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「交換派遣シェール・ルーティ編最終話」 春河一穂  (MAIL)

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悠久幻想曲 Parpeturl Evergreen

交換派遣・・・・・・エンフィールド編3〜ルーティ・シェールの場合

『愛の戦士トリーシャ!vs希望の槌使いルーティ!』

トリプルマリアの恐怖!!〜友・暁に没す〜

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マリアが暴走していた。
寮で拉致したシェールを引きずって、陽の当たる丘公園へやってきた。
その姿を見かけた市民は蜂の巣をつついたように四散し逃げまどう・・・・

そして誰もいなくなった・・・・・。

                       ★   ★   ★

それからこの事態に真っ先に気づいたのはゆんである。
慌ててトリーシャの家に電話し、リカルドに助けを乞う筈だったのだが・・・・・・

リカルドは勤務で自警団事務所に行っていたのだ。
しかも、間が悪いことに、その電話をトリーシャが受けてしまったからたまらない。

自称「愛の戦士」と言うくらいだ。一度火がついたら彼女の暴走は誰にも止められないだろう。

「これは一大事!!愛の戦士の名を、ボクの名を呼ぶ声が聞こえるっ!!!」

ネグリ姿から一気に蒸着すると(笑)チョップ棒を構えて玄関に向かい・・・・・・・
何かを思いだしたかのように・・・・・・・・・・

たったったったった・・・・・・どたどたどたどたどた・・・・・・・ばくんっ!!!

ぼくぅっ!!!!!!!!

何かにチョップをかまし・・・・・・

ずたん・・・・ずたん・・・・ずたん・・・ずたん・・・・・・ずり・・・・ずり・・・ずり・・・・

 頭にたんこぶをつけたルーティとはんまーを引きずって、トリーシャが戻ってきた。
そしてそのまま、トリーシャは旧市街へ、電波の届くままに向かったのである。

                       ★   ★   ★

ゆんはそれから自警団事務所にトラブルコールをした。トリーシャよりは安全な選択だ。
リカルドは、第3部隊に緊急招集を命じたのである。
もちろん、トリーシャの暴走阻止もその任務であった。

「セリーシャぁ・・・・大変だよぉ!!!!」

リカルドとの電話の後、ゆんはセリーシャに内線を入れていた。
トリーシャの影をやっていたくらいだ。

「・・・確かに。こうなったら、頑張ってシェールちゃんを救出しましょう!!」

急ごう!!

胸元のマナ・ブーストに気合いを込める。小声で絆を強める文句をつぶやく。
きらり・・・とマナ・ブーストが強く輝きを増す。

(さぁ、頑張ろう・・・・)

心の中で胸元の貴石に声をかける。

(モチロンダヨ・・・・・・ダッテ、アナタノパートナーダモノ・・・・)

貴石の意志が、そう答えたような気がする。


ポシェットに魔法の媒体と電子グリモワールを入れて、扉を開けて
寮の廊下へと出ると、セリーシャが既に来ていた。
おしとやかないつもの格好ではなく、濃紺と真紅で構成されたトリーシャ
衣装であった。トリーシャの影としてのもう一つの姿である。

「お待たせ。それでは行きましょうか?」

いつもとは少し口調の違うセリーシャに、ゆんの気持ちも引き締まる。
業物のチョップ棒(少し小柄)を手に、セリーシャが促す。

そして、ゆんとセリーシャは、陽の当たる丘公園へと向かいかけだした。

                       ★   ★   ★

「ほらほら、怯えていたら失敗しちゃうぞ☆」

陽の当たる丘公園・・・・そこではマリアとレミットによる人体魔法実験の
真っ最中だった。
拉致されたシェールはモルモットちゃんとしてぐるぐる巻きにされて転がされていた。
おでこに魔法陣ステッカーを貼られて・・・・・・
今回の実験のお題は、人格入れ替え。シェールと自分を入れ替えちゃおうという魂胆だった。

「これを成功させれば魔術師協会だってマリアのこと認めてくれるはずだもん。」

もう一枚を自分のおでこに張り付ける。
あとは呪文の詠唱だけになった。

                       ★   ★   ★

「おい、これははっきり言って、ブルーフェザーとの国際問題になりかねないぞ!!」

通りの石畳を騒々しくかき鳴らす二つの足音。

かちゃかちゃとアルベルトの背中では、愛用の槍が音を立てている。
「よりによってマリアだよ。ショート財閥令嬢だから、あまり手出しは出来ないし・・・・」

「ゆんの言っていた、電子グリモワールを没収すれば何とか勝機は見えてくるな」

「果たして、マリアがすんなりと渡してくれるかが問題だな・・・・・」

「そうだな・・・・・・」

互いにあれこれと善後策を興じる。もう、道のりの半分ほどすぎただろう。

「だけどそうも考えてはいられないぜ、幻想。」

アルベルトが言う。もうすでに陽の当たる丘公園の中央門が目の前にあった。

「あ・・・幻想さんにアルベルトさん!!」

その門の傍らで手を振っているゆんの姿。

「ゆんちゃん・・・・セリーシャちゃんはどうしたんだい?」

「セリーシャなら先に行ってもらってるけど。対トリーシャ用にちょっとだけ、
イベントを用意しているんだ・・・・・」

「ゆん・・・・イベントって何なんだ?」

アルベルトが言う。

「・・・・・トリーシャを引きつけているスキに・・・ね。」

ゆんの言葉に、アルベルトは黙ってうなずいた。

                       ★   ★   ★

「マリア・・・・・キミの悪事もここまでだよっ!!」

「ほぇ?」

公園の中央部、虹色の泉で魔法実験をしようとしているマリアの目の前、
泉の水盤の彫刻の上に人影がふたつ・・・・・。

きらりと光る太陽の日差しと泉の彫刻が吹き出す霧状の水。それが組合わさって、
七色の二人のシルエットを浮かび上がらせる。

「エンフィールドに悪はびこるとき、愛の戦士、現る・・・・・
トリーシャフォスター、ここに見参!!!」

「・・・よくわかんないけど、希望の槌使い、ルーティ参上!!」

トリーシャの真似をして、ルーティが言う。

「とうっ!!」

二つの声が一つに重なって・・・・・・


べち


不協和音にかき消された。見事に水盤からルーティの足がにょっきりと生えていた。
ハンマーはただでさえ重量バランスが片方に集中してるから、飛べば重心が大きい方が
下になることは見当がつくだろう。

水面をぶくぶくと泡がはじけ・・・・・・そして泡すら出なくなった・・・・・

・・・・・・・・・やばいぞ、をい。(ということでルーティしばらく戦闘不能)

一方、トリーシャはすちゃっと自慢のチョップ棒を構えてマリアに向かう。

「マリア、おとなしくボクの裁きを受けるんだよっ!!今ならまだ更正できるからっ!!!」

じりっ、じりっとマリアに迫る天誅チョップ棒。
慌ててグリモワールをポケットに入れようとして、それを地面に落としてしまった。
ちなみに、電子グリモワールは対衝撃構造のため、これしきの衝撃で壊れることはない。

「あ!!!!!」

マリアが手を伸ばそうとするが、レミットが手を引いて戦術的撤退をうながす。

「駄目!!!あれはマリアにとって大事なものなの!!」

それでも必至に手を伸ばそうとしたマリア。
そこへトリーシャのチョップ棒が高々と振り上げられる!!!

(激やば・・・・・)

もう駄目かとマリアはとっさに頭をかかえた。が、衝撃が頭部に加わることはなかった。

がきぃん!!!!!

黒塗りのチョップ棒がトリーシャのチョップ棒をしっかりと捉えていたのだ。

「愛の戦士とか言って、無差別に凶器振り回すのはどうだろう?ボクが相手してあげるよ。
リカルドさんやゆんちゃんから全ては聞いたからね・・・・・クックック。」

「そ・・・・・その声は・・・・・!!!」

「トリーシャドウこと、勇気の騎士、セリーシャ。華麗に活躍!!!」

漆黒のトリーシャルックを纏ったセリーシャが現れる。ぶんと、チョップ棒をなぎ払い、
もう一度構える。

「その悪行もここまでだよ!!ボクが楽にしてあげるからね!!!」

笑みを浮かべセリーシャが言う。このトリーシャ・シャドウの時は口調も
トリーシャに似るのである。

「負けて・・・・たまるか!!・・・・ボクだって・・・・愛の戦士だもん!!」

チョップ棒を構える。


がきぃん!!!きぃぃん!!かぁあん!!!!

チョップ棒同士が激しくぶつかり合う音がする。
ちなみにグリモワールは歩道の上に落ちている。

「チャンスっ☆」

さっと手を伸ばすマリア。しかし・・・・・

「これは没収だな、マリア!!」

アルベルトが槍でグリモワールを弾く。

くるくると回りながら、グリモワールは幻想の元へと歩道を弾かれていった。

「あぅう・・・・・」

マリアの手は宙を空しく空振りした。

「街の平和のためだ。預からせてもらうよ。あとでセリーシャに頼んで収録内容を8割ほど
参照禁止にしてもらうことになりそうだけど、悪く思わないように。」

「むむっ、怪しいやつだ!!!!」

水の中からざばっと復活したルーティがはんまーを構える。

「一撃必殺、るーてぃーはんまー!!!!!」

ぶぅん・・・・・・どがっ!!!

ルーティーハンマーはセリーシャを捉えた。宙へそのままセリーシャを打ち上げる

「うぐぅっ!!!!!」

ドシャアアアアアア!!!!

そのまま地面に叩きつけられるセリーシャ。

「みたか!!トリーシャをいぢめる悪いヤツはこうだっ!!」

何かルーティのキャラが変わってきている気がする・・・・・・

「・・・・・・痛ぅ・・・・・」

頭を抱えるセリーシャに追い討ちのトリーシャチョップが襲う!!!!


「『ウィンリッド・フィール』っ!!!」

ゆんの声と共に疾風の障壁がセリーシャを包み込み、トリーシャの攻撃を弾いた。

「ぁはぁ・・・・セリーシャ、大丈夫?」

「ゆんちゃん、ナイスタイミング。たすかったよ・・・・これで2対2。互角・・・・と
言いたいけど、相手は二人とも物理攻撃の達人だからこっちの分が悪いかも。」

「大丈夫。そんな事もあるかと思って、きょーりょくな助っ人を呼んでいるんだ。
とある人に頼んでね・・・・」

ゆんが小声で障壁の中のセリーシャにささやく。

「今、『ホーリーライト』詠唱するから・・・・・」

その時、ルーティはアルベルトを襲っていた。見境無いものである。
トリーシャも、『ティンクルキュア』で疲労を回復させていた。
マリアとレミットは幻想によってしっかり捕獲されていた。

ゆんの魔法で体力を回復させたセリーシャが障壁を破って外へ出る。

「さぁ、トリーシャ、チョップ棒を置くんだよ。破壊は何も産みはしないんだ。」

セリーシャが言う。

『そうだ・・・・少女よ。武器を捨てるのだ・・・・・』

かっと日差しが強く輝き、黒い影が石畳の上に伸びる。
その筋骨粒々の体つき。低く貫禄のある口調・・・・・
まさしくそれは・・・・・・

「・・・・・・・マスクマン・・・様・・・・・・」

トリーシャの目の前にマスクマンの姿があった。
ちなみに、マスクマンはリカルドの仮の姿であるが、ほんの一部の・・・・
エンフィールドでも数名しかその事を知らないというのである。

『少女よ。おまえの拳は汚れている。力ずくの愛は存在はしないのだ。』

「・・・・・・・・・・・・マスクマン様・・・・・・・」

『私直々に愛というものを教えようではないか・・・・・・』

じりじりマスクマンがトリーシャにせまっていく。

「是非、ぜひお願いします!!!!!」

マスクマンの手ががしっとトリーシャの肩を鷲掴みにする

『後悔するなら今のうちだぞ・・・・少女よ!!』

「・・・・・・・・え、後悔?」

『1週間は過酷なトレーニングをやってもらう。もちろん、それまでは戻れない。』

「ちょ・・・・ちょっとぉ・・・・・・」

『同意と見なし、おまえの身柄を預かる。さぁ、行くぞ・・・・』

「ちょっと・・・・待って・・・・・・・・・・ぇ・・・・・・・・・・・・・・・」

愛の戦士はマスクマンに引きずられて公園から消えていった。
いつの間にか、自警団の二人やゆんにセリーシャにシェールもいなくなっていて、
結局ルーティが呆然と立ちつくすのみである。

こうして悪は滅んだ。
しかし、これで終わったとは思えない。

マスクマンの熱いお灸を据えられたトリーシャがまたいつ暴走するか・・・・・
マリアがいつ暴走するか・・・・・
それはわからない。

その時、再び君の名を呼ぼう。
勇気の騎士、セリーシャと!!!
チョップ棒片手に頑張れ、セリーシャ!!負けるな、セリーシャ!!!

・・・・・・・・ってこれ、交換派遣でなかったか?
話が変わってしまったけど、ま、いっか(笑)
























「とにかく、よかった、よかった」

ゆんの行きつけの、新市街にある食堂「吉原亭」にゆん達はいた。

いつものように牛丼をすすっていたのである。

「ホント、あの時はどうなるか・・・心配でしたわ。」

いつものふりふりに着替えたセリーシャが言う。口調もいつものに戻っていた。

「リカルドおじさんが直々に鍛え直してくれるから安心だね。」
「え?リカルドおじさんが?あれってマスクマンじゃなかったの?」

「それが・・・・・ねっ」

桜盛りの牛丼を手ににっこり笑うゆんだった。

結局今日もエンフィールドは平和だった・・・・。



<おしまい>


* シリーズ次回予告 *

第3弾は更紗と由良のライシアンとメロディの気ままな日常をお届けします。



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