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「Raining Heart≪後編≫」 REIM  (MAIL)
   からん……
 と『さくら亭』のカウベルが力なく鳴る…。
 「おっ? パティ、ちょうど…よかったぜ…」と戻って来たパティ−その表情は暗く沈んでいる−に声をかける−最後の方は
 小声であったが−アレフ…。
 シェリルもトリーシャもパティの方を見て…驚いた顔をしている…。
 この時『さくら亭』にいたのは、アレフ,シェリル,マリア,トリーシャの4人である。
 「…なにが『ちょうどよかった』のよ…?」と聞き返す−当然、カラ元気で−パティ…。
 「帰ってきたとこで悪いんだけど、なんか腹の足しになるもんを作ってくれないか?」とアレフ−無理矢理、普段通りに
 振舞ってる感じはするが…。
 「ったく…そのかわり、払うもんはちゃんと払ってよ」と言いながら厨房に入る…。
 (はあ…アレフなんかに気をつかわれるくらい顔に出てるとはね…)と自嘲するパティ…。
 一方…シェリルとトリーシャは…。
 「ねえ、パティ、聞いてよっ! うちのお父さん、毎日毎日…」と急にパティにグチるトリーシャ。
 「と、トリーシャちゃん、パティさんに迷惑ですよ」と宥めるシェリル。
 どうも無理矢理、話題を作っている感じがしないでもないが…。
 (…なんなのかしらね…?…さては…昨日のこと、しゃべったわね…アレフのヤツ…)睨むパティに…トボけたフリを
 するアレフ…。
 「ところでよ、シーラが明日、ローレンシュタインに出発するんだってな」と急に話題を変えるアレフ。
 「あ、それ、ボクも聞いたよ」「…どんなところなんでしょうか…?」とうっとりとした表情になるシェリル…。
 「どーする、パティ? 今夜、壮行会でもするか?」「…そうね、それも悪くないかも…」とアレフに答えるパティ。
 (みんな…ムリに話題を作ってるわね…)…でも…話しているうちに…少し落ち着いてくる…。
 (でも、まあ…ヘンに気をつかわれるよりは…マシね…)と思い直すパティ…。
 しかし…世の中には無神経な人はいるもので…。
 「ちょっとぉ、みんなして、なに話題をそらそうとしてるのよっ!」とマリアが口をはさんでくる…そして…。
 「パティがフィムにフラれたかどーか聞くのが先でしょっ!」と言い放った。
 そのマリアの台詞は…パティの手が急に止まり、更に他の3人の表情が凍りつく…くらいの威力があった…。
 「マリアっ! いくらなんでも言っていいコトと悪いコトがあるんだよっ!」とマリアを叱るトリーシャ。
 「そうですよっ、今のは言ってはいけないことですよっ」とシェリルも怒った口調で注意する。
 「まあ…マリアのことは…いつものコトだから気にするなよ」とパティ−沈んだ表情をしている−に話しかけるアレフ…。
 「…そうね…いちいち気にしてたんじゃ、身がもたないわね…」寂しく笑う…。
 (…こいつは…重傷…だな…)こう思わずにはいられないアレフ…。
 一方…マリアとトリーシャの言い争いは…まだ続いていた…。
 「マリアっ! いい加減にしなよっ!」「なによっ! マリアばかり悪者にしてっ!」
 この後、マリアは凄まじい事を口走る!
 「フィムはマリアのものよっ! マリアの断わりなしにちょっかいをかけないでよっ!!」
 「マリアっ!! そんなの勝手に決めないでよっ!!」この瞬間、パティがブチ切れたっ!
 びっくりしてパティの方を見る一同。
 「…マリア…いいコトを教えてあげようか…?」パティは深呼吸して気を落ち着けると…ぞっとする声色で口を開く…。
 「な、なによ…」口では強がってはいるものの…思わず後退りするマリア…他の3人も唖然もしくは呆然としていた…。
 「…あいつが好きなコはね…シーラよ…」と言い切るパティ。
 「そ、それが、どーしたって言うのよ? 第一、シーラがあいつに惚れるワケないじゃないの」とまだ強がっているマリア。
 「甘いわね…そのシーラもあいつのコト、好きだってさ」止めの一撃を放つ。
   ざくっ!
 こんな擬音が聞こえるくらいに4人の心に突き刺さる…。
 「うわぁぁぁっ!! なぜだぁ、なぜなんだぁぁぁっ!!?」絶叫するアレフ…まあ一度も彼女を落とせなかったから
 ムリもない反応ではあるが…。
 「…そ、そうなんですか…」がっくり肩を落とすシェリル…彼に渡すつもりだった本を強く抱きかかえながら…。
 「…ねえ、パティ…ボク、やりすぎだと思うんだけど…?」と表面上は何もなかったかの様にトリーシャ…最も一晩中、
 ベッドの中で泣きじゃくっていたが…。
 「そ、そお…? つい…かっとなって…」「その気持ち、分かるけど…ところでさぁ…どーしてそんなコト知ってるの?」
 「…実はね…」とトリーシャの問いに答える…。
 …フィムに『告白』した後、エレイン橋の下で…一人で泣いていた時に…まあ、これだけ言えば…そこで何があったかは
 想像がつくであろう…。

 「…そっかぁ…フラれた上に…そんな話を聞いたら…普通、落ち込むよね…」としみじみ言うトリーシャ…。
 「でも…」「でも?」と聞き返すトリーシャ。
 「なぁんか、ためてたの全部はきだしたら、すっきりしちゃった」と完全にいつもの表情に戻るパティ。
 「…できれば…ボク達を巻き込まないでほしかった…お願いだから…」と小声で呟く…。
 「さぁてと、あいつがシーラを泣かせない様に見張っててやりますか」とパティ…腕まくりなんかしてたりする…。
 「…パティ…なんか…開き直ってない…?」と突っ込むトリーシャであった…。
 …最後になるが…マリアがショックのあまり…1週間程寝込んだ事を付け加えておく…。

   −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 「そんなことがあったのですか…」話を聞き終えて呟くミュン…。
 「へぇ、パティでも泣くコトができたんだ」「リサ…それ、どーゆう意味?」口をとがらせる…。
 「言葉通りの意味じゃないの?」と余計な事を呟くローラ。
 「…もぉう一回、ぶたれたいのかなぁ…ローラ…?」パティのこの有難い申し出にぶるんぶるんと首を横に振る…。
 「まあまあ…」とパティを宥めるミュン。
 「…ふと…思ったんだけど…ローラは誰から聞いたんだい? ボウヤとシーラのコト」そう言えばそうだったな…。
 「トリーシャちゃんからだけど」「なるほど、ね」と納得するリサ。
 …多分、家に帰り着くまで…会う人会う人にしゃべっていった事だろう…。
 「それで…あんたは大丈夫だったの?」「?? なにがなの?」パティの問いに聞き返すローラ。
 「マリアみたく寝込まなかったってコトだよ…って、あんたなら大丈夫か」と一人で納得するリサ。
 『???』という顔するミュンとパティ…「で、次の日にはどこの誰に惚れたんだい?」と続けるリサ。
 「もおっ!」それを聞いて、ぷくっと顔を膨らますローラ。
 「ああ、そーゆうことね」「? あの、それはどういうことですか…?」「ん、それはね…」全然、話が見えてないミュンに
 ごにょごにょと耳打ちするパティ…。
 「あ、そういうことなんですか」とようやく納得する…。
 「ちょっとぉ〜、ミュンおねえちゃんにへんなこと、吹きこまないでよぉ〜」抗議するローラ。
 「人聞きの悪いこと、言わないでよっ」拗ねるパティ。
 「ローラちゃんだって女の子でしょ? そうやって新しい恋をすることは悪いことじゃないわ」とミュン。
 「そ、そうかなぁ…?」「そのかわり、わがままなのが玉にキズだけどね」とチャチャを入れるリサ。
 「エンフィールドの北の方にあたしよりワガママのなのが棲息してるでしょぉ〜」と文句を言うローラである。

 一方、そのエンフィールドの北の某所では…。
 「…次は…指をこうして…もうちょっとっ…!?…は…は…はくちゅんっ!」金髪の少女が可愛らしいくしゃみをする…。
 その瞬間、ぴかっと彼女の手元が光るとともに…、
   どっかぁんっ!!
 夕暮れ時のエンフィールドの街に…夕5つ(=5時)の時報がわりの爆発音が轟き渡ったという…。

     ≪Fin≫

 [あとがき]
  えと、REIMです。『Raining Heart』をお送りします。
  今回は当初、前後編で予定していたのですが…色々と書いてくうちに前中後編の3話分の文量になってしまいした。
  このSSは…前に書いた『優しい陽射しの中で…』での『何故、パティがシーラと主人公(=フィム)がくっつくのを
  応援しているのか?』をはっきりさせるのを目的に書いた…つもりです…(ちょっと自信がないけど…)。
  おまけに…書いてくうちにタイトルと内容が合わなくなってきた感じもして来たし…はあ…。
  次回作ですが…今、SS2作分を並行して書いているところです。出来上がり次第、順次掲載していきますので、
  これからもよろしくお願いします。
  ではでは。


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