中央改札 悠久鉄道 交響曲 感想 交響曲

「Friend and Rival≪前編≫」 REIM  (MAIL)
 「…あれが…エンフィールドか…」紫がかった銀髪の男が馬車の中から遠くに見える街並みを見て、こう呟いた…。
 「…結構、大きそうな街ですね…」その男の隣に腰掛けているオレンジ色の髪−腰まである−の女性がそのまま
 感じた事を述べる。
 「この付近じゃ、結構大きい街ですわ。それとそこにある湖は結構有名じゃて」と初老の御者が口をはさんで来る。
 「確か…ローズレイク…でしたっけ?」と銀髪の男。
 「おや? お客さん、よくご存知で」「本で読んだだけですが…」苦笑して答える…。
 「あと、どれくらいですか?」「そうですなぁ、2,3時間ってトコですな」女性の問いに答える。
 「それじゃあ、街に着くまでのんびりと景色でも見てますか」「ええ」と言うと窓から見える景色に目を移した…。

   からんからん♪
 「あら? シーラちゃん、お帰りなさい」「ただいま、アリサおばさま、フィムくん」と言って仕事に出ていた
 シーラが戻って来た。
 「あれ、ピアノの方はもういいの?」キャンバスから彼女の方に視線を移して尋ねるフィム。
 「うん、後はママがやってくれるって」とシーラ−今日の彼女の仕事は『ピアノ演奏の指導』である。
 …ちなみに依頼者は彼女の母親だったりする(笑)。
 「フィムくん、今度はなに描いてるの?」いつもの椅子に腰掛けて最愛の彼に問いかける。
 「『雷鳴山を飛ぶ光翼鳥』さ…『ラ・ルナ』からの依頼でね…」と言って濃緑のパステルを手に取るフィム…。
 意外にもフィムは絵画−特にパステル画−が得意であった…現に『ラ・ルナ』には彼が描いたローズレイクを画材にした
 風景画がかけられている…それくらいの腕前であるのだ。
 「あ、でも、光翼鳥っていうと…」「それは当然、本を見てだけどね」と苦笑する。
 「その本、見つけるまで大変だったっス…」とゲンナリした顔でテディが溜息とともにこうもらす…。
 「そうだったな…」「なにかあったの?」と尋ねるシーラ。
 …一昨日、その本を借りに図書館に行った時にちょっとしたドタバタがあった…探すのを手伝ってくれたディアーナが
 本棚でドミノ倒しをやらかしてくれた…そして…イヴの無言の圧力によりテディも含め三人だけで復旧作業をするハメに
 なったのだ…。
 「…ディアーナさんと図書館には行きたくないっス…」と思い出したかのようにテディ…。
 「テディ、そんなコトを言ってはいけないわ。ディアーナちゃんも悪気があったわけじゃないんだし」と諭すアリサ。
 「ういっス、ご主人様の言うとおりっス」「ったく、相変わらず調子のいいヤツ…」フィムはこっそりと呟いた…。

   カララン…♪
 「あ、いらっしゃい…って、なぁんだ、あんた達か…」「…私が一緒にいても愛想が悪くなるんだ…」
 このシーラの呟きに「き、気のせい、気のせいよ」と少し慌てるパティ…。
 一方、フィムの方はというと…言うだけムダと悟ったのか、何も言わなかった…。
 ちなみに二人はちょっとした小休止という事で『さくら亭』に顔を出してたのだ。
 「ところで、注文は?」「じゃあ、ラベンダーティを頼むわ」とオーダーするフィム。
 「はいはいと…シーラはいつものヤツでいいよね?」「うん」聞き終わると手際よく注文の品を準備する。
 「それはそうと絵の方は終わったのか?」とチェスを指しているエル−相手はヴァネッサ−が聞いてくる。
 「明後日には終わるさ…あんまりいい出来じゃないけどね」パティからラベンダーティ−眠気覚ましに効果あり−を
 受け取りながら答える。
 「オマエがそのセリフを言うとイヤミに聞こえるぞ…Checkmate」「あーっ!? 今のなしよっ!!」
 「また、ヴァネッサの負けね…これで30連敗?」とシーラにホットミルクを渡しながらパティ。
 「まだ26連敗よっ!」とヴァネッサ…それでも凄いと思うぞ…その記録…。
 「相変わらず強いな」「気分転換にでも一局どーだい?」とエル。
 「いや、やめとく…それに美穂相手に勝てないヤツを誘ってどーすんだよ」とフィム−ちなみにヴァネッサの対フィム戦の
 戦績は彼女の12連敗中…。
 「よっく言うわねぇ…」「まったくだ…」ほぼ同時に突っ込むパティとエル…。
 「え? それって…?」「そう簡単に勝たせてくれないのよ、あなたの彼氏」ヴァネッサの台詞で赤くなるシーラ…。
 エルもしくは美穂がフィムと対戦すると…大抵、フィムの惜敗で終わる…。
 「人のコト言えるのかよ…美穂との対局をステイルメイトにしてるのは誰だ?」とエルに突っ込み返すフィム。
 「たまたま、だろ」「…その『たまたま』で8連続ステイルメイトにされた人間がここにいるんだけど?」
 と青筋を浮かべた美穂−自警団第二部隊のチーフの一人−がエルの背後に立っていたりする…二人の戦績は0勝0敗…。
 そして…「…二度とそのへらず口を叩けない様にしてあげるわ…」と宣告する…。
 「…もしかして…美穂、怒ってるんじゃ…?」「散々ステイルメイトにされてんだ…怒ってたって不思議じゃない」
 とパティとフィムが小声で会話する…。
 「はぁ…大丈夫かしら…ね?」と呟くヴァネッサである…。

 一方、祈りと灯火の門の前では…。
 「ふう…ようやく着いたな…」「ええ…」先ほどの男女が馬車から降りた。
 「それじゃあ、ワシはこれで」「どうも有難う御座いました」と御者に礼を言う。
 「さてと…これからどーするか、だな」もと来た道に戻る馬車を見送ると銀髪の男がこう呟く…。
 「あのぉ〜、失礼ですが…どのようなご用件でこちらに?」と門番が彼らに話しかける。
 「え? ええ、ここに住む事になりまして…」と女性が答える。
 「それでしたら、役所に行かれて転入手続きを…」「それより先にこの荷物をドコに置いておくか悩んでるんですケド」
 と銀髪の男−彼らの足元に大きめの旅行鞄が3つ置かれている…。
 「そうですね…『さくら亭』で預かってもらった方が…」「『さくら亭』?」と聞き返す。
 「あ、『さくら亭』というのはですね、大衆食堂兼宿屋でして、ここに来る人達はそこに行くんです…と言うより宿屋は
 そこしかないんですが…場所はこの地図に書いてあります」と彼らに地図を渡す門番。
 「わざわざ有難う御座います」礼を言う。
 「いえ、これも任務ですから…最後になりましたが、エンフィールドへようこそ!」

 「…今日はヤバかったな…」とエルがコーヒーを口にしながら呟く…。
 「なぁにが『ヤバかった』だよ。9連続ステイルメイトをやらかしたヤツのセリフじゃねーぞ」突っ込みを入れるフィム。
 …エル…また、ステイルメイトかよ…。
 「そうよっ! おかげで42連敗になったじゃないのっ!!」美穂にやつ当たりされ、彼女と対戦するハメになった
 ヴァネッサが抗議する…もう…何も言う気が起こらん…。
 「……チェスやめたら…?」それを聞いて呆然として呟くパティ…シーラも唖然としていたりする…とーぜんである…。
 「…どこか、チェスでエルに勝てる人はいないのぉ…?」と美穂…多分、エンフィールドにはいないと思うぞ…。
   カララン…♪
 「あ、いらっしゃい〜♪」カウベルの音を聞くなり、表情を『『さくら亭』の看板娘』の顔に変えるパティ。
 (フィム「変わり身の早いヤツ…」 シーラ「パティちゃんだもん」 パティ「…あんた達ねぇ…」)
 「あ〜と…食事とか宿泊にじゃないんだけど…ちょっとこの荷物を預かって欲しいのだけど…?」店に入って来た一組の
 男女のうち、紫色の髪をした男が言いづらそうに口を開く…。
 その声を聞いて…(あら? どこかで聞いたコトが…?)とシーラは不思議そうに顔を上げ…、
 「あーっ!? あなた方はっ!?」と彼らに指をさすとともに大声をあげていた。
 指さされた二人のうち、女性の方もシーラの顔を見ると…「あ、あなたはっ!?」と大声をあげ、男の方も「!?」と
 驚いていた…。
 一方…残りの面々は…何が何だか分からずに一様、「???」と顔をしていた…。

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