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「狂奏曲」 久遠の月  (MAIL)
   悠久幻想曲   龍の戦史   第10幕   狂奏曲

闇の中に蠢く者がいた。拘束衣を着た銀髪の青年。まるで堕天使のようだ。翼をもがれ、地獄へ落ち、神を憎む天使。そう思わせる何かを持っていた。そんな彼に近づく、人ならざる者・・・。さながら闇の中の一条の光・・。人ならざる者は語る・・。
「そなたが我々、天を統べるものに接触してきた者か・・・・?」
「そうさ」
「何用だ?」
「いい事を教えてやろうと思ってな」
「何だ?」
「常世界法則(システム・ユグドラシル)におけるイレギュラーの存在についてだ」
「な!!!それは誠か!?」
「信じるも信じないも貴様等の勝手だ」
「信じたくはない・・。それは我らの存在の危機を意味する」
「だろうな」
「イレギュラー・・・。全知全能の神を消せる者・・・」
「そして、人間の守護者・・・」
「即ち‘神殺し’・・。そなたは我らになぜそのような事を教える?」
「その神殺しが憎いと言ったらあんた信じるか?」
「私にはそのような感情が理解はできないが、それが理由なのか?」
「ああ・・・」
「そうか」
「なぜそんな事を聞いた?あんたは天使。神の使いだろう?」
そう嘲るように言い放つ青年。
「ああ。私は天使。我は絶対足る神に仕えるもの。それ以上でも以下でもない」
「ならなぜ俺に理由など聞いた?貴様らにはイレギュラーが存在する。唯それだけで十分なはずなのにだ」
「!!!」
青年の指摘に驚愕する天使。自覚の無い事を指摘された天使の表情は迷子の子供のようだ・・・。
「まあいいさ。俺には関係無い。で、どうするんだ?」
「決まっている!我らはその存在を処理するだけ・・。彼の存在はどこだ?」
「エンフィールド・・・」
天使の端正な眉がわずかに顰められる。
「シーラ・シェフィールドか?」
「そなたはどこまで知っている・・・?」
その声は警戒心が含まれる。
「さあな。躊躇するのか?」
「愚問。我は彼の存在を処理する。もし障害となるなら消すまで」
「じゃあこれでお別れだ。また用があれば呼ぶ」
その言葉の後にはその存在はそこにはいない。風の音に声が運ばれる・・・。


「貴様らにもせいぜい踊ってもらうぜ。さあどこまで耐えられるかなぁ、ヒビキ?」


背筋の凍るような声・・・。それは酷薄な笑みを想像させた・・。




天窓の洞窟から帰ってきた日より三日後のジョートショップの自室にてヒビキはベッドの上に寝転んでいた。
「神龍、か」
ため息をつかざるを得ない。あれは強力過ぎる。ふと天井裏あたりに人の気配を感じた。
「シード様」
一つため息をつく。自分をこんな呼び方をするこの街にいる人物はこいつらしかいない。
「何度も言うようだけど、今の俺はヒビキだ。クロウシードじゃない。」
「我らにとってはあまり関係ありませんよ。我らはあなたという人物に仕えようと決めたのですから」
こいつらは旧オレルス公国諜報部である。ヒビキはオレルスを出て約一ヶ月後に諜報部に発見されている。出来得る限り足跡を残さずに来たというのにだ。舌を巻くより他ない。
その後、ヒビキの影となって諜報活動をしているがほぼ毎回このようなやり取りをしている。全員で十三人。男5、女7、妖精1という割合だ。トイレや浴室などの時以外はいつも一人は傍にいる。エンフィールドでの生活模様は不明。収入源はバイトや、定職につくもの色々である。最初の頃は鬱陶しく感じ、オレルスに返そうとしたのだが強硬に反対され流石のヒビキも説得を断念し現在ではしたいようにさせておいた。それで現在はショート財閥に関する情報を徹底的に調べさせている。
「まいいや。それで収穫は?」
「現会長秘書、ハメット・ヴァロリーがショート科学研究所で何かを発明した模様。それとアリサ・クリスティアに10万ゴールド貸したのも彼の仕業と思われます」
「それで何かとは?いつ?」
「シード様がここへ来る少し前で、詳細は現在調査中です」
「頼む」
「わかりました」
「今度全員連れて来い。昼飯ぐらい奢ってやれるから」
そうにっこりと微笑む。純粋に相手を想った綺麗な笑顔である。
「ありがとうございます・・・」
気配は消えた。一人残されたヒビキは再び考え事に沈んでゆく。
「ハメット・ヴァロリー。この間会った仮面の男・・。あれは俺への妨害か・・。知るはずのない神龍を知る、シャドウ・ダークネス。どこかで、繋がっているのか・・・?」

その疑問に答えるものはいない・・・。


〜翌日エンフィールド学園〜
「では、今日の講義を担当してくれるトウドウ・ヒビキさんです」
「よろしくおねがいしますね」
彼の笑顔の犠牲者は更に増えていく・・。

「何か聞きたい事は有りますか?聞かれた事は多分どんな事でも答えられると思います。もし無いようでしたらこちらから何か説明します」
とりあえず全体を見回すとマリア、トリーシャ、シェリル、クリスがこちらを期待の目で見ている。実際ヒビキが何かをしでかすのを心待ちにしている。良い意味での好奇心だ。
他の生徒達は半ば放心したようにこちらを見ている。怪訝に思うヒビキ。鈍感な彼には先ほどの微笑みに撃沈されたとは露ほども思わない。
「ないようなので、魔法の発動時における、呪文と印についてお話しします」
その議題は魔法の根底どころか世界の法則すらばらしかねないものだ。講義に参加しているシスター・ジーナもこちらを顔を興味に輝かせながら見ている。
「というわけですから、魔法の初動加充時間の短縮ということもできるわけです」
そこまで話し終わるとチャイムが鳴る。あきらかに全員が不満の顔をしている。
「じゃここまで。次に来るのはいつかわかりませんが、その時までに自分の質問をまとめておいてくださいね」
そう言い残し教室を出て行った。

この後エンフィールド学園内にトウドウ・ヒビキファンクラブなるものが結成され、会長にトリーシャ・フォスターが就任し、ジョートショップへの依頼嘆願書から、ヒビキの姿を映したフォートなどが売買され、エンフィールド中にその存在を知らしめることとなる。その組織の中に諜報部が全員入っているのを知って、シンとほのかを爆笑させたのは結成より二日目の事である。カスミは曖昧な笑みを浮かべつつその組織に協力させられる事となる。





〜あとがき〜
夜斗さんごめんなさい!少し遅れました。テストも終わった事だし書きましょう!受験生がこんなことやってちゃいけないのは分ってるけど。ネタのある限り!!

エンフィールドに響き渡る龍の咆哮・・。その想いはあなたの胸に届きましたか?

では次回〜エンフィールド最後の日〜をお楽しみに!



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