中央改札 悠久鉄道 交響曲 感想 交響曲

「交換派遣〜シェールとルーティの場合〜1話」 春河一穂  (MAIL)

ブルーフェザーとの交換派遣が締結したエンフィールド自警団。
そして、シープクレスト学園との交換留学生・・・・

エンフィールドとシープクレスト。
二つの異なる街は今、姉妹都市という新たなる一歩を踏み出したばかりであった。


---------------------------------------------------------------

悠久幻想曲 Parpeturl Evergreen

交換派遣・・・それぞれの日常 〜シェールとルーティの場合 その1

---------------------------------------------------------------

 ブルーフェザー来訪からまだほんの2ヶ月しか経っていないエンフィールドに、
ふたたびあの少女達の声が帰ってきた。

「何かねぇ・・・・・ほんの2ヶ月前に着たばかりなのに新鮮に感じるなぁ・・・・・」
「すでに更紗ちゃんは橘家に引き取られているらしいよっ。でも、よかったね。同族の保護者が出来て。」
「そうだね・・・・・いつでも会えるからね。しばらくは。」

 ふたりとも滞在時に街の地理はしっかりとたたき込んであるので迷いはしない。
シェールが率先してルーティをエンフィールド学園に案内する。

「ゆんちゃんが言っていたよ。『お姉さまがシープクレストに行ってしまったから、お姉さまの部屋を使ってね』って。」
「・・・・・・・それはシェールに対して言ったんじゃない?エンフィールド学園への交換留学生はシェールなんだし。」
「でも自警団の第3部隊は、有事に招集される形式のはずだよ。」

石畳を旧市街に向けて進みながらシェールが言う。

「つまり、エンフィールド学園の生徒としてお勉強も必要って事になるの。ね、ルーティ。」

 シープクレストの面々から見て、ど派手な視聴覚効果と威力を誇るマリエーナ王国の魔法は是非、収得して
おきたいものである。シープクレストで公安局から学ぶことの出来る魔法は地味で細かくて覚えにくい。
「使っているんだ!!」とその気にさせる魔法を是非、学んで持ち帰りたいと二人は考えて(?)いたのだった。

 マリエーナ王国の有名な避暑地エンフィールドと、リュクセーヌ公国の北の玄関シープクレスト。
ブルーフェザーとジョートショップ・自警団第3部隊の相互交流から始まり、ついに姉妹都市提携。
挙げ句には、交換派遣や留学、ホームステイなどが行われるようになっていた。

 ブルーフェザーからはお気楽少女のルーティがやってきた。何でも、るーてぃはんまーに次ぐ必殺攻撃第2弾、
るーてぃちょっぷを会得するために自ら交換派遣を志願したらしい。
エンフィールドにはチョップを極めた少女がいるのだ。それが誰か容易に想像がつくというのがアレだけど。
そのために自前のチョップ棒を持参するくらいの力の入れようである。

 一方、シープクレスト学園高等部文芸課からは、マリアにうり二つの少女、シェール・アーキスが
やってきている。マリア・レミット姫とコンビを組み、『イケてるトリプルマリア・ラブリーズ』なんかが結成される
事になる。しかし、しっかりもので常識をわきまえているシェールは二人のブレーキ役となるのである。

「ここが学生寮ね。」

 ようやく寮にたどり着く。
数ヶ月前、シェールが運び込まれた部屋の前に二人はいた。

「うん。ここがゆんちゃんのお部屋のはず。」

呼び鈴を鳴らす・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

返事がない。

「ゆんちゃん、いらっしゃらないのかなぁ・・・・・?」

呼び鈴をもう一度鳴らす・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

まだ返事はない。

「あら・・・・・・シェールさん!!」

そこへ偶然通りかかったのはシェリルである。

「どうなさったんですか?シープクレストからはるばる・・・・」

と言いかけて、ここで何となく状況が把握できた。
シェールがシープクレストからの留学生だということ。

「・・・・・そう言うことですね・・・・。シェールさんが交換留学生だったとは。
・・・今、ゆんさんは、講義のため登校しています。先に学園長先生にご挨拶されてきてはどうでしょう?
予定では、お二人とも中等部物理魔法科6期生に編入と言うことですから・・・・きっとゆんさんたちのクラスですわね。
とりあえず、澪乃さん(ゆん)のお部屋にお荷物を置かせてもらってはいかがですか?ちょうど私もこれから休講ですから。」

シェリルに案内されてエンフィールド学園の教務棟をゆく二人。
学園長への挨拶も思ったよりあっけなく終わった。胸には真新しいMMR対応メモリーカード一体型学生証が輝いている。

「魔法専攻の生徒はMMRをマスターすることも重要です。あれは基礎魔力のトレーニングマシンですからね。」

 MMR。それを二人は見たことがある。2ヶ月前に始めてここエンフィールドに来たときである。
 ゆんが舞っていた。大きな筐体のフットパネルの上を。
華麗に舞いながらその腕から繰り出される魔力の弾
センサースクリーン上のCGターゲットマーカーをテンポよく的確に捉えていく姿。
 セリーシャが舞っていた。ゆんとともに。
一挙狂わぬユニゾンが展開されていた。
同じタイミングでまったく乱れず舞う。
魔法の弾も乱れず、同じタイミングでターゲットマーカーをとらえる。
そんな姿・・・・・・。

ルーティも一度はMMRにチャレンジしてみたいと思っていたのだ。

「あたしにも・・・・大丈夫かなぁ・・・・・・」

不安な気持ちが言葉になって漏れる。

「大丈夫ですわ。ゆんちゃんのお友達ですから・・・・・」

シェリルがにっこりと微笑みながら二人に言った。


                       ★   ★   ★


「で、そこが物理魔法課中等部専用のお手洗い。休憩時間にゆんちゃんを探されるのなら、ここを最初に
たずねるといいですわ。だって、ゆんちゃんは・・・・・・・・・・」

案内しながら、シェールらをここまで連れてきたシェリル。シェリルがゆんの事を言おうとしたその時・・・・

キイイイイイイイイイイイイイイイイン・・・・・・

何か甲高い金属音と気流の音が入り交じったような、そんな音が近づいてくる。

「・・・・・・・・・・ちなさい!!校舎内での高速飛行魔法は禁止だぞぉ!!!!」

「・・・・ア・・・待たないもん!!」

 廊下の遙か先から弾丸のようにぶっ飛んで来るのはマリアと、物理魔法課主任教諭ヴィクスンであった。

これはまずい!!!!
シェリルはとっさに判断した。

「いけない!!はやくこの中に!!!」

女子トイレのドアを開けて言う。が、ルーティはひるまなかった。

「ルーティーにおまかせっ☆」

そう言うとすぐに両手を胸の前で組み合わせ、そして刹那の後、組んだ手を開いて叫んだ!!

「かの者の速さ、そして全ての力を封じたまえ。『ネディア』!!!!!!」

一気にルーティの体からオーラが展開され、そしてマリアへと突き進む。
マリアの体をとらえたオーラは、マリアを包み込み一気に魔力を相殺しにかかった。
急ブレーキをかけられたかのように、マリアはぴたっとその速度を失い、廊下に投げ出される。
制動をかけ、何とか停止したヴィクスンによって、その後マリアは保健室に運ばれるもの、後でこっぴどく
お説教されたということである。逃げる方が悪いと思うけれど。

「・・・・・ルーティの魔法、いつ見ても凄いや。」

シェールが、緊急シェルターに指定されているトイレ入り口から出てきて言う。

「その魔法・・・・・始めて見ますけど・・・能力ダウンの攻撃補助系魔法なんでしょうか?」

一部始終を見ていたシェリルがルーティーに聞く。
かなり博学なシェリルでも知らない魔法がそこにあった・・・・・。

                       ★   ★   ★ 

「で、なにがあったのかなぁ?」

シェールとシェリルの背後から、水が噴き出す音と共に聞き慣れた声がする。
一番奥の個室の戸が動いたかと思うと、かたんっと木の札の揺れる音がしてゆっくりと開く。

「噂をすれば、影ですわね。」

ヴィクソン先生の立ち去った後、やってきたのはセリーシャ・フィスターである。
セリーシャがここにいるということは、間違いなく、近くに彼女はいる。

「セリーシャさんがここに来たと言うことは・・・・・・」
「ええ、ゆんちゃんのお迎えですわ。」

セリーシャのシェリルに対する返事と同時に、奥から彼女が出てきた。

「はぁあ・・・・・すっきりしたぁ・・・・・・」

とここで、思いがけない顔ぶれを見つけるゆん。

「・・・・・・ルーティに・・・・・シェール・・・・?!」

「ゆんちゃん、ご存じ無かったんですの?ルーティさんにシェールさんは、これからエンフィールド学園で
魔法のお勉強をなさるためにシープクレストから来られたんですの。ゆんちゃんのお姉さま、シープクレストに
留学していらっしゃいますからね。」

「そ・・・・そうだったんだ。これから一緒に頑張ろうね・・・・だけど、お姉さまのお部屋は一人部屋なんだよね・・・」

女子寮は今は満室。唯一使える澪乃の部屋は一人部屋であった。

「ゆんちゃん、心配はご無用ですわ。ルーティさんは自警団の第3部隊の派遣も兼ねていらっしゃるので、
リカルドおじさまがお世話をなさることになりましたの。トリーシャちゃんなんか、チョップ特訓
するんだって意気込んでいましたわ。」

さすがはセリーシャ。手回しが早かった。

 とそこへ、時計塔から軽やかな予鈴が聞こえてくる。

「んじゃ、シェールにルーティ、行こうよ。次は基礎魔法エクササイズの授業だから、早速だけど、MMRやるよ?」

 エンフィールドをはじめとするマリエーナの魔法体系は、魔術を基礎魔法の向上によって覚醒させることで会得する。
シープクレストのような魔法申告などはない。全ては自分の力で覚えるのである。

「大丈夫。何とかなるって!!」

ゆんは二人の手を引いて、次の授業がある演習室へ急いだ。

 暖かい風が吹き抜けるエンフィールドの春。
出会い、別れ、そして再会・・・・・・・・。
全てが少女達を少しづつおとなへと変えていくのだ。

                       ★   ★   ★ 

午後。

 エクササイズの授業が終わる。これでゆんのクラスの今日の授業はおしまいである。

「初めてにしてはかなりの身のこなしだったね。鍛えてるの?」

 ルーティははじめてとは言えない好成績を初心者モードで出した。シェールはもう数日間は頑張れば慣れてくるだろう。

「ブルーフェザーは毎日任務があるってわけじゃないからね。体を鍛えたりするのも重要な日課だから。」

自慢げにルーティが言う。

「・・・・・・ちょっと寄ってくから待っててよ・・・・」

 ゆんが木の札を揺らして自分専用の個室に行ってしまったのを見届けて、セリーシャが言う。

「ゆんちゃんは私が責任もって。連れていきますから、ルーティさんは自警団詰め所で待っていてくださいな。
わたくしのお友達、芸術科のウェンディちゃんにお願いしておきましたから。校舎入り口で待って下さっていますから。」

「わかった。で、シェールはどうする?」
「あたしはセリーシャを待ってるよ。どうせ寮で暮らすんだから。」

シェールがセリーシャと一緒にいることにしたため、ルーティはウェンディ(非エタメロ)と共にリカルド家へ向かった。


                       ★   ★   ★

「トリ〜〜〜〜〜〜〜〜〜シャチョ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」

がちいいいいいん!!!!!

突如の不意打ちチョップはるーてぃはんまーの一閃によって失敗に終わった。

「やるねぇ・・・・・キミ。」
「あなたもね・・・・・・・。」

背後から現れたのは、2メートルほどの大きな手形付きの棒を軽々と構え、ポーズを決めている
女の子だった。

「ボクの名はトリーシャ。愛の戦士、トリーシャとはボクのことだよ、明智君。」

「・・・・・・・・・・明智君じゃないんだけどナ」

るーてぃはんまーを構えたままのルーティのツッコミが空しく辺りに響き渡った。

それがトリーシャとルーティの出会いであった。

<続く>



* ルーティ・シェール編 次回予告 *

夕暮れのリカルド家に二人の少女。
エンフィールドのチョップマスターと、シープクレストのはんまー使い。
武器使いの少女の熱い友情とは・・・・・・
業物を越えた愛の特訓が今、始まる・・・・・

次回「愛の戦士トリーシャ!vs希望の槌使いルーティ!」

(なつかしいなぁ・・・・くさなぎあきる師匠に今一度、捧げます!!)

あなたのハートにトリーシャチョップ!!!!(違)


* シリーズ次回予告 *

第3弾は更紗と由良のライシアンとメロディの気ままな日常をお届けします。
同族ということで心を開いた更紗。メロディをおねぇちゃんと慕い、雷鳴山麓の
橘温泉でゆっくり毎日を謳歌する。そんなほのぼのとしたお話に。

ご期待くださいね!!



中央改札 悠久鉄道 交響曲 感想 交響曲