中央改札 悠久鉄道 交響曲 感想 交響曲

「でーと・うぉーず〜第1話−おしゃべりは災いのもと?〜」 REIM  (MAIL)
 (今日はちょっと冒険でもしてみようかしら…)
 こう思うとシーラは化粧台に置いてあったルージュを手に取った…。
 今この時の彼女の服装は、白色のワンピースの上に若草色の肩掛け、それに若草色のベレー帽という格好を
 していた…シーラにしては随分とおめかししているが…当然であろう、何せこの日はフィムとの『デート』
 なのだから…。

   カララン…♪
 「あ、いらっしゃい…って、なぁんだ、あんたか…」
 カウベルの音とともに『さくら亭』に入って来た人物を見て、パティが面倒くさげに切り返した。
 「どーでもいいが…俺の時だけ…愛想が悪くないか?」何十回も言ったかもしれない台詞を言うフィム…。
 「あははは…その言葉、結構聞いてるかも」「あのなぁ…」「俺には漫才のように聞こえるんだが…気のせいか?」
 順にパティ,フィム,アレフである…。
 「おや? 今日は随分と着飾ってるね」と一目、フィムの格好を見てリサ。
 「ん、そっかぁ…いつもとは変らん気がするけど?」とフィム−彼の服装はアイボリーホワイトのスラックス、
 空色のボタンシャツ、そしてベージュの棒タイで決めていた。
 「ふぅ〜ん…シーラとデート、か」と人の悪い笑みを浮かべるパティ…。
 「…パティ…その笑いはなんだ?」「べっつにぃ」フィムの疑問にとぼけたフリをするパティ。
 「ま、一人の女の子とだけデートするんだからいいんじゃないの? そこにいる誰かさんとは違ってね」とリサ。
 「…なあ、リサ、その『誰かさん』って…俺のことじゃねーよな?」「アレフ…一応自覚あったんだ…」
 「やかましいっ!」フィムに突っ込まれ、声を荒げるアレフ…。
 「あははは、アレフもそろそろ誰か一人に決めたら?」とチャチャを入れるパティ。
 「…パティ…人のコト、言えるのか…デートしてくれる相手もいねぇクセに…」命知らずの事を言うアレフ。
 「なぁんですってーっ!?」ほらね…。
   ごいぃぃん!
 「バカなヤツ…」「まったくだね…」トレイのカドでぶたれるアレフを見てしみじみ呟くフィムとリサ…。
 「…カドでぶつか、フツー?」ぶたれたところを押さえてアレフ。
   カララン…♪
 「いらっしゃい…あら、シーラじゃないの。ほら、あなたの彼氏、そこにいるわよ」とからかうパティ。
 「ぱ、パティちゃん!?」あ、真っ赤になった…。
 「…なんか…俺達をからかって遊んでないか…パティ…?」「気のせい、気のせい♪」しらっとした顔でパティ。
 「ほらほら、彼女を待たせんじゃないよ…早く行ったらどーだい?」「リサ…お前もか…」と呟くフィム…。
 「…フィムくん、早く行きましょうよ」「ん? ああ…そうだな…」
 シーラはフィムのところに駆け寄ると彼の腕を抱きかかえるとそのまま、半ば逃げる様に店の外に出て行った…。

 それから、しばらくして。
 「みんなぁ、いるぅ?」という声とともにローラが『さくら亭』にやって来た。
 「あら、ローラ。どーしたのよ、楽しそうな顔なんかして?」「うふふふ…パティちゃん、じ・つ・はぁ〜」
 「フィムとシーラがデートしてるってコトならここに全員知ってるぜ」と先手を取るアレフ。
 「んもう〜、アレフくん、そういうコトは先に言わな………へ? フィムおにいちゃんとシーラちゃんが??」
 「なんだい、知らなかったのかい?」苦笑するリサ。
 「うん、はじめて聞いた…フィムおにいちゃんとシーラちゃん…やっぱりこの二人は結ばれる運命だったのね…」
 うっとりとして自分の世界にいってしまうローラ…。
 「で、ローラ、あの二人のほかに誰と誰がデートしてるの?」「へ? なんでわかったの、パティちゃん??」
 「ま、ローラの話は大体が恋愛がらみだからな…」苦笑して答えるアレフ。
 「…その言い方、ちょっと気になるんだけど…」むすっとした顔でローラ…すぐに「ま、いっか…」とばかりに
 表情を切りかえる。
 「それでね…今日ね…おにいちゃんとセリーヌさんが…なんと、デートしてるんだよぉ」ともったいぶる様に
 ローラ…ちなみにここでいう『おにいちゃん』はティルトの事を指し示している。
 「へ〜、珍しいコトもあるんだなぁ…あの仕事魔がセリーヌとデート、とはね」とアレフ。
 続いてリサも「まったくだね、雪でも降らなきゃいいケド」と言葉をつむぐ。
 「二人とも結構、ひどいコト言ってるわね」とパティ…でも顔は笑っているが…。
 「…パティちゃん…顔笑ってるよ…」とローラに突っ込まれる。
 「そ、そんなコト、ない……わ……よ…」急に引き攣った顔でパティ…。
 アレフもリサも『信じられない』という表情で…ある一点を凝視していた…。
 「? みんな、どーした……の…」と後ろを振り返った途端、ローラの笑みが凍りついた…彼女の瞳には…
 氷の微笑みをたたえたトリーシャとクレアの姿がうつっていた…。
 「あは…は…ふ、二人とも…どーしちゃったの…そんな、怖い顔…しちゃって…」引き攣った笑顔でローラ…。
 「…なあ…やっぱ、コレって…」「…うん…しっかと聞いてたわね…」恐る恐る小声で呟くアレフとパティ…。
 「…まだ…諦めていなかったんだね…」とリサ…。
 少し説明しておくと…とりあえず、ティルトとセリーヌは『一応』相思相愛の仲だが…それを認めないと言うか、
 認めたがらないトリーシャとクレアが…一方的に横恋慕しているのだ…。
 ちなみに…何故『一応』が頭につくかと言うと…それは相手がセリーヌだから…(苦笑)。
 そういう事情だから…、
 「ローラ…」「ローラ様…」と重低音で彼女の名前を呟くトリーシャとクレア…ものすごぉく怖かったりする…。
 「え? え? な、なに、なんなの…かな…?」思わず後退りするローラ…しかし…、
   がしっ…
 二人に−しかもほぼ同時に−肩を掴まれてしまった…。
 「ねえ…ローラ…二人ともドコでデートしてるのかなぁ…」右肩を掴んだトリーシャを問うと今度はクレアが
 「お二人はどこに行かれたのですか…?」ローラの左肩を掴んだまま、問い質して来た…。
 その情景を見て…言葉を失うパティ,リサ,アレフの三人…。
 「…トリーシャちゃんもクレアさんも…そんな顔しちゃ…ダメだってば…」泣き笑いの顔でローラ…。
 「ドコにいるのかなぁ…?」とトリーシャ…肩を掴む手に力がこもってたりする…。
   ぎゅうぅぅ…
 「…す、すごく…肩、痛いんだけど…?」と半分泣きながらローラ…。
 「どこにいらっしゃるのですか…?」同じく力を込めてクレア…。
   ぎゅうぅぅぅぅ…
 「…お願いだから…力緩めて欲しいなぁ…なんて…」と泣きながら二人に哀願する…。
 『ドコにいるのぉ…?』二人同時に問い質す…無論、更に力を込めて…。
   みしみし…
 「こ、公園にいますぅぅぅ!!」あまりの痛さに耐え切れず、泣き叫ぶ様に白状するローラ…。
 「なんで止めなかったんだよっ!?」とトリーシャ…えぐえぐ泣いてるローラには聞こえていないが…。
 「こうしてはいられませんわっ!」と言い残してクレアは『さくら亭』を飛び出した。
 「あーーっ!? クレアさん、抜け駆けはなしだよぉ!!」急いでその後を追うトリーシャ。
 二人が出ていった後、
 「…ローラ…? 大丈夫…だよね?」恐る恐る尋ねるパティ…。
 「…大丈夫…なんかじゃ…ないやい…」両肩を押さえて滂沱の涙を流すローラ…この時、彼女の両肩に出来た
 アザは3週間もくっきりと残ったという…。


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