「でーと・うぉーず〜第2話−可愛いクセは命取り?〜」
REIM
(MAIL)
陽のあたる丘公園では…。
「はぁ〜、今日はいい天気ですねぇ〜」セリーヌが隣にいるティルトに話し掛けた。
「うん、そーだな…雲一つないね…」とティルト…続けて「どこか、行きたいトコでもある?」と尋ねる。
「え〜とぉ…そうですねぇ…」考え込むセリーヌ…でも…この娘、考え込んだら…1日が終わってしまう様な気が…。
「エレイン橋の方にでも行ってみる?」苦笑しながらティルト。
「はぁい、それもいいですねぇ〜」と答える。
「それじゃ、行こうか」と二人がエレイン橋の方に歩き始めた時に、
「あーっ! 見つけたぁーっ!」「お二人ともっ! お待ちなさいっ!」と聞き慣れた声が聞こえて来た…。
「げっ!? こ、この声はっ!?」「あらぁ、トリーシャさんとクレアさんですねぇ」
分かっても嬉しくもない事を言うセリーヌ…。
こんなヤリ取りをしているうちに二人の前に現れるトリーシャとクレア…。
「セリーヌさん(様)! ティルトさん(様)から離れ…」と二人同時に言おうとするが…。
「あらぁ、トリーシャさん、クレアさん、おはようございます〜」「あ、おはよう」「おはよう御座います」
………遠くからカラスの鳴き声が聞こえてたりする……(笑)。
「…ねえ…ボク達、すっごいマヌケなコトしなかった…?」とトリーシャ…続けてクレアも
「ええ……確かに…お間抜けな事をしてましたわ…」と首肯する…。
「………セリーヌ、行こうか…」ティルトは、しばしボーゼンとしていたが、気を取り直すとセリーヌを連れて
エレイン橋の方に向かおうとした。
「あーっ! そんなコト、ボクが許さないっ!!」突然、わめくとセリーヌに向かってトリーシャ・チョップを
放った!
「どわっ!? トリーシャ、危ないじゃないかっ!?」ティルトはセリーヌを抱きかかえて後ろに跳び退った。
「ティルト様! 何をなさっているのですかっ!?」それを見て怒り出すクレア。
一方、抱きかかえられたセリーヌはというと…、
「…あのぉ〜、私、まだ心の準備が…」…いきなり抱きかかえられた為か、とんでもない事を口にする…。
「…頼むから…この状況でボケないでくれ…」「はぁ…違ったのですかぁ…」最早、何も言う気が起こらん…。
それを聞いたトリーシャとクレアは…しばらくセリーヌを睨みつけていたが…突然の思い出したかの様に、
「トリーシャ様、先にティルト様をセリーヌ様の魔の手からお救いしましょうっ」「うん! 一時休戦だねっ」
固く互いの手を握り合う。
「そこ! いきなり連合するなっ!!」と突っ込む。しかし…、
「セリーヌさん(様)! 覚悟っ!」
事ここに至り、二人の説得を放棄したティルトはセリーヌの手を引いて、一目散に逃げ出す事にした…。
一方、状況がまったく把握出来ていないセリーヌは…次の問いを発していた…。
「あのぉ…なぜ、トリーシャさんとクレアさんは怒っているのでしょう?」この問いに答えてくれる人は誰も
いなかった…。
「どわっ!?」「ぎゃあっ!!」
どっしゃぁん!!
荷馬車が手綱さばきをミスり、路肩の露店に突撃した…ティルトとセリーヌがいきなり飛び出して来た為である…。
一方…、
「ひ、ひぇーっ!?」
どっぼぉぉぉん!!
乗合馬車が飛び出して来た二人の少女−トリーシャとクレア−を避けようとしてムーンリバーに特攻した…しかも
客を乗せたまま…。
…この4人の『追いかけっこ』により…前述の様に街のあちこちで物的被害が出始めていた…。
「なあ、マリア…なんか騒がしくないか?」エルがマリアに−道の真中でケンカ真っ最中−尋ねた。
「? マリア、全然聞こえないよ…じゃなくてっ! エル! ゴマかそーたって、そーはいかないわよっ!」
「うるさいっ! 今ここで決着をつけてやろーかっ!?」「望むところよっ!!」
…どーでもいいけど…お前ら…『ハタ迷惑』って言葉、知ってるか…?
「…相変わらずだな…」『へ?』突然、話し掛けられて怪訝な顔になる二人。
振りかえると…セリーヌを連れたティルトが呆れた顔で−ついでに少し息を切らして−立っていた…。
「…何してんだ? そんなに息を切らして…?」と尋ねるエル。
「…トリーシャとクレアに追いかけられてるんだけど…」「…おい…またアタシを巻き込む気か…?」
剣呑な声でエル…前にマーシャルに匿ってもらうとして店の中に逃げ込んだ事あったが−たまたまエルもいた−すぐに
トリーシャとクレアに見つかった…その時、エルはチョップとキックの誤爆を7,8発くらった…但し、マーシャルは
34,5発誤爆させられた上に…セリーヌにも思いっきり突き飛ばされてたが…。
「きゃは☆ ティルトも大変だね」「…マリア…人事のように言ってないか?」憮然としてティルト。
「気のせいよ、気のせい☆」とマリア…何しろ彼女はまだ巻き込まれた事がないからこう言えるのだが…。
「あのぉ、エルさん、マリアさん、つかぬコトをお聞きしますけどぉ」「え? なになに?」
「どうして、トリーシャさんとクレアさんは怒っているのでしょうかぁ?」
ずぅぅぅん…
その場の空気が重くなる…。
「………アンタ…それ、本気で言ってるのか…?」半瞬、ボーゼンとしていたエルが絞り出すの様に呟く…。
ちなみにマリアは…笑みを浮かべたまま…完全に固まっていた……。
「はい?」全然、分かってないな…この娘…。
「…マリア…めまいがするぅ…」「…アタシもだ…」復活したマリアと再びボーゼンとしかけたエルが呟く…。
…気持ちは分かるケド…。
「…頼むから…トリーシャとクレアには黙っててくれよ」同じくボーゼンとしていたティルトは復活するとともに
こう言い残し、セリーヌの手を取ると西の方へと走り去った…。
「アイツも大変だな…別の意味で…」「うん、そーだね…」妙なコトで意見があうエルとマリア…。
が、すぐにはっとして…、
「なぁんで、エルと意見が合わせなきゃいけないのよっ!!」「それは、アタシのセリフだっ!!」
…直ちにケンカ再開…しかし…。
「エル! マリア! ティルトさん、ドコに行ったか知らないっ!?」速攻でフリーズするエル…恐る恐る、
振り返ると…トリーシャとクレアがこちらに駆け寄ってくる…ものすごぉい顔をして…。
「うぅ…この世の終わりが近づいて来るぅ…」途端に恐怖で幼児化するエル…。
「シラを切り通せば、ナンとかなるって☆」二人の表情にびびりつつも楽観視するマリア。
「…そのコトバ、信じるからな…」何とか立ち直る…。
「エル様、ティルト様はどちらに行かれたかご存じありませんか?」二人のところまで来るとクレアがこう尋ねる。
「さ、さあ? アタシは知らないケドな」と内心、冷や汗だらだらでトボけるエル。
「ホントにぃ…?」トリーシャの追求に「ほ、ホントだ…」と答えつつも(早くどっかに行ってくれぇーっ!)
と心の中で絶叫するエル…。
「マリア様…ティルト様はどちらに行かれたのですか?」と追求の矛先をマリアに変えて問い質すクレア。
「マリア、知らないよ☆」と自信を持って答える…可愛らしく髪をいじりながら…。
「…そうですか…」と引き下がろうとするクレア…それを見て安堵の思いをするエル…だが…、
「…エル…マリア…ほんとのコト、言ってくれる…?」怒った口調でトリーシャ…そして…、
「…でないと…永眠モード付きトリーシャ・チョップ、いくよ?」かなり物騒な事を口走る…。
「トリーシャ様!?」「ま、待て、トリーシャ! ウソはい…」エルばかりかクレアも慌てるが…、
「じゃあ…マリア、髪いじってる、その手はなに?」…君って嘘のつけない娘だねぇ…マリアちゃん…。
「マリア!? オマエってヤツはぁーーっ!!」「マリア、悪くないもんっ!!」
「…ウソついてると…髪いじるからね…マリアは…」順にエル,マリア,トリーシャ…。
「…エル様…マリア様…」ぞっとする様な声でクレア…この瞬間、彼女達は天国から地獄への直行を確信した…。
「エル、マリア…ウソはいけないよぉ〜」静かな怒りで迫るトリーシャ…マリア、顔を引き攣らせて後退りする…。
更に…エルがこの二人からどんな目にあったのか…一瞬にして悟ってしまった…。
(マリア「悟りたくもなかったのにぃーーっ!!」)
「エル、ど、どーしよぉ…」「そ、そうだな…こーゆう場合は…だ」エルとマリアは顔を見合わせると…、
『三十六計逃げるが勝ちっ!』とばかりにトリーシャとクレアから逃げ出した…が、既に手遅れだった…。
「トリーシャ・チョーップっ!」「クレア・トルネードキーックっ!」
げしぃぃぃっ! ばきぃぃぃっ!
…エルとマリアは…あっけなく地面に沈んだ…。
…数分後…エルとマリアの二人はボロボロになって転がっていた…。
「…エル…生きてるって素敵ね…」「…そーだな…」
…あの後、二人から散々吊るし上げをくらったエルとマリア−耐えられずに白状した−はしみじみとこう呟いた…。
…この事があった為か、マリアは…ティルトとセリーヌが一緒にいる時、彼らから半径250m以内には絶対、
入らなかったという…。