所へとやってきた。

「本当にエンフィールドと感じが違うね。」
「別大陸だから。気候だってこっちのほうが温暖だし・・・ちょっとエンフィールドよりは暑いかな?」
「いざとなったら、マリアがね、自慢の魔法・・・・」
「駄目ッ、絶対に、駄目ッ!!!隣の国まで壊滅させる気?!」
「ぶぅう・・・マリア、大丈夫だもん!!」

後ろでぎゃーすかやっているところへ、奥からひとりの青年がやってきた。
その青年の服の胸には、瑠璃であしらわれた鳥の羽のブローチが留められていた。

「あなた達・・・なにかお困りですか?僕で良ければ相談に乗りますよ。」

それは、シープクレスト港湾局第4課、通称、ブルーフェザーの隊長、ルシード・アトレーであった。

                   ★  ★  ★

「なるほど、観光で初めてこの街にいらしたんですね?で、北の大陸から・・・・と。
北の大陸と言えばマリエーナ王国のかたですよね、皆さん。」

役所にほど近いカフェテリアに少女達と悠久、そしてルシードの姿があった。

「マリエーナ王国はまだ、魔法とかが全盛なんですか?ここ、リュクセーヌは魔法は既に過去の概念となってしまって
いるんですよ・・・僕のブルーフェザー課も、もとは魔法犯罪に超常現象を専門に扱う部署だったけれど・・・
最近はそう言った事件は皆無に等しく、公安でもお荷物扱いとなってるんです。」

「エンフィールドにこればそう言った事件は日常茶飯事だし・・・・」

「エンフィールド・・・・マリエーナ王国北部の高原都市ですよね・・・一度は訪れてみたいと思ってはいるんです。
海の住民は山に憧れるものですよ・・・詳しいことは知りませんけれどね。」

そうかなぁといった表情でゆんが聴いている。

「ま、そんなわけでボクはヒマなんですけどね・・・」

アイスカフェを飲み干すルシードの横顔はどことなく寂しげだった。

                   ★  ★  ★

「魔法の廃れた国かぁ・・・・あたしたちある意味異端なんだね・・・・」

ルシードと別れ、再び車を走らせる。
海を見ながら走ること数十分。ようやくおおきな屋敷が見えてきた。
「あれが・・・セリーシャの家の別荘なの?」
「そうですわ、ゆんちゃん。フィスター家は世界屈指の貿易商ですから、各地にこういった別荘を多く持っていますの。
実際、わたくしもどこが本当の自分の家か解らないぐらいですわ。」

「ほ・・・・・ほぇ・・・・・・・」

さすがは豪商の娘。スケールでか過ぎである・・・・

                   ★  ★  ★

一行はほどなく別荘に到着した。
それぞれ、ジョートショップがすっぽりと入るくらいの広さの部屋をあてがわれている。
もちろん、お風呂に手洗い完備。エミルに魅緒に関しては、それぞれ子供部屋仕様だが、
これまたべらぼうに広かったりする。

「金持ちはスケールが違うよ・・・・」

あのエインデベルの資産家である春河家の屋敷ですらこんなには広くない・・・・。
精々ここの3分の1の広さと言うところだ。

そんなわけでゆんはびっくりしていた。

部屋の中央の天蓋つきベッドに横たわって上を見上げる。忘れていた、故郷の屋敷・・・・・・主のいない部屋・・・・。
ふとそれが頭をよぎっていく。

「ゆんちゃん、お部屋の方はいかがでしょうか?」

「あ・・・・セ・・・セリーシャちゃん?」

突然、横から声をかけられてあわてるゆん。その声の方を見ると、にこにこと微笑みながらゆんを見つめているセリーシャの姿があった。

「お気に召さなかったらどうしましょうと・・・・・思いまして。」

「そんなことはないよ。すっごく気持ちいいって。」

「まぁ・・・・・気に入っていただけて嬉しいですわ。」

窓をセリーシャが開け放つ。ゆん達のゆうに3倍はある高さのカーテンが風でふわっと靡く。

「この別荘はね、全てのお部屋から海が見える作りですわ。プライベートビーチもありますので、退屈はさせませんわ。」

「そう・・・・・?」

「ゆんちゃん、マリアちゃんとレミットちゃん、トリーシャちゃんにローラちゃんが市街地にお買い物に行かれるそうですが、
ご一緒しません?」

テラスに出たセリーシャがベッドの上のゆんを振り返って見つめながら言う。

「エミルちゃんに魅緒ちゃんを一緒に連れていこうか・・・・」

やはり小さな子も一緒に同行すると楽しくなるだろう。ただし、お手洗いを捜索する時間と間隔がかなりのウェイトを占めるという
デメリットもあるわけだけど・・・・

「リオくんにミアちゃんもお誘いになってはいかがですか?で、グループを2つに分けて探索するということで。」

マリアとレミット、トリーシャとローラ、エミルと魅緒、ミアにリオのペアをそれぞれバラして組み直すというのだ。ある意味、トラブル
分散化という事に関しては完璧である。

「セリーシャとあたしも別れるって事になる?」

がばっとベッドから上半身を起こして、ゆんがセリーシャに尋ねる

「そう言うことになりますが、連絡用の携帯電話とモバイルスレートを持っていくので大丈夫ですわ。」

満面の笑みでセリーシャが答えた。

                   ★  ★  ★

「で、なんでこーなるん?」
「ぶぅ〜〜〜〜、マリア悪くないもん!!」
「ほらほら、ゆんお姉ちゃん。喧嘩はやめてよぉ!!」
「もうっ・・・みんなったらぁ・・・・悠久さん、何とかしてよぉ」
「悠久おにいちゃんはいないってば(爆)」

このセリフだけで何が起こったかは予想が付くと思う。
くじ引きの結果がこうなってしまったのだ。

「マリアがいる段階でひと騒動起きそうだし・・・・お姉ちゃんは悠久さん達とティータイム満喫してるし・・・
ひょっとしたら、ひょっとするかも・・・・・」

そう、ひょっとする。

ブルーフェザー隊久々の出動がまさかこんな形になろうとは・・・・ルシードは思いもよらない事件に巻き込まれることになる。
もちろん、ゆん達も・・・・・。

                   ★  ★  ★

「なぎさ通り見に行こうか?」
「なぎさ通りか・・・・セリーシャちゃん、情報お願い。」
『はいはい、ゆんちゃん。通りに面したお店のデータを送りますわ。』

セリーシャの声と共に画面に詳細な地図が浮かび上がる。
なんだかんだでお店巡りしたゆん達A組(仮称)。
(Aクラスには積めないので)ナディアにいっぱい詰め込まれたお荷物の山。

ちょっと一息入れようと探索モードで通りを駆け抜けていたのだ。

「ねぇ、この先に中央公園があるよ?綺麗なお手洗いもあるって。魅緒ちゃん、いい?」

とそこへ、画面にセリーシャの顔が映し出される。

『ゆんちゃん・・・合流しませんか?わたくしの組も中央公園に向かっていますの。』

「いいんじゃない?一休みしようか、セリーシャちゃん。」

通信が切れたのを確認して、ゆん達は一路、中央公園へと向かった。

                   ★  ★  ★

「なるほどぉ・・・見晴らしのいい高台にあるんだ!!」

手すりから乗り出してゆんが言う。
公園の開けた場所からは、シープクレストの町並みを一望できる。
溢れんばかりの草花、石畳の道、そして虹色の雫を降らせながら絶え間なく吹き出す噴水。

エンフィールドとは少し雰囲気の違うことを改めて知らされる。

「・・・・はいいけど、どこで合流するつもり?」

「そう、それが問題なんだよね、リオくん。」

「ううぅ・・・・・お手洗いに行きたいよぉ・・・・」

魅緒がぐずりだしたため、急遽、お手洗い探しを始めることにする。
たら〜りと汗を垂らしたまま、魅緒とゆん、リオにローラは走ることになる。

かなり・・・・・・

数分後、小洒落た小さな洋館風の建物を発見する。

「『チャーム・シャティエ・トアレッテ』?」

首を傾げるゆん

「ここがお手洗いですわ。結構綺麗で可愛い設備でしたわ。ゆんちゃんも気に入られると
思いますわね・・・。」

「ほ・・・ほぇ?」

中から出てきたのはセリーシャとエミルだった。つまり、B組ね。

「そうそう・・・中は、男の子も女の子も一緒になってますわ。リオくんといっしょですわ!!」

をいをい・・・・・・ゆんを萌えさせてどおする(爆)、セリーシャ!!

顔を真っ赤にして妄想モードに突っ走るゆん。はたして今、ゆんの脳裏にいかなる18禁が展開されているのであろうか?
それは次回のお楽しみ、である。

(続く)

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あとがき

駄目っスね。ええ、全然。
パペブルと悠久(悠旧)のコンビネーション目指したんだけどね・・・・
「北へ」ネタ振ったあたりで失速したね。駄目じゃん。

次回はゆんの妄想と魅緒トイレ編からマリア魔法暴走、パペブル逃亡編となる
予定だったり。

後悔してるよ、ええ。

1999/06/24 23:28 初版

春河一穂



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