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「日々」 久遠の月  (MAIL)
   悠久幻想曲   龍の戦史   第8幕   日々

(やってらんねーな・・・・)
珍しくもないがヒビキは途方にくれていた。ちょっと前は彼の正体が一部とはいえばれて、周囲の反応が変わってしまうか?と真剣に悩んだが現実は悲しいまでに変わっていなかった・・・。彼らにとっては実に嬉しい誤算だったのだが。嬉しい誤算のとうり、現在も今まで同様、よろず揉め事の仲裁人としての立場にされている。で、今やっていることといえば・・・・・。
「あれ?こーだったかな?」
目の前にいる金髪の魔法関係のトラブルの元・・・・。
「うん!こーにちがいない!」
言わずと知れた・・・・。
「だってマリアは魔法の天才だもん!」
マリアである・・・。
「実に綺麗にやってくれたな〜。目的の魔法と違ったようだが」
そう半眼で告げてやると目の前の少女もさすがにこの惨状には言い訳はしようとしなかった。
「あ、あはははは・・・・」
「笑い事じゃないぜ・・。それにしてもよく燃えたな〜」
二人そろって現実逃避している。ヒビキには素直に賞賛の響も入っていたが。
「さすがに森半分焼き尽くすと、お説教じゃすまないな・・・」
その一言にマリアが硬化する。
「ヒビキ・・。なんとかなんない・・・?」
無言で返す。たっぷり二分ぐらい沈黙が二人の間を支配する。
「魔力の残りが少ないから、今日は無理だ」
今までヒビキは森半分焼き尽くすような炎を鎮火していたのである。余力がなくても当然である。涼しい顔をしているが。
「とりあえず、逃げれば?原因不明の炎が森を焼きましたで良いんじゃない?明日あたり災害対策センターに行って話しつけて森をもとどうりにするからさ」
はっきり言ってそんな甘いものではないのだが・・・。
遠くの方から大勢に人の声が聞こえてくる・・・。
「ほら、言い訳はしといてやるから」
泣きじゃくってる少女の頭を優しくなでながらそう言う。
「・・うん」
頷いたのを確認すると、光の円が彼女を中心に走り次の瞬間には彼女の姿は消えていた。


「君がやったのかね?」
「どちらのことですか?」
名もない消防員Aにそう答える。
「焼いた方だ」
「知りません」
「じゃあ、なぜ君がここにいるのかね・・?」
少し怒っているようだがそんなことを気にするヒビキではなかった。
「鎮火したからですよ・・」
そう苦笑を顔に貼り付けながら答える。
「バカな!あれだけの勢いの炎が貴様のようなヤツ一人に消せるものか!」
一般論だと思うから苦笑をさらに深くする。もし仮に彼の友人達なら大概の事は信じただろう・・。
「じゃあ、それだけの炎がなぜ消えてなぜ俺がここにいるんです?」
先ほど反論した消防員Bにそう尋ねるとなにも言い返せないのか今度は沈黙している・・。
「鎮火のことは感謝しよう・・。君は火をつけてはいないんだね?」
その言葉には確認のニュアンスが強く含まれていた。
「ここまで燃えるまでに鎮火できないようならまだ燃えてますよ」
「ちがいないな」
「隊長!こいつは例の美術館の!」
アルベルトみたいなヤツ・・。それが正直な感想だ。
「そうだな。だが、鎮火したのは彼のようだし先ほどのセリフも嘘ではないだろう」
いい眼してるよ・・。心の中でだけ賞賛する。頃合を見計らって声をかける。
「・・あの」
「ん。なんだ?」
「明日、ジョートショップにこの森のことで依頼していただけませんか?」
「どういうことだ?」
「この森を元どおりにします」
「できるのか?」
「はい」
(真っ直ぐな、澄んだいい眼をしている。本当にこんな人物が泥棒などするのだろうか?)
「では依頼しましょう。この森を頼みます」
「任せてください」
ヒビキは微笑を返した。



「と、いうわけで」
「ああ、さっきの火事のことだな。」
「まさか、やるの?」
オレルス組にはヒビキのやろうとしていることが理解できたらしい。
「もちろん」
彼のその微笑みはアレフの顔を赤くさせるほどの威力を持っていた・・。当然だが彼は天性の女好きである。その彼を撃沈する程のものとあれば、女性陣には対処の仕様のない反則技のようなものである。まあ結果はあえて語るまい・・・・。
先ほどの攻撃から逃れたのか、エンフィールド組も現世に戻り始め、先ほどの会話の意味をトリーシャが代表となって聞いた。
「ヒビキさん、何しようとしてるの?」
やはりまだ顔が上気しているが、取り立てて問題はない。
「森を元に戻すんだ。約束したからな」
「・・・どうやってですか?」
珍しくトリーシャチョップを食らっていないのに現世復帰をしたシェリルが心底不思議そうに聞いた。
「明日までの秘密」
「・・そうですか」
その後ろで・・・
「観客どうしようか?」
「見物両いくらにする?」
「フォートにとって・・・」
などと後ろでこそこそ相談しているシンとほのかに、どこから出したか判らないスリッパで後頭部を一撃する。
「いたっ!」
「どこからだした、そのすりっぱ!」
シンには手加減なしの思いっきりやったのでいくらか鈍い音がした。そのせいか涙目で文句を言ってくる・・・。ヒビキはそ知らぬ顔だ。
そんな三人に構わず他のメンバーは良識人のカスミとどんなものか聞いている。ヒビキに気を使ってか、
「とっても綺麗よ・・・」
と、少しうっとりとした顔で言い返したぐらいだったが。



翌日、全員がこの場(昨日炎上した森の後)にいた。クリスもしくはメロディから話を聞いたのか、由羅までもがいたりする。イヴも誘ったのだが、図書館の仕事があると断られたので、
「じゃあ後でお裾分けに行くよ」
とヒビキに言われて、不思議そうな顔をしていたくらいだろうか。噂が噂を呼び(といっても1日しか経っていないが)、トーヤやカッセルまでもがいる。アリサヤローラ、テディはいうに及ばずである。

そんな人たちの視線の先にはヒビキがいる。皆が緊張と、期待の視線を向ける中一人集中している。ゆっくりと右手を天にかざし、呪文を紡ぐ・・・・。

「ここに再び生命の息吹を・・・・」

掲げた右の手のひらに小さな、それでいて柔らかな光球が現れる。

「死と再生を司る彼の者の名において・・・」

光球が、いくつもの光の粒に変わり・・・

「我が願いを聞きとどけたまえ・・・」

光の粒が、ヒビキを照らす・・・。そのときのヒビキは金色の髪をしていて・・・。
こちらを真っ直ぐ見ている瞳は碧色・・。天使といっても過言ではない姿であった・・。

光の粒が荒野に落ちると、地面から芽が出、芽は葉を生やし、木になり、森となるまでにあまり時間がかからなかった。

ヒビキはまだ降っている光の粒を用意してきたビンに詰めると皆の方に寄っていった。当然姿は元に戻っている。

「にしてもあんたら凄い幸運だぜ?あいつのエレメンタル・ソングがこうも簡単に見れたんだから」
シンの言葉にアレフが答える。
「そんなに幸運なのか?」
「ああ。あいつは自分の力があんまり好きじゃないみたいだからな」
「そう、か」
二人の間にそれ以上言葉はなく、親友のためにどうすることができるか悩む二人の男の姿だけが残る・・・。


まだ降りつづける光の下で・・・・
マリアに軽い説教をして、新しい呪文を試すときは自分を呼ぶように言い聞かせて。
ローラに飛びつかれて、言葉の嵐を聞いて。
アリサさん特製のピザを食べ。
シェリルに話を聞かせて。
テディをからかい。
アレフを酔いつぶし(由良と協力して)
クリスに相談(ここにいる由良への対策)を受けて。
パティの作った料理を食べ。
リサとエルにからかわれ。
メロディとじゃれて。
暴れるピートを黙らせて(強攻策)
シンをどつき。
ほのかに抱きしめられ。
カスミと談笑し。
トーヤとカッセルの世間話に付き合い。
光の下でシーラとの演奏。


すべてが幻想的で、夢のようで。手にした仲間たち。大切な友人たち。それらが幻ではないかとも思えてしまう。でも、確かにこれは現実で。涙が出るほど幸せで、嬉しくて、楽しい現実・・・。ずっとヒビキとクロウシードが切望してやまなかったもの。守るべきもの・・・。自身の命に代えても守りたいもの。それらを優しく見守りつづけた・・・。





〜あとがき〜
さてどうだったでしょうか?ヒビキの中での気持ちを育てるためだけに考えたこの「日々」。予定というか、必然というか、ヒビキは恋愛に関してはほとほと鈍いヤツになります。そうしないと、お話し続かないから。ま、そのうちなんとかなるでしょ(笑)

じゃ次回〜ただ彼女のために〜を皆で見よう!

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