中央改札 悠久鉄道 交響曲 感想 交響曲

「ふたつの『おかえりなさい』≪後編≫」 REIM  (MAIL)
 時は過ぎ、4月の28日の事…。
 フィムがエンフィールドに帰って来てから4日が過ぎた…。(フィムが帰って来たのは24日だった)
 最初の頃は『ご祝儀』依頼が多かったが、流石に2日も経てばネタ切れになり、普段とは変らない仕事量に
 なっていた…。

 「あら? お嬢様からですわ…なにかしら?」ジュディは自分宛てに届いた手紙の差出人を確認してこう呟き、
 手紙の封を切った。
 そして、手紙に目を通し始めた途端、驚きの表情を見せた…。

 「さてと…今日の仕事は…と」とフィムは昨日までに受け付けた依頼票をチェックしていた。
 「フィムさん、今日、日曜日っス…ゆっくりしたらどうっスか?」「とは言ってもなぁ…この束、見てくれよ」
 厚さが1.5cmもあったりする…。
 「…残り全部、第三部隊に任せたらどうっスか…? 働き過ぎっス…」と半ば呆れてテディ…。
 「そうしたいのも…山々だけど…な」と言いつつも手は休めずに依頼票の振り分けを行うフィム…。
 この2日間、依頼が殺到した結果、まだ消化しきれていないものが出始めているのだ…。
 ほとんどの依頼者は「いつでもいい」と言ってはいるが…どうも気になるのか、フィムは暇さえあれば依頼を
 こなす様にしていた…が、それでもまだ終わりそうもないようだ…。
 「今日は…孤児院と第五部隊、それと学園だけにしとくか…」どうやら働き過ぎと自覚があるらしい…。
 「それじゃあ、アリサさん、テディ、いって来ます」と言って出かけて行った。
 「やれやれっス…」溜息混じりにテディが呟いた…。

 しばらくして…。
   からんからん♪
 「アリサ様、いらっしゃいませんでしょうか?」とカウベルの音とともにジュディが店の中に入って来た。
 「あら? ジュディさん。どうしましたの?」と尋ねるアリサ。
 「実は…ご相談したい事がありまして…それもアリサ様だけに…」「それは…私に出来る事かしら?」
 「はい、アリサ様でなければ出来ない事でして…」と恐縮して答えるジュディ…。
 「わかりましたわ…テディ、少しの間だけ場を外してくれるかしら?」「ういっス」
 「有難う御座います…実は…」テディが奥の方に行ったのを見届けてから、ジュディはアリサだけに聞こえる
 程度の声で『相談事』を話し始めた…。

 一方、自警団事務所では…。
 「なぁんかさあ…『欠食児童』ならぬ『欠職隊員』って感じね…」出前に来ていたパティが第三部隊の詰所の
 様子を見てこう表現した。
 「パティ…頼むからそれを言わないでくれ…余計に空しくなるから…」疲れきった表情で抗議するティルト。
 「あはは…ごめんごめん」とりあえず謝るパティ…でも顔は笑っていたりする。
 「あのなぁ…」軽く睨むティルト…丁度、その時に。
 「ティルトさん、依頼を持って来たっス」と紙束を背負ったテディが入って来た。
 「へ? 依頼を持って来たって?」ちょっと驚いた顔で聞き返すティルト。
 「ういっス。フィムさんを少し休ませるから、ご主人様に第三部隊に持っていく様に言われて来たっス」
 「…フィム君を休ませる為に…働くのか…俺達は…」少し傷つくティルト以下第三部隊の面々…。
 「あはは…でも、あいつ…まだ終わらせてなかったんだ」と可笑しそうな顔でパティ。
 「あれ? パティさん、ここで何してるっスか? ティルトさんをデートに誘ってたんっスか?」
   ぼごっ!
 「テディ! ヘンなコト言ってると殴るわよ!」「殴る前に言ってほしいっス!」半泣き顔で抗議するテディ。
 「…パティがデートしてるなんて絶対にありえないな…それ以前にデートしてくれる相手がいると思うか?」
 と小声でテディに言ったつもりだったが…次の瞬間。
 「巨大なお世話よっ!!」とともに、
   ばきぃぃぃっ!!
 パティの鉄拳がティルトの顔面で炸裂していた。
 「…ティルトさんの言う通りっス…」怯えながらもこう呟くテディである…。

 「え、残りの依頼を全部、自警団に…ですか?」「ええ。そういう事だから明日はゆっくりしていなさい」
 仕事を終えてジョートショップに戻って来たフィムにアリサがこう言い渡した。
 「しかし、アリサさん…明日明後日で終わる量では…」渋る様に言い返すフィムだが…。
 「フィムクン、あなた少し働き過ぎよ。今はあなたの事を心配する人がたくさんいるのよ」「しかし…」
 更に言い返そうとするフィムだが…アリサの次の一言で思わず返事を返してしまった。
 「ゆっくり休む事が明日のフィムクンのお仕事よ」「はい…」「はい、よろしい」
 アリサさんには逆らえないフィムくんであった…。
 (ちょっと可哀相だけど…フィムクンが倒れると悲しむ人もいるし、ね)と内心こう思うアリサ…。
 「テディが戻って来たら、お昼にしましょう」とアリサがその場を取り繕うかの様にこう告げた。

 翌5月1日。
 1台の馬車が祈りと灯火の門の前に止まり、その馬車から一人の少女−そうとは言えない年齢ではあるが−が
 降り立ち、懐かしそうな顔で門を見上げた。
 そして、その少女は出迎えに来たらしい女性に二言三言、会話をすると大きめなバッグは彼女に任せ、自分は
 竹で編んだ鞄を抱きかかえる様に持って彼女が目的とする場所に向かっていった…。
 最初のうちは普通に歩いていたが、そのうちに段々と早足になり…最後には走る様に歩き始めた。
 そして…とある場所−少女の目的地−の扉の前に立つと…そこで息を整えるかの様に深く深呼吸をし、それから
 ノブに手をかけた…。

 「ふう…何もするコトがないのって…結構退屈なんだなぁ…」と感想を漏らすフィム…。
 「そんなにヒマだったら、本でも読んでたらどうっスか?」「ん、そーすっかなぁ…」気の抜けた返事を
 テディに返し、自分の部屋に本を取りに行こうとして2階に上がろうとした…。
   からんからん♪
 「あら、いらっしゃい…あなた、シーラちゃん!?」アリサがジョートショップに入って来た女性を見て
 驚いた声を上げた。
 「アリサおばさま、お久ぶりです」とシーラはアリサに挨拶をした。
 「たたた大変っス! シーラさんが帰って来たっス!」テディが慌てふためいて2階に行ったはずのフィムに
 呼びかけた。
 「し、シーラ!? あ、だって留学は4年のはずじゃあ…?」彼女の姿を見て驚きつつも疑問を口にする…。
 「私、一生懸命、勉強して研究科まで終えたの…約束通りプロのピアニストになって帰って来たわ…」
 瞳を潤ませながら答える…。
 「シーラさん、約束ってな…むぐ!…むぐむぐ…」アリサに口をふさがれ、じたばたするテディ…。
 「もう…テディたら…少しは気をきかせてあげなさい…」小声でテディを諭すアリサ…。
 そんな事をしてる二人(?)を知ってか知らずか…、
 「私…また、あなたと一緒にお店手伝いたいな…」と自分の『想い』をそれとなく伝えるシーラ…。
 一方、フィムはというと…彼女に色々と話したい事、聞きたい事があったが…まず先に次の言葉をつむいだ…。
 「…おかえり、シーラ…」「うん、ただいま…」

 フィムとシーラの二人の間に漂う雰囲気を察してか、
 (あらあら…ジュディさんもきちんとお話してくれたら…少しは気をきかせてあげたのに…)と内心、ジュディに
 向かって苦笑するアリサ…。
 昨日、ジュディから『フィム様にもしもの事がおありでしたら…お嬢様が悲しみますし…それに私、お嬢様が悲しむ
 姿を見たくありません…』と言われて、今日は彼に休みを与える約束をしていたのだった…。
 (それよりも…二人の邪魔をしちゃ悪いわね…)アリサはテディの口を押さえたまま、お茶を淹れるフリをして
 台所へと消えていった…。

    ≪Fin≫

 あとがき
  みなさん、はじめましてREIMです。
  悠久SS「ふたつの『おかえりなさい』」の後編です。
  前編はフィムくん(=主人公)の帰還を書きましたが、後編はシーラの帰還を書いております。
  さて、前編を読んで疑問に思ったところがあると思います…多分「フィムとティルトって誰?」が多いと思います。
  フィムは悠久1の主人公で本名はフィムリード・フローティリスです。
  またティルトは悠久2の主人公で本名はティルティス・フェルトウェルナーとなっています。
  あと…ここでは載せていませんけど、ティルトの「お相手」ですけど…これは次回作でお教えします。
  補足しますとこのSSは私のサイトで展開しているシーラをヒロインにしたシリーズの3作目にあたります。
  残念な事に1作目はサイズが多い為、2作目は他社のゲームキャラが登場している為に自分のサイトでしか公開して
  おりません(そうした理由で前述の疑問が出てしまいました)。
  もし、機会があればそちらの方も見て頂ければ幸いと思います。


中央改札 悠久鉄道 交響曲 感想 交響曲