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「悠久PerpetualEver「交換派遣」1話」 春河一穂  (MAIL)

ブルーフェザーとの交換派遣が締結したエンフィールド自警団。
そして、シープクレスト学園との交換留学生・・・・

エンフィールドとシープクレスト。
二つの異なる街は今、姉妹都市という新たなる一歩を踏み出したばかりであった。


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悠久幻想曲 Parpeturl Evergreen

交換派遣・・・それぞれの日常 〜ヴァネッサと澪乃の場合

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「ブルーフェザーコントロール、応答お願い!!」

旧市街の路地を駆け抜ける

「こちらブルーフェザー・コントロール、どうぞ。」

「魔法の使用許可をくれない?もうちょっとで追いつめるわ!!」

茶色の髪が舞う真っ赤な服がなびく。
腰のレボルバから銃を抜く。魔力を込めた特殊弾頭を確認する。
薬莢に属性毎に色分けされているのでその点は問題はない。

「了解。本庁に要請します。」

「早急に頼むわよ。」

エンフィールドでは公安きっての凄腕といわれ、自警団でもその手腕を遺憾なく発揮した。
かなりの銃の腕前をもつその女性。幻想もそして、街の面々も一目置く存在・・・・
ヴァネッサ・ウォーレンは自ら志願し、シープクレストへ来ていた。

「ブルーフェザーコントロールからヴァネッサ、使用許可が降りたわ。
相手はレイズ系。物理的な攻撃は無効だから、銀弾頭に換装するといいみたいよ。」

「コントロール、了解。・・・・・浄化魔法『ホーリィメルト』でいくわ。」

「了解。無理はダメよ。ここはエンフィールドじゃないんだからあまり派手に魔法使わない
ようにね、ヴァネッサ!!」

「了解。コントロール、通信完了。!!」

通信機を切り、薬莢ホルダから銀の薬莢、さらに浄化魔法の弾丸を手にとってリボルバーに
流し込む。
ちゃきっと引き金を引いて路地へと駆け込んだ。

「ヴァネッサ・・・・来たね。」

「はい・・・・じゃ、一発撃ち込むから、みんな、離れて!!」

銃を構え、大きな霧状のものへ構える。

「ちょうどよかったよ。うちらだけじゃ手に負えなくて・・・・・」

「処理はヴァネッサに任せよう。その他のものは被害を出さぬよう、対象周囲に結界を張れ!!」


ドゴォ・ドゴォオオオオオオオオン・・・・・・・・・・・

2つの銃声と共に、銃口から金色の光の2つの弾丸が放たれる

石畳に薬莢が叩きつけられて甲高い音を立てる。

金色の光が霧の中心に吸い込まれると、一気にに十字型に光が展開する。
吹き荒れる突風が結界内部にいるブルーフェザーの面々を襲う。
そしてまぶしく数度明滅すると、それは何事もなかったようにかき消えた。
突風もすっとかき消える。

「2発も使ったのはちょっと割に合わなかったかな?」

「・・・・コントロール、ルシードだ。映像とデータからの分析を頼む。」

超小型のパームコンピュータをペンで操作しながらルシードが言った。

「今から送る。」


シープクレストはエンフィールド以上に近代化が進んでいた。
フィスター貿易公司の大きな拠点があると言うことで、情報網インフラはかなり
整備されていたのだ。コンピュータや携帯電話もかなり見受けられるようになっているのだ。

ブルーフェザー用にカスタムされたパームも、デジタル通信が可能な超小型アンテナを装備していた。

「了解。こちらで先ほどの交戦データを受領したわ。今から分析にはいるから、
事務所に戻るまでには分析が終わるわ。本部にはこちらから転送しておくから。」

「すまない、頼む。」

それだけを言うと、ルシードは通信機を切った。



マリエーナ王国の有名な避暑地エンフィールドと、リュクセーヌ公国の北の玄関シープクレスト。
ブルーフェザーとジョートショップ・自警団第3部隊の相互交流から始まり、ついに姉妹都市提携。
挙げ句には、交換派遣や留学、ホームステイなどが行われるようになっていた。

エンフィールドの自警団からは、ヴァネッサがブルーフェザーに加わっている。
このために、新たに魔法を撃ちだす銃『唱える銃(マグナム・シャント)』を購入したのである。


一方、シープクレスト学園高等部文芸課には、エンフィールド学園からの留学生がきていた。
多くの希望者の中から選ばれたのは、ゆんの姉、澪乃であった。
魔法も使える、容姿端麗、性格もいい、成績ももちろん・・・・。
ほぼ決まりきったも同然だった。
ちなみに、有事には極力ブルーフェザーのサポートに回る事にはなっているものの、今のとこは
ヴァネッサのマグナムの弾に、魔力を込めたり、ブルーフェザーの面々にマリエーナの魔法を
教えると言った程度である。

「お帰りなさい。どうでした?」

ブルーフェザー事務所に戻ると、澪乃の姿があった。

「休憩したら、早速魔法のトレーニングを行いますわ。ヴァネッサ以外のみなさんは訓練室へ来て下さいな。
あと、ヴァネッサさん、消耗した『ホーリィメルト』を補充しておいてあげるわ。使用済みの弾丸を預けて
下さいね。」

「はい。威力は今回の戦闘レポートを参考にして調整して欲しいわ。」

「ええ。トレーニング開始までにはお返し出来ると思います。」

澪乃がヴァネッサから使用済みの弾薬を受け取る。ミーティングルームのテーブルの隅にポシェットから
小さな小箱を取り出す。
アルタークロスをテーブルの上に敷き、その上に小箱の中身を並べる。
中身は、色とりどりの粉末の入った小瓶・・・・これは貴石を粉々に砕いて粉末状にしたものである。
普通の弾丸で言う火薬に相当するもので、魔法に併せて調合し、魔力を込めるのだ。

「えっと・・・ダイア、水晶、カーネリアン、シトリン、虎目石、猫目石、ラピス、サファイア、エメラルド・・・・」

瓶を確認すると、小さな乳鉢に、さじで念入りに粉を入れていく。

「澪乃・・・・・なにをやってるんだ?」

ルシードが珍しそうにそれをのぞき込む。

「火薬の調合・・・・・といったところですわ。魔法を打ち出す銃、ヴァネッサさんがつかっているでしょう?
あれ専用の弾丸のお手入れ・・・・・ですね。これらの貴石に魔力を込めると魔法を具現化できる様になるのです。」

「良くは解らないけれど・・・・使った魔法の補充・・・ってことか?」

「そう言うことですわね・・・・」

さらさらと、乳鉢の中身を二つ折りにした紙を介して薬莢の中に流し込む。きゅっきゅと薬莢を密閉し、2つの弾を
手にとる。そして澪乃は小さな声でスペルの詠唱にはいる。
ブルーフェザーの面々も感じた。かなり大きな魔力が澪乃からその手の中へと流れ込んでいる事を・・・・

ふわっと魔力がはじけ、一気に収束する。澪乃が握っていた手を開くと、中には白銀に輝く弾丸がふたつ。
さっきまではふつうの弾丸であったはずなのに・・・・・。
それをヴァネッサへ手渡す。

「はい、おわりましたわ。さて・・・・・・・みなさんも休憩がとれたと思いますから、早速訓練をしてみましょうか?」


ブルーフェザー事務所の魔法訓練室。
その奥に、魔力センサーの組み込まれた可動式ターゲットが用意されていた。

「今日はルーン・バレットの早撃ちでもやってみましょうか?威力は単発に比べて弱まりますが、連続ヒットすることで
対象の足止めに用いることにも使えます。的確なコントロールが要求されますね。でも詠唱は1度でいいんですよ。」

「じゃぁ、やってみます・・・・・」

澪乃がコンソールを叩く。簡易M・M・Rプログラムが起動し、アップテンポのドラムンベースが訓練室に流れ出す。

「この音楽は、ま、タイミングを計るためのようなものなの。私ぐらいの実力ならこれぐらいが妥当ですわ。」

とはいえ、ゆうにBPMは250を越えていた。

「じゃぁみていて下さいね・・・・・」

上下にステップを踏んで頭の中でカウントする。

(3・・2・・1ゴー!!)

「右・右・前右・左・左」・・・・・。

モニターにもの凄い速さでたくさんのターゲットが流れてくる。それがシュートゾーンに重なった瞬間に、
澪乃は的確にルーンバレットをヒットさせている。

「ワン・ツー・スリー・フォー!!」

声に出してカウントする。的確なステップと照準合わせ、タイミングがこのトレーニングの全てだ。

「・・・・・・・・・」

ブルーフェザーの面々はそのエクストリーム・パフォーマンスに見入っている。

「澪乃ちゃんはエンフィールド学園高等部物理魔法課の主席生徒なのよ。M・M・Rマリエーナ魔法学園総合ランキングの
高等部・物理魔法課部門で1位だから。つまり、マリエーナ王国一の実力を持った魔法使いって事になるわね。」

交互に前に差し出す手から火球が次々にテンポよく打ち出され、ターゲットに吸い込まれていく。

「・・・・・・ねぇ・・・あたしらもあそこまでできるようになるの?」
「ヴァネッサさんがああ言うだけあるよ。」

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* M・M・R・E(マジック・マジック・レヴォリューション・エクササイズ)

攻撃魔法鍛錬 瞬発力・敏捷度・判断力・器用度鍛錬 場所:特殊訓練室

リズムに合わせて、対応するターゲットを魔法で破壊する。
エンフィールドのあるマリエーナ王国では有名な魔法トレーニングらしい。

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「はい。おわり〜」

最後の火球が曲の終わりと同時にターゲットに吸い込まれた。
簡易MMRソフトがトレーニング結果をモニターに表示する。


「・・・・・・・凄い・・・・・」
「・・・・何も言えないよねぇ・・・・」
「エンフィールドのみなさんってここまで魔法を使いこなせるんですか?」
「相手にはしたくないなぁ・・・・・仲間であって良かったって思うよ。」

画面に表示された評価は、最上級の『SSS』(トリプルS)であった。
命中率100%、反応速度は数ミリ秒単位。ミスは無しである。

「さて・・・・・みなさんにも頑張ってもらいましょうか。」

くるっと振り向いた澪乃が笑みを浮かべながら言う。

「もちろん、一番簡単なレベルからですけどね・・・・・・」

そして・・・・・・ブルーフェザー事務所から軽快なダンスナンバーが4時間近くにわたって
流れてくることになったのである。ルシード達実働班の悲鳴と共に・・・・・。

(ちなみに澪乃の言う「簡単」はレベル3程度である。エンフィールド学園でもレベル3をこなせるのは
魔法学科全生徒のうち2桁とのこと。)


「『反省会』よっ!!!」

その日の夜、澪乃の声が食堂に響き渡った
結局、ルシードから澪乃へとブルーフェザー隊長の座が移っている感じである。
しかし、澪乃はシープクレスト学園に留学生として在籍しているため、ルシード続投ということに
なっていた。

「ったく・・・・・MMRで疲れていたら、魔力は身に付かないのよ、わかる?
だいたいブルーフェザーのみなさんの体力の低さはちょっと問題ですね。素質があるからといって、
魔法というものは、一朝一夕で使えるようにはならないって事は、みなさんも知っていらっしゃいますよね?
とにかく、1時間やって未だDランクであるということはちょっと問題だと思いますよ。」

「それで・・・・実働メンバー全員娯楽系で3時間以上過ごした・・・・・ということですか・・・?」

澪乃に続いてメルフィが言う。
結局フローネを除く3名は、澪乃とメルフィ、ヴァネッサらに散々吊し上げられたのである。
(ちなみにルーティは自警団への交換派遣でエンフィールドに行っています。)


「はぁ・・・・ただいまぁ」

学生寮の駐車場に車が一台入ってきた。
ブルーフェザー事務所と学生寮、学校の行き来に、澪乃はマリエーナから持ってきた車を使っている。
反省会が長引き、寮に戻ったのは夜遅くだった。
寮の管理人は、澪乃がブルーフェザー関係者であることを知っているため、門限は無しということにしてくれて
いるのがせめてもの救いだった。

「シープクレストの魔法体系ってかなり甘々だったのね。かなり簡単に使えそうか・・・・」

制服のままでベッドに体を埋め、公安局から入手したブルーフェザー収得魔法体系資料に目をやる。
そこに描かれているのは、マリエーナとは完全に異なる細分化された魔法体系。
マリエーナ王国で確認されているだけで、5系統40種だが、この資料には8系統、70種が記載されていた。

澪乃自体も休日は公安局に出向き、魔法申請を行っている。シープクレスト系統魔法も25程取得した。
ただ、発動にスペルが無いのには驚いた。念じるだけでこれが発動するのである。

ただ、戦闘系のものは取得しておらず、主に回復・障害・結界・補助であった。
戦闘系はおもにマリエーナ体系で事足りると思ったからだ。威力もマリエーナ体系の方があるように感じている。

枕元の小さなテーブルに資料を置く。
明日は午前中は学校、午後はブルーフェザーに出勤(?)だ。

シープクレストはエンフィールドに比べるともの凄く近代的である。しかし、それ故に失われたものもおおい・・・・。
魔法もそんな一つなのだろうと・・・・・そう澪乃は考える。

明日は早い・・・。

テーブルの上の小さなスタンドの明かりを消して、澪乃の一日は終わったのだ。
そして、シープクレストの一日も終わったのである。

<おわり>


* シリーズ次回予告 *

次回はそれぞれの日常編「ルーティ・シェール・更紗」で・・・。
更紗は結局、由良のたっての希望で、エンフィールドに移民として受け入れられる事に。
橘家は3人所帯になって、「いもうとができたのぉ」とメロディ大喜び。

シェール・マリア・レミットの「イケてるトリプルマリアトリオ」結成。惨劇三度(笑)

ルーティとトリーシャの熱血チョップ修行など盛りだくさん。

さてさてどうなるんだろう・・・・・?

こう、ご期待!!


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