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「交渉」 久遠の月
   悠久幻想曲   龍の戦史   第4幕   交渉

 ヒビキが釈放されてすぐに、アレフ、クリス、ピート、エル、リサ、メロディ、パティ、シェリル、マリアの順に交渉をはじめた。ジョートショップの運営についてだ。マリアが後のほうにきたのは、他にも聞かなければいけないことがあるという配慮だったのだが、別の危険性も伴っていた。それぞれ手伝うにいたっては、条件を出してきた。もっともヒビキが気負わないための配慮だったが。女性陣の思惑も多分に入っていた。
何か知らんが、ヒビキはかなり女性に人気がある。加えてかなりまめな性格をしていた。
それに加えてかなりの美形に属する凛々しい顔立ち。もはや自明の理というやつである。

アレフにはナンパの手伝い、クリスには学園の課題の手伝い、ピートとは冒険の手伝い、
エルとはチェスの相手、リサは訓練の相手、メロディはお話しを聞かせてくれること、シェリルは小説のネタ提供、パティはさくら亭でウエイターをやること、マリアは魔法を教えてくれること(あくまでレベルに応じたものに限ったが)である。

それぞれ理由はあったりする。
美形であり、人気があること。
戦術、戦闘術にすぐれていること。
魔法に対する知識がかなり豊富であり、見たことのない魔法を使うことすらあった。
冒険者として生活していたこともあったので話題が豊富。
上の理由からパートナーにするのに都合がよかった。
歴史を主とする学問にも精通していた。
まあとりあえずこれだけあれば、いくらでも金にはなろう(笑)


それでこの後は、シェフィールド家のシーラのところにお邪魔するところであった。
店の手伝いと10万ゴールドについてである。
シェフィールド家の敷地の前につくと、誰でも吐くだろうセリフをはいた。意味合いはずいぶん違ったが。
「立派な屋敷だな・・・。ま、シーラ見てれば想像はつくな・・・」
玄関の前まで行くと、扉をたたいた。・・・・。しばらくするとジュディが現れた。ヒビキの姿を確認すると、少し驚いた風だった。
(まあ、始めてくる人間だしな)
そんなヒビキに微笑みかけてジュディは用件を聞いた。
「あらヒビキさん、お嬢様に御用ですか?」
「ああ。あと御主人にも聞きたいことがあるんだけどご在宅かな?」
「ええ、いらっしゃいますわ。では中へおはいりください」
「あとジュディ。俺に対してはそんな堅苦しい言葉づかいはやめてくれないかな?もう少し軽くていいよ、友達なんだから」
そう笑いながら言うヒビキにジュディは少し頬を染めて笑いながら返事を返した。
「ありがとう・・。」


リビングに通されたヒビキを待っていたのはシェフィールド夫妻だった。
「あなたがヒビキ君ですか。なるほどいい人に回り逢えたわね」
開口一番そう言われてはなんて言ってよいか判らなかったのでとりあえず苦笑いで返す。
「コホン。まあ座り給えヒビキ君。話しはよく娘から聞いているよ。それで私に何の用かね?」
ソファーに座ったヒビキはまずまっすぐに相手の瞳を見詰めた。
「私の置かれている現在の状況はそちらでもご理解していただけると思います」
その口調は普段のヒビキの口調ではなくもっと改まったものだった。
「美術品の盗難だったかな?とても君のような人間がするとは思えないが」
「そういっていただけると嬉しいですが。その件についてお聞きしたいことがあるのですが、嘘偽りなく答えていただけますか?」
「約束しよう。して、その内容とは?」
ヒビキはこれまでのことをかいつまんで説明した。
「そうか。たしかに財力からみれば我が家か、ショート家ぐらいだろうな」
「モーリス氏も調べてくれるといってくれましたが、そちらもそのぶんだとご存知ありませんでしたか」
「すまないな。私ではないよ」
「ご迷惑をかけました」
「娘に用が合ったのではないの?」
「あ!忘れていました。シーラさんはどこにいらっしゃるのですか?」
「もうレッスンの終わる時間ね。こちらにいらっしゃい。案内するわ」
「お願いします」
そういってリビングから出て行く妻と青年を見ながら当主はなんとも複雑そうな表情をしていた。
(あの青年にならシーラを任せることができるが・・。親というのはなんとも寂しいものだな)


練習室につくとヒビキは実に軽い挨拶をした。さっきまでとはまるっきり別人である。
「や。シーラ」
「ヒビキ君!?どうしたの?」
「シーラ。ママは無視なのね・・。哀しいわ。手塩にかけた娘が遠くへいくようで」
「からかわないでよママ。それでどうしたのヒビキ君?」
「シーラに二つお願いがあってきたんだ。」
「お願い?」
「ああ。暇な時でいいからジョートショップの仕事手伝ってもらえないかな?」
「私が?」
ヒビキが力強く頷くと、シーラの目は母のほうへいった。
「自分のやりたいようにやりなさい。止めはしないわ。あの人もきっとそう言ってくれるわ」
その言葉に励まされるようにシーラはヒビキの目をしっかり見つめて言った。
「私のほうからお願いします。お店、手伝わせてもらえませんか?」
「ありがとうシーラ!」
そういうとヒビキはシーラの小さな手を両手で握った。握られたシーラは突然のことにビックリしながら顔を赤らめ嬉しそうにしていた。
「それで二つ目は何なの?」
奥様の一言でシーラのつかぬまの幸せは終わりになった。
「よければ今ここで一曲聞かせてもらえないかな?」
そう照れたようにいった。
「喜んで」
シーラの今日一番の笑顔だった。

シーラの選んだ曲は夜想曲だった。いざ弾き始めようとするといたずらっぽい顔をしたヒビキが母に何事か話していた。
とりあえず気にしないで弾き始めるとシーラの弾くピアノに混じってヴァイオリンの音が入ってきた。驚いてそちらを見るとヒビキが笑いながら弾いていた。その技術はシーラも母もビックリするほど高度なものだった。シーラのピアノを押し上げるようなそんな音色にシーラも今までにないほどリラックスして弾けた・・・。


曲が終わると二つの拍手が聞こえた。父と母の拍手するのが自分とヒビキだと思うと、赤くなるしかないシーラだった。
「実にいいものを聞かせてもらったよ、ヒビキ君。それだけの腕前をもつヴァイオニリストは私は数人しか知らないよ」
「いっそのことシーラのお婿さんになってもらいましょうか」
そんな一言に二人は仲良く顔を赤くするのだった。


「またいらしてね。今度はじっくり聞かせてもらいたいから」
「はは・・。わかりました」
「今はつらいだろうががんばってな」
「お心遣い感謝します・・。」
そういって頭を下げる。
「これからもよろしくね。ヒビキ君」
「頼りにしてるよシーラ」
「今度おいでになったときはおいしいお茶を入れますから」
「楽しみにしてるよジュディ」
そう言うとヒビキは帰っていた。

後にパティに条件制を聞いたシーラが自分と一緒にレッスンを受けることを条件にしたので一騒動起こったのは余談である。


そんなヒビキを見つめている男がいた。その男は呪詛のような言葉をヒビキを見ながら呟いていた。
「苦しめ苦しめ憎め憎め死ね死ね。おまえは・・・・どこまで運命に抗えるかな?どこまで血の業から逃れられるかな?おまえは人を幸せなんかにできゃしねーんだよ。おまえは英雄なんかじゃなく死神なんだからな・・・・。」
そう言う男の顔もつらそうだった・・・・。




〜あとがき〜
この作品でのシャドウは倒す存在でなく、乗り越えて行けるものにしたいため性格、容姿、存在理由、口調を変えさせてもらいました
ヒビキはむしろ街の人の信頼を得ようとがんばるのですが、そのまえに「約束」いや「条件」か。それに振り回される日々が続きます。さーて誰とくっつけようかなー。
あ、そうそう。ヒビキは過去にかなりの経験をしています。そのお話しも外伝形式で出そうかなーとか思ってます。ネタがあるなら下さい。

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