「でーと・うぉーず〜第3話−追いかけっこのち迷子?〜」
REIM
(MAIL)
「待てぇーっ!!」フェニックス通りにトリーシャの声が響き渡る…その隣にはクレアもいる…。
「ったく、今日はヤケにしつこいな…」と走りながら−当然、セリーヌの手を引き−ボヤくティルト。
「しかし…このままだとジリ貧だな…」丸半日、走っり放しだもんね…。
「きっとぉ、神様が助けてくれますぅ〜」とセリーヌ。
(だったら…こんな目には遭わないハズだけど?)「だといいけど…」半信半疑で呟くティルトであった…。
しばらくして…。
「……俺は今後一切、神様なんか信じるもんか…」立ち止まって、こう吐き捨てるティルト…。
確かに神様はいた…特にトリーシャとクレアとっては…なにしろ彼の前には通りを塞ぐ様に馬車が横転して
いるのだから…。
「はあはあ…ようやく…追い着きましたわ…」
振り返ると息絶え絶えの状態でトリーシャとクレアが彼らに追い着いていた…。
(…さて…どーしたものか…)この場をどう切り抜けるか考えるティルト…。
「…セリーヌさん…覚悟はいい?」ドコで手に入れたのかチョップ棒を手に彼女に迫るトリーシャ…。
「あのぉ、私、何か悪いコトをしたのでしょうか?」「…してますわ…」と答えるクレア…。
「…セリーヌさんの次は…ティルトさんだからね…」と宣告するトリーシャ…。
「私、どうしたらよいのでしょうか?」とセリーヌ…但し、誰も答えてはくれなかったが…。
絶体絶命のティルトとセリーヌ…この時、ティルトの頭の中で何かひらめくものがあった…もっとも気をそらす
事しか出来ないが…。
(ええいっ!! どーにでもなれっ!!)「アルベルトのヤツが『ローレライ』に入ろうとしてるぞっ!」
「あっまぁい! そんなコトでボク達をゴマかそうたって…」と即座にトリーシャが切り捨てようとしたが…、
「お兄様っ! また化粧品を買うおつもりですのっ!?」「ティルトっ!! テメーっ!!」
『へ?』思わずぽかぁんとするティルトとトリーシャ…。
「お兄様っ!! 何度おっしゃたらお分かりになるのですかっ!?」
アルベルトに−本当に『ローレライ』に入ろうとしていた−くってかかるクレア。
「ティルトっ!! この裏切り者がっ!!」と怒鳴りつけるアルベルト…。
「…いや…口からデマかせだったんだが…」こう言うの精一杯のティルト…。
一方、トリーシャは…あまりのタイミングのよさに唖然としていた…。
(ん? チャンスだっ!!)と思うとセリーヌの手を引き、トリーシャの横を一気に走り抜けた。
「あ!? 逃げるなぁーっ!!」クレアを置き去りにして彼らを追いかけるトリーシャ…結構、引き離されていたが…。
ちなみに…残されたクレアの方はというと…『ローレライ』の前で兄妹ゲンカの真っ最中であった…。
なお、この兄妹ゲンカは…店主に泣きつかれた第四部隊の隊員−女性である−の手により『武力制圧』されたという…。
「もう〜、ドコにいっちゃたんだよぉ」二人を完全に見失ったトリーシャが文句を言った…もっとも聞いてくれる人は
誰もいないが…。
「…そー言えば、エレイン橋の方に行くって言ってたっけ…?」自信なさそうに呟く…。
「とりあえず、行ってみよっと」と言うと彼女はエレイン橋の方へ駆け出した…。
一方…。
「…ふう…やっと撒いたか…」と一息つくティルト…。
あの後、まだ追いかけて来るトリーシャを撒く為に街中−特に路地裏−を走り回ったのだ…。
「さてと…まだ日もあるから………」と一緒にいる筈のセリーヌの方に顔を向けたが…彼女の姿は何処にもなかった…。
「……やべ……セリーヌまで撒いちまった…」アホか…あんたは…?
その頃…。
「今日の演劇、よかったね」「ああ、そうだね」とシーラとフィムは二人でエレイン橋にいた。
二人はリヴェティス劇場で演劇を鑑賞した後、シーラから『一緒にエレイン橋に行ってみない?』と誘われて−
ディナーまで少し時間があった−特に断る理由もなかったので、一緒にここに来ていたのだ。
「でも、なんでエレイン橋に?」とフィムが尋ねると「ただ、なんとなく…かな」と答えるシーラ。
「そう言えば…ここで悲鳴上げて気絶したんだよね、シーラ?」と3年前の出来事を思い出すフィム。
「もう、そんな古い話、思い出させないでよ…それにフィムくんだって悪いのよ」拗ねた声で言うシーラ。
「おいおい…俺は怖い話をしただけだぜ…まあ、あのタイミングでジュディが戻って来るとは思わなかったケド」
「あの時、私、すっごく怖かったんだからぁ」「ひょっとして…蒸し返したコト、怒ってる?」恐る恐るフィム…。
「ううん、そんなコトない」と慌てて言葉をつむぐ。
「…そうか…そろそろ『ラ・ルナ』に行こうか?」とフィム
(今日こそは…フィムくんと…)「…少しだけ待ってくれる?」と言ってから顔を彼の方に向け…そっと瞳を閉じる…。
しかし…。
「あ!? フィムさん、シーラさん!」と誰かに名前を呼ばれた…。
「ん? トリーシャか…どーしたんだ? そんなに息を切らして?」と尋ねるフィム。
「そ、それよりもさぁ…セリーヌさん、見なかった?」このトリーシャの問いにシーラは「え? 見てないけど…」
と表向きはこう答えた…でも内心は…(トリーシャちゃんのばかばかばかぁ〜)であった…。
「セリーヌがどーかしたのか?」とフィムがトリーシャに尋ねた時、
「あのぉ、私がどうかしましたかぁ?」「どわぁーっ!?」と飛び上がって驚くフィム…。
「し、心臓に悪い登場の仕方をしないで下さいっ」抗議するシーラ。
「…フィムさんでも気付かないんだ…セリーヌさんが来るの…」とボーゼンと呟くトリーシャ…。
一方…、
「???」何もわからず、きょとんとしているセリーヌの姿があった…。
しばし…無言の時が過ぎる…。
「…フィムくん、『ラ・ルナ』に行きましょ…」この沈黙に堪え切れなくなったのか、シーラはこう話しかけた。
「ああ…そうだね…」と答え、彼女と一緒に『ラ・ルナ』に向かう…。
「え〜と…私はどうしてここにいるのでしょうかぁ?」少しはどういう状況にいるのか自覚してくれ…。
トリーシャはまだ呆然としていたが、セリーヌのこの台詞ではっとすると、
「セリーヌさん! 覚悟ぉ!」とチョップ棒を振り下ろした!
しかし…セリーヌは、
「トリーシャさん、何をするのですかぁ〜」と言って…、
どんっ!!
「きゃぁぁぁっ!!」思いっきりトリーシャを突き飛ばしていた…。
しばらくしてから…、
どっぼぉん!!
という音ともにムーンリバーに盛大な水飛沫が上がったという…。